緋弾のアリア 猟犬たちの幻肢   作:Alcatraz:アルカトラズ

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グロックはオースト()()で生まれました、オースト()()()の発明品じゃありません。
ガストン・グロックのオリジナルです。
しばし遅れを取りましたが今や巻き返しの時です。(Gen6登場)

では第3話始まります。


第3話 情報と銃とドレイ宣言

 

 

さて、現在俺とキンジは理科棟の屋上まで来ていた。

何故かって?怒り心頭のアリアと野生のイノシシよろしく追っかけてきたクラスメイトを撒く必要があったからだ。

 

「なぁ、真」

「ん?」

「神崎とはどういう関係なんだ?あいつだけ、お前のことを"ジャック"って呼んでるし…ニューヨークから来たってことだし、海外任務で一緒だったりしたのか?」

 

給水塔の裏で腰を下ろし、胸ポケットから取り出した煙草を咥えたところでキンジが尋ねてきた。

正直お前もか…とも思ったが、クラスの連中みたいに根掘り葉掘り聞いてくる訳ではなさそうだからまあいいか。

 

「アリアは…まあ所謂幼なじみってやつだ」

「幼なじみ?」

「幼少の頃、ロンドンで過ごしてた時期があってな。その時にアリアの家に世話になってたんだ。それで、あいつと知り合ってしばらく一緒だったってわけ」

「なるほど……ジャックってのは?」

「それは俺の愛称。"ジョン・K・アダムス"。俺のアメリカ人としての名前だ。香坂 真ってのは日本人としての名前」

「ん?……ってことは二重国籍なのか?」

「あぁ、生まれも育ちもニューヨークだがな」

 

俺の場合は父親がアメリカ人、母親が日本人のハーフだ。

海外任務が多い俺にとっては二重国籍*1は色々と便利だ。

 

「ロンドンで過ごしてたのは?」

「研修みたいなもんだ。同年代同士で過ごせば、お互い高め合えるだろうってNYPD*2だった親父の提案だ。最初は高め合うどころか、決闘を挑んでくる始末だったけどな」

「あぁ……」

 

キンジが納得したような声をあげる。

今朝のアリアの様子を見れば想像に難くないだろう。

これでも、俺が初めて会った時よりかは丸くなった方なんだがな。

 

「…真も苦労してたんだな……」

「そうでもないぞ?あれでもアリアは素直な奴だからな。ニューヨーク武偵局に居た時の方が苦労してたさ」

「そうなのか…?」

 

ニューヨーク…というかステイツ(アメリカ)で起きる凶悪事件は日本で起きるそれとは一味違う。

麻薬カルテル、テログループ、銃乱射事件といったSWAT出動レベルの事件も担当することがある。

やってる事が特殊部隊とそう変わらない……。

 

「……キンジ、一旦隠れよう」

「何でだよ?」

「人が来た、数は三」

「!」

 

二人して給水塔の裏に身を潜める。

聞こえてくる足音の軽さからして、おそらくは女子だろう。

この手合いに見つかるのは非常にまずい。

校内ネットであっという間に情報が広まって捕まるのがオチだ。

 

「さっき教務科(マスターズ)から出てた周知メールさ、2年生の男子が、自転車を爆破されたってやつ。あれ、キンジじゃない?」

「あ。あたしもそれ思った。始業式に出てなかったもんね。確かそれで香坂くんが通りがかりで救助したんでしょ?」

 

屋上に上がってきたのは強襲科(アサルト)の女子三人組。

しかも同じクラスの連中だ。

オマケに話題は今朝の俺たちのことのようだ。

 

「さっきのキンジと香坂くん、ちょっとカワイソーだったね!」

「だったねー。アリア、朝からキンジのこと探って回ってたし」

「あ。あたしもアリアにいきなり聞かれた。キンジってどんな武偵なのとか、実績とか。後他にも海外の武偵に詳しい探偵科の生徒知ってる?とか。『キンジは昔は強襲科(アサルト)で凄かったんだけどねー』って、適当に答えたし、3年の探偵科(インケスタ)のAランクの人教えといたけど」

「アリア、さっきは教務科(マスターズ)の前にいたよ。きっと二人の資料漁っているんだよ」

「うっわー…ガチでラブなんだ」

 

どうやらアリアはここでもかなり浮いてしまっているらしい。

気心さえ知れてしまえば、ツンツンしているものの素直で仲間思いないい子ではあるんだが。

 

問題なのはそこに至るまでの過程。

アリアは基本的にワンマン気質な為、周囲から勘違いをされやすい。

ロンドンでも俺と会う前は周りから爪弾きにされていた。

 

「二人がカワイソー。キンジは女嫌いで、香坂くんは転校初日なのに、よりによってアリアだもんねぇ。アリアってさ、ヨーロッパ育ちかなんか知らないけどさ、空気読めてないよねー」

「でもでもアリアって、なにげに男子の間では人気あるみたいだよ?」

「あーそうそう。三学期に転校してきてすぐファンクラブとかできたんだって。写真部が盗撮した体育の写真とか、高値で取引されてるみたい」

「それ知ってる。フィギュアスケートとかチアリーディングの授業のポラ写真なんか、万単位の値段だってさ。あと新体操の写真も」

 

話題は唐突にアリアの批判からファンクラブの話に移り変わる。

というか盗撮写真が万単位で取引されてるって、この学校どうなってんだよ?

 

転校初日にしてこの武偵校の異常性を見せつけられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

───時は移り放課後。

場所は寮のとある一室。

 

「よう颯馬。朝の件、調べはついたか?」

 

俺は颯馬と蓮希の寮の部屋に訪れていた。

朝の爆破事件に関して、颯馬に色々と調べて貰っていたからだ。

颯馬は通信科(コネクト)ではあるが、諜報科(レザド)としての腕も一流だ。

俺の知っている中で、情報戦でこいつの右に出る者はいない。

 

「あぁ、ある程度はな」

「助かる。にしても、随分と模様替えするのが早いな?」

 

周りを見渡すと颯馬の仕事道具であろう通信機器やデータ端末が並んでいる。

 

「お前が来るのが遅かっただけだ。俺たちが来日したのは5日前だ。全く、だから1週間は予定を空けておけと言ったんだ」

「仕方ないだろ、FBIからの依頼だったんだ。で、調査の結果はどうだ?」

「あぁ、こいつを見てくれ」

 

そう言うと、颯馬はモニターの画面をこちらに向ける。

 

「警視庁のデータベースを調べあげた。こっちが今朝の事件の爆破痕跡、でこっちが過去にあった類似事件の爆破痕跡」

 

画面に映し出されたのは今朝みた爆発跡の写真とそれに似た爆発跡の写真が数枚。

 

「この爆発跡は見た事がある。バッテリーの発火では起きないタイプのやつ……火薬や爆薬の跡だな」

「正解だ。そしてこの痕跡から検出された中で、割合の高い元素データがトリメチレントリニトロアミン、次にセバシン酸ジオクチル…」

「……C-4か!」

「あぁ、で、過去の類似事件っていうのが『武偵殺し』の事件だ」

 

武偵殺し……今朝のアリアもそんな事を言っていたな……。

 

「で、その武偵殺しの事件はどうなった?」

「警察の公式見解じゃあ"解決した"ということになってる」

「だが模倣犯じゃなさそうだ……武偵校の敷地内に入れることを考えると、犯人は外部の人間ではなく……」

「内部の人間の可能性がある、か……分かった、そっちの線でも調査を進めてみよう」

「頼んだ。蓮希、()()()()は?」

「もう終わってるよ」

 

颯馬との会話を終えると、今度は蓮希の方へと向く。

蓮希の部屋は装備科(アムド)らしくガンスミスの道具がたくさんあった。

 

「ほい、頼まれてた銃の調整終わったぞ」

 

そう言う蓮希が取り出したガンケースを開けると一丁の拳銃が入っていた。

 

グロック17 Gen4

ニューヨークに居た時から俺がメインアームとして愛用していた自動拳銃だ。

日本に来るのをきっかけに、蓮希にメンテナンスと調整を頼んでいた。

 

「メンテナンスついでにトリガーを軽めの3.5ポンド*3トリガーに交換。スライドもMOS仕様*4の物に替えといた」

 

スライドを引いてチャンバー内を覗いたりして一通り動かした後にガンケースへ戻して閉じる。

 

「相変わらず良い仕事するぜ……弾は?」

「こいつを使え」

 

蓮希が机に置いた弾丸の入った箱を取って中身を見る。

 

「9mmのホローポイント*5か」

「150グレイン*6。お前のお気に入りだ」

「へっ、良くやった蓮希」

「ホルスターも忘れるなよ」

 

蓮希が差し出してきたホルスターも受け取り部屋を後にする。

さて、割り当てられた部屋は確かキンジと同室だったな……。

 

 

 

 

 

 

 

蓮希から銃を受け取った後、俺が割り当てられた寮の一室の前に到着する。

渡されたプリントと先生からの説明によると俺はキンジと同室になるようだ。

 

ガンケースとキャリーケースを置いてインターホンを鳴らそうとする。

が、ドアの奥から何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

『アンタ、アタシのドレイになりなさい!!』

 

 

なんだ?このドアの向こうで一体どんな倒錯的なプレイが行われているんだ?

知りたいという心と知りたくないという心が俺の中に同居している。比率は7:3くらい。

まあいいや。荷物置きたいしインターホン鳴らしちゃえ。

 

ピンポーン…

 

インターホンが鳴ると、中からドタバタと物音がした後に玄関のドアが開く。

 

「今度は誰だ……って真?」

「ようキンジ。今日から同室になったんでよろしく。上がっても?」

「あ、あぁ…でも今は……」

「アリアが押しかけて来てるんだろ?声が聞こえた。邪魔するでー」

 

玄関で靴を脱ぎ、リビングまで来るとアリアがそこに居た。

 

「じ、ジャック!?なんでここに…?」

「寮部屋の割り当てだ。お前と違って押しかけじゃないぞ」

「ぐっ…」

 

痛いところを突かれたようで押し黙る。

 

「キンジ、コーヒーか何かないか?」

「インスタントなら」

「充分さ。色々借りるな」

 

キンジに断りを入れてマグカップを用意して人数のコーヒーを淹れる。

 

「キンジ、ミルクと砂糖は?」

「え?いや、大丈夫だ」

「オッケー」

 

淹れ終えたコーヒーをそれぞれ二人の前に置く。

しかし、目の前に置かれたコーヒーをアリアはジトっとした目で見ていた。

 

「…インスタントコーヒー?」

「ドリップマシンなんて気の利いた代物が男子高校生の部屋にある訳ないだろ」

「まぁ…淹れてくれただけ良いわ」

 

コーヒーを一口飲んだ後、最初に口を開いたのは俺だった。

 

「にしても、『ドレイになれ』なんて随分と穏やかじゃないな?」

「聞いてたの?」

「あんだけデカイ声出せば嫌でも聞こえる。で、キンジをドレイにってどういうことなんだ?」

「あぁ、納得できる説明をしろ。納得してもドレイになんかならないけどな」

 

俺の質問にキンジも便乗して訊いてくる。

というかドレイっていつの時代だよ……。

 

「アタシとジャックとキンジでパーティーを組むの。その為にキンジには強襲科(アサルト)に戻ってもらうわ」

 

俺たちでパーティーを?というか待て。なんで俺まで頭数に入ってるんだよ!?

キンジに関しては…まあ分かる。

噂によれば一年の頃は強襲科(アサルト)のSランクでブイブイ言わせてたとか何とか……。

 

「はあ?なんで俺があんな所に戻んなきゃいけないんだ。そもそも武偵自体やめるつもりなんだ。絶対にイヤだね」

 

武偵をやめる?去年Sランクだった奴がか?

 

「あっそ。キンジが強襲科(アサルト)に戻ってパーティーを組むって言うまでアタシ帰らないから」

「キャリーケースがあると思ったらそう言うことだったか……」

「ふざけんな!人の家に押し掛けておいて居座る気か!」

「ねぇ、お腹すいた」

「聞けよ!」

 

突然の話題転換にキンジは突っ込む。

アイコンタクトで「こいつに何か言ってやれ」と言われてる気もしないでもないが、諦めよう。こうなったらアリアはテコでも動かない。

それにちょうど夕食時だし、腹が減ったのは同感だ。

 

「はぁ……なんか夕飯を作ってやるか」

「ホント!?やったー!」

「おい!ちょっとは追い出そうとしろよ!」

 

しょうがないだろ腹が減ったんだから。

*1
現実の日本では認められていない

*2
ニューヨーク市警

*3
約1.6kg

*4
ドットサイトが直接載るスライド

*5
人体に命中すると内部で変形する低貫通の弾丸

*6
約9.7g





以上第3話でした。
正直、真のメインアームの銃をどうしようか悩みました。
P30LからCZ P09と色々考えて結局カスタムグロックになりました。

次回は白雪さん登場回です。
ではまた次回。




グロック17 Gen4
真がメインアームとして使用する9mm自動拳銃。
2010年に登場した第4世代モデルであるGen4をベースにカスタムがされている。

・スライドをドットサイトを搭載できるMOS仕様の物に交換し、Trijicon RMRを搭載。
・フレームをPolymer80製P80 PF940V2フレームに交換。
・トリガーを競技用の3.5ポンドの物に交換。
・マガジンを挿入しやすいようにマグウェルを装着。
・マガジンは22発装填の物を使用。
・ウェポンライトとしてX300UBを装着。
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