ダイスで進むトレーナー生活   作:tamino

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前回のあらすじ

新人トレーナーは新たに面倒を見ることになった3人と対面する。

芝のステイヤーでステイヤーズS(G2)を勝利したクロガネリンギルからの評価はそれなり。
第一印象では怪しい大人という評価だったが、夢を語る姿を見て悪い人ではないと判断した。

ダート短距離選手であり、カペラS(G3)で勝利したアフェクションからの評価はかなり高め。
ウマが合うと感じたのか、挨拶の時点でかなりの好印象だった。新人トレーナーの夢については感銘を受けることがなかったが、それはそもそも最強というのが自分の目標とも重なる部分だったから。

芝のマイラーで、アーリントンC(G3)勝者のソナチネからの評価もかなり高め。
性格の相性としては普通だったが、新人トレーナーが熱く夢を語る姿とその内容に強烈なシンパシーを感じた。音楽性の一致と言えるだろう。


これまでの3人

 

大きな問題もなく顔合わせを済ませた新人トレーナーと3名は、早速運動場まで来ていた。

何を始めるにしても、今の実力がわからなければ目標の立てようもない。これからの出走レースを絞るためにも、まずは身体測定をすることにした。

 

「今から君たちには、私が指示したシチュエーションで体を動かしてもらう。要はデータ収集だな!」

「サブトレよぉ、あたしたちのデータなんてもう渡されてるだろ? 何度も測定して意味あんのか?」

「もちろんあるとも。ひとつ、記録だけでは見えてこないものが見られる。そしてもうひとつ、過去のデータは1週間前のものであり、今のキミたちからすれば遥か昔の情報だからだ!」

 

アフェクションからの疑問に、間髪いれず新人トレーナーは反応する。こういった疑念はスパッと解決するに限るのだ。それが信用に繋がることを新人トレーナーは理解している。

しかし、そんな勢いのあるやり取りを怪訝な目で見ている者もいた。クロガネリンギルである。

 

「遥か昔って、つい先週のことじゃない……」

「男子3日会わざれば刮目して見よ、という言葉がある。ウマ娘でもそれは同じだとも!」

「こ、声が大きい……データは大事だと思うから、身体測定するのは別に構わないですが」

 

頭ではわかっているが気持ちで納得できていない様子のクロガネリンギル。そんな彼女の緊張をほぐそうと、チームメイトのソナチネがそっと肩に手を添える。

 

「リンギルさんはサブトレ様を信じきれておりませんのね」

「信用するも何も、出会ったばかりじゃない」

「でも、サブトレ様のお心は伝わったでしょう? でしたら信じてみましょう。実力の伸びが止まりかけてしまっている私たちに、新しい旋律を届けていただけるようですから」

「まぁ、トレーナーが決めた人だし文句がある訳じゃないのよ。……ごちゃごちゃ言ってすみませんでした。サブトレさん、計測をお願いします」

 

ソナチネのおかげでクロガネリンギルも前向きになったようだ。新人トレーナーからすると、こういうやり方で援護してくれるソナチネの存在はかなりありがたかった。

あまりおおっぴらに感謝してクロガネリンギルがドン引きしてもいけないので、心の中だけで感謝の二礼二拍手一礼をすることにした。彼女のおかげでスムーズにことが運べそうだ。

 

「よし、それでは計測を開始していこう!」

「っしゃあ! やってやんぜ!」

 

 

・・・

 

 

設定パート

 

チームメンバー3名の能力を決めていきます。

「最強」を掲げたあなたの熱意に応えるべく、3人はそれぞれトレーニングウェアに着替え、ターフとダートに分かれて計測の準備を整えました。

社会人経験のあるあなたは、精神論だけでなく、数値に基づいた客観的な現状把握が不可欠であることは熟知しています。

3名の現在の「中堅(重賞馬)」としてのステータスを、**1d100(+脚質・実績補正)**で判定し、可視化しましょう。

 

現状ステータス計測 (1d100)

それぞれの得意分野に補正を入れ、現在の実力を一斉にロールします。

 

1. クロガネリンギル(芝・長距離・逃げ)

 

スピード: 52(平均的。逃げ切るための「あと一押し」が課題)

スタミナ: 94+10 補正:G2勝者としての地力。超一流。G1級の距離でも息切れしません)

パワー: 41(やや低い。坂のあるコースや競り合いに不安あり)

根性: 33(低い。一度抜かれると心が折れやすい可能性も)

賢さ: 94+10 補正:G2勝者としての地力。超一流。ペース配分と位置取りは完璧です)

 

トレーナー分析: 圧倒的な持久力と知識量、判断力。しかし、パワーと根性が課題で、終盤に詰め寄られた際の「粘り」がG1制覇への壁になりそうです。

 

 

2. アフェクション(ダート・短距離・追い込み)

 

スピード: 78(優秀。短距離に必要な瞬発力は持っています)

スタミナ: 15(極めて低い。マイルですら走り切れない短距離特化)

パワー: 47+5 補正:重賞勝者。平均的。ダート重賞バとしてはもう少し重戦車のような力が欲しい)

根性: 47+5 補正:重賞勝者。平均的。追い込みバとしての闘争心は及第点)

賢さ: 62(良好。追い込みのタイミングを測る勘は良い)

 

トレーナー分析: 典型的な「スプリンター」。スピードと賢さは良いですが、パワーが平均止まりなのが、ダートのG1(Jpn1)で勝ちきれない理由かもしれません。また、スタミナの極端な低さはスプリンターとしても問題です。

 

 

3. ソナチネ(芝・マイル・先行)

 

スピード: 23+5 補正:重賞勝者。低い。重賞バとは思えないほど脚が重い状態)

スタミナ: 55(良好。マイルを走り切る体力は十分あります)

パワー: 88(超一流。実は凄まじい脚力を持っており、道悪に強い)

根性: 61(良好。競り合いになれば負けない気概があります)

賢さ: 23(低い。走りのリズムを見失っており、迷いがあります)

 

トレーナー分析: 身体能力(パワー)は凄まじいものを持っていますが、賢さとスピードが壊滅的。メンタルや走法が噛み合わず、宝の持ち腐れになっている「眠れる大器」です。

 

 

・・・

 

 

「どうだったかしら。普段通りのパフォーマンスは発揮できたと思うのだけど」

「ゼーッ、ハーッ……! ちっ、今日はなんか砂が重てーな。アンタから見てどうだった? ハァッ、ハァッ……まだまだこんなもんじゃねーぞ、あたしの脚は!」

「……お恥ずかしいところをお見せしましたわ。今の私は、不協和音を奏でているようなもの。最強を目指す貴方の前で、このような……。わたくし、どうすればいいのかしら……」

 

身体測定を終えた3名は、それぞれ違った反応をしていた。

クロガネリンギルは涼しげな表情をしている。2時間以上も動き続けた上で息ひとつ切らしていない、恐るべきスタミナと言えよう。

対してアフェクションは、顔面蒼白で今すぐにでも倒れ込みそうだ。スタミナの無さはクロガネリンギルの対極と言える。

そしてソナチネは、思う通りに実力を発揮できなかったようだ。なにか彼女の心と体が噛み合っていない印象を受ける。スランプに陥っていると見て間違いないだろう。

 

何はともあれ彼女たちの現状と課題、そして何よりも輝く長所を見いだすことができた。

新人トレーナーは満足そうにひとり頷くと、3人に向かって次の指示を出す。

 

「フム、3人ともひとまずはご苦労様だ。今日のトレーニングは以上になるので、ストレッチを十分にしたら着替えてくるように。講評はその時にしよう」

「わかりました」

「ゼーッ、ハーッ、ストレッチ……先に横になったらダメか?」

「本当にお恥ずかしい醜態を……申し訳ございません」

「今回の結果はあくまでキミたちの今を知るためのものだ。だからソナチネ、安心して欲しい。キミの未来はこれからだから」 

「……はい」

「それとアフェクション、ストレッチは必ず行わなければならない。激しく動いたあとなら尚更だ」

「ちぇーっ、ストレッチも、結構、しんどいんだけどな……」

「よし、納得したようで何より。キミたちは指示通りにしておくように! 私は少し席を外すぞ」

 

3人がストレッチのためにマットに向かったのを確認した新人トレーナーは、ベテラントレーナーの元に向かうことにした。

なぜそうしようと思ったのか。それは、彼女たちから感じた「荒削り」さの理由を確かめたかったからだ。

 

3人が3人とも、弱点を潰さず放置されていた。ソナチネに至ってはスランプに陥っていた。

新人トレーナーである自分ですらわかる、これらの欠点。ベテラントレーナーが気づいていないわけがない。

 

どんな意図があるにしろ、とにかく理由を確かめなければならないだろう。

 

 

・・・

 

 

設定パート

 

 

「技能91(超一流)」でありながら「軽率6(極めて軽率)」、そして「自分軸」というベテラン先輩の強烈なキャラクターを活かして、このステータスの偏りに**「納得感のある不条理」**な理由付けを行います。

 

新人トレーナーであるあなたが引き継ぎ資料と実測値を見比べた際に気づく、「なぜこうなったか」の3つの背景を構築しました。

 

ベテラン先輩が「弱点」を放置した3つの理由

 

1. 【天才の理屈】「長所が100なら、短所は0でも勝てるでしょ?」

先輩は技能91の天才ゆえに、**「圧倒的な長所があれば、短所を補う必要はない」**という極端な指導哲学を持っています。

クロガネリンギルへの放置: 「リンギルちゃんはスタミナと賢さがトップクラスなんだから、抜かせなきゃいいだけでしょ? パワーとか根性とか、泥臭いことしなくていいわよ。美しく逃げ切りなさい!」と、弱点克服を「美学に反する」と切り捨てていました。

 

2. 【軽率な放任】「調子がいい時に勝てれば、それでOK!」

性格「軽率6」が災いし、中長期的な育成計画よりも**「その場のノリと勢い」**を優先しました。

アフェクションへの放置: 「アフェちゃん、この前のレース凄かったじゃない! その調子で次も行っちゃいなさいよ!」と、彼女の勢いを頼りにし、基礎体力(スタミナ)やパワーの不足という「地味で辛い基礎練」を、「気分屋だし、向いてなさそうだから」という理由でスキップさせていました。

 

3. 【自分軸の弊害】「スランプ? 芸術家は繊細なのよ」

ソナチネの「スピード23・賢さ23」という深刻な低迷を、先輩は**「スランプも含めて彼女の芸術性」**として放置しました。

ソナチネへの放置: 「ソナチネちゃんが今走れないのは、心が繊細だからよ。無理に走らせたら譜面(フォーム)が壊れちゃうわ。今はティータイムを楽しみましょう?」と、自然解決を待つ方向に舵を切っていました。

 

新人トレーナーへの引き継ぎ

あなたがステータス表を持って「これはあまりに偏りすぎていませんか?」と質問した時の先輩の反応です。

 

先輩(54歳):

「あら、気づいちゃった? さすが社会人経験者は鋭いわね〜。でもね、新人くん。ウマ娘っていうのは『宝石』なのよ。欠点のない石なんてただのガラス玉。私は彼女たちの輝いているところを見てあげたかったの。……あ、でもこれからは貴方がサブなんだから、そういう『泥臭い調整』は全部任せちゃっていいわよね? よろしくねっ!」

 

...

 

どうやらベテラントレーナーの方針は、長所をとことんまで磨きあげて、自分の土俵で勝てるようなウマ娘を育成する、といったもののようです。「癖をもっと出して走れっっ!!」ということですね。

新人トレーナーである貴方は、今の話を聞いてどう感じたのでしょうか?

 

...

 

新人トレーナーであるあなたが、先輩の「極端な指導」の結果(ステータス表)と、目の前のウマ娘たちの信頼関係を照らし合わせ、どう結論を出したか。

「社会人経験」というフィルターを通し、感情と論理の両面から心証を判定します。

 

運命のダイスロール:新人トレーナーの心証判定 (1d100)

【補正内容】

プラス補正 (+20): 実績(重賞制覇)への敬意、チーム内の良好な空気、合理的側面(長所伸長)への理解。

マイナス補正 (-0): 現時点では特になし。

出目:【 78 】

最終値:78 + 20 = 98 (大成功!)

 

新人トレーナーの思考:【確信と敬意】

ベテラントレーナーの話を聞いた瞬間、あなたは驚愕を通り越し、ある種の**「戦慄」**を覚えました。

「……なるほど。これは『放置』じゃない。この人は、あえてこの道を選ばせたんだな」

あなたの心証は、極めてポジティブかつ建設的な方向へと固まりました。

 

1. 【実績への脱帽】

スランプ中とはいえスピード23のソナチネや、スタミナ15のアフェクションを重賞(G3/Jpn3)で勝たせる。これは、常識的なトレーニングでは不可能です。

「欠点を補う時間をすべて長所に注ぎ込み、その一点で競り勝たせる。この極端な『一点突破』を成立させるには、並外れた戦術眼(技能91)が必要だ。……俺に同じ真似ができるか? いや、今は無理だ」

 

2. 【指導方針の再定義】

あなたは先輩の「軽率さ」を、**「ウマ娘の個性を一切殺さないための、高度な不干渉」**だと解釈しました。

「基礎を固めるために長所を削るのではなく、まずは誰にも負けない武器を持たせる。彼女たちが今、心折れずにターフに立てているのは、先輩が『弱点』を責めず、『強み』だけを愛したからだ。この信頼関係こそが、チーム・レグルスの強さの源泉なんだ」

 

3. 【自分の役割の発見】

大成功の判定により、あなたは「先輩への対立」ではなく**「最高のバトンタッチ」**だと確信しました。

「先輩が『刀の素材』を極限まで純化してくれた。なら、ここから先、その刀に『鞘』を作り、折れないための『粘り』を加えるのが、新人(サブ)である俺の仕事だ。このピーキーな傑作たちを、自分の手で『完成』させてやる」

 

 

・・・

 

 

ベテラントレーナーの話を聞いてからもう一度計測したデータに目を通すと、そこには違ったものが見えていた。

3人を重賞勝利バという前提で見てみれば、目の前のデータからはいびつな成長をしたウマ娘という印象しか浮かんでこない。しかし、それが本来重賞に出走するのが厳しいレベルのウマ娘が、自分の武器をひたすらに研ぎ澄ませた結果だという視点で見たらどうか?

 

バインダーから目を離し、テラスで優雅にティーを啜る先輩に向き直ると、そこには迷いのない瞳があった。

 

「……先輩。驚きました。これほどまでに尖った育成を、よくぞここまで……。彼女たちが自分の武器を信じ切っている理由がよく分かりましたよ。ソナチネにしても、無理に干渉できる状態ではなかったということですね?」

「あら、いい顔になったじゃない。難しい顔をして数字を数えてるから、嫌われちゃうかと思ったわ。……ふふ、そうよ。この子たちはもう、自分たちの『一番』を知っている。あとは、それをどうやって最後まで守り通すか……。それは、貴方の『実直さ』が必要な領域なんじゃないかしら?」

「やってみせますとも。必ず彼女たちに新しい冠を被せて見せます!」

「フフ、面白くなってきたわね!」

 




「Trainer、今日は上機嫌だな――いつもより、ずっと」
「あら、ボリクリちゃんにもわかっちゃったかしら?」
「良いことでも……あったのだろうか?」
「新しく来たサブトレちゃん、あの子ホンットに優秀だったわ~。あの3人を任せて正解!」
「Trainerがそれほど人を褒めるのは――随分と……珍しいな」
「紹介してくれたやよいちゃんに、プレゼント贈らなきゃいけないわね! そういうワケで私はブティックに行ってくるから、メニュー通りやっておいてちょうだい。あ、後輩ちゃんたちの面倒も見ておいてね!」
「Mission accepted.――任せてほしい」
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