Pocket Monsters Z-A étranger 作:ローロー仮面
地下の暗闇の中、メガエネルギーを集めるパイプラインの僅かな明かりを手がかりに先を進む。
Fのカエンジシの炎のおかげで周囲は視界が確保されているが、目立つのもあり、野生ポケモンの襲撃も止まない。
周囲を囲うゲンガーの群れをカエンジシの“バークアウト”が追い払う。
文字通り足元の影から強襲するジュペッタの“かげうち”をルカのバルジーナが受け止め、”イカサマ“で返り討ちにした。
「キリがない……!」
「最低限対処して先を急ぎましょう」
いくら倒しても凶暴なゴーストポケモン達は襲い来る。今度はニダンギルの集団だ。
ルカはトレーナーを狙ったニダンギルの”メタルクロー“を避けて、バルジーナの”ふきとばし“で集団を一箇所にまとめると、そこをFのカエンジシが”ねっぷう“で一気に焼き尽くす。
ルカは攻撃を避けた拍子に壁に手を付いた。カエンジシの炎で照らされた壁を見ると、嵌め込まれた人の頭蓋骨に触れていた。
「うっ……!」
思わず、ルカは罰当たりにも呻いてしまう。壁には人とポケモンの頭部の骨が交互に続き、おそらくはパートナーを一緒に葬っていたのだろう。
ルカはとりあえず、祈るように手を合わせると、その間もどんどん先へと進んでいくFへと慌てて続く。
少しの間、ゴーストポケモンの襲撃が止んだ。沈黙を持て余し、ルカはFへと話しかけた。
「あなたは、なんでこんなことをしているですか?」
暫しの沈黙、お喋りはするつもりはないということなのかとルカが思ったあたりで、Fは口を開いた。
「……こんなこととは?」
「こんな地下に降りてまで、事態を解決しようとしてることです。あのジガルデに理由でもあるんですか?」
また沈黙は挟まったが、応えてくれる気はある様子に、ルカは焦れることなく待った。
「……ジガルデへの借りを返すため、それもあるのかもしれません。しかし肝心のところは、よく覚えていないのですよ……」
「覚えていない……?」
適当を言ってるようにも、嘘を言ってるようにも見えず、ルアは首を傾げた。
すると、今度はFの方から問われた。
「あなたこそ、巻き込まれたメガヤミラミの件はまだしも、なぜ今回は私やジガルデに協力を?」
今度はルカが沈黙した。当然の疑問ではある、今回の件にルカが関わる理由はない。
「……暴走メガシンカで苦しんでるポケモンを見たくないだけですよ。トレーナーとして」
「……そうですか」
一瞬、躊躇いを含んだルカの語調。だがFはあえてその空白を埋めようとはしなかった。
それは道なりに進むにつれて、徐々に地鳴りのような震えが足下に響いてきたからでもあった。
「どうやら、ゴールは近いようです」
Fが言うには、この振動はメガエネルギーが貯蔵された地下から吸い上げられていることによるものだろうとのことだ。
(まるで心臓の鼓動……というのは死者の眠る地の例えとしては皮肉が過ぎるか)
しつこく襲いくるゴーストポケモンを退け、通路を進むと奥には明るい空間が見えた。
そこは、これまでの地下墓場とはかなり趣の異なる空間であった。
四方は開け、天井は高く、部屋中はパイプラインが蜘蛛の巣のように張り巡らされ、中央の塔のようなものに繋がっている。
おそらくはあれが貯蔵庫なのだろう。下には操作パネルのような機器が設置されている。
「あれが制御装置の操作端末でしょう」
「大昔のものなのに、そんなものが」
なんにせよようやく着いた、ルカは安堵するが同時に気付く。天井から何かが迫っていることに。
操作機材に近づくルカとFを阻むように、そのポケモンは降り立った。
「これは……ゴルーグか!?」
ルカが叫ぶ。青みがかった土塊の肉体、胸の傷跡からエネルギーが時折噴き出す、古代人が作ったと言われるポケモン、ゴルーグ。
だが、目の前のゴルーグはルカの知るものよりも数段大きい。最近になって時折、ミアレで見られるオヤブン個体と呼ばれる存在のように。
「制御装置の……いえ、カタコンベ全体の守護者……ということなのでしょう。全く、AZも厄介なものを残してくれる」
珍しく、Fが誰かを糾弾するように愚痴っぽく呟く。
それに守護者というだけではない。内から来る既視感のある強い敵意、あれもまたメガエネルギーの影響にあてられている
「倒さない限りは、制御装置には近づけません。厄介そうな相手ですが、準備はよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。戦闘はこちらで引き受けますので、Fさんは隙ができたら制御装置の方へ」
Fがこくりと頷くと、2人を待ち受けるゴルーグとのバトルが始まった。
「カエンジシ、”ねっぷう“」
炎が渦巻いて、ゴルーグを襲うが巨体を覆い切れず、攻撃を受けたゴルーグは怯まずにこちらへと向かってきた。
「”ふきとばし“」
バルジーナの起こした突風がゴルーグの進撃を押し留めるも、質量が大きすぎて本来の効果の距離を引き離すほどには至らない。
だが、足止めには十分だ。こちらにはまだカエンジシもいる。
「”ソーラービーム“」
周囲のメガエネルギーを取り込んで、“ソーラービーム”の
ワザプラス、そう呼ばれる技術だ。打ち出された光線はゴルーグの身体を揺らし、腰から崩れ落ちる。
「仕留めた……わけはないか」
体勢を崩しただけで、効果抜群の大技を受けながらも、ゴルーグには十分な余力が感じられた。
戦闘音に気付いたゴーストポケモン達がメガエネルギー貯蔵庫に集まり出す。
ゴルーグだけでさえ厄介だというのに、このままでは完全に囲まれてしまう。
「Fさん、俺が足止めするのでゴルーグが立て直す前に行ってください!」
真っ直ぐとFを見据えてルカが言った。Fは首肯すると、カエンジシとともにゴルーグの脇を抜けて制御装置に近付いていく。
尻餅をついた体勢のまま、Fへと腕を伸ばすゴルーグに、バルジーナの“イカサマ”がぶつかり、動きを止める。
「そのまま、ゴルーグの気を引いてくれ!」
ルカの指示の通り、バルジーナはゴルーグの目前を飛び回って狙いを向けさせる。
その隙にFは制御装置まで辿り着き、操作パネルに触れていた。
ゴルーグの“ストーンエッジ”が、バルジーナを襲う。それは身を掠めるが、それだけでバルジーナの動きが目に見えて鈍った。
技によって突き出した岩は、そのまま壁に突き刺さる程に強大だった。
(効果抜群とはいえ、掠っただけで耐久自慢のバルジーナが……!?)
ルカはバルジーナに“はねやすめ”で体力を回復させる。だが、ゴルーグの猛攻は止まらない。
ゴルーグの“れいとうパンチ”が直撃する寸前、背後からFのカエンジシが“バークアウト”で攻撃を仕掛ける。
背後からの強襲に片膝を付き、“れいとうパンチ”がバルジーナから逸れて空を切る。
おそらく、あのままでは一撃で戦闘不能だった。
ゴルーグはまたしても大したダメージでもないかのように立ち上がった。
動きは鈍いが、耐久力と攻撃力がまともではない。このままでは押し切られる。
「あと少し!時間稼ぎをお願いします!」
「バルジーナ、“ふきとばし”で壁に押し込め!」
戦略も何もない、完全に力技だった。技の持続時間を強引に伸ばして“ふきとばし”を撃ち続ける。
無理やりゴルーグをその場に押し留める。だが、周囲からはゴーストポケモン達が迫っていた。
「ギガイアス!“ステルスロック“!」
新たに繰り出したギガイアスがルカ達の方へと迫るゴーストポケモンを足止めする。
石礫を強引に突っ切ってきたゴーストポケモンを”ストーンエッジ“でまとめて吹き飛ばす。
Fの方はカエンジシが守っているが、バルジーナはゴルーグに掛かり切りだ。
パイプラインの隙間の死角からギガイアスを抜けた野生のゴーストの“こごえるかぜ”が、バルジーナへと吹き付け動きを鈍らせる。
「まずいっ……!」
バルジーナの決死の“ふきとばし”が途絶えた瞬間、動きを取り戻したゴルーグの放った“じしん”が部屋全体を揺さぶった。
ルカはこの揺れの影響を強く受けるであろう、足が不自由なFの方へと視線を向ける。
「むぅ……!?これは……!」
Fは踏ん張りが効かずに、床に倒れた。カエンジシも技に巻き込まれて戦闘不能に追いやられる。
(このままだと……Fさんが!?)
多少離れていたが、ギガイアスにも少なくないダメージが入っていた。その隙に、ゴーストポケモンの集団が入り込んでくる。
更にゴルーグは揺れで倒れたFへと襲いかかろうとする。ルカはFの方へと走りながら技の指示を出した。
「バルジーナ!“イカサマ”!」
唯一、飛行タイプなので“じしん”の影響を受けていなかったバルジーナが、技の連続使用による疲労から立ち直って、今まさに”シャドーパンチ”を放とうとしていたゴルーグにぶち当たる。
Fを狙った技はあらぬ方に逸れて、貯蔵庫に繋がるパイプラインのひとつに直撃した。
ゴルーグの技の威力に風穴が空き、パイプを流れるメガエネルギーの奔流が流出する。
「バルジーナ!」
ゴルーグとともに巻き込まれそうになったバルジーナを、ルカは咄嗟に抱き込むようにして引っ掴み、飛び退いた。
その瞬間には、先程までルカ達のいた場所はメガエネルギーに飲み込まれる。
「まさか……メガエネルギーがこの場に全て漏れ出して……」
「いえ……ギリギリでしたが、パイプラインの閉鎖は間に合いました。セーフ装置で貯蔵庫のエネルギーが逆流することもありません」
あくまで、まだパイプ内で残存していたメガエネルギーが溢れたに過ぎないと、まだ制御装置の方に居るFは続けた。
これで終わったのかと、ルカはそう思ったが、Fはまだ油断なく流出するメガエネルギーの流れに視線を向ける。
ルカもまた、思い出す。今、メガエネルギーの奔流の中にいる存在を、そしてメガエネルギーの影響を受けたポケモンがどうなるのかを。
爆発的なエネルギーの迸りが、内部か今なお流れ続けるメガエネルギーの流れを吹き飛ばした。
中から現れた存在、それは暴走メガシンカしたこのカタコンベの守護神。
その存在感に圧倒されるように、ルカはその名を呟いた。
「メガ……ゴルーグ……」