[悲報]虎杖成り代わり、縄文時代に立つ[言葉が分からん] 作:夕暮れの家
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『伏魔御廚子』
8000年の研鑽を経た虎杖悠仁によって展開されたそれは、当然のように“閉じない領域”である。ただ、今回に限ってはKASSENの為のワールドという限定的な空間。
その為、この空間の外殻が疑似的な領域の外殻となるという結果をもたらした。
閉ざされた空間、それを満たす万死の領域。
特殊な条件下によって成立したこの状況。本来ならば逃げ道を残すというある意味での弱点を持った閉じない領域は、今。
空間全体を逃げ場のない必中の処刑場に変貌させた。
無数の人型が瞬時に細切れとなり、ポリゴン状になって消える。6体の大型の月人も多少の抵抗を見せながら、少しずつ体が削られていく。
他、彩葉達への被害 —— 無し。
虎杖悠仁が実現させた領域の効果対象の選別。これにより、必中効果の対象には“斬撃が命中したという結果”のみが現出する。そして、その効果対象は、虎杖悠仁が敵と認識した者、である。
結果、本来の伏魔御廚子からは考えられない程静かな、それでいてそれを超える殺傷性を秘めた領域が完成することとなった。
体を散々に削られた大型月人の内の1体が、訳が分からないまま、分からないなりに原因を排除しようとその目を虎杖に向ける。
先ほど迄とは比べ物にならない力で地面をひび割らせながら踏み込み、只の一歩で彼我の距離を零まで持っていこうとして、気づく。
——なぜ自分は地面に倒れている?
視線を移すと、踏み込んだままの姿勢で固まっている自分の下半身が見える。月人の身体は上下に両断されていた。
—–何故?
斬撃は、致命傷に届くほどの威力ではなかったはずだ。なぜ、何故。困惑が演算領域を満たす。
——何故か。
虎杖悠仁による伏魔御廚子の斬撃は、対象の体内にも出現する。
上下に両断された月人の身体が、他の人型と変わらず細切れになり、赤いポリゴンと共に消えた。その他の大型達も次々に不自然に体が切断され続けて消え、最後に一際巨大な菩薩の様な顔を持った月人の身体が、割ける。
左右に分断されたそれらが音を立てて倒れ、ポリゴンとして消える。
斬撃の終了。それを待っていたかのように月人たちが残機を利用してリスポーンする。それに伴い、数多の人型も先ほどと変わらない量をまた補充され、視界を埋める。
振り出し、そう見えた。その上、知識のあるものであれば分かったかもしれない。伏魔御廚子の斬撃効果が終了した今、残るは領域の終了。術式が焼き切れた術師一人のみ。
形勢不利、そう見えたか?
嘲笑うかのように最強の口が開かれる。
「第2ラウンド、付き合ってやるギリはないよな」
左手を前へ、右手を後ろに。弓を引き絞るように構えられたその指先に、万死の炎が宿る。
『竈』
『開』
「解」と「捌」の調理工程を経て初めて『竈』の扉は開く。
『竈』の炎は火力に対して速度がなく、効果範囲が狭い。これらを解決するために本来の使い手である両面宿儺はある縛りを利用した。
“領域展開中を除く多対一での『竈』の利用禁止”
その縛りにより術式を拡張。斬撃により粉塵化した全ての物質が『竈』と同様の爆発性の呪力を帯びることとなる。
それにより、宿儺の『竈』は、爆発的な高威力で効果範囲内を一瞬で吹き飛ばす範囲攻撃と化していた。
だが、翻って虎杖悠仁の伏魔御廚子では。
周りへの被害を出すことを嫌う彼の生来の善性から、領域により発生する粉塵は存在しない。
すなわち、そのままでは『竈』の欠点を補うに至らない。
その為、虎杖悠仁はここで即興の縛りを結ぶ。
“領域展開中を除く多対一での『竈』の利用禁止”
それに加えて、
“一度殺した相手以外への『竈』の利用禁止”
という一見条件達成不可能かに見える重い縛りを結ぶ。これによって、以降、虎杖悠仁の『竈』は実質死ぬこととなった。
ただ、今。この時に限って。目の前を埋め尽くすのは先ほど1度屠った相手が復活した姿で。
条件は満たされた。
引き絞られた炎が放たれる。
一つ、比較をしよう。呪いの王、両面宿儺が扱う『竈』は、縛りによりサーモバリック爆薬と化した粉塵が領域の隅々に散らばることで、『竈』の熱により爆轟遷移、刹那の高温、衝撃波、減圧と超加圧で領域内の生物を死に至らしめる奥義である。
では、今放たれた『竈』はどうだろうか。
“一度殺した相手以外への『竈』の利用禁止”
この縛りによってもたらされた効果は、速度が無いという欠点を補うためのもの。
領域効果による『竈』の必中。
そして、一度殺したという結果の再現である。
これから放つ一条の炎は、文字通り必中必殺となる。
星の光一つ見えない暗い領域内に無数の炎柱が聳え立つ。弓のように引き絞られたその炎が放たれたその“瞬間”、必中という結果のみがもたらされた無数の月人たちが、先ほどは斬撃、今回は爆炎で、逃れられない死という運命を受け入れることとなった。
ツクヨミに、ようやく正常な色の夜空が戻る。
無数に出現した絶死の炎によって、明るくなった空間から一転、また通常通りの暗闇が戻り、
——視界内に、無数の月人が舞う。
KASSENのルールに基づく残機は3。それに則り2度目の復活を遂げた月人を見やる。
「おいおい、しつこいな」
領域展開直後、術式の使用はできない。よって、今の虎杖悠仁には伏魔御廚子の使用は不可能。
だが、術式の回復までかぐやに月人たちを近づけないように立ち回り、その後領域を展開すればそのまま勝ちである。
だが、
「それは、雑魚の思考だ」
虎杖悠仁に刻まれた術式は、一つではない。
好戦的な笑みをたたえたその顔に、独特な文様が浮かび上がる。
『赫鱗躍動・載』
赤血操術、二つ目の術式が呪力の供給を受けて唸りを挙げる。
本来虎杖悠仁とは、呪いの王、両面宿儺の器となるべくして生み出された者であり、その肉体性能は、高校生の時点で人類の限界点を鼻歌を歌うがごとく踏み越えていた。
砲丸投げ30ⅿ
50ⅿ走3秒
すべて世界記録を大きく上回っている。
その恵まれた身体能力を活かし、それに呪力による身体強化を上乗せすることで、彼は呪力の一切ない天与呪縛のフィジカルギフテッドにも伍するほどの運動能力を手にしていた。
——しかし、それはある世界線の話。
特筆すべきは、その世界での彼は呪術師として戦闘に携わるようになって、1年以内であるということ。
では、8000年もの年月を超えてきた彼の肉体は、どれほどの領域に足を踏み入れているのか。
軽く見える踏み込みにより、地面が放射上にひび割れる。次の瞬間、その場にいる全てのものの認識から虎杖悠仁の姿が掻き消えた。
最大出力まで上げられた赫鱗躍動と、膨大な呪力量による身体強化。そして、天与の肉体。その三つが合わさった結果。
人類未踏
虎杖悠仁、亜光速で舞う
カシャン、と軽い音がした。
見れば、虎杖悠仁は拳を上に振り上げた状態で静止していて。それを見た誰もが理解した。あれは、“パンチを撃ち切った後だ”と。
遅れて衝撃がやってくる。遅れて轟音がやってくる。遅れて
———黒い火花が、やってくる。
『黒閃』
黒閃とは、呪力を用いた戦闘において、極稀に発生する現象の事を指す。その発生条件は、“打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突する”こと。その他にも環境的な条件も重なり、偶発的に、たまたま発生するもの。
黒閃は、「現象」であって、「技」ではない。
黒閃を狙って発生させることが出来る術師は存在しない。
ただ、一人を除いて。
空間が歪み、黒く光った呪力が稲妻のごとくのたうち回る。通常時の2.5乗の威力となるそれがもたらした効果は、誰の目にも明らかだった。
何もない。上に向かって打ち出された拳の延長線上には、そこに存在していたハズの月人の軍勢は綺麗に消え去っていた。
残心、数秒そのままの姿勢で何もかもが消え去った拳の延長線上を見つめた後、もう何も残っていないことを確認し、拳を下ろし———
瞬間、こま回しのように空がまた虹色に輝いて回り始める。
またも無傷で現れた月の軍勢は、先ほどと同じように圧倒的な物量差で視界を埋める。一つ、違う点があるとするならば。それは残機表示が存在しないこと。KASSENのルールに則っていないことは明らかだった。
「ここからが本気って訳か?」
それでも、虎杖悠仁は不敵に笑う。
「残機が無いってことは、これっきりってことだよなぁ!」
再び、組まれる閻魔天印。既に、虎杖悠仁の下に御廚子は舞い戻っている。
『領域展開』
『伏魔御廚子』
最初の戦闘の焼き直しを見ている様。変わらず人型は一瞬で細切れにされ、今度はポリゴンではなく黒い血煙を上げて消え去っていく。
ただ、違う点が一つ。
「…硬いな」
大型の月人たちは、斬撃が当たるという結果に躊躇せず、体中に細かい傷を作りながらも一歩ずつこちらに歩を進めていた。ほとんどが体中の切り傷から出血している中で、真ん中の一際大きい月人だけは血すら流していない。
彼らの肉体性能は大きく上がっており、それぞれが手に持つ武器は、きっと自分の命にすら届き得る。
8000年間の生で初めて、虎杖悠仁に緊張が走る。
——ことはなかった。
既に組まれていた閻魔天印を解き、新たな掌印に切り替わる。片手で地面を指し示すようなそれは、降魔印。
『領域展開』
虎杖悠仁に刻まれた術式は、一つではない。
『血界継承』
史上初
虎杖悠仁、一個人による2つ同時の領域展開
常識的な話をしよう。領域が2つ同時に展開された時、2つの領域はぶつかり合い、主導権の奪い合いを始める。そして、押し合いが行われている間は、領域内の必中効果は中和される。
あくまで、2人の個人が別々に領域を展開した場合は。
通常、術式は魂に刻まれるものであり、一人につき一つである。ただし、虎杖悠仁のそれはどちらも後から刻まれたもの。
一つの魂に2つの術式を持つ異端。
2つの異なる呪力により展開された領域が押し合いを始めるのなら、同一の個人によって展開された2つの領域はどうなるのか。
答えは———
『領域融合』
押し合うことはなく、元から一つの領域だったかのように同一化する。
それに加え、空間に限りがある、という特殊なKASSENのワールドであるということも助けになり、全く同じ大きさで展開された2つの領域は、拒否反応一つ起こさずに同一のものとなり。
その効果すらも混ざり合う。
赤血操術の領域展開、それは領域内の血液全てを操作可能にするという、生物相手ならば必殺の領域。
月人たちの不運は、虎杖が最初の領域として選択したのが取り回しのしやすい伏魔御廚子だったこと。KASSENのルールから外れ、傷を負うとポリゴンでは表現されなくなったこと。虎杖悠仁にとっての幸運は、
それにより。月人たちの中に血液が流れていると認識できてしまったこと。
領域内、全ての月人たちが黒い血煙を上げて爆散する。只1体、一際大きい月人だけは首だけを残し、かろうじて生き残っているが、虫の息。勝敗は、明らかだった。
勝者 虎杖悠仁
最強の戦跡、ここに刻む。
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「悠仁!」
首だけになった月人の親玉を片手でぶら下げながら呆然とこちらを見やる彩葉達の元へ歩む。この親玉はまだ、生きている。必要だから生かしているともいうが。
「悠仁、なんで」
「ごめん、ヤチヨ」
どこからか現れたヤチヨが、苦しそうな表情を隠そうともせずに俺に向かって問う。当たり前だ。俺は、ヤチヨの言っていた未来と、全く違う行動をとってしまった。
ヤチヨはかぐやだ。ここで月人に連れ帰られ、また時を超えて彩葉の下に戻ろうとして、失敗して8000年も前に不時着してしまった、かぐやだ。
だからこそ、このままでは。
「悠仁は、私がいない方がよかったの?」
「そんなこと、あるわけない」
「でも、これは」
ヤチヨという存在そのものが消滅してしまう。
「こいつを俺が倒した瞬間、因果が確定する」
「このままじゃ、私はいなかったことになる」
そう呟いた後、俯いたまま数秒間。沈黙が流れる。その後に顔を上げて、店長と目を合わせて。ヤチヨは、笑った。
「罰、なのかな。」
いいよ、でも、忘れないでね?と笑うヤチヨ。
「…正直、因果を壊すだけなら簡単だ」
「命を懸けた縛りで、因果を切断してやれば済むこと」
簡単だ。それだけでヤチヨはヤチヨとして、かぐやはかぐやとしてこのまま彩葉とずっと過ごすことが出来る。俺の命を使えばいいだけ。でも
「でも、それだけでは、ダメだよなぁ」
ヤチヨ、君が消えることなんて万に一つもないんだ。そんなに悲しそうな顔をしないでくれ。俺は君が笑っている顔が見たい。
俺がここで因果を壊しても、何十年後か、飛来する隕石によって彩葉達の世界は終わる。それでは駄目だ。彼女たちの幸せな未来の果てが、そんな終わりであっていいはずがない。
「ずっと、考えていた」
「なぜ、俺がこんな姿で生まれたのか」
「なぜ、俺がこんな力を持っているのか」
きっと、それは。俺が君に救われたあの時から決まってて。
「俺は、俺の大切な人の未来を守るよ」
だから、こうするんだ。ずっと考えていた。ヤチヨの事も、その後の未来も、全て守り通すたった一つの冴えたやり方を。
ずっと、準備してきた。そのせいで、たくさんの無関係の人に迷惑をかけた自覚がある。だからこそ、今、ここでやるんだ。
「開示だ、月人」
お前にもちゃんと聞いていてもらわなければ困る。最後までちゃんと聞いて、認識して。月からの観測者となって、ここから消えろ。
「待って、まってっ!何する気!」
きっとこれが正解。
「私は良いから、皆を傷つけた私だけならいいからっ!」
「悠仁ッ!」
「八千代」
「水底」
「仰ぐ光明」
呪術を極めることは引き算を極めること。呪詞、掌印など術式を構成、あるいは発動させるまでの手順をいかに省略することが出来るかで術師の腕は決まる。
だが、この時は。この時だけは、虎杖悠仁は一切の手順を省略しなかった。
呪詞を唱え、印を形作る。極めて簡易なその印の名前は、与願印。
込められた意味は——『願いを叶える』
『領域展開』
『月久読命』
「俺は、部品だ」
虎杖が普通に因果切断出来ない理由は、因果を認識出来ていないからです。だから命を使った縛りでもなければ出来ません。
まぁ普通にできたとしても自分が密接に関わりすぎてる因果なので、ヤチヨを残そうと無理したら普通に虎杖は死ぬんですけどね。
って言うかヤチヨが消える方を選んでもそれはそれで虎杖は自死するので詰みです。
だから、他の方法を用意する必要がありました。
ifの扱い
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このまま最後まで書く
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普通の後日談も交えつつ書く
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書かんでいいから後日談だけ書く