[悲報]虎杖成り代わり、縄文時代に立つ[言葉が分からん] 作:夕暮れの家
最終盤に近づくほど、余計な事を書かなくなるので文字数が減っていくバグ(正常)
「お前には、苦労をかけるな」
「……本当だよ」
ツクヨミの中、マスコットであるFUSHIがぴょんと跳ねる。他に誰もいない、静かな路地に、何処からか聞こえてくる祭り囃子が響く。
「こんなの、誰も望んじゃいない。何考えてるんだ」
「俺が考えてることなんて、昔から一つだけさ」
「ただの応急処置だ、すぐに思い出すかも──」
「思い出せないさ」
ゆらり、とFUSHIの対面の男が差し出した指の先に火花が散る。その煌めきがほんの一瞬辺りを照らして、フードの下に隠された男の顔を見せる。
「縁を
「大事だったんじゃ、ないのか」
「大事さ」
だからこそ、俺じゃダメだ。小さい笑い声だけが響く。表情は見えない。それでも、きっとその口元には自嘲気味な笑みが浮かんでいる。
「彩葉の隣も、ヤチヨの隣も。いるべきなのは俺じゃない」
「……ずっと。ヤチヨの傍にずっといたのは悠仁だろ。なんでそんなこと、言うんだ」
「だから、俺の役目はここまでだ」
なぁ、FUSHI。上を向いた拍子に、深く被られていたフードがするりと後ろに落ちる。露わになった彼は、笑っていた。
「ヤチヨの記憶も──」
「それ以上言うな」
ぶわ、とウミウシの毛が逆立ち、その身体が一回り大きくなる。その様子を見た男は、その先を言葉にすることはせずに、ただ一言「そうか」と呟いた。
「それ以上言ったら、嫌いに、なるぞ」
「嫌いに、嫌いにかぁ」
その時の男の目は、どこを見ていたのか。何を思い出していたのか。ただのウミウシでしかないFUSHIにはわからなかった。
ただ
「なってくれたら、もっと楽だったかな」
きっと、幸せな記憶なんだろうな、なんて。それだけは分かった。
「なぁFUSHI、教えてくれ」
「……なんだ」
「
その答えを聞いた男は、ただ静かに頷いただけだった。
✿
「あれ……?」
バイトに行ってきます。そうかぐやに言って家を出てきたのに。たどり着いたバイト先には、そろそろ開店時間にも関わらず鍵が掛けられていた。
「閉まってる」
数度、ガチャガチャと引き戸を動かしてみて。結局開かないことを確認してから、中を見ようと覗いてみる。
しかし、幾ら目を凝らしてみても、くもりガラスの向こうに何かが見えることもなく。ただ明かりもついていないことが分かるだけだった。
戸を揺することをやめて、視線をずらすと、自分の目線とちょうど同じくらいの高さに張り紙が貼ってあることに気がつく。
近づいてみると、そこには確かに『閉店のお知らせ』という文言が書いてあって。その下には、つらつらと謝罪などが書き連ねられている。
目を擦ってもう一度見る。書いてある文字は変わることはない。思わず天を仰いだ。まったく聞いていない、と。
「えぇ……、バイト先無くなった……」
収入源が消滅した瞬間である。すぐにでも探さなきゃな、と高校に入学した時にピックアップしていたいくつかのバイト先を思い浮かべて。
その中に、この駄菓子屋がなかったことに違和感を感じて立ち止まった。
「なんでここで働いてたんだっけ」
振り返る。“八月”と書かれた看板が私を出迎える。えぇっと、そうだ。入学式の後、お母さんと一緒にご飯を食べながら決めたんだっけ。
お母さんに、ここの店長さんを紹介して貰ったんだったかな。
「……あれ?」
店長さん、どんな人だったっけ。1年以上ここで働いてたはずなのに、まったく思い出せない。
なんだろう、なにか、なにか大事なことを見落としてる気がする。私は、ここで。ここで、何を
『彩葉』
キンッ
「……ま、いいか」
どこからか金属を打ち鳴らしたような音が聞こえてきた。
ふと、塀に貼られたチラシが目に入る。『花火大会』だなんてデカデカと書かれたそれが、妙に気になって。
「誘ったら、喜ぶかな……」
飛び跳ねてはしゃぐかぐやの姿を幻視する。花火大会、京都にいた頃は毎年皆で行ってたな。いつも忙しいお母さんも、その時ばっかりは1日開けてくれて。
はしゃぐ私とお兄ちゃんのことをお父さんと一緒に諫めながら、お祭りの屋台を回って。最後は皆で大きな花火を見上げて。
『ほらっ、見た? 見た? 凄いなぁ、綺麗やなぁ』
肩車してもらった私が、いつもよりもずっと高い視点から見える景色にはしゃぐ。それを見た、お父さんが笑って。
じゃあ、この私を肩車してる人は、誰? 手の下にある髪の毛に触れる。花火の光に照らされたその髪の毛の色は、白かった、気が────
キンッ
「かぐやのこと、誘おう」
携帯を取り出して、写真を一枚。話さなきゃいけないことも、ある。私の勇気が足りなくて口に出せないことも、花火の音の下なら、言える気がしたから。
✿
「かぐや、帰っちゃうの?」
花火が開く音が体に響く。心のどこかでその音にかき消されてたら、なんて願いながら呟いた言葉は、かぐやにしっかり届いていて。
「いやー、仕事放り出してきちゃってさ。強制送還的な?」
あはは、とかぐやが笑う。苦笑いだ。初めて見る表情だった。そんな、何かを誤魔化すような顔、今までしなかったのに。
「かぐやは、かぐや姫だったみたい」
そんなことない。もっと一緒にいたい。そう言いたいのに。何も言い出せなくて。そんな私を嘲笑うようにまた一つ、花火が上がる。
やるせない気持ちのまま、ざくりと手元のかき氷にスプーンを乱雑につきさした。
「次の満月の夜にお迎えが来る」
帰らなくちゃ、そう言って笑ったかぐやの表情はとても綺麗で。その瞳の中に、反射した光の花が幾つも咲いては消えていく。
「かぐや」
「うん」
「大きく、なったねぇ」
「……彩葉の教育が、良かったからかな」
そっと手を伸ばす。もう私よりも少し高いところにあるその頭にゆっくりと手のひらを滑らせて。気持ちよさそうに目を細めたかぐやが小さく笑った。
「彩葉のお陰で、す〜っごくっ、楽しかったよっ!」
「……私も」
大きく響いた花火の音と重なったこの言葉は、かぐやに届いていただろうか。
「ねぇ、彩葉」
「何?」
「彩葉が私にくれた曲ね、沢山あるけど。全部全部──」
誰に向けて作ったものだったの? そう言ってかぐやが顔を伏せる。これも、初めて見る表情。言いにくそうに言葉に詰まる。
「私にも分かるよ。昔作った曲、全部、誰かのための曲だった」
『喜んでくれると思う?』
『彩葉の心がこもった曲や。きっと笑ってくれる筈やって、お父さんは思うなぁ』
「誰に……?」
お父さんと曲を作った記憶が蘇る。隣に座っていたお父さんを見上げて、笑う。そうだ、確かにあの時の私は、笑ってほしくて。喜んでほしくて。鍵盤の上に指を滑らせていた。
……誰に?
「私は」
「わたし、は」
笑ってくれるだけで、よかった。隣にいてくれるだけで、よかった。私は、誰のために──
キンッ
「昔の事だからね、忘れちゃったかな」
「そうな、の?」
もう、帰らなくちゃ。花火大会は終わり、周りの人は既に立ち上がって駅への道を歩き始めている。
かぐやの卒業ライブの為の準備をしなきゃ、そう言って立ち上がりかけた私の手を、かぐやが掴んだ。
「待ってっ!」
「何……?」
焦ったような声。私の手首を掴んだ手に、力が入る。かぐやがいつも着けている変わった形をしたブレスレットが、チリンと揺れた。
「なにか忘れてるのっ、ところどころに虫食いみたいに抜けがあるのっ!」
彩葉もなんでしょっ!?
「私は、何も」
キンッ
「何も、忘れてないよ」
ほら、帰ろう? そう言って差し伸べた手を、かぐやは静かに頷いてしっかり握った。
✿
「いない、いない、どこ……?」
悠仁がいなくなった。ツクヨミの中にいたなら、すぐに分かるはずなのに。こんなに長い時間、私に会いに来ないなんて、なかったのに。
待っても待っても彼のログインを知らせる音は響かない。最初は、彩葉たちにかまって忙しいのかな、と思ってたから。
だって、コラボライブ後だ。今の悠仁なら沢山ほめてあげるだろうし、沢山時間も使ってかぐやたちと過ごす。
そう思ってたから。じっと待ってたのに。
1日待っても、誰も来なくて。2日待っても、何の音沙汰もなくて。3日経って、八月をARモードで覗いてみたら、そこには“閉店”の紙がただ静かに貼ってあって。
ないはずの心臓が、嫌な音を立てた。
「ねぇ、悠仁。どこにいるの……?」
私が助けて、と言ったらいつだってすぐに来てくれたのに。私が泣いたときには、いつだって傍にいたのに。
ツクヨミに響く私の声に答えてくれる人は、誰もいなくて。
「嫌だよ、悠仁。もうすこし、もう少しだけで、いいから」
「いっしょに、いてよ……」
ぴょん、と視界の端を白い物がよぎる。何処かに言っていたFUSHIが、そこにはいた。
「FUSHI、FUSHI」
小さな体を両手ですくい上げる。
「私、どうすればいい…?」
「どうしたら、いいのかな?」
FUSHIの顔にデフォルメされた涙が浮かぶ。体を震わせて、それを振り払って。真面目な顔をしたFUSHIが、私の顔をまっすぐ見返す。
「ヤチヨ、どうしたい?どんな未来が、欲しい?」
「私は…」
FUSHIだって分かってる筈。長い間、私はあなただったんだから。
「彩葉と悠仁が、笑ってくれてたら、それで」
ただ、それだけで。
「そうだよな」
分かった、FUSHIはそれだけ言って頷いた。
私は人の心に溢れていますよ?その証拠にこんなにもほら、モジュ虎杖主人公の日常ものを求めてる。
誰か書いてください。10点評価をつけに行きましょう。さもなくば私が書く。
ifの扱い
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このまま最後まで書く
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普通の後日談も交えつつ書く
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書かんでいいから後日談だけ書く