五条悟は若人のハッピーエンドを守りたい   作:かるあるおみ

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ギリギリ間に合わせて書き上げました〜
リアルも忙しくなってきたので次回は土曜日になります。
追記:今話のタイトルと一部脱字を修正しました。(4/923:09
追記2:最後の表現を修正しました。五条はヤチヨの正体に気づいてません。


電子の海の誓い

 

先ほど初ログインし、ツクヨミを観光したばかりのかぐやを連れてライブ会場へと向かう。

 

ああは言ったが、実際には僕もヤチヨのライブを見聞きするのは初めてだ。

何しろあの熱狂的ファンである彩葉ですら今回初めて当たったという抽選率。適当に応募しただけの僕が握手券無しとはいえ当たったのは……

 

「あれ、なんだ、この違和感」

 

「グヘッ…ん?悟どした?」

 

急に立ち止まった僕にかぐやが衝突する。

 

「いや〜ごめんごめん、少し考え事」

 

「もー、早く行こーよ!かぐやもう待ち切れないから!!」

 

「ハハッ、そうだねぇ、じゃあせっかくだし、どっちが先に会場着けるか競走しようか」

 

「おー……って!それじゃ場所わかんないかぐや負け確バッドエンドじゃん!!」

 

「あ、バレた?」

 

てへっと舌を出す。まあ運が良かったと言ってしまえばそれまでだし、あんまり考えすぎても良くないので、ぶーたれる姫に視線を戻し、ライブ会場に向かうのだった。

 

 

──────────

 

『──キタキタキター!これがないとツクヨミの夜は始まらない!本日もヤチヨミニライブの開演だぁぁーっ!』

 

ヤチヨファンを公言するMC担当ライバー、忠犬オタ公がどこからかそう叫ぶ。

観光していた時間も相まって、僕たちがライブ会場に着いたのは開演ギリギリの時間だった。

 

「おぉー!この雰囲気好きだなぁ〜!こう、ぶわぁって盛り上がる感じ!彩葉もいるかな?」

 

「そりゃあいるだろうけど、これだけの人数がいたら探すのもキツイかな」

 

(ま、探せば見つかるけど)

 

彩葉は推し活してる時の自分を見られるのは嫌だろうし、やっと当てたとか言って涙ぐんでたのを邪魔するのは野暮だろう。

ちょっとその反応も見たいが、しばらく口を利いてくれなくなりそうなので勘弁したい。

 

「そういえばさ、悟はそれどうやって前見てるの?」

 

「ん?…ああ、この格好のことね」

 

ツクヨミでの僕は教師時代を参考に、黒の目隠し・任務服という名の仕事着を来た生前のままの姿をしている。

目隠しがあれば身バレ……は別に怖くないけど、現実ですら目を誰にも見せず隠している以上、ツクヨミで完全に姿を変える必要がまずないのだ。

 

「これはまあ……前着てたの中で1番しっくりきた服かな。結構大事にしてんだよね〜」

 

「思い出の服的な?」

 

「そんな感じ」

 

「なんだ〜、てっきり厨二病?みたいなやつかと思ったのに!」

 

「僕をなんだと思ってるの……」

 

そんなくだらない会話をしている間にも、会場のボルテージは高まり、巨大モニターにカウントダウンが表示される。

 

 

「5!…4!…3!…2!…1!」

 

そして会場に響くゼロの掛け声と、ゴーンと鳴り響く鐘の音。

現れた巨大な鳥居の上に立つのはツクヨミ管理人にして電子の歌姫、月見ヤチヨだった。

 

「お待たせ!……ヤオヨロー!神々のみんな〜、今日も最高だった〜?」

 

ファンを惹きつける声が人から人を伝い会場全体の熱気を底上げしていく。

そのカリスマ性も、僕は評価している。

だが何より───

 

 

 

 

 

(──やっぱり、1度は戦ってみたいもんだね)

 

『KASSEN』で時折現れる通称『お助けヤチヨ』。

その実力は相手と味方のパワーバランスによって大きく変動するらしいが、本気を出せばツクヨミ内で1番強いんだろう。AIだし、管理人だし。

だからこそ、倒してみたい、超えてみたい。

 

あの日宿儺に敗れ、最強の肩書きは捨てた。

よって今の僕は挑戦者(チャレンジャー)。宿儺戦までは実質無敗だったから受ける側だったけど、今は違う。

 

初めて感じる最強までの道のりを駆け上がる高揚感。生前孤独の中で少し羨ましかった感情を現在進行形で体感している。ツクヨミ最強が、今、見える距離にいる。

 

(ライバーとして有名になったら戦えんのかな。きっかけのひとつくらいほしいもんだね、ほんと)

 

 

「よーし、今宵もみんなを(いざな)っちゃうよ☆Lets go on a trip!」

 

そうして、ライブは進んで行った。

 

─────────

 

「イェーイ!感謝感激雨アラモード!ヤチヨは果報者なのです…あ、ここでお知らせ!ヤチヨカップっていうイベントを開催しま〜す☆FUSHI、詳細よろしくぅ」

 

「はーい!参加資格があるのはツクヨミの全ライバー!1ヶ月の期間で最も多くのファンを獲得した人が優勝だよ。優勝者にはなんと、ヤチヨとコラボライブの権利を進呈!世界一盛り上がるコラボライブステージを一緒に作れるよ!」

 

「へ〜、面白そう!!」

 

ライブを終えたヤチヨがイベントの告知をし始める。かぐやはヤチヨの歌……というよりライブの演出と面白そうなイベントにご満悦のようだ。

 

「ね、悟!彩葉も誘って一緒にやろ!」

 

「ん〜、悪いけど、僕はやめとこうかな」

 

「え、なんで!?」

 

「僕は個人で活動してるし、あんま有名になりすぎたくもないしね」

 

「ねーやろ〜よー!ハッピーエンド行こーよ〜!」

 

そう言って駄々をこねるかぐや。

有名になり過ぎてはハッキングに近い戦法を使う僕が運営に何をされるか分かったものじゃあないし、何より───

 

 

 

 

 

「──若人の青春に割り込むだなんて、許されてないしね」

 

「ん、なんて?」

 

「何でもないよ。けどまぁ、たまにライバー同士ってことでコラボするのならいいよ」

 

「ならまあ……」

 

正直、2人にはライバーとして光るものがあると思ってるし、やり方次第で幾らでも人気を上げる手段はある。

 

そう考えつつ何とかかぐやを説得したところで、突然「バーン」とド派手な音が響いた。

 

「よう!子うさぎども。お前らの帝様が来たぜ!!」

 

そう言って登場したのは、アイドルとしての活動をしつつも、その実力はプロゲーマーの中でも最強と名高い3人組ユニット、ブラックオニキス、通称『黒鬼』

 

このイベントの優勝候補筆頭として挙げられるライバーの中でも、その人気はダントツと言ったところだ。

 

「というわけで、俺たち優勝するから。ヤチヨちゃんコラボよろしくね」

 

「そういう運命なら、もちろんヤチヨは従うよー」

 

(初めて生で見たけど派手だね〜。……彼らとも、いつかやり合ってみたいな)

 

当の本人たちはそんな闘志を燃やす僕のことなど露知らず、優勝宣言を掲げ、会場を沸かせている。

そんな中、ただ一人、そんな運命に不服そうな宇宙人がいた。

 

「ぐぬぬ……ねぇ悟」

 

「ん、なんだい?」

 

「かぐやたちは、このイベントで輝いて、1位になれると思う?」

 

突然そう聞かれると普通は困るものだが、僕の答えはハナから決まっている。

 

「……かぐやはまだ知らないかもしんないけど、世の中全員がいい終わり方をできるとは限らない。特に僕はそうやって悔いある顔をする子をざらに見てきた。そういう環境だったしね…そんな中で君が、君たちが目指すのは?」

 

「……そんなの、その一瞬を悔いのないように輝かしちゃいばいい!そんでもってキラキラのハッピーエンドにする!」

 

かぐやは僕の含みのある質問に少し違和感を感じたみたいだけど、満面の自信と笑顔をもって答えた。

 

「いいね!やっぱ最高だねぇ!僕、君みたいに純粋な子は嫌いじゃないよ〜」

 

「にへへ〜」

 

かぐやの光るような力に何を魅せられたのか。僕も数日ぶりの興奮を覚える。

 

「さあ、せっかくの大人数だし、ズバッと言っちゃいなよ、君たちがツクヨミで伝説を刻むってことをさ」

 

「うん!…ヤああぁぁ───チぃぃぃ──ヨぉぉお───!!」

 

突如あげられたその声に、近くの人も遠くの人も、全員の視線がかぐやに集まっていくのを感じる。

 

「かぐやがヤチヨカップ優勝する!!そんで絶対コラボライブする!いろh……むぐっ」

 

「あ、本名はダメね」

 

彩葉の本名を言いそうになったかぐやを無理矢理止める。

しかし、かぐやの宣言は会場全体に響き、忠犬オタ公・黒鬼…そしてヤチヨにも届いたようだった。

 

「…いとかわゆし。……ほいでわ、ライブは一旦ここでクローズ♪みんなとちょこっとお話しさせてね。さらば〜い!」

 

そうして、ライブは終了した。

僕もかぐやもこれから忙しくなるぞとワクワクしながらログアウトしようとしたが──

 

「ちょっと待って!」

 

それを制する声が入る。そこにいたのは、ヤチヨのミニ版。

 

「お忘れかな〜?ヤチヨカップの参加はライバー限定ということを!」

 

「そっか、じゃーかぐやライバーになる!そうと決まれば準備準備〜」

 

そう言ってかぐやは直ぐにログアウトした。

本当にヤチヨというより迫力満点の演出に興味があっただけらしい。

それはともかく、だ。

 

(え?これってもしかして僕に注意喚起が来るタイプ?)

 

ツクヨミ管理人を前に、もしかしたらBANされるという可能性が出てきたことに焦る。

 

「大丈夫。ヤッチョは君のことを気に入ってるから、BANしたりしないよ」

 

「!!」

 

こちらの思考を見透かすような言動に、久しい冷や汗が流れたような気がした。

 

「……ここは感謝しておくよ」

 

「もー素直じゃないなぁ。でも、ヤッチョとしても君には強くなって欲しいから、気にしなくていいのは本当だよ」

 

「ハハッ!それで足元すくわれたらどうすんの?」

 

「フッフッフ、月見ヤチヨの8000年の経験は伊達ではありませぬぞ?……じゃ、私はもう一人会いに行きたい子がいるからそろそろ。さらば〜い!」

 

そんな一見バチバチに見える楽しい掛け合いをしてヤチヨは去っていき、残る理由もないため、僕もそのままログアウトをする。

 

(月見ヤチヨ、やっぱ面白いことこの上ないね。さて、かぐやもライバーになるって言ってたし、これは、まだまだ退屈しなさそうで何よりってとこだ)

 

かぐやとの出会いの一日は、そんな波乱万丈な展開を経て終わったのだった────

 

 

 

 

「何してんの……あの二人ぃぃ〜!!!」

 

「ヤオヨロー!」

 

「へっ!?ヤチヨ!!」

 

────1人の苦労人の胃痛とそれが相殺される音をバックに。

 

 

 




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