トウコにTS転生した俺と変態ヒヒダルマ   作:三笠みくら

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ポケモンのきもち

 

N様が去っていくと、怒涛の勢いでトウヤくんが走ってきた。

 

 

「トウコ!!大丈夫、何か変なことされてない?怪我は?」

 

「大丈夫だって、トウヤは心配性だなあ」

 

「トウコさんに怪我はございませんよ、私がいる限りそのようなことはございません」

 

「…ならいいんだけど」

 

 

それからチェレンにベルちゃんも。みんな心配してくれてたのか…

 

 

「あの人怖かったよお…トウコ、変なことされなかった?」

 

「トウコ、無事かい?」

 

「おん、大丈夫。さ、早速旅に出ようぜ!」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

「なんだいベル、僕たち早く行きたいんだけど」

 

「すぐ終わるからあ!あのねえ、せっかくなら旅立ちの一歩はみんな一緒がいいなって…」

 

 

うわー、原作の一歩イベントじゃん。ここに俺がいていいんですかね。

 

 

「いいじゃん!みんなで手ぇ繋いで最初の一歩踏み出そうぜ!」

 

「トウコがいいなら、いいよ」

 

「そういうことなら賛成だ。」

 

「やったぁ!それじゃ決まりね!」

 

 

ベルちゃん、チェレン、俺、トウヤくんで手を繋いで、道に広がる。風もなんだか心地いい。

 

 

「それじゃあ、行くよ……!」

 

「「「「せーの!!」」」」

 

ぽすっ

 

「うわああ!なんだかすっごく胸がドキドキしてる!これから旅が始まるんだねえ!」

 

「もちろん。さあ、早速行こう!冒険が僕たちを待っているよ!」

 

「うん、チェレン待ってえ!」

 

「…楽しそう」

 

「そういえばトウヤはイッシュを旅して何したいとかあるの?」

 

「……別に?トウコと一緒ならそれでいいから」

 

「あのねえ……あたしのこと大事にしてくれるのはいいけど、トウヤのことも大事にしてよ」

 

「僕がそうしたいからそうしてるの。でもひとまずは強くなりたいかな……」

 

 

トウヤくんがじいっとヒヒダルマを見つめる。まあ確かに強くなりたいだろうな、目の前にこいつがいるから。そういえば……俺はどうしよう?旅するとは聞いてるけど…どんな旅になるかとかヒヒダルマから聞いてないんだよな。それにレベル55のヒヒダルマがいるから仮にストーリー通りの進行になっても大丈夫だろうし……

 

 

「…よし、とりあえずカラクサタウンに行こう!」

 

 

俺は思考を放棄して、カラクサタウンに踏み出した。トウヤくんと手をつなぎながらね。

 

 

「なんかここも変わったなあ……」

 

 

昔はここも子供だらけで割と治安終わってたのに…今じゃゲーム通りの綺麗な街並みだ。

 

 

「みなさん、ご清聴ください!」

 

「この声は……トウコさん、私をボールに戻していただけますか?」

 

「ん?分かった」

 

 

声のする方に歩いていくと……ゲーチスが声高々に演説を始めようとしていた。うーわ、やっぱこのイベントあるのか。あれ?でもN様いないし…どうなるんだ?

 

 

「今日ワタクシたちが皆さんにお伝えしたいのは、ポケモンの解放についてです!」

 

「解放だって?」「どういうこと…?」

 

「ポケモンは皆さん知っての通りとても素晴らしい存在です。ワタクシたちの生活を支え、ポケモンバトルでも一緒に戦ってくれる相棒……そう思ってはいませんか?」

 

「違うのか?」

 

「まず、ワタクシはポケモンバトルそのものに異議を唱えたいと思っています!ポケモンバトルで傷つくのはポケモン!それなのに栄光を勝ち取るのはトレーナー!おかしいと思いませんか?そもそもポケモンを傷つけ合うこと自体が間違っている!人間はポケモンたちが傷つき、苦しむ姿を観て喜んでいるのです!ポケモンバトルほど野蛮で理不尽なものはありません!」

 

「そう言われれば…」「でもどうすれば…」

 

「そこで!ポケモンの解放を唱えさせていただきたい!ポケモンを苦しめている、ポケモンをこき使っている!少しでもそう思っている人がいるのなら、ぜひポケモンの解放を!ポケモンを人間から解放し、あるべき姿へ戻すのです!」

 

 

…うーむ。この辺は一概に否定できないところだよなぁ。正直ポケモンに依存してるところは否定できないし、アニポケでも虐待描写とかはいっぱいあった。まぁその解放を唱えているのがゲーチスという歴代最悪のカスというところを除けば。

 

 

「やだ!」

 

「ん?」

 

「あたし、チラーミィとお別れするなんてやだ!ずっと一緒にいたんだもん、これからもチラーミィと一緒にいるもん!」

 

「………そうですか、お嬢さん。あなたはずっとそのチラーミィと一緒に過ごしてきたのですね」

 

「そうだよ!あたしたち仲良しで…」

 

「ですが、本当にそうでしょうか?」

 

「……え?」

 

「チラーミィからその言葉を聞いたことは?チラーミィがあなたのことを大好きだという証拠は?本当にそうだと言い切ることができますか?」

 

「え、えっと……」

 

「よせ!」

 

「……どなたです?」

 

「確かにこの世界にはポケモンを傷つけるやつだっているし、ポケモンが人間と一緒にいたくないと思ってるかもしれない。でもその思考を押し付けるのは違うだろ」

 

「…………」

 

「それに、少なくとも……」

 

 

チラーミィは、女の子の前に出て女の子を守ろうとしている。

 

 

「このチラーミィが離れたがってるようには見えないけどな」

 

「……そうですか、今日はこの辺りにしておきましょう。皆様、ありがとうございました」

 

 

ゲーチスはあからさまな作り笑顔で、とっとと撤収していった。あの真顔…俺のことが気に食わんって感じだったなあ。まああいつは分かりやすい悪人だからな、目の前に立ちふさがる邪魔なものは気に食わんのだろうよ。

 

 

「お姉ちゃん、ありがとう!」

 

「気にすんなって、仲良しなんだろ?」

 

「ミィ!」

 

「ほら、チラーミィもそう言ってる」

 

「そうだよね、あたしたちずっと一緒だもん!」

 

「……そうだね、その通りだ」

 

「え?」

 

 

ついさっき聞いた声に振り返ると、そこにはN様がいた。N様!?隠れて見てたのか……

 

 

「お兄ちゃん、だあれ?」

 

「ボクはポケモンの話していることがわかるんだ、だからキミのチラーミィの言っていたことも分かる。『この子と一緒にいたい』と……そう話していたよ」

 

「ほんとう?」

 

「本当だとも、ポケモンは嘘をつかない」

 

「やったぁ!えへへ、チラーミィ大好き!」

 

「ミィ!」

 

 

女の子とチラーミィが手を繋いで去って行くのを見て、N様は複雑な笑顔を浮かべた。

 

 

「……ゲーチスの演説を、今日ボクは初めて外で聞いた。今までは城の中で、プラズマ団のみんなはゲーチスの言葉にただ頷いていたけど……やはり外の世界は違うんだね」

 

「そりゃあね、それでどうだった?」

 

「さっきのチラーミィの声は、とてもはっきり聞こえた……やはり、ヒヒダルマの言っていたことは本当なのかもね」

 

「別に今すぐ結論を出せとは言ってないじゃん、ゆっくりイッシュを見てまわって行けばいいだろ」

 

「ああ……そうするよ」

 

 

N様は去っていった。少しはいい方向に進んでいる……のかな?




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