トウコは、僕のライバル……になる予定だ。
やけに大人びているし、ポケモンバトルに関する知識だっていっぱいある。この間タイプ相性を正確に答えていた時は驚いた。あんなに複雑なものをあっさり覚えてしまうなんて。
それに、最近発見されたフェアリータイプについてもトウコは詳しかった。どくやはがねタイプに弱いとか、ドラゴンタイプに強いとか……いったいどこであんなに勉強しているんだろう。
何より……トウコには、強いヒヒダルマがいる。ヒヒダルマなんて、ジムリーダーが本気で戦うときに使うようなポケモンだ。あんな強いポケモンを連れているトウコのことだ、きっとチャンピオンを目指すんだろう。だから…僕も負けていられない。
「ようチェレン、何してんの?」
「トウコ。トレーナーズスクールに行くんだよ、きみも一緒に行く?」
「いいや、あそこでがっつり勉強するのなんか苦手だし」
「……不思議だな。トウコならスクールで1番の成績だって取れると思うのに」
「いやあ……はは」
「しかしチェレンさん、ここ最近ずっとトレーナーズスクールに通い詰めではありませんか?」
ヒヒダルマが冷静な顔でそう言ってくる。確かにここ最近、僕は毎日トレーナーズスクールに通っている。理由は簡単だ、負けたくないんだ。
「……僕は、最強のトレーナーになるからね。だからいっぱい勉強して強くなるんだ」
「ふうん……ずっと思ってたんだけど、チェレンってなんでそんなに強くなりたいわけ?」
「え、それは……」
トウコから質問を投げかけられて、僕は思わず言葉に詰まる。誰だって、最強のトレーナーになりたいものじゃないのか?それに…最強のトレーナーになったら、みんな僕のことをすごいって言ってくれるじゃないか。僕はそのために……
「…それより。トウコ、ベルを助けたんだって?すごいじゃないか」
「ああ、あれな。全くバカなやつもいるもんだよ、ただ強いのがいいことだって思ってるんだろうな」
「……? 強いのはいいことじゃないの?」
「うーん、なんて言うかな。じゃあちょっと話そうぜ」
「まあ、いいけど」
道端のベンチに腰掛けて、トウコは話し始めた。
「例えばだけどさ。こないだ起きたヒウンの強盗。あれってズルズキンを連れたやつがやっただろ。どう思う?」
「どうって……ポケモンの力を使って悪さをするなんて、とんでもないよね」
「うん、その通りだ。あれはトレーナーが悪いやつだったからってのもあるけど……でも、そいつのズルズキンが強かったから、って言うのもあると思うぞ」
「……確かに。ズルズキンが弱かったら強盗の計画なんてそもそも立てなかっただろうね」
「だろ?でもそれだと、まるでズルズキンが強いせいで強盗が起きたみたいになるぞ」
「うーん……確かに、その通りだ……」
「これは完全にあたしの考えだけど……強いことも大事だけどさ。もっと大事なのはその強さで何するかじゃないかな」
「強さで何をするか、か……」
「だってさ、テレビでジムリーダーの特集とかやってるけど、あれはなんで人気があると思う?」
「え、強いからじゃないの?」
「強いのもあるけどさ。ジムリーダーはトレーナーの腕試しとか、街を守る役目とか請け負ってるだろ。強い力を誰かのために使ってるから人気なんだよ」
「…………」
「もしこれでお金とか食べ物を独り占めするために使ってるとかだったら、人気はないだろうな」
「そうか……」
「で、チェレン。お前はなんで強くなりたいんだっけ?」
「なんで、だったっけ……」
確か、みんなに認めてもらいたいとか、そんな感じだった気がする。僕の親は忙しいから、いつも僕は1人でテレビや本ばかり見ていた。そこで、ポケモンバトルのことを知って、強さに憧れるようになったんだ。
「……トウコ、君は何になりたいとかあるの?」
「あたし?今の所何も。でもそうだなあ……ポケモンたちと仲良く暮らせればそれでいいかな」
「はは、君らしいや。でも案外、君みたいな人が1番強くなったりしてね」
「どうだろうなぁ……才能とかよく分からん」
「でも、ありがとう。なんだかスッキリした気がするよ」
「そう?それなら良かった」
「でも、強いトレーナーを目指すのはやめないよ。だってテレビで見るヒーロー、強くてかっこいいだろ?」
「あっはは、チェレンはルカリオナイト好きだもんな」
「うん、かっこいいからね。……カノコタウンに帰ろうか」
「あれ、トレーナーズスクール行かないの?」
「……うん、正直つまらないから。それよりみんなで遊ぼう、誰がポケモンの知識が1番か勝負するんだ」
「おっ、負けないぞ!」
トウコと一緒に、カノコタウンに戻る。走ってどっちが先に家につくかの競争をした。どっちが勝ったかは……覚えてない。ただ、一緒に走って楽しかったことは覚えてる。
チェレンくんの闇落ちの芽は摘んでおくべきだ
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