乗っ取り系魔物「クックックッ、俺に身体を貸せ……」魔法少女「貴方の力なんて借りない!」   作:タロスズ

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技名を叫んでぶっ飛ばす魔法少女

 

 

 天を覆い尽くすほどのハチ型の次元獣……魔法少女達は同じ場所には集わずとも、それぞれが己にできることで対処していた。それは、先程まで戦闘を繰り広げていたアサヒ達とて例外ではない。

 

「みなさん!速くあっちへ避難を!」

「あの建物の中に避難してください!」

 

 経験の浅かった後輩魔法少女二人は、被害が大きくなる前に避難誘導を行う。幸いなのはこの近辺では先にハチ型の次元獣による被害が出ていた為、通常よりも多少スムーズな誘導が出来ている所だ。

 

 

「……ッ!!紅蓮ノ魔法:九式.....朱炎之鳥(シュエンノトリ)!!

 

 アサヒはまたも紅蓮の弓矢を携える……だが、今度放たれたのは炎の矢ではなく、弓自身。

 

 弦を引き飛ばすと共に弓を形成していた炎も飛び上がり、まるで火の鳥の様に飛び上がり、向かってくる虫共を焼いていく。

 

 火の鳥が飛ぶ跡には、無数に焼けて消えていく次元獣の姿があった。

 

「ッッ!!……」

 

 だが、先ほどのハチ型次元獣との戦闘に加えてこの数の相手を仕留めるには相応の魔力を込めなくてはならない。

 

 流石に連戦になると、アサヒでは堪える物がある。そうでもなくても、病み上がりなのだから無茶がし辛いのは当然だ。

 

「……くっ……数が多すぎる……!!」

 

 次元獣が羽ばたき空や街を突き進む度にその羽ばたきで物が吹っ飛び、ビルに突っ込めばそのコンクリの建物に風穴を開ける。こんなことを続けさせておくわけにもいかないが……どうにもジリ貧だ。

 

 一度退くか……とも考えるが、そうなればアサヒを追いかけて被害がさらに広がるか、最悪興味をなくしてどっかに飛んでも被害がさらに広がる。どの道八方塞がりならこうして攻撃を仕掛けてヘイトを向けるのが一番だ。

 

(なんとかもう少し時間を……!!)

 

 なんとか魔力を練り上げて炎の弓矢を再生成し、構える……瞬間、背後の気配を察知しアサヒは後方へと炎の矢を放つ。それを皮切りに四方八方から攻めかかる次元獣……断続的に攻撃を仕掛けられると、中々に対処が出来ない。

 

「ぐっ……!!このぉ……!」

 

 アサヒも抵抗を続け隙あらば一撃を叩き込む……幸いなのは、アサヒの火力であれば1体を倒すのにそう手間はかからない事だろうか。

 

 だが、何度も言う様に数が違う。身を捩らせて、そのスピードの乗った体当たりを食らわない様にはしているが…………そう、長くは持たない。

 

 不意に彼女は、タイミングをずらした一匹の次元獣の突進をもろに脇腹に受ける。

 

「痛ッッ!!」

 

 体勢を崩され思わず膝をつくと、好機と言わんばかりに次元獣達は一斉に飛びかかる……なんとか弓を構えて弦を引き一撃を放とうとするが、アサヒは感覚で間に合わない事を察する。

 

それでもなお武器を納めずにギリギリまで魔力を練ろうとした……次の瞬間、上空から人影が落ちてきた。

  

氷結ノ魔法:三式......閃凍(センコウ)……ッ!!

「お前着地考えろよ!?」

 

 空から降りてくる双剣を携えた魔法少女の一閃は、アサヒに向かう次元獣を纏めて凍りつかせる。地面に衝突する瞬間に、黒い炎の影が地面を殴って落下の衝撃を相殺した…………すると咄嗟にアサヒは天に弓を向けて矢を放つ。

 

「!!紅蓮ノ魔法:十一式!炎天!!

 

 放たれた矢は一度上空に上がると落下………凍った次元獣達に向かいながら、散らす火の粉と共にその数を指数関数的に増やして、炎の矢の雨を降らせ敵を一掃した。

 

 そこでアサヒは漸くやってきた魔法少女に反応する。

 

「はぁ……はぁ……ユキ!」

「アサヒ、無事?」

「無事……か兎も角として、生きてるよ。」

 

 アサヒは一撃食らった脇腹を押さえる……病み上がりについてないとは思うが、まだ全然軽症な部類だ。ユキは少し複雑そうな顔をしながらも胸をなでおろす……するとアークがひょっこりと顔を出してつぶやく。

 

「なぁ、なんでお前ら魔法使う時いちいち技名叫んでるの?趣味?」

「しゅしゅしゅ趣味じゃないわい!?」

 

 アークの指摘に顔を赤くしながら否定するアサヒ……魔法少女が技名を叫ぶのには、主に自分の行動を知らせると言う意味合いがある。

 

 仲間と共に戦ったり、逃げ遅れている避難民がいる場合その技を知っていればその技に合った対処ができるし、知らなくても攻撃をすると言うのを行動に起こす前に耳で聞ければより速く退避できる。

 

 もちろん相手にこちらが何をするか悟られるリスクはあるが、次元獣は技名を叫ぼうがその意味をさして理解しないのでトントンである。

 

「なぁユキ、お前の技名ってどうやって決めたの?」

「ん?アサヒが考えてくれた。」

「やっぱ趣味じゃん。」

「いや!違うし!?」

 

 因みに技名は魔法少女の趣味が出る場合がほとんどである。

 ユキはそんな会話を横聞きしながら、まだいる次元獣を見て双剣を握り直す。皆の尽力のおかげで数はさすがに減っているが…………まだ居る。

 

「アサヒ、少し休んでて。あとは私がやる。」

「でも、あんな数は……」

 

 アサヒはユキの身を案ずれば、アークがユキの目の前に飛び出して一つ問いかける。

 

「クックックッ……手伝ってやろうか?身体貸せよ、代わりにやってやる。」

「引っ込んで……!貴方の手は借りない。」

 

 そう言って柄で目の前に出てきたアークを押し退けて、双剣を握ると、ハチ型の次元獣が性懲りもなく飛び掛ってきた。

 

 ユキは攻めて来る次元獣をその双剣による踊るような連撃で沈める……無駄な太刀は一切なく、一発一発が確実に次元獣を切り裂いて根絶する。

 

 3週間のブランクなんてまるで感じさせない。アークは邪魔になるから影のなかに引っ込んだが……退屈そうに欠伸をして呟く。

 

「チマチマと……一発デカいのかませば終わりだろ?」

「こんなビル街で広範囲の派手な技使えないでしょ……!!」

「そぉですかい。」

 

 魔法少女として戦うからにはいかに周りへの被害を出さないかも重要だ。建物を破壊したりインフラを壊すというのは、それに頼る人間に生活を捨てさせると言うことでもある。

 

 相手が天災の様な物であるとはいえ、それに対処するのが魔法少女や魔少課といった人間である以上、その矛先は対処した側へ飛び、時に不幸な結果を招く事もある。

 

 それを少しでも防ぐためにも、被害を出さずに戦うと言うのは魔法少女としては必須なスキルなのである。

 

 無数に迫る敵を狩り続けるユキだが……やはり人であるからには死角からの攻撃には反応が鈍くなる。どれだけいろんな可能性を考えても、それを上回るからこそ想定外と言う言葉がある。

 

 次元獣と言うのは、存在そのものが想定外……その行動な能力も、時として想定外な事がある。

 

「っ!?」

 

 次の瞬間、少しの地響きが聞こえたかと思えばいつの間にか潜ったのか、それともわざわざ潜ってからここまで来たのか……地面からハチ型の次元獣が飛び出してくる。

 

 これには流石に反応が遅れるが……突然ユキの足に炎がまとわりつき、ユキの意思とは関係なく独りでに動く……炎の軌跡を描いて放たれた蹴りは、下から来た次元獣を蹴り倒した。

 

「……アーク……!!」

()は出してないぜ?おっと!」

 

 ベタな事を言ってケラケラと笑うアークは、もう一度足を乗っ取り不意打ちしてくる敵に蹴りをかました。ユキは溜め息をつきながら双剣でまた近づく敵を斬り伏せる。

 

「そもそもお前が無茶して死んだら俺に迷惑がかかんだよ。それが手を出すなってなんだよ。貴方を殺して私も死ぬってか?」

「それ絶対使い方違うでしょ……つか、話しかけないで……!!」

「どっちも余裕そうじゃん……か!!」

 

 そう言って炎の矢を放ち、遠方の敵を狙撃するアサヒ。まだ少し脇腹をかばい気味だが、寸分足りとも狙いは狂わずに遠くの敵を仕留めていく。

 

「アサヒ……無茶は……」

「固定砲台位はなれるって!」

「お腹痛いなら逃げて良いんだぞ〜!」

「黙ってなさいよ化け物!」

 

 アークのセリフに辛辣に返すアサヒ……アークは若干肩を落とすと、近くを通ってきた次元獣に今度は頭突きをお見舞いする。

 

「……これも手を出してないからセーフで良いか?」

「だぁ、私の身体を乗っ取らなきゃ手出して良いわよ……!!」

「えぇ……この身体動かし辛いから嫌なんだが……まぁしゃあねぇか。」

 

 アークはそう言うと、今度は遠慮なく炎を巻き上げながら迫りくる次元獣をバッタバッタと殴り伏せる。

 

 もっと広範囲を高火力で一気に殲滅できる技もあるにはあるが……ユキの言葉を素直に聞いて、敢えての打撃と中程度の威力の技で仕留めるのだった。

 

 アークは各方面からの敵を炎をまとわせた腕で殴り倒しながら、何処か懐かしそうに、何処か楽しそうに、軽い笑みを含めて語りかける。

 

「俺にとっちゃ久々の祭りだ……楽しくやろうか!相棒?」

「相棒って呼ばないでって……!!」

「あーい!」

 

 

 

 それから十数分後、各自尽力したおかげで大量発生した次元獣を治める事ができた。

 

 個々の戦力が突進と速さしか能のないのが幸いして、前触れのない中型次元獣の大量発生にしては被害はかなり抑えられた方である。

 

 

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