リユニオン ウィズ ジ ディシースト   作:うどん米

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第2話・最後の言葉を届けられなかった男

 

 

 一方、鑑定を頼んでギルドに出た僕は後ろをつけられていないか確認しながら路地裏に入る。

 少し進むとそこには、怪しげなフードを被った人物が彼を待っていた。

 

「どう、アフェ?」

 

 アフェと呼ばれた人物がフードを脱ぐと目立つ鮮やかな金髪を持つ女性が現れる。

 

「いつも通りよ。成果なし」

「そっか、ありがとう」

 

 変わらない、いつも通りの報告を聞いても何も思わなくなってきた。

 ただ目を伏せ、踵を返してその場を去ろうとする。

 

「待って」

 

 そこを彼女は呼び止めた。

 切羽詰まったような、気まずそうな表情で僕に詰め寄った。

 

「あんたは諦めるつもりはないの?」

「……うん」

「はっきり言って死んだ人間と会話する方法なんて見つからないわよ」

 

 当たり前のことだ。

 死んだ人間と話せるはずがない。

 

 だけれど、それを悟らせるように言われても僕の考えは変わらない。

 

「それでも……それでも、僕は諦められないんだ。引き続きお願い」

「アポロ!!」

「っ、何!?」

 

 今度は勢いよく名前を呼ばれ、思わずぎょっとしながら振り向くと彼女の顔がすぐ近くにあった。

 

「本当に、どんな些細な可能性でもあんたは懸けられる?」

「懸けられる」

 

 断言する。

 ただでさえ、絶望的な可能性なのだ可能性が一部でもあるなら雲でも何でも掴んで見せる。

 

「この街の東に数十キロ先に迷宮都市ラビリンスって言う街があるのは知ってるよね?」

「うん、有名だしね」

 

 迷宮都市ラビリンス

 

 ここトラウアンデ大陸の中央にあり、迷宮と言われる財宝が隠されていたり魔物が住み着いていたりする不思議な空間が大量に集まっている場所だ。

 

「そこには、死者に関する逸話がたくさんあるの。まあ、単純に死傷者が多いからかもしれないけどね」

「それが、えっと、どういうこと?」

「つまりね、死者と話すレリックもあるかもしれないってこと」

 

 本当に、本当にか細い可能性だった。

 だけれど、彼女の話が本当なら可能性はゼロじゃない。

 

 世界が色づく、目に光が宿り始めて来た。

 

「でも、レリックって迷宮からたまに出てくる不思議な遺物だけど高価な物が多いし買えるかな」

 

 レリックの値段はピンキリで国家財産レベルの物から一日の夕食代くらいの差がある。

 ただでさえ最近、出費がかさんでいるので買えるか怖い。

 

「何言ってるのよ。実際に取りに行くに決まってるじゃない」

「そ、それはこの街を離れろってこと?」

「そうよ。大体、確認したけどそんなレリックは市場に出回ってなかったわ」

 

 それでは、絶対に行かなくてはいけないじゃないか。

 ただでさえ、距離が数十キロ離れているのだ。

 

 移動は出費がかさむため簡単に帰ってこれる距離じゃない。

 

「わかった」

「なら、準備して明日、転移陣の前に集合ね」

「う、うん?も、もしかしてアフェも一緒に来るの!?」

 

 これは僕の問題で彼女には関係のない話なのになぜかついてくる気満々な様子だ。

 

「ええ、だってあんた迷宮都市行ったことないでしょ?」

「そうだけど、子供じゃないんだから」

「だからって、一人で行かせるほど私は無責任じゃないのよ」

 

 今年で24歳になったというのに、年下に子供扱いされている。

 果たして彼女には今の僕がどういう風に見えているのだろうか。

 

 そう思って見ると彼女から僕への視線が優しく見えて来た。

 

「……ありがとう」

「いいのよ。あんたには返せないくらい恩があるんだからね」

 

 そう、感謝を伝えた。

 もっと何か言うべきことがあったような気がするが、ひとまずそれしか言わなかった。

 

 そうこうしている内に少し時間が経ったので様子見のついでにギルドに戻ることにした。

 

 カウンターにはいつものおばちゃんがいる。

 どうやら鑑定は既に終わっているらしい。

 

「おう、戻ったか。ちょうど、終わ……もしかして、方法が見つかったのかい?」

「っ!?な、何でわかるのさ」

「お前さんはただでさえ顔に出やすいんだからその面を見れば大体わかるよ。で、どうするんだ?」

「……明日、この街を出るよ」

 

 口が重い。

 

 彼女とは冒険者になる前からの付き合いで、たまに夕飯も振舞ってくれたこともある。

 Sランク冒険者になった時も自分事みたいに祝福してくれたのを覚えてる。

 

「そうかい」

(け、結構淡白に返事されたな……)

 

 涙をボロボロ流す人ではないけれど、多少悲しそうな素振りくらいあって欲しかった。

 

「それで、帰ってきたら何食べたいんだ?」

「え……?」

「何食べたいか聞いてんだよ。ほら、帰ってきたら祝勝会だろ。とびっきりのを振舞ってやるよ」

「わからない。ごめんなさい」

 

 色々、頭に浮かんだけれど結局出てきた一言はそんなもんだった。

 

「そうか、なら適当に食わせてやるよ」

「ありがとう」

 

 その後、土竜の討伐報酬と素材の売却金を受け取って僕はギルドを離れた。

 

「アポロ!どうしたんだよ。その顔」

「アポロちゃん。どうしたの、その顔?」

 

 そうして、家に帰る途中に不思議と街を通ると多くの人から話しかけられた。

 何で急に話しかけてきたのかは僕にはわからない。

 

 ただ、僕が彼ら彼女らに心配をかけていたことは表情から読み取れた。

 

(何でみんな僕の顔を心配してるんだ?)

 

 道中、適当な水たまりを覗き込んで顔を確認したがいつも通りに見える。

 理由を聞きたかったの山々だが、明日の支度もあったので、足早に家に帰ることにした。

 

「ただいま。おばあちゃん」

 

 扉を開けて、中に入って来ても静けさしか残っていない。

 僕には両親はいないし、祖母に女で一つで育てられた。

 

「僕、この街を出るよ。もう一度おばあちゃんに会いに行く」

 

 家具を指でなぞると、大好きな祖母との思い出が溢れてくる。

 匂い、視線をずらせば幼い僕と祖母が歩いている。

 

「これが、僕か……」

 

 姿鏡に写る自分を見て思わず自分を責めるように呟いた。

 酷い顔をしていた、服もボロボロで、髪もぼさぼさだった。

 

 だから、あんなに僕を見て心配していたんだ。

 

「服も新しくしよう。ちゃんと寝ぐせも直そう。顔は……元からこんな感じかな」

 

 せめて、周りに心配させまいと表情を整えながら明日の準備を整えに行く。

 

 

 でも、その前に窓の前で立ち止まり空を仰ぐ。

 

「それで、今度こそ……別れの言葉を言いに行くよ」

 

 その両目には確かな光が宿っていた。

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