乗っ取り系魔物「クックックッ、俺に身体を貸せ……」魔法少女「貴方の力なんて借りない!」   作:タロスズ

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自分事に鈍感……鈍感すぎませんか?

 

 ……アーク、及びユキの保護観察処分から二週間。一時は例の触手型の次元獣によりガタガタになった魔法少女達や魔少課も、驚異的な再生力で徐々に通常運転に戻りつつあった。

 

 どれだけ痛打を貰おうとも、次元獣はその傷が癒えるのを待たないのは過去が証明済みだ。故に、魔法少女達や魔少課は、今宵も様々な局面で戦い続ける。

 

 ……魔少課所属の魔術研究局局長の肩書を持つ男『ハルザキ』も、今宵また大きな戦いに身を投じていた。

 

 研究員……そうは言ってもその仕事はただの研究作業だけではなく、魔法少女のバイタルチェックと言った医療方面も管轄内。魔術が人体に与える影響を調べるためだ。

 

 何より魔法は『メンタル』がその強弱に直結する、その辺りの関係維持の為にも半ば魔法少女の相談役のような立場も担っているのは本当の所だ。

 

 

 その為にも、多少の面倒は聞いてやるのも仕事……ハルザキはそう言い聞かせてきた。だが、今宵はまた少し様子がおかしいらしい。

 

「ハルザキさん!!いい加減会わせてください!出してあげてください!ユキを!!」

 

 ハルザキにそう食って掛かるのは、現在拘束中の魔法少女、オレンジの髪をホーステールに纏めた、アスノ・ユキの親友(自称)……ユウガオ・アサヒ、別名『紅蓮の魔法少女』。二つ名の如く炎を操る事を得意とする魔法少女であり、魔法少女の期待のルーキーである。

 

「……前にも言ったろう、アサヒ。今のユキに会うのは危険だ。幾ら敵対的行動は取って来ないとは言え、相手は我々を苦戦させた次元獣を片手間に捻る相手だ。何かあれば、危険になるのは君だ。」

「でも……でも!!そんな相手とゆっ、融合したなんて……ユキは!!」

「君がユキと仲が良いのは知ってる。安心してくれ、彼女は無事だ。だがまだ慎重にならなくちゃいけない時期なんだ……分かるね?」

 

 そう諭すハルザキ……だが、変わらずアサヒは心中穏やかじゃない様子だ。それもそうだろう、アサヒにとってユキはかけがえのない大事な親友。

 

 それが、何処の馬の骨とも分からぬ化け物に身体を乗っ取られた様を彼女は間近で見てるのだ。不安にならないほうが無理がある。

 

 それに、そうでなくてもアサヒにとってユキは特別な存在……所謂幼馴染で、昔から仲良くしていた友達であり、かつて次元獣に襲われた時に先んじて魔法少女になっていたユキに助けられた恩人である。

 

 そして何より、早くに親を次元獣による被害で亡くしたユキの……その()()を見てきた少女である。要するに、心配なのだ。

 

「……どうしても、駄目なんですか?そんなに、危険なんですか?」

「……確かに、僕の目から見ても特段異常があるようには見えない……けど、それは“今の所は”に過ぎないんだ。いつ何が起こるかわからない状態で……」

「そんな事を言ったら、いつユキは外に出れるんですか!?私はいつユキに会えるんですか!?」

 

 勢いよく凄むアサヒ……ハルザキは頭を抱えそうになる。確かに、今の所の状態を見れば会わせても問題無いと言うのがハルザキの見解だ。

 

 だが、研究者とは常に最悪を想定して動く物、素直に頷く事はし辛い……だが、このままユキを閉じ込めておくだけでも解決になりそうにないのは事実。

 

「……仕方ない、会わせるだけだよ?」

「っ!!ありがとうございます!」

 

 何らかの刺激は必要なのかもしれない……何かあればユキも抵抗してくれるだろうし、最悪の最悪にはユキがアークに抵抗している間にユキを仕留めれば良い。

 

 そうなれば次は自分がこのアサヒと言う紅蓮の魔法少女に恨まれ最悪には……という話になるが、まぁハルザキにとっては些末事だ。

 

「ついてきなさい。」

 

 そう言ってハルザキは白衣を翻して廊下を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩き始めて幾分……静かな廊下に何やら手荷物を抱えたハルザキと、どこか神妙な面持ちでアサヒは、二つほどのゲートを通ると、一つの部屋にたどり着く。

 

 

 鉄筋のドアの隣には電子キーとカードキーのロックが掛かっている。ハルザキはさらりとその二つを開く。ロックが外れ、扉を開けるのみになる。

 

「よし、開けたよ。」

「!!」

 

 アサヒは少し呼吸を整えてから、その扉を開けて部屋へと突入する。

 

「ユキ!!私!アサヒだよ!来たよ!!」

 

「ドロフォー。」

「み゜!!!」

 

 肝心の2人はソファでUNOをしていた。

 丁度アークがドロフォーを食らった所である……自分の影から出てくる炎の魔物と仲良く(?)UNOをしている。中々にシュールな光景だ。これには思わずアサヒも唖然とする。

 

「……っ!?アサヒ!!よかった、怪我治ったのね……!!」

「あんっ?……おぉ、あん時の炎の嬢ちゃんかあ。久々だなあ。」

 

 心配そうに駆け寄るユキに、その後ろでまるで親戚の子供に会うみたいに気さくに手を振るアーク。最後に二人を見たのが、無理やりユキが乗っ取られる様と、そのユキに住み着き始めた姿が最後だったからか、妙に馴染んだその状況にアサヒは唖然とするしかない。

 

「アーク、UNOは楽しかったかい?」

「あぁ悪くない。今度はバックギャモンがやりてぇな。」

「またジャンルが変わるな。用意できそうなら用意しよう……ほらっ、頼まれてた品物だ。」

 

 そう言ってハルザキは持っていた荷物をアークに差し出す……アークは若干作業しづらそうにバッグを漁ると、中には新鮮な野菜や肉類が入っていた。片栗粉や小麦粉等のたまにしか使わない材料も少々……

 

「おぉ、良いね。ありがとう。助かるぜ。」

「しかし、君のような魔物も料理を嗜むとはね。」

「化け物はみんな生きた人間を頭からまるかじりすると思ってんのか?美味しく食う努力くらいするぜ。あと、前から興味があった。」

 

 またアッサリと言うアーク……アサヒから見て、ますます先までのハルザキの拒絶は何だったのかと頭にきてしまう。全然問題ないではないか、なんならたった2週間でユキの肌色が少し良くなっているではないか。

 

「……っ!!とんでもなく馴染んでるじゃん!?」

「馴染むってなんだよ。」

「アサヒ……?」

「なんなのさ!?貴方一応禁書に封じられた禁断の魔物なのよね!?ならそれに相応しい立ち振る舞いとかあるんじゃないの!?」

「何言ってんだお前。」

 

 アサヒの言葉にアークは何言ってるのかわからないように肩をすぼめる。

 

「まさかお前さん、俺が次元獣みたいな怪物と同じだと思ってんのか?俺は()()、全然ちげぇよ。」

「何が違うのさ!?」

「フットサルとサッカーくらい違う。」

「なにそれ!?どういう違い!?例えが分かりにくい!!」

 

 すると、アークは不満げに呟く。

 

「分かんねぇ奴だな。あんな殺戮と破壊しか頭に無いような奴らとは価値観が違うんだよ。」

「じゃあなんで封印なんてされてるのよ!?」

「忘れたよそんな前の話。」

「忘れる訳ないでしょ!?自分の事よね!?」

「忘れたモンは忘れたんだよ。」

「アサヒ、無駄だよ。コイツはこんな風に躱す事しかしないから。」

 

 ユキもまた呆れ気味に肩をすぼめると、アサヒはユキに迫りながら声を荒げる。

 

「ユキ!!大丈夫!?へんな事されてない!?無理やり乗っ取られたりとかしてない!?」

「落ちついて……変な事って何よ……確かに無理矢理乗っ取られたりはしたけど……」

 

 その言葉をほんの一瞬聞いた瞬間、アサヒは即座にアークを掴む。

 

「あんたぁ……!!」

「怒るなよ、別に変な事した訳じゃねぇし……つかそんな大事な友達ならちゃんと飯食わせろよ。アイツ始めの頃携帯食主食にしようとしてたぞ。」

「しょうがないでしょ!?ユキ一時期ストレス性の拒食症でご飯全然食べれなくなってたんだもん!!」

「そう言うシビアな所平然とでかい声で言うなよお前!?!?」

 

 何故人間の方がデリカシーに欠ける発言を繰り返し、何故魔物のほうが若干気を使った返答をしているのだろうか。そんな事をハルザキが疑問に思う横で、ユキは小首をかしげて何でもないように言う。

 

「えっ……私別に言っても良いけど……」

「お前もっと多方面を気にしろ!?なんか心とか痛まないのか!?」

「昔からこんなんだもん……!!自分に無頓着の極みなんだもん……!!私がこの子をこの状態に矯正するまでどれだけ頑張ったか……!!」

「どぉなってんだ現代!?」

 

 アークからすれば驚きの連続である……出会う人間全てがへんな所でタガが外れて人間離れしている。

 

 自分が禁書に封印されている間も現世は見てきたつもりだが、それよりもはるかに人の心は複雑化しているのだと実感するアークであった。

 

 

 

 

 

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