乗っ取り系魔物「クックックッ、俺に身体を貸せ……」魔法少女「貴方の力なんて借りない!」   作:タロスズ

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お久しぶりです。リハビリがてらゆるりと書いていきます。


命は大事にしていこうね!

 

 弾丸の魔法少女復帰……そのニュースは、すぐに世間を沸かせた。元々弾丸の魔法少女はトップクラスの人気と実力を誇る魔法少女……元より復帰を望む声は非常に多かった。

 

 一部では魔法少女としての信用問題と称して難癖をつける動きもあるが、その多くは喜びの声に打ち消されていった。

 

 突然のことではあれど、それを喜ぶ声は大きく彼女の活躍はまたたく間にテレビや雑誌に映されることになる。

 

無数の弾丸を雨のように降らせて敵を殲滅するその様は、確かに息を呑んでしまいそうになる。

 

『弾丸の魔法:八式!バレット・レイン!』

 

 アークはユキと共にその活躍を眺める(のにつき合わされ)ながら呟く。テレビに映るのは、無数の弾丸を操り敵を撃滅する姿だ。

 

「ほへぇ、結構強いんだな。」

「当たり前でしょ……!流石にフルベさん!!むしろ前より断然強くなってる!」

 

 目をキラキラと輝かせながらテレビに映る弾丸の魔法少女……フルベの活躍に釘付けになるユキ。その瞳は、まるで宝石のように映像を映し込んでいた。

 

 その姿はまるで子供のように見える。いや、実際まだまだ遊び盛りの子供なのだからこのくらいが健全なのかも知れないが。圧倒的な弾数と火力で次元獣を殲滅するその姿は、アークも若干身震いする。

 

 流石にアレは手こずりそうだ……

 

「しかし、随分正確な射撃だな。あんだけ乱れ撃って一発も外してねぇ。」

「きっと訓練してたんだ……!流石フルベさん、ただじゃ転ばないんだ……!!」

 

 自分が取り憑いている少女の盲目的なまでの心酔っぷりやキャラの変わりようにアークは若干……というか、かなりドン引きしながら肩を窄める。

 

「お前……なんでそんなに心酔してんだよ。」

「心酔じゃないわよ……正当な評価!」

「いや正当ではねぇよ多分……」

 

 確かに画面に映る魔法少女の力が強力なのは見入るが、それにしたってユキの拘りようは並大抵のものではない。

 

 何か理由があるのは明白だ……これで、ただの心酔であったほうが不安だ。

 

 ……すると、ユキはポツポツと懐かしむように語りだした。

 

「……フルベさんはね、私の師匠なの。」

「あー、んなこと前に言ってたな。」

 

 ハルザキからそんなことを聞いたのをアークは確かに覚えている。魔法少女としての師匠……と言うことなのだろうが……

 

「魔法少女としての研修で私に色々世話を焼いてくれたのがフルベさん……私に魔法少女のイロハを叩き込んでくれた人なの。」

「まぁ、それは分かるぜ?それにしたってなぁ……」

 

 それにしてもユキのこだわりようは異常だ。何かあるとしか思えない……すると、ユキは軽くはにかんで言葉を紡ぐ。

 

「……私はその頃、次元獣を倒すことばかり考えてた。」

 

 ユキはテレビに目を向けたまま、小さく笑う。その表情には、どこか痛みを伴った懐かしさが滲んでいた。

 

「倒さなきゃって、それしか考えられなかった。強くならなきゃ、誰よりも戦えなきゃって。」

「まぁ、お前基本がストイックの塊みてぇな奴だもんな。」

 

 アークは気怠そうに頬杖をつく。

 

「飯も睡眠も二の次。修行修行修行。頭ん中そればっか。」

「……うん。」

 

 否定はしない……というか、本質的な面ではあまり変わっていないような気もする。ただ敵を倒すことに固執することから、何かを守るということもプラスされるようになっているだけで。

 

 いや、力だけを持って荒れるやつよりもよっぽどはましなのだろうが。

 

「でもね。」

 

 ユキは少しだけ口元を緩めた。その目の奥には、確かな感謝の光が宿っている。

 

「フルベさんだけは、そんな私を見て怒ってくれた。」

「怒る?」

「うん。」

 

 懐かしむように、目を細める。その様子は、どこか遠い時間の中に身体を預けているようだった。

 

「『ユキちゃん。魔法少女は兵器じゃないよ。』ってね。」

 

 その言葉を思い返すように、或いはフルベとの関わり全てを思い出すかのように、ユキはぽつりと続ける。

 

「……最初は何言ってるんだろって思ってた。魔法少女……それは、言い換えれば次元獣と戦うための兵器と同じなんじゃないかと。」

「闇落ちしそうな思想だなお前。」

 

 言葉の節々に茶々を入れるアーク、腹は立つがユキは何も言わない。これがこのアークの基本形態だとよくわかっているからだ。今さら腹を立ててもしょうがない。

 

「……ある時、私がしくじってね。次元獣との戦いの中でもろに攻撃を受けそうになったことがあったの。」

「ほぉん?」

「……フルベさんは、そんな勝手にしくじった私を庇ってくれた。」

 

 ユキは改めてテレビを見上げて呟く。その声には、当時の驚きと感動が今なお生きているようだ。

 

「大したケガでもなかったけど、私はそうやって庇ってくれたことに驚いた。次元獣との戦いは、必ず勝たなきゃいけない戦い。そんな戦いの中で何かを守るなんて余裕、あの頃の私にはなかった。」

 

 それは単純な戦闘経験の差……もあったろうが、同時にもっと根本的な考え方の差もあったのだろう。

 

「事が済んでから私はフルベさんに聞いたの……なんでわざわざ助けたんですかって。そしたら……『魔法少女が誰かを守るのは当たり前』ってさ、そう言ったんだ。」

 

 そこに来てアークは理解した。ユキがアークに周りへの被害を抑えるようによく言って聞かせているのはこの経験からなのだと。その指摘の根底には、フルベから受け取った思想がしっかりと根付いていたのだ。

 

 ユキにとっての魔法少女が何か……そのオリジンはきっとそこにあるのだろう。次元獣を倒したいのと同じくらい、何かを、誰かを、守りたい。その想いが、彼女を形作っている。

 

 だから、アークが暴れ街に被害を出しては怒る。理想に対して潔癖なところがあるようだ……アークは同化なんかじゃ人の心の云々はわからないとますます笑いたくなってくる。

 

「だから、私もそうなりたい……誰かのために身を張れるような魔法少女に……ね。」

「ほぉん……よくわかんねぇけどなんか分かった。」

 

 アークはそう言って興味なさげに軽く欠伸をする。アークには理解しがたい考えだ。自己犠牲の精神……それが尊いものだとされているのは分かる。

 

 勿論考え方は色々だが、アークにとってはそれを唱えるものの大半はすり減らすばかりで最後には自身の全てを投げ出している。心が摩耗していくのを知りながら、それでも歩み続ける。そんなことが本当にできるのだろうか。

 

 そんな馬鹿げた話があるのだろうか?誰かのために何かをなそうとするものが何も得られずにすり減っていく。

 

 彼女達からすればその守れたものが何よりもの得られたものなのだろうが…………アークからすればよくわからない感覚だ。

 

 自分が傷付いてまで他人を守る

 

 その行為そのものは否定しない。否定はしないが、それを美徳として積み重ねていけば、最後に壊れるのは決まってそういう人間だ。消えるのは、いつだって良心を持つ者だ。

 

 『他者に取りつかなければ生きていけない』裏返せば『自分のない』アークからすれば、折角手に入れた自己を捨てる行為はどうにも好きになれない。

 

 失ったら、もう取り戻せない。そのくらいの覚悟を、アークは何度も目にしてきたのだから。

 

 アークはそっとテレビを眺める。そこには瓦礫の上に立つフルベへ、報道陣が一斉に駆け寄っていく。その背景には、被害を受けた街並みが広がっていた。

 

『復帰初戦、お疲れ様です!』

『以前よりさらにお強くなられましたね!』

『今後も最前線に復帰される予定ですか!?』

 

 フルベは少し照れ臭そうに笑いながら、それでも真っ直ぐ前を見て答える。その瞳には、確かな決意が宿っていた。

 

『まだまだリハビリ中です。もっと守りたい物がありますから。』

 

 その一言だけで、スタジオは大きな拍手に包まれた。魔法少女のこの言葉だけで、次元獣の脅威にさらされるこの世界の人間からすれば頼もしいことこの上ないのだろう。

 

「……守りたい物、か。」

 

 アークがぽつりと漏らす。その声には、どこか複雑な感情が入り混じっていた。

 

「そういう理由で強くなる奴は、厄介なんだよ。」

「どうして?」

「限界を知らずに勝手に越えてくる。」

 

 軽い口調とは裏腹に、その瞳はどこか遠い昔を見ているようだった。そう、まるで遠い経験をもとに、仕方のない口ぶりだ。その目の奥には、数え切れない別れと、儚い約束が沈んでいるのだろう。

 

「命あっての物種だろうが。お前らみてぇなのは平気でそれを捨てていくからな。俺にゃわからん、命あってこそだろうがよ。」

 

 アークはまたわざとらしく露悪的な言葉を紡ぐ。ユキもいつものことだから慣れっこだ。それに、アークの言っていることも分からないではない……ユキとしては、捨てているつもりは微塵もないのだが。

 

 ユキは思わず軽く笑ってアークに言う。

 

「貴方って本当、人間らしいわよね。」

「こんな全身まっくろくろすけな人間がいるかよ。」

 

 そう言ってアークはまた、ケラケラと笑うのだった。その笑顔の奥には、言葉にならない何かが隠されているのだろうが、ユキはそっとしておくことにした。

 

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