25年前――。
業火が視界を紅く染め上げていた。
ひび割れた大地から立ち昇る熱気が、肺を焼くように痛めつける。
「はぁ……っ、はぁ……っ!」
燃え盛る炎の中、満身創痍の『BLACK SUN』――南光太郎は、荒々しい呼気を吐き出しながら、絶望の権化と対峙していた。
「キギャアアアアアァァッ!!」
鼓膜を劈くような咆哮が轟く。
眼前で蠢くのは、キャンサーの最上位個体『マザーキャンサー』。
すでに第3形態へと移行したその巨躯は、この世の理から外れたように歪で、おぞましいまでの威圧感を放っていた。
光太郎の視線の先、黒焦げた瓦礫の周辺には、変わり果てた戦友たちの姿があった。
誇り高き第06A部隊。彼女たちはすでに全滅し、今はただ魂の抜け殻たる『ヒトナービィ』の姿となって、無残に散乱している。
(俺が、守れなかった……俺が遅かったばかりに……!)
胸を掻き毟るような悔恨が、光太郎の心をどす黒く染め上げる。
しかし、悲しみに暮れる時間はとうに過ぎていた。
「キギャアアアアア!!」
マザーキャンサーの胸部にあるコアに、空間そのものが歪むほどの莫大なエネルギーが集束し始める。周囲の瓦礫がフワフワと宙に浮き上がり、絶対的な死の気配が戦場を支配した。
「はぁ……っ、はぁ……っ、……ウオオォォォォォォッ!!」
獣のような雄叫びとともに、BLACK SUNは腹部に巻かれた生体ベルトの中心へ、自身の残された全生命力を注ぎ込む。
漆黒の装甲の中で、彼の複眼が悲しみと怒りに呼応するように、赫々たる真紅の輝きを放った。同時に、彼の右足へと凄まじいエネルギーが集束し、赤黒いオーラとなって立ち昇る。
「キギャアアアアア!!」
臨界点に達したマザーキャンサーが、すべてを消し飛ばす破壊の光線を放つ。
同時に、BLACK SUNも大地を砕くほどの勢いで踏み込み、宙へと跳躍した。
「うおおおおおおおおおおっ!!」
すべてを終わらせる。その一念のみを乗せた必殺のキックが、コアの中心めがけて振り下ろされる。
極大のビームと、真紅のキック。
二つの強大なエネルギーが激突した瞬間、世界は凄まじい白銀の光に呑み込まれた。
◆ ◆ ◆
『記録。
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目標:マザーキャンサー。撃破を確認。
第06A、06B、06C部隊、全滅を確認。
BLACK SUN、消息不明。
これよりBLACK SUNをMIA(戦闘中行方不明)と認定し、以降、BLACK SUN及びShadow Moonに関する全記録を永久凍結。最高機密事項とする。
セラフ部隊上層部』
これは、かつて「仮面ライダー」と呼ばれ、人間の正義のために創り出され――そして、歴史から忘れ去られた男の物語である。