Pocket Monsters Z-A étranger   作:ローロー仮面

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11話

「これで暴走メガシンカは収まるんですか?」

 

 カタコンベを出る際に、ルカはFに問うたが、彼は首を横に振った。

 曰く、これ以上の早期悪化を防いだだけで、根本的な問題を取り除けたわけではないとのことだ。

 

 地下には既に十分なメガエネルギーが貯蔵されており、プリズムタワーの暴走は止まらない。

 ただその暴走の加速に歯止めをかけたに過ぎず、地上のメガエネルギーの濃度は高まり続け、暴走メガシンカは今後も発生し続けるとのことだ。

 

「あとはジガルデがどうにかしてくれるでしょう。完全な姿を取り戻せればの話ですが」

 

 最後に、クエーサー社と暴走メガシンカの関係についても何か知ってないか聞いてみたが、内情までは知らないとのことだ。

 

「少なくとも、騒動を収めようとする意思はあるのでしょう。以前、メガチャーレムを鎮圧していたのは、()()()と彼らの関係者のようでしたから」

 

 それ以上は何も言わずに、彼はまた消えるように去ってしまった。

 

 地上に戻ると、地下での戦いの余波による振動は中々騒ぎになっていたらしく、大きな揺れが続いたとして騒動になっていたようだ。

 地下を出てスマホロトムに電波が繋がった瞬間、ルカを心配したアイシアから何度も連絡が来ていた。

 

 とりあえず無事だけ知らせてポケモンセンターに寄り、今日はポケモンを預けて宿に戻ると、疲労からそのまま泥のように眠り、目覚めたら丸一日経っていた。

 

 寝たのが昼前だった筈なのに、もう朝になっている。ルカは念の為ポケモンの世話をポケモンセンターに頼んでおいて正解だったと安堵した。

 とりあえずルカはお腹が空いたので、行きつけのヌーヴォカフェで食事を済ませることにした。

 

 

 

***

 

 

 

 まだ早朝だというのに、フードトラックの周囲に設置された席は全て埋まっていた。

 いつもはちゃんと採算は取れてるのか心配になるのにえらい繁盛ぶりだとルカは思った。

 

 他の地区の店舗から応援も呼んだのか、従業員が多い。よく見る女性店員も忙しそうに動き回っている。

 普段は彼女が注文を取ってるが、無理そうなので店主である目の細い青年に直接いつものと頼んだ後で、随分と人が多いけど何かあったのかと聞いた。

 

「昨日の地震の後で、古い家屋がいくつか崩落してしまいまして、宿を失った彼らに炊き出しを行っているのです」

「……そんなことがあったのか」

 

 原因の一端を担う者として、責任を感じなくはなかったが、ルカにとってもどうしようもないことだ。

 とりあえず、彼らにチップくらいは弾もうといくらか多めにお金を出した。

 生活を考えると痛手ではあるが、ルカも何もせずにはいられなかった

 

「……チップにしても、随分多いですね。こんなには受け取れませんよ」

「いや、気にしないでくれ。あなた達の活動は本当に立派だ」

 

 渋々といった様子で、店主はお金を受け取った。そして彼は言った。

 

「あなた方も随分と奔走された様子。地下水道から降りてまで……」

「えっ……!?」

 

 なぜそれをと言おうとして、背後からの声に遮られた。

 

「ああ!なんか変な臭いすると思ったらお前か!?下水道みたいな悪臭しやがって!ここ飲食店だぞ!」

 

 いつもの店員が、ルカに気づいてそう言い放った。そういえば地下から戻ってから、まだシャワーすら浴びてなかったと思い出す。

 地下墓地にまで行ったことを考えれば、下水道みたいな臭いで済んでるのが不思議なくらいだ。

 

 店主はこれが言いたかったのかとルカは納得した。こんな場所で下水の臭いを撒き散らすなど公害に等しい。

 こんな臭いがしていては炊き出しに来ている避難者たちも、自分が浮浪者になってしまったようで気分が良くないだろう。

 

 思えば、昨日ポケモンを預ける時に応対してくれたジョーイさんの笑顔も引き攣っていた気がする。

 

 自分では臭いに気づかなかったが、この分ではそのまま寝てしまった宿の部屋内も酷いことになってそうだ。

 宿の主人に先に気づかれてはまずい。下手をするとしばらく野宿しなければならないかもしれない。

 

 ルカは一気にパンを頬張り、コーヒーを飲み干すと、悪臭の謝罪もそこそこに急いで宿へと戻った。

 そんな彼の背中を、店主は細い目つきの奥に潜んだ眼光でじっと見つめていた。

 

 

 

***

 

 

 

 あの後、消臭用の道具を買って戻ったら、そこで宿の主人の老人と出会してしまった。

 どうやら先に部屋の様子を知ってしまったようだが、ちゃんと臭い取りする意思のあるルカの様子に許してくれた。

 

 むしろ浮浪者が多かった昔のミアレを思い出して懐かしかったと笑っていたが、ルカは苦笑いで返すしかなかった。

 片付けもようやく落ち着いたので、ようやくポケモンセンターから迎えに行ったポケモン達を連れて、少し街の外まで足を伸ばしていた。

 

「ここならいいか……」

 

 13番道路の荒野の片隅、周囲に人影がいないのを確認して、ルカは手持ちのポケモンを全てボールから出した。

 バイバニラ、シンボラー、ギガイアス、バルジーナ、そしてサザンドラとゴルーグもだ。

 

 ルカのパートナー達はミアレでも珍しいポケモンが多い、こんなことを街中ですれば目立ってしまう。

 そのため、ボールの外で一緒にいる時間を長く取る時は、いつもこうやって街の外まで足を伸ばしている。

 

 一度に全員を出したのはゲットしたばかりのゴルーグとの顔合わせもあった。

 

 だがまずは、カタコンベでの戦いで無理をさせたバルジーナのことが気がかりだった。

 そっと羽を撫でてやりながら、彼女を労う。

 

「先日は無理をさせたね。すまない」

 

 気にするなとばかりにバルジーナは鳴いた。実際、バルジーナは普段よりも上機嫌なように見えた。

 なんでだろうと首を傾げていると、バルジーナが見慣れない骨をいくつも羽の中に隠し持っていたことに気づいた。

 

「なっ……!おまっ……!まさか……っ!?」

 

 カタコンベの中で、バルジーナとはずっと一緒にいたが薄暗かったので何をしているかはっきり見えていたわけではない。

 骨を集める習性があるのは知っているが、流石にカタコンベから骨を持ってくるのは不味いだろうとルカは思った。

 

 生き物としての習性の行動を人間の倫理観で咎めることはできない。

 無茶をさせた負い目と骨が手に入って、嬉しそうなバルジーナの姿にルカは何も言えなかった。

 

(仕方ない……うん、仕方ない……)

 

 ただでさえ結果として墓所を荒らしたわけだから、祟られないといいなとルカは帰りに清めの塩を買っていくことを心に誓った。

 気を取り直して、メガゴルーグの攻撃から盾になってくれたギガイアスへと視線を向ける。

 

「お前にも、いつも庇われてばかりだ」

 

 そう言って、撫でてやるとギガイアスは満足気に頷いた。

 普段から素直な性格で、トレーナーに忠実な彼をルカは頼りにしている。

 

 バイバニラとシンボラーもそうだ。ZAロワイヤルでのバトルでは主力として戦ってくれている。

 この3匹はルカを、リーグトレーナーだった時も主力としてずっと支えてくれているポケモン達だ。

 

 次はメガゴルーグを倒したサザンドラへと近づく。

 

「悪いな。いつもボールに引っ込めてるのに、肝心な時は頼っちまう」

 

 気にするなとばかりに小さく唸る。戦闘の時とは打って変わって、今は静かに落ち着いている。

 だが、サザンドラの右腕の頭だけが嬉しそうにルカに擦り寄ってきた。

 

 両腕の頭は脳がないが、ルカのサザンドラの両腕は本体の本能に影響されて行動する。

 右腕は戦闘中、特に凶暴だが平時はこうしてルカに真っ先に懐いてくる。

 

 ルカが微笑ましく笑うと、少し恥ずかしかったのだろう。サザンドラは身体ごとそっぽを向いてしまった。

 そんなサザンドラにバイバニラはクスクスと笑いながら遠慮なく揶揄いにいった。

 

 サザンドラを相手にはギガイアスやシンボラーも少し警戒するし、バルジーナに至ってはびびって子分のように謙るが、彼女だけはそうではない。

 

 タイプ相性もあるのかもしれないが、あの二匹は最も古い付き合い、それこそルカと出会う前から一緒にいた。

 お互いに遠慮がないのであろう。サザンドラも鬱陶しそうに唸り返すが腕の頭は威嚇していない。

 

 二匹の様子に相変わらずだなと思いながらも、ルカは最後にゴルーグの元へと向かった。

 巨体のゴルーグが、微動たりともせずに佇んでいる。カタコンベで死闘を繰り広げたルカやバルジーナ、サザンドラに対しても何の反応も示さない。

 

「君には、これから俺たちとともにZAロワイヤルという、トレーナーとパートナーのポケモン同士が戦う大会に、一緒に参加して欲しいと思っている」

 

 ゴルーグは反応を返さない。聞いているのか、言葉で話し続けて意味があるのか、そんな疑問が胸を過るがルカは続けた。

 

「役目を終えた以上は戦いはしたくないのならそれもいい。実際参加してみて合わなければ途中で投げ出したっていい」

 

 ポケモンは、本能としてバトルすることが好きだとされているが個体差はある。

 まして、このゴルーグは数百年も役割として地下のカタコンベを守り続けていたのだ。それがトレーナーと一緒に戦うなど飲み込めないかもしれない。

 

「けど、それでも戦ってくれるなら……俺とともにこのZAロワイヤルを戦って欲しい。役目が必要なら俺が与える。それが、君を地下から連れ出した俺の責任だ」

 

 ルカは手を差し出した。暫しの沈黙、無理だったかと思ったその時、ゴルーグの瞳に静かな黄色い光が灯った。

 ゴルーグの腕が、差し出したルカの手に鏡合わせに重なるように伸ばされた。

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