乗っ取り系魔物「クックックッ、俺に身体を貸せ……」魔法少女「貴方の力なんて借りない!」 作:タロスズ
「雷撃速攻!!......雷ノ鉄槌ッ!!」
雷撃の魔法少女……カコの素早くも力強い鉄槌の一撃が現れた次元獣をモグラ叩きの要領で叩きのめしていく。相手もモグラ型の次元獣で穴を掘っては逃げ掘っては逃げを繰り返すので、まさにうってつけだ。
「霞魔忍術!!......乱れ影ッ!!」
反対に霞の魔法少女……アミは体を分身させて数で攻める。素早い身のこなしと愛器のクナイを投げつけて、次々と次元獣を仕留めていく。
2人の速攻の技は次々に、次元獣による被害が広まる前に撃退していく。魔法少女としては満点な戦い方だ。
この戦いを見世物として見る者からすれば『派手さが足りない』等とほざくのかも知れないが、そういう意見は大抵袋叩きだ。被害が出ないに越したことは無いのだから。
そのくせ、魔法少女にエンタメ性を求める声は大きいのだから矛盾を感じる。
二人は全ての次元獣を仕留めると、ビルの上から楽しそうに両手を上げて笑顔を振りまく。すると、事の次第を見ていたギャラリーが浮足立っていた。
「可愛い!」
「素敵!」
「尊いわぁ!さっすが期待の新人魔法少女!」
「前に居た弾丸の魔法少女や、水流の魔法少女も良かったけど……まさか辞めちゃうとはねぇ。」
……セリフは様々なれど、その言葉が尊敬の念を込められているのがわかる。本人からでもわかる客寄せパンダな扱いにアミとカコも内心思うところはある。
この次元獣達は、ユキやアークやアサヒが戦ってきた相手とはレベルが違う……勿論、低いと言う方の意味であるが。だからこそカコやアミも余裕を持った対処ができ、こうしたファンサービスを行えるのだ。
だがまだ魔法少女としての日が浅い彼女らには、これも立派な経験であり必要な事なのだ……魔法少女たるからには、こういったファンサも覚えなくては。
ユキ?あれは例外中の例外である。ありとあらゆる意味でメディアに向いていない上に、突出した力を持っているから許されているのだ。アークが取り付いている今となってはなおさらに。
だが、アミとカコもこの現状に少し思うところがあるらしい……彼女らも、所謂魔法少女のアイドル的な側面に惹かれた所が無いわけではないが、それと同じ以上に、次元獣の魔の手から人々を助けたいという願いを持っているのだ。
「いやぁ、これじゃあ道化だねぇ。」
「仕方がないよ。これも修羅の道だね……!?」
アミはカコと話す中、とっさに気配を感じる……何かに潜むような気配。そう、まるでアークの様な……だが、カコは特に何も感じておらず、小首を傾げている。
「……あれ、アミ。どうしたの?」
「……今気配が……」
霞の魔法少女、アミは気配察知に長けている。
それこそ、今いる魔法少女の中ではトップクラスに……そんな彼女が察知したということはまず間違いなくいるということだが……
「アミ、場所は?」
「少し探ってみる……霞魔忍術......
クナイを地面に当てて風を感じる……魔法により感覚器官を研ぎ澄ませ、風の僅かなゆらめきで特異な気配を察知できる技だ。普通は周りの一般人との区別がつかない所だが……そこは、魔力によってカバーしている。
……なの、だが。
「……可笑しい、気配は感じるけど場所が特定できない……まるで
場所が特定できない。それだけで相手の得体のしれなさが上がる。カコは少し息を呑むと、アミに問いかける。
「……アミ、どう?」
「まだ敵がいるかも……」
「次元獣?」
アミは首を横に振るう。
「いや、次元獣の感じじゃない……!近いのは……この間アーくんとショッピングした時に出会った奴!!!」
「!?少し探してみようか?もしも良さそうならアーくんにもハルザキさん通して連絡してもらおう!」
2人の中である程度の結論が出ると、お互いに頷き合いその場から消える。確証はないが…………もしも何らかの危機になり得る存在なら、対処するのが一番ベターだ。
それに二人は触りだけではあるが、アークの同類……それが、次元獣に取り憑き成長することを知っている。警戒しない手はない。
―――――――――――――――
場面は移り変わり。
魔法少女達がそうして日の目に出る中……場面はほんのもう少し遡り、魔法少女達二人が注目を浴びているところに移る。
ビルの物陰、一人の少女が若干ぼろぼろになりながら、ビルの上で輝く魔法少女二人を見上げていた。1人はロッカーでトゲトゲしく、稲妻の意匠を持つ衣装を纏う……雷撃の魔法少女。
もう一人は、和装で薄紫色の……まるで忍びのような衣装を身に纏う魔法少女……霞の魔法少女だ。そんな彼女らを、その少女は羨望の眼差しで見上げている。
「……いいなあ。」
不意に言葉にしたのは、そんな言葉だった……彼女の名前は『フルベ・シラノ』……かつては『弾丸の魔法少女』と呼ばれた少女である。
もっとも今は、魔法少女としての力も失いその辺を漂い歩く、魔少課からの支援を受けている不登校の学生だが。
彼女は魔法少女として高い力量を誇っていた。狙った場所で必ず着弾させる命中力に狙撃技術、銃や弾丸を形成する生成術。どれをとっても一流だった。
それが何故、今はこうして雲の上の存在を見るように魔法少女を見上げているのか?
……魔法に必要なのは魔力、純度が高くより高品質な魔力を得るには清いメンタルが必要不可欠。一度それが恐怖などで黒く染まれば、魔法少女として活動できなくなる。
それは決して表立った精神的負傷でなくても、徐々に心にたまった疲労でも同義だが……これは余談である。
魔法少女の中には乗り越える事が出来る者もいるのだが……彼女が心にした恐怖は、そんな生易しいものではなかった。
あの日……アークがユキと契約した日に現れた触手型の次元獣。その次元獣の力は絶大だった……中衛にて援護射撃を行っていたのがフルベ、弾丸の魔法少女だ。
だが、その次元獣は玄人揃いの前衛を纏めてなぎ倒し、あっという間に中衛のフルベの元までやってきた。その際の阿鼻叫喚は、フルベの耳にしっかりと残ってる。
『いやぁぁぁぁ!!助けて!!』
『こいつ!?援護を゛ぁ゛ぁ』
『血が、血が止まらないよぉっ!』
死傷者がでなかったのは幸いだが、その心の傷はとても深く魔法少女達に刻まれた。
それが原因で多くの魔法少女が再起不能となった……だからああして新人の魔法少女が幅を利かせてる……と言えば言い方が悪いが、目立っているというわけだ。
他に代わりも居ないのだから。
勿論魔少課も全面的なバックアップは行っていたが……ネットに流れるやめた魔法少女達をよって集って責めるような書き込みに心を蝕まれることもあるのも事実。
だが、フルベは魔法少女として戦えなくなった今でも思うところがあるのか、時折拳を握りしめる。
自分がもっと強ければ、自分があの程度で折れなければ、もっと、もっと、もっと……自分に何かが、足りていれば。まだ、魔法少女でいられたのではないか。そう思わざるおえないのだ。
溜まりに溜まった不満は、いつしかついに言葉になる。
「……魔法少女、まだやりたかったなあ……」
「やりゃあいいんじゃね?」
不意に声が響く………建物の影の中。ギロリと白い目が光った。まるで、それはかつてユキと初めて出会ったアークを思い出させる姿だが……フルベにそれを知る術はない。
その影はまた話す。また同じように、なんてことなく、友達に語りかけるような口調で。
「やりゃあ、いいんじゃね?」
全く同じトーン、全く同じ口調で、その影は目の前の魔法少女だった女に声を掛ける。すると、影の中から白い光がニヤリと笑みを浮かべるように吊り上がる。
「なあ?やりゃあ良いんじゃね?手を貸そうか?」
その余りにも恐怖のそそる光景……だが、反対にその声色は段々と優しくなっていく。まるで、疲れ果てた子供をあやすようなそんな口調と声色に。
その魔法少女は方唾を飲み、目の前の影にまた問いかける。
「貴方……何者?」
「んなっ。」
すると、その影はあちゃ~と言わんばかりの口調で唸る。
「そうか、名前か。お前らにとっちゃ大事な物だよな。そう
だが、影は唸るばかりで名を名乗ろうとしない……すると、嬉しそうな笑顔を白い光で表現しながらフルベを指差す。
「っ!?」
「そうだ。君が、名付けておくれよ。そうだなぁ……」
その影はまたしばらく考え込んでいると、思い出したか……はたまた思いついたようなあからさまな声を上げてつぶやく。
「
そう言って、またその影はアハハと明るく笑う。
その影は後にこう名付けられ、こう呼ばれる……
『