緋弾のアリア 猟犬たちの幻肢 作:Alcatraz:アルカトラズ
初めまして。アルカトラズです。
以前のThe HOUNDSは次回投稿に時間が開きすぎていたため、心機一転として少し再構成して投稿させていただきました。
本作もまた、後書きに登場した銃のプチ解説を載せています。
誤字脱字や文才などの問題があるとは思いますが、温かく見守っていただくと幸いです。
第1話 始まりの硝煙
「
現在の時刻を確認しつつ、悪態を吐く俺。
名前は"
ニューヨークから来日して、今目の前にある学校に通うことになった普通……とは少し言い難い青年だ。
そして俺が通うことになった学校というのが、『東京武偵校』。
東京湾に浮かぶ
『武偵』……正式名称を『武装探偵』と言い、近年凶悪化の一途を辿る犯罪に対抗する為に新設された国家資格、またはそれを保持する者を指す。
この資格所持者は銃火器や刃物などの武器の携行を許可され、逮捕権を有する。
つまりは警察に準ずる権限を持つということだ。
ただし、武偵は金などの報酬を貰って働くため、
もちろん武偵は日本固有のものではなく世界中に存在している。
かく言う俺もニューヨークで武偵として活動していて、訳あって今年から東京武偵校に通うことになった。
さて、今日は4月の初め。時刻は8時をとうに過ぎていた。
言い訳をすると、来日前日まで武偵の仕事をしていて、時差ボケも相まって空港のロビーで爆睡をカマしてしまったが故にここまで遅れた。
今頃は始業式の真っ最中だろうが、俺は転入生という扱いになるから校長室に行かなければならない。
「多分無人だろうけど……」
そう呟き、1歩踏み出したところで───
ドカァァンッ!!
と、爆発音が聞こえてきた。
なんだ?武偵校の敷地内でテロ事件でも起きたか?
腰後ろのホルスターに納めている拳銃"グロック26"を抜き、プレスチェック*1をすると、俺は爆発音のした方向へと向かう。
「おいおいなんだよこれ……」
爆発音のした方……恐らくは体育倉庫に到着すると、手前の道には爆発炎上している自転車が……。
電動自転車のバッテリー事故でもここまでの規模にはならない……おそらくセムテックスかC-4だろうな。
一方で体育倉庫には大穴が空いていた。
何かがぶつかって扉をぶち破られたんだろう。
壁に背中をつけ、中の様子を伺ってみると、長いピンク色の髪が蠢いていた。
どうやら跳び箱の中に居るようだが、チラリと見える制服から恐らくは女子生徒だろう。
何らかの要因で彼女が倉庫の扉をぶち破って跳び箱の中に着地したということだろうか。
外にあった爆発した自転車からしても、事件が起きているのは確実だろうな。
「おい、大丈夫か?」
「「え!?」」
「ん?……二人居たのか?」
跳び箱の中から聞こえた1組の男女の声。
どういう状況なのか確認する為に跳び箱に近づいて見てみると、男子の上に女子が跨っていて、更にセーラー服のブラウスが開いて……
「……悪い、お楽しみ中だったんだな。邪魔したよ」
「「待て待て待て!誤解だ(よ)!」」
その場から立ち去ろうとする俺を二人が止めてくる。
いやいや、誤解も何もこれから致そうとしているようにしか見えないんだが?
「「その考え方が誤解なんだ(なのよ)!」」
「そうかな……そうことにしておくか」
にしても随分と息ぴったりだな。
前々から仲が良かったのか?
まぁ、状況的にも事件性があるのは間違いない。
からかうのはここまでにしておいて───
「っ!伏せろ!」
───ズガガガガガっ!!
二人に声を掛けて、防弾製の壁際に寄る。
それと同時に大量の弾丸が体育倉庫に降り注ぐ。
チラリと確認してみるとサブマシンガン付きのセグウェイが大量に集まっていた。
搭載している機銃はIWI*2のUZIか……ざっと見て30は居たな。
「あいつら、まだいたのね!」
「まだいたって、何がだ?」
「あのヘンテコな2輪!『武偵殺し』のオモチャよ!」
バリバリバリバリッ!!
少女が二丁の拳銃を器用に操り、銃撃戦を繰り広げ始める。
……うまいな。
あの小さな手で
にしてもあの機銃付きのセグウェイ……『武偵殺し』のオモチャだったか……。
少女の口ぶりから察するに、狙われていたのはあの男子生徒だろう。
それなら俺も参戦するとしようか。
グロックを構え、倉庫の壁からのリーン射撃*3で6台ほど破壊する。
「リロードする!少しだけアイツらを引き離してくれよお嬢ちゃん」
「やってるわよ!あとお嬢ちゃんって言うな!」
……この甲高いアニメ声……どこか昔に聞いたことがある気がする……どこだったか……。
そんなどうでもいいことを考えつつ、追加で5台のセグウェイを破壊し、少女もまた3台のセグウェイを破壊する。
するとセグウェイは銃撃を止め、倉庫から遠ざかって行く。
どうやら体制を整えるらしい。
「ちょ、ちょっとアンタ!?な、何してんのよ…!?」
「頑張ったご褒美に、今だけお姫様にしてあげよう」
さっき見た根暗そうな外見からは想像も出来ない程キザなセリフが聞こえてくる。
人は見かけによらないとはこういうことを言うのか……。
「ちょっとそこのアンタ!なに無視してんのよ!この状況をおかしいと思いなさいよ!?」
「いや、だってそういう仲なんだろ?確かにドンパチの最中ではどうかとは思うが……」
「ちっがーう!!」
意外とああいう光景はニューヨークでも良く見る。
それに、今はあれを兎や角言っている場合ではない。
……まぁ、イチャつく場合でもないのだが……。
兎に角、今はあのセグウェイ共をどうにかするのが先決だ。
あの男子生徒、名札を確認したところ"遠山"と言うらしい。
臨戦態勢になった彼にも協力してもらおう。
「遠山武偵。あのオモチャ共を今から破壊する。二人でそれぞれ引き付けて、各個撃破だ。スリーカウントで出る、行けるか?」
「OKだ……そういえば、君の名前を知らないけど…」
「俺か?俺は────」
───ババババババッ!!
俺の言葉を遮るように相手の射撃が再開する。
どうやら自己紹介をしている暇はなさそうだ。
そろそろこっち側も打って出るか。
「あんた達…まさか出るつもり!?危険よ!」
「アリアが撃たれるよりはマシさ」
良くもまぁ歯の浮くセリフがポンポン出るもんだ。
「出るぞ。3、2、1、ゴー!」
俺の宣言通りにスリーカウントで二人同時に倉庫外へ出る。
目の前には大量に並ぶ機銃の銃口。
二手に別れると、それぞれセグウェイが追いかけてくる。
順当に行けば8台ずつなのだが、遠山武偵の方に7台、俺の方に9台着いてくる。
おいおい、流石に不平等やすぎないか?
俺は左腕で顔を守りつつ、射撃する。
今更だが、武偵校の制服は防弾仕様だ。
ある程度の威力の弾なら防ぐ事ができる。
ただ、衝撃が無くなる訳ではないので、当たったら当たったで激痛であることは変わらない。
セグウェイから飛んでくる弾を防ぎつつ、銃を撃って正面の一台を破壊する。
続いて背後のもう一台を振り向きざまに破壊し、近づいてきたセグウェイの基部を破壊してUZIを奪い取って更にもう二台を撃って破壊する。
弾切れになったUZIを投げ飛ばしてセグウェイを転倒させ、その隙を狙って破壊。
続けざまに、背後に回り込んできた二台を撃って破壊し、最後の一台にナイフを投げて動きを封じ、近づいて仕留めた。
どうやら、遠山武偵の方も全部仕留めたようだ。
それにしてもあの遠山武偵の様子……最初に跳び箱の中で見た様子とは大分違う。
まるで人が変わったようだ。
かなり雰囲気が変わっていたし、戦闘能力も上がったように見える。
……何らかの要因でスイッチが入った?何かしらの
だが、今はそれより気になることが一つ。
「『武偵殺し』…か……」
セグウェイに刺さっているナイフを回収しながら呟く。
『武偵殺し』というのはかつて存在した武偵を狙った連続殺人犯のことだ。
ただ、犯人は逮捕されたと言われている。
が、今回のが本人なのか模倣犯なのかは定かではないが、このまま野放しに出来ないのは確かだ。
「アンタ、アタシの話聞いてるの?」
背後から聞こえてくるアニメ声に反応して振り向くと、先程のピンク髪の少女と目が合う。
身長は……140cmくらいか……名前は……"神崎・H・アリア"…アリア?
「アリアなのか……?」
「ジャ…
かく言う少女…アリアも
『ジョン・K・アダムス』、ニューヨーク生まれの俺が海外で名乗っているもう一つの名前。
そしてジョンの愛称の一つが"ジャック"だ。
「ほ、本当にジャックなの……?」
「あぁ…俺だ」
「っ…ジャック!」
アリアは俺の名前を呼ぶと、抱きついてくる。
一方で遠山武偵の方はポカンとした表情でこちらを見ている。
「久しぶりだな。見ない間に随分とイメチェンしたみたいだし気づかなかった」
「久しぶりって……4年間ずっと連絡も取らずに、急に行方不明になったって聞いてずっと心配してたのに、ジャックは久しぶりの一言で済ませるの!?」
あ、やべ、地雷踏んだ。藪蛇だったかもしれない。
「あー…一つ聞いていいかな?」
「なによ!」
「二人は知り合いなのかな?」
「あぁ、俺とアリアはおさな──」
「あーーっ!!」
俺の言葉を遮ってアリアが叫ぶ。
「あ、ああ、アンタ!チカン!変態!強猥男!」
そんな言葉を並べ立てながら、アリアが遠山武偵を指差しガンガンと床を踏み鳴らす。
昔からアリアは恥ずかしい目に会うと、銃を振り回すか周りの物を破壊する悪癖がある。
どうやら、跳び箱の中で何かあったらしい。
遠山武偵も引き気味に逃げる準備を始めるが、スーッと視線が下に向く。
その視線を追って見るとアリアのスカートにたどり着いた。
彼に習ってアリアのスカートを見てみると、だんだん下がっていっている事に気がついた。
どうやらここに突っ込んだ時の衝撃か何かでホックが取れてしまったようだ。
当の本人はそれに気づいていないが……。
このまま下に下がりきると風穴地獄は必至だ。なんとか対処しないと。
《ベ・ル・ト》
武偵同士で伝わる
それを瞬時に受け取って理解した遠山武偵は自身のベルトをこちらに投げ渡し、俺は受け取ったベルトをすぐにアリアの腰に巻き付け、ズレないようにネクタイを挟み込む。
「よしっ」
「なっ!?」
俺の行動に気づき、自分の腰を見てようやく自分の状況を理解したらしい。
少し落ち着きかけていた様子から一変。顔をゆでダコのように真っ赤にして二本の小太刀を抜く。
地雷を解除していたと思ったら対戦車地雷を踏んだようだ(諦観)。
まずい、このままじゃアリアが遠山を殺して9条違反を犯してしまう。
暴走列車よろしく走るアリアの前に立って、グロックのトリガーガードで二本の小太刀を受け止める。
「何で邪魔すんのよジャック!!」
「落ち着けアリア!流石に殺しはまずいって!」
「うるさい!こいつに風穴開けないとアタシの気が済まないのよ!邪魔するって言うならいくらジャックでも──」
「俺でも?」
「───風穴開けてやるんだから!!」
ズギュン!ズギュン!
俺に向かって2発の銃弾が飛んでくる。
しかも顔面に向かって至近距離で。
危なっ!?俺じゃなかったら直撃してたぞ!?
まずい、このままじゃ3発目4発目も飛んでくる……!
「遠山武偵!逃げるぞ!」
「賛成!」
「あっ!こら!逃げるな!」
───これが後に、『エネイブル』と呼ばれ、不可能を可能にする男と呼ばれる遠山キンジと、
『緋弾のアリア』と呼ばれ、全国の犯罪者を震え上がらせる鬼武偵、神崎・H・アリアと、
地獄から戻った
硝煙の匂いに塗れた、戦場での出会いと再会だった。