[悲報]虎杖成り代わり、縄文時代に立つ[言葉が分からん] 作:夕暮れの家
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「敵に塩を送るって奴じゃないの?」
「このままじゃ圧倒的に勝つだけだからな」
「……そう」
虎バイクに乗ってド派手な登場をした兄に向かって一歩詰め寄る。現在トップをひた走るブラックオニキスとのKASSENでの対決。実質これはコラボだ。ヤチヨカップでの順位を伸ばすという観点で言えばこれ以上のチャンスはない。
ありがたい、ありがたいん、だけど。
「かぐやと結婚ってどういうこと……?」
「何も賭けないなんてつまんないだろ?」
マイクに抜かれないように小声で尋ねたにも関わらず、あちらは帝アキラの仮面をほんの少しも緩めやしないでそんな事をのたまう。
そっちがその気なら此方にも考えがあるんだからな。
「……ロリコン」
「……おい」
「悠仁くんに言うから」
「やめろ、本当に」
「かぐやは悠仁くんとも仲いいんやから」
「……俺、死なない?」
プライベートを持ち出すなよ、と少し肩を落とす兄の姿にすこし溜飲を下げる。悠仁くんはかぐやの事をとても可愛がっているから、今回の事がしれたら面白いことになりそうだな、と思ったのは正直本当だ。まぁ冗談だとは分かっているが。
それはそれとして厄介事には変わりなくて。オラつきながら大股で此方に歩いてくるかぐやと、それに隠れるように目を輝かせてお兄ちゃんのことを見ている真実の姿を視界の端に認めて溜め息をついた。
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「竹取合戦?」
「そう! 黒鬼からなんかメッセ来てさ〜。見てこれ」
かぐやが手元に表示させたそれを覗き込んで見れば、確かに帝アキラから送られてきているメッセージで。しかし実妹からすると書いてあることがあまりにもあんまりだったので思わず思い切り表情に出てしまった。
「彩葉、何その顔?」
「いや、あの、う〜ん……」
言って良いものか。帝アキラが自分の兄であることは吹聴するような事ではないと思っていたので今まで誰にも言っていないが。かぐやなら問題ないかな、と腕を組んで考える。それにしたって『俺と結婚、かな?』は無いでしょ。私がどうせ私がいろPをやってることも分かってるくせに。
「帝アキラってね、私のお兄ちゃんなんだよね……」
「え!? そうなのっ?」
驚いた声を上げるかぐや。そして帝アキラのアバターと私を見比べ始めた。いや、あれはアバターだから。現実と見比べても意味無いでしょ。似てね〜、じゃないのよ。
「かぐや、やりたい?」
「うんっ!」
「……そっか」
じゃあやろうか、と薄く笑った。過労で体調を崩したあの日から、私がかぐやの配信に顔を出さないことも数回に一度位の頻度で起こるようになってきた。配信のコメント欄ではそれを指摘して私たちの不仲を疑うような事をいう人もいたけど。
「いろPはね〜、かぐやを信じて任せてくれてるんだよ?」
かぐやはそんなコメントも何のその。そう言ってにこにこと笑っていた。実際その通りだ。私がかぐやは危なっかしいから、なんて言ってずっと傍で見ていた事が嘘のようにかぐやは一人でもきっちりとチャンネルを回して行けていた。
本当に、私はかぐやの事を見れていなかったと反省しきりだ。
かぐや&いろPチャンネルは信じられない速度で数字を伸ばしているが、その勢いでも今のままでは一位の黒鬼どころか2位にも届かないだろう。兄が設定してきた日時はヤチヨカップが終わる直前。だからこそ、この勝敗が最期のチャンスとなるんだろうな。
「がんばろうね、かぐや」
「もち!」
あと一人は誰がいいかな、と鼻歌まじりに連絡先を物色し始めたかぐやを見ながら、できれば知ってる人にしてね、とその背中に声をかけた。
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「どーも、対戦受けてもらってありがと」
かぐやと真実が近くに来た途端、またすぐに帝アキラとしての仮面を完璧に被り直した兄を見て、少し感心の声が漏れる。そんな私の着ぐるみの腕がぐい、と引かれる。見ると、いつの間にかかぐやに片腕がガッチリホールドされていた。
「いろPは私のだかんねっ」
「へぇ?」
かぐやはかぐやでこれが私の兄だと分かってるのに何をやってるのか。黒鬼の雷さんと乃依さんもなんだか呆れたような顔をして此方を見ている。
二人とも一度挨拶させて貰ったことがあるが、リアルとアバターの印象が殆ど変わらない。とてもいい人たちだった。あれでゲームも上手いんだから本当に凄い。
「あ、あの、私っ、ファンでっ」
ようやく勇気を出したのかかぐやの後から出てお兄ちゃんに声を掛けに行った真実が、その返答を受けて目を回してぶっ倒れてしまった。その瞬間私が「えぇ……」と少し引いたような声を出してしまったのも仕方がないことだろう。誰だって実の兄が自分の友だちとあんなやり取りをしているところを見たらこんな声も出る。
「おーい、真実〜?」
「起きないねぇ」
ぺちぺち頬を叩いてみても、目の前に食べ物の画像を表示してみても全く起きる気配が無い。どうしても帝アキラに会いたいから、と言っていたから真実に助っ人を頼んだのだが。会えた事で満足して意識がシャットダウンしてしまったらしい。
「そっちのせいやからね、何とかしてくれへん? 」
「う〜ん、そうだな……」
予想外の事態に全員揃って首を捻る。このままでは人数が足りずそもそもゲームを始めることが出来ない。緊急で申し訳ないけど観客席にいるであろう芦花を頼ろうか、と視界を客席に向けたその時。空から巨大な玉手箱が振ってきた。
「じゃっじゃーん! 呼んだ──?」
「や、ヤチヨ?」
ぽん、という軽快な音共にそこから飛び出してきたのはヤチヨで。にこにこと笑いながら此方に歩いてきた。その派手な登場に気がついた兄が此方を見て、ぽん、と手を打った。
「ヤチヨちゃん、ちょうど良かった。頼みたいことがあるんだが……」
ヤチヨを手招きして、何事か耳打ちする。ふんふんと頷きながら聞いていたヤチヨは、一瞬難しそうな顔をして。そして次の瞬間には嘘のように笑っていた。
「──てなわけだが。出来るか?」
「うん、それが運命なら……」
「うけたまかしこまつかまつり〜〜っ」
びし、と敬礼のように額に手を当てたヤチヨが指を一振すると、その前にぽん、と煙が起こり、その中から額に一本角を生やした長身の男性のアバターが出現した。
『なんとっ! あれは──』
その姿がモニターに映った途端、会場が歓声、というよりはどよめきで揺れる。当然だ。彼は今までこのような観客が多くいる場に顔を出したことは只の一度として無いのだから。
『|
困惑した頭で兄の方を見やる。どういうつもりだ、と。ヤチヨが入ってくれるならそれで良いじゃないか。まさか悠仁くんを此方に入れるなんて言い出すんじゃないだろうな。
それではダメだ。ダメなのだ。兄が未だ一度も超えることの出来ていない悠仁くんの背中が脳裏によぎる。それでは、またおんぶに抱っこになってしまう。それじゃあまたいつも通りだ。
それに、そもそもバレているかもしれないが曲がりなりにもかぐやがライバー活動を悠仁くんに教えずにサプライズしようとしてるんだ。余計な事をするな。
「よぉっし、やっぱりいたなぁ」
「これで良いのかい? 帝様〜?」
「あぁ、ありがとう」
では、さらば〜い! という言葉とともにヤチヨの姿が掻き消える。ついでに意識が完全に堕ちているであろう真実のアバターも強制ログアウトで消えていってしまった。あれだけ楽しみにしていたのに。絶対後で滅茶苦茶悔しがるんだろうなぁ。
「皆! 聞いてくれ! 」
突然拡声器を通したように大きく響き渡る帝アキラの声に、未だにざわめいていた観客席からの声が段々と萎んでいく。完全にざわめきが収まった事を確かめてから、もう一度口を開く。
「こいつの事を何も知らない人がほとんどだと思う! だからここで一つ皆に教えておきたい! 」
未だ状況が飲み込めていないらしく、所在なさげにその場に立ち尽くす悠仁くんのことを人差し指で指さす。
「俺の師匠だ! 今まで一度も勝ったことがない! 」
「だからこそ──ー」
一歩、二歩。此方に歩いてきた兄が振り返って私たちに背中を見せる。ガチャ、と音を立てて手に持った金棒の先を向こう側に立つ三人の鬼に向けた。
「今日、ここで
にやり、と不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「本気で来いよ?」
世紀の竹取り合戦
いろP
かぐや
まみまみ
月見ヤチヨ
帝アキラ
VS
帝アキラ
乃依
雷
スクナ
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「どういうつもり?」
「は、話をだな……っ」
兄の胸元を握りしめていた手をぱ、と離す。喉を押さえて苦しそうな表情を見せているけど、ツクヨミには感覚はないんだからそんなことならないでしょ。結局あのまま流されてこうして開始直前の作戦タイムにまで持ち込まれてしまったけど。とりあえず一度問い詰めておかないと気がすまない。
「もうぐっちゃぐちゃやん……」
「まあ正直ちょっとは悪かったと思ってる」
「ねぇ彩葉〜」
これ今どうなってるの? とかぐやが私の袖を引く。そんなの私が知りたいんだけども。真実が倒れて、それからは怒涛の展開すぎて正直まだ頭の整理が追いついていないのだ。
「とりあえず結婚は無し?」
「それは……」
兄の方に目を向ける。こうなったら前提から崩れてるから、と首を振っていた。その前提が成立してたとしても許すわけ無いんだけどね。
「で? 勝算はあるの?」
「いや」
「……おい」
でも、と兄の視線が下を向く。その時の彼は、帝アキラという仮面の剥がれた酒寄朝日という一人の人間の顔を見せていた。まだまだ遠いよ、と彼が言う。
「遠すぎて、追いかけることを諦めそうになるから」
自分を追い詰める必要があったんだ。悪かったと頭を下げる。そんな様子を見て、かぐやは嬉しそうに笑っていた。
「本当に兄妹なんだねぇ……」
今のを見て何でそう思ったかは分からないけど。兄の言うことは私もやはり思うところがあった。遠すぎて、頂上が見えなくて。進んでも進んでも全く変わった気がしなくて、心が折れそうになる、そんな気持ち。
私は立ち止まってしまっていた。心が折れて、勝手に不貞腐れて。膝を抱えてしまっていた。私にはかぐやがいたからもう一度立ち上がることが出来たけど。この人は。
たった一人で、その高すぎる山に挑もうとしている。折れそうな心を奮い立たせるために更に自分を追い込むような真似までして。
ほんと、凄いな。
「うん、分かった」
勝とうよ、そう言って随分と久しぶりに兄と拳を合わせる。
「かぐやも、ほら」
「えっ!? う、うん」
3人で拳を合わせたところで、かぐやが小声で私に一つ聞いてきた。どうにも、なんの話をしているか分からない、とのことらしい。何で伝わってないのだろうか、と目を瞬かせて数秒考えて。そう言えば、と今更思い至る。
「さっきの急に出てきた白髪の鬼のアバターの人ね」
「うん」
「あれ、悠仁くん」
「え゛」
「よし、勝つぞーっ!」
私と兄のおー、と揃った掛け声と、かぐやの心底驚いたと言わんばかりの大声が世紀のKASSEN対決の開戦の狼煙となった。
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「これは、
宙に向かって問うてみても、何処かで聞いている筈のヤチヨは答えない。正しいルートを辿っている。大丈夫だと君はいつも言うけれど。それならば先程浮かべた表情は何だ。
俺は、このまま流されるがままここに立ってて良いのか?本当に、合ってるのか?
教えてくれ、と言っても誰も答えない。最近、よく夢を見る。あの時ヤチヨと出会わなかった自分の夢。自暴自棄になって勝手に一人砂浜で死に腐るだけならまだ良かった。最悪なのは、自分のこの分不相応な力を見境無く振るい始めたところを起きることも出来ず、口をだすことも出来ず只見せられ続けた時だ。
ただただ、自分の弱さや醜さを見せつけられているようで、その夢を見た次の日はかぐやと彩葉の顔を見ることが出来なかった。死にたい、などとは思っていない。この命の使い所などずっと前から決めている。
只一つの気がかりは。
『悠仁くん!』
いつだって自分の顔を見ると笑顔を浮かべてくれる、一人の少女のこと。父も母もいる彼女の事を、肉親でもない自分が自分勝手に心配をしてしまう。
優しい彼女を泣かせたくなくて、いつだって笑っていてほしくて。でも、それでも自分の何より大事な家族の8000年の想いが報われない事が何より許せなくて。
「虎杖くん?行くよ〜?」
「…分かった」
表には出さない、彼女が見ているこのツクヨミの中でそんな表情をするわけにはいかない。それでも、心の中はいつだって迷子のように泣いていた。
ifの扱い
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このまま最後まで書く
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普通の後日談も交えつつ書く
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書かんでいいから後日談だけ書く