乗っ取り系魔物「クックックッ、俺に身体を貸せ……」魔法少女「貴方の力なんて借りない!」   作:タロスズ

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うるせぇ!ジャンクフード食わせろ!

「ジャンクフード食わせろぉぉぉっっ!!!」

「いきなりどうしたの貴方!?」

 

 色々とあった後のある日……アークとユキはいつもの様に部屋でそれぞれの時間を過ごす。

 

 始めはつかず離れずのこの距離感も関係も鬱陶しく思えたが、思ったより人間の適応能力は高いようで、いつの間にかさしたる心配はなくなっていた。

 

「あぁぁぁぁ!!油と肉汁に溢れた明らかに身体に悪い物が食べてぇ!!マ◯ク食べてぇ!ハンバーガー食いてぇ!!」

「あなたこの間ケバブ食べてたじゃない……!」

「ケバブとハンバーガーは違う!!違うから!!」

 

 時たま食に飢えたアークがこうして我儘を叫び出すのを除けば……だが。

 

 アークはユキ以上に食に関しての拘りがつよい。ユキが前までのようにレーションを食べようとすれば無理やり奪い体を乗っ取り、飯を作ってくる。

 

 そんな執念じみたものを持っているアークだからか、時折こうして無性にナニカが食べたい時と言うのがやってくる。ユキにはイマイチ理解しがたい感情だが、厄介な状態なのには変わりない……

 

 前に珍しく若干センチメンタルなアークを見られたというのにすぐこれだ。

 

 どれだけ日常を謳歌したいのだろうか。それとも、嫌なことを思い出して無理やり切り替えようとしてるのか……兎も角、前の少しシリアスなアークは何処に吹っ飛んだのだろうか。

 

「なぁ相棒ぉ。ハンバーガー買いに行こうぜぇ?」

「嫌……そもそも私達無許可で外出れないし。」

「でも俺ハンバーガー食いたいんだが?」

「駄々っ子かお前は!?」

 

 アークの我儘っぷりはいつもの事だが……相手が事強大な力を持っていると手に負えない。ユキの心情としては、今さらアークが癇癪で人に危害を及ぼすとは思えないが、万一がある。立場的にはどうにかしなくちゃいけないのだが……

 

「……うぅん。どうしたもんか……」

「……はっ!なら通販すれば良いんじゃね!?今は色々あるんだろ?Uberなんたらとか!」

「聞いたことはあるけどそんなアプリは入ってないし……入ってたとしてもここまで運べるわけないでしょ。」

「……なら、他の誰かに頼もうか。金はお前持ちで良いよな?」

「えっ?まぁ買えるなら別にどうでも……」

「いよっしゃぁ!」

 

 アークはその掛け声の下、勢いよくユキの中へと飛び込むのだった。

 

――――――――――――――――

 

 

 

「ぜぇ……はぁ…………ゆ、ユキぃ!買ってきたわよ!ビッグマバーガーとチーズバーガーセット!ついでに私の分!!」

「おぉ、サンキュー。」

「……アーク!!」

 

 息を絶え絶えにしながら部屋にやってきたのは、両手にハンバーガーショップの袋を抱えてくるアサヒだ。あの後、アークがユキの体を乗っ取り、スマホでアサヒに連絡をつけたのだ……当然、中身がアークである事は伏せて。

 

「……あ、れ?もしかしてあのメール……ユキからじゃない?」

「えぇ、アークがね……」

 

 ユキとアサヒはジトーっとアークを見つめる。だが、アークはそんな冷ややかな視線など何処吹く風に、アサヒが持ってきたハンバーガーの袋をあさっていた。

 

「うっひょ!美味そぉ!」

「アーク……!」

 

 するとアサヒは心底ショックを受けたのか、膝から崩れ落ちて頭を抱えている。

 

「可笑しいと思った!……いつも業務連絡くらいしかしないユキから『お腹すいたからハンバーガー買ってきて届けて〜☆』なんてメールが来るなんて!折角ハルザキさんに無理通して入れてもらったのに!!」

「私が言うのもアレだけど、明らかに私のメールじゃないって分からなかったの?」

「ユキがご飯についてのメールしてくれたのがうれしすぎて頭から外れちゃってた……」

 

 魔法少女はポンコツばかりなのか?一瞬そんな言葉がアークからでかかったがすぐに飲み込む。そんなのはずっと前から知ってた事だ。他人の成長だったり好転を只管に喜ぶ……そんな奴らばっかりだ。魔法少女なんてのは。それは良いとして……

 

「良いからハンバーガー食おうぜ!ジャンクフードだよジャンクフード!!」

「……貴方前に私に『健全な魔力は健全な食事から』とかって言ってなかった?これは健全な食事なの?」

「健全な不健全な食事だ!こう言う如何にも!ってのも体には大事なんだよ!」

「貴方の食に関する拘りは本当に分かんないわ……」

 

 ユキからすれば、いままでアークが作ってくれたような料理と比べると明らかに身体に悪そうな感じがする。むしろ、栄養食なレーションの方が数割増しではなかろうか?

 

 だが、ここでまたゴネるとハンバーガー食べたいと駄々をこねたアークと同類だ。ユキは仕方がないと言わんばかりに袋からハンバーガーを一つ取り出す。

 

 すると、その光景を見てアサヒは感涙した。

 

「うっ……うぅ!」

「アサヒ!?」

「ユキが……ユキがこんな騙されたみたいな形でも……自分からちゃんとご飯を食べようとするなんて!私は感動してるよ!」

「アサヒの中で私はどんな人間に出来上がってるの!?」

 

 もはやアサヒからの目線がただの親になってきている……いや、ある種そうなのかもしれない。

 

 幼少期に両親を魔法少女と次元獣との戦いで失ったユキにとって、そこから共に過ごしてきたアサヒはある種の親代わり……同時にアサヒにとっても、ユキは大切な見守るべき存在なのだろう。それがいつの間にか、魔法少女としてはアサヒの方が守られるべき存在になってしまったが。

 

 最終的にユキはチーズバーガーを、アサヒはてりやきバーガーを、アークはビッグバーガーを手に取って食す。年頃の女の子にはカロリーが気になるだろうが、彼女らは常に身の危険があるおかげでカロリーの消費量については何の問題もなく、おいしくいただける。

 

 アークはその炎の状態でもぱくぱくとバーガーをかじりながら叫ぶ。

 

「いやぁ!うめぇ!うめぇうめぇ!」

「アーク……貴方ってその姿で味分かるの?」

「分かるぜ?もっとも味覚って意味ならお前ら人間の味覚のほうがはるかに優秀だけどな。」

 

 アークに分かるのは味の美味い不味い、甘い苦い酸っぱい……その程度の認識だ。人間のように高度な旨味や味を認識することはできない。それでも。美味いのだけはよく分かる。

 

 すると、アサヒもユキに問いかける。

 

「ユキは!?どう!?初めてだよね?こう言うの食べるの!美味しい?」

「…………わかんない。」

 

 確かに食べやすさやカロリーの面からなら中々よい食べ物だ。片手でも食せる……だが、これを好んで食べるかと言われれば首を傾げる。勿論一切不味い訳ではないが…………これならアークの作ったご飯を食べても……

 

「……わからない。」

「なんで2回言ったの?」

 

 そんな事を考えた自分の頭を振り払うように、ユキは改めてつぶやいた。

 

「っ!そう言えば、お金は後で渡すから……」

「んっ?そうだね〜それじゃあさ!今回は私持ちで良いから今度どっか奢ってよ?」

 

 さらりと次の約束を取り付けるアサヒ……こういう所では、やはり自分は周りには敵わないとユキは実感する。

 

「……はぁ、アークが付いてくるけど?」

「ん〜……まっ!ユキが楽しめそうなら良いんじゃない?」

「楽しめないわよ……」

「ポテト美味っ!?ナゲット美味っ!?」

「あっ!?ちょっ!?それ私のナゲット!?5ピースしかないんだから取らないでよ!?」

 

 アサヒの食べ物を勝手に取って食べる子供みたいな行動をとるアーク……アークは、一体いつから()()なのだろうか。子供っぽく、人間よりも人間を楽しみ、食を楽しみ、生きることを楽しむ。

 

 そんなアークだ……そんな彼が、何かに寄生し、取り付けなければ息を吸って生きていくことすらままならないとは、一体どんな気持ちなのだろうか?どれだけ辛いのだろうか?

 

 ……いや、辛いと言う言い方は失礼か?それでも、ユキはそう思わずにはいられなかった。それだけ、ユキにとっては目の前の異形の化け物が、人間らしく思えたのだから。

 

(……本当、私がアークなら良かったのに。)

 

 ユキは少しそう思う。

 人間である自分に誇りがないわけではないが……ただ魔法少女として、誰かを助ける事を、他者のために全てを賭け、その他全てを捨て去ってきた自分と、自らの命を謳歌し、時に他者のために手を貸すアーク

 

 ……お互いの立場が逆なら、相応にうまくいったのではないか?そんな事を考えてしまう。

 

 もちろんそれがどれだけ驕った考えかは理解しているし、そんな事をアークやアサヒに言えば喧嘩勃発は間違いないので言葉にはしないが……それでも、思うものは思ってしまうのだ。

 

(……はぁ、駄目ね。アークに毒されて……)

 

 ユキはそんなことを考えつつポテトフライに手を伸ばすが……すでに中身は空……ふと見上げると、アークがポテトフライをもしゃもしゃと食べて、アサヒがそれに対してブチギレていた。

 

「くっそウメェなこれ!やっぱ!」

「なんでユキの分まで食べるのさ!?この馬鹿!!」

(……本当、こんな風にはならないようにしないと……)

 

 ユキは目の前の、とても何百年も生きてそうとは思えないほどガキみたいな行為をする禁断の魔物を見ながら、改めて思い直すのだった。

 

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