二階堂ヒロの事件簿   作:赤葉忍

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第二章突入前に息抜きの番外編です。
まねきねこコラボ、よいですよね


番外編:魔法少女ノ魔女演奏~その1~

 ここは、元魔女候補たちが数多く住まう場所、牢屋敷。今ここで、世紀の一大イベントが開催されようとしていた。

 

「さあ始まりました! 救世主と呼ばれファンも多く存在する12人の少女たちによる、バンド対決!! 司会は元『新聞』の魔法持ち、新田(にった)サラサがお送りします!!」

 

 元々は処刑台が格納されていた地下。そこを改装し、巨大な地下ホールとなった場所に、牢屋敷に居るすべての少女たちが集まっていた。観客席に座る少女たちが見守る中、中央のステージでマイクを握るのは、丸眼鏡とそばかすが特徴的な少女。大人しそうな外見とは裏腹にはつらつとした声で、地下ホール全体に声を届ける。

 

「さらにさらに!! 今回私は司会兼審査員を務めるのですが!! 私以外にも審査員があと2人いるぞ!! さあ、自己紹介をどうぞ!!」

 

「やっほー! ナノちゃんのお姉ちゃん、黒部ホノカですっ! 今日はナノちゃんの応援に来ました~!!」

 

 実況と書かれたネームプレートが置かれたテーブルの後ろの席に座るのは、白髪と黒いリボンがチャームポイントであり、黒部ナノカの実の姉、黒部ホノカだ。その元気で明るい性格からホノカ自身にもファンは多く、ホノカが手を振るときゃー!と黄色い歓声が上がる。

 

「ゴリゴリの身内びいき宣言、ありがとうございました! この人が審査員に選ばれたことに若干不安を感じ始めていますが、心配はありません! 審査員はもう一人いる!! それでは最後の審査員の方、自己紹介どうぞ!!」

 

「⋯⋯どうも。ご紹介に預かりました。元『模倣』の魔法少女、雲母(うんも)ミラ、です。頑張りますので、どうか⋯⋯よろしく」

 

 こてり、と首を傾げながら挨拶するのは、薄紫色の髪を腰まで伸ばした儚げな見た目の少女だ。場所が地下だというのに傘を差しており、その肌は陶磁器のように白い。そして、傘を持つ手と反対の手には、『ミリアちゃん尊い』と書かれた団扇を持っていた。

 

「おいおいミリアちゃん推し勢力トップのミラちゃんじゃねーかよ! 審査員が二人とも特定の出演者に肩入れしてるってどうなってるんだ人選!! てかその団扇なに!?」

 

「ミリアちゃんはなれはてだった私にも優しく接してくださった、天使のような方⋯⋯。好きにならない方が、どうかしております。この団扇は、夜なべして、手作りいたしました⋯⋯」

 

「ちなみに私もナノちゃんの団扇もってるよ!! がんばれナノちゃーん!!」

 

「そこ!! 張り合わないでくださーい!!」

 

 負けじとホノカもぶんぶんと団扇を振り出し、慌ててサラサが制止する。このままだと始まる前に収拾がつかなくなりそうだった。しかし、審査員3人のドタバタっぷりに観客席は大笑いしており、ある意味掴みとしてはばっちりだったかもしれない。

 

「ふう! なんだか先行き不安ですが、もう準備が整ったようなので、早速最初のバンドを紹介しましょう!! トップバッターは⋯⋯あの蓮見レイアをセンターに据えた4人バンド!! ダークロリータな統一衣装に身を包んだ、顔面偏差値爆高面子!! 皆、拍手で迎え入れろ~!!!」

 

 サラサがステージの横を指さすのに合わせ、スポットライトが移動する。その光に照らされ、まず現れたのはレイアだ。流石芸能人というべきか、大勢の観客にも物おじせず、キラキラと笑顔を振りまく。

 

「きゃー!! レイア様―――!!!!」

 

「素敵すぎるぅ!! ああ、興奮して眩暈が⋯⋯」

 

 その人気っぷりは凄まじく、観客の中には興奮して倒れそうになる少女まで現れるほどだった。しかし、隣に立っていた少女がビンタで叩き起こし、何とか気絶は免れている。そう、気絶するなど勿体ない。まだまだ始まったばかりなのだ。

 

 次に出てきたのは、ヒロだ。王冠を模したヘッドが特徴的なギターを持ちながら、レイアの後ろに続く。そして、クールなその表情は崩さないまま、胸元で小さく手を振って観客の声に応えた。

 

「うっ⋯⋯!! ヒロ様のファンサ⋯⋯!!」

 

「私を正してぇぇぇ!!!!!」

 

 声量だと先ほどよりも大きい声が響く。ファン数でいえばレイアの方が多いが、ヒロのファンは熱量が半端ではなかった。特に、二階堂ヒロ親衛隊というグループに所属している少女たちは、統率の取れた応援を行っていた。ちなみに、親衛隊の会員No.1はちゃっかりエマが取っていたりする。

 

 ヒロの次にステージ上に現れたのは、ナノカだった。先ほどの2人に比べるとその表情はやや強張っており、若干緊張した様子であったが、審査員席に座るホノカの姿を視界に捉えると、ふにゃっとした笑みを浮かべた。

 

「ナノちゃーん!!!!! 頑張ってねーーーーー!!!!!!」

 

 審査員席から誰よりも大きな声援を送るのは、勿論ホノカである。最初からそうだったが、もう身内びいきをまったく隠す気がない。マイクを握るサラサは微妙な表情を浮かべていた。

 

 最後に登場したのはマーゴだ。ベースを持ったまま、にこやかな笑みで観客席に手を振る。そんなマーゴの登場には、今日一番の歓声と応援の声が沸き上がった。

 

「マーゴ先生~!! 頑張ってーーー!!!」

 

「応援してます!! 笑顔が素敵~!!!」

 

 マーゴの人気が高いのは、観客席に座る元魔女候補たちが、マーゴに現代知識の授業をしてもらったり、看病をされたりした経験が少なからず全員にあるからだ。マーゴは15歳で、凍結保存されていた期間も合わせるとこの場に居るほぼ全員がマーゴよりは年上だが、マーゴに対しては尊敬の念が大きいからか敬語で話す子が多かったりする。

 

 全員の入場を確認したところで、サラサがマイクを持って近づく。曲が始まる前に全員にインタビューするためだ。

 

「ではでは、このバンドメンバーのセンターボーカルを務める蓮見レイアさん!! 意気込みと、ついでにバンド名も教えてください!!」

 

「君は、サラサくんだよね? 素晴らしい司会進行、ありがとう!! 今回はバンド対決という名目だからね。やるからには全力で臨ませてもらうよ。ああ、あと、バンド名も言うんだったね。私たちのバンド名は⋯⋯『アルカナ』だよ」

 

「『アルカナ』、カッコいいバンド名ですね!! 由来を聞いてもいいですか?」

 

「色々案は他にもあったんだけどね。ほら、マーゴくんがタロット占いが得意だろう? それに、大アルカナにはヒロくんにぴったりのものだってあるしね」

 

「なるほど、『正義』ですね!! 確かにピッタリです!! ちなみに、レイアさんは自身を大アルカナに例えるならなんですか?」

 

「私かい? 私は、そうだな⋯⋯。誰よりも輝いて皆の視線を引き付ける『星』、かな?」

 

 そう言ってレイアがバチンとウインクすれば、今日一で大きな黄色い歓声が沸き上がった。その盛り上がりの声に負けじとマイクに声を乗せ、サラサは続いてヒロへとマイクを向ける。

 

「解釈一致な回答、ありがとうございます!! それでは、続いてギターの二階堂ヒロさん!! 意気込みをよろしくお願いします!!」

 

「⋯⋯そうだな。やるからには全力でやる。その意気込みはレイアと同じだ。正しく演奏してみせよう」

 

「流石ヒロさん、本番前でも落ち着いています!! これはギターの演奏にも期待できますね!! では次、ナノカさん、お願いします!!」

 

 ずいっとマイクを向ける先には、ドラムの演奏の準備を整えるナノカが居る。黒を基調としたドラムを前にしてスティックを構えるナノカは、まだ若干緊張した様子であった。

 

「⋯⋯任せて。今日はお姉ちゃんも見に来ているんだもの。失敗はしないわ」

 

「あら、ナノカちゃん。そんなに固くならなくてもいいのよ? もしミスをしても、私がカバーしてあげるわ。私たちリズム隊で、バンドメンバーを支えましょ?」

 

「ちょ、ちょっと。宝生マーゴ。あなた、近いわ」

 

 ナノカにマイクを向けている途中で、マーゴが割って入って来る。ぎゅっと頬が触れるほどの距離で囁いたマーゴに対し、照れた様子で顔を赤らめるナノカ。だが、そのおかげか緊張はほぐれた様子だった。

 

「マーゴちゃん、うちのナノちゃんに近づきすぎでーす。イエローカード一枚入りまーす!」

 

「はーい、審査員は黙っててくださいね~。それでは、全員の意気込みを聞いたところで、演奏のお時間です!! 私も審査員席に向かいたいと思います!! 準備が出来次第、演奏を始めてください!!」

 

 サラサは一度マイクの電源を切り、審査員席へと向かう。その後姿を見送ったレイアは、スタンドマイクに手を伸ばし、バンドメンバーに視線を送る。全員がうなずいて準備が整ったことを確認し、レイアは口を開いた。

 

「それでは、聞いてくれ。私たちが演奏するのは⋯⋯BUMP OF CHICKENの、『ray』」

 

 ナノカがスティックを打ち合わせてリズムをとり、演奏が始まる。ベースの重低音とドラムのリズムが支える中、レイアは煌びやかに歌い上げる。その姿に、観客の視線は自然と引き寄せられていた。

 

「君といた時は見えた 今は見えなくなった~♪」

 

 さすが芸能人。レイアの歌は完成度が高い。そして、レイアは歌いながら、ギターを演奏しているヒロの方へと近づき、そっとマイクを寄せる。どうやらレイアのアドリブだったのか、ヒロは一瞬眉を顰めたものの、マイクを向けられて歌わないのは正しくないと判断したのか、レイアと一緒に歌い出した。

 

「「いつまでどこまでなんて~♪ 正常か異常かなんて~♪ 考える暇も無い程 歩くのは大変だ~♪」」

 

 レイアとヒロのデュエットに負けじと、ベースのマーゴとドラムのナノカも視線を合わせ、正確に、しかしながら楽し気に演奏を続ける。マイクはないが、二人とも自然と歌詞を口ずさんでいた。

 

「大丈夫だ この光の 始まりには~♪ 君がいる~♪」

 

 最後はレイア一人で歌い上げ、占めと同時にばきゅんと手を拳銃の形にし、観客のハートを撃ちぬいてみせた。そのパフォーマンスに、ついに耐えられなくなった観客の1人が卒倒し、すかさず隣の少女が用意していた氷水の入ったバケツに頭を突っ込ませる。その冷たさに意識を取り戻した少女は、感謝の握手を交わした。こんなところで倒れてはいられない。まだバンドは2組も残っているのだ。

 

「いや~、すばらしい演奏でしたね!! では、審査員の方、私も含め、点数発表をお願いします!!」

 

 バンド対決と銘打ったイベントなため、点数によって勝敗を分ける必要がある。各審査員には最高得点を10点とし、3組のバンドに対しそれぞれ点数をつけることがルールで定められていた。

 

 そして、サラサの合図で一斉に点数が発表される。審査員に座る少女は、右から順に、サラサ、ホノカ、ミラ。そして、発表された点数は右から順に9点、10点、9点となっていた。

 

「いや~! 最高の演奏でした!! でも、やっぱりトップバッターなだけあって、最高点数をつけるのは躊躇われたので、9点で!!」

 

「ナノちゃんかっこよかったよ~!! 文句なしの10点!!」

 

「⋯⋯素晴らしい、演奏でした。満点をつけるか迷いましたが、この点数で、お願いします」

 

 合計点数は28点。しょっぱなからなかなかの高得点だ。レイアは満点ではないことにやや残念そうな表情を浮かべていた。だが、すぐに切り替えて笑顔に変わる。

 

「満点じゃなかったことは残念だけれど⋯⋯次こそは、君たち全員を満足させる演奏をしてみせるよ!! 今日は私たちの演奏を聞いてくれて、どうもありがとう!!」

 

 こうして、レイアをセンターボーカルに据えた『アルカナ』の演奏は終了した。しかし、まだバンドは2組残っている。どのバンドが優勝するのか。それは、この後の2組の演奏次第だ。

 

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