青空の白昼夢 〜故郷への帰還だけを望むモブ転生者君の日常〜 作:曇らせは志向の味
「いやー……どうするか」
目の前で鎮座している怪物であるグリフォンはこちらを警戒しているのか先程から動かないでいる。
だが地面に足をつけているのならば好都合だ、一気に魔法で畳み掛ければ奴を殺せるかもしれない。
……まあそんな簡単には行かないんですけどね
「俺を守れ!!
俺は両腕に魔力を込め前方を囲うように
目の前から鉄のような巨大な茨が俺の身長の二倍ほどまで急速に伸び、グリフォンが発射してきた四発のハイ・スカイランスを防御した。
ここから
「
俺は
敵の状態を確認すると自身の翼の周りに透き通った魔力の塊を浮かばせながらこちらを睨んでいた。
「俺を防衛しろ鉄の茨よ!」
魔法という物は不思議なもので一度発動したら短時間の間は再度使用できるものがある、持続魔法のようなものでゲームのように残り時間などは見えないがある程度は知っている。
グリフォンは六発のハイ・ウィンド・バレッドを挟み撃ちするように拡散し使用したが地面から生えてきた茨により全てが防がれる。地面の砂を踏み抜き刀を抜刀すると共にグリフォンの肉体に
まず最初はグリフォンの翼のどちらかを切り落とさなければ、運が悪いとずっと空中から遠距離攻撃をしてくる状態になりそのままだと死んでしまうので覚えておきましょう。
刀の刃が届く範囲まで俺が接近し翼を見ると所々が凍っていた。因みにだがグリフォンを含めた上級魔物からは大体耐性を持っている、グリフォンは凍結などに耐性があり実際に下級魔物ならば凍るはずの魔法だというのにほぼ凍っていない。
刀に魔力をふんだんに流し込むと足に力を籠め敵の右側の翼へと跳躍する。俺の行動に敵は即座に対応し背後に跳躍しながらハイ・ウィンド・バレッドを展開しようとしたが鉄の茨のおかげで俺にはどれも届かなかった。
「飛べなきゃただの中級魔物だろ!その翼置いてけ!」*1
緑の刀が翼の根元に食い込むと勢いよく垂直に真下へと振り抜く。グリフォンの翼から鮮血が溢れ出ると共に自慢の翼は地面へと重力に従いながら落下していった。グリフォンの翼から落ちる羽はどれかは忘れたがポーションの材料になるため集めておくに越したことは無い。
……が今は欲望に忠実になっている場合ではない、敵は激痛により甲高い声を張り上げると自身の足に生えているかぎ爪を所かまわず振り回し始める。流石にアレに当たってしまうとこの着ている外郭ですら先程の翼と同じ末路を辿ってしまう。そのため俺はそこまで遠くは無いがこちらの安全が確保された位置に回避した。
次の標的は勿論首だ。飛べない状態のグリフォンは魔法が二種類ほどしか使えない魔物で、奇鉄に頼りっきりな二足歩行の竜族とは違いまともな血が流れているとやはり違うのだろうか。海の国の連中が竜族の研究を進めているととある伝手から聞いたことだが大方まともな研究はしていないのだろう。
再度体勢を立て直し地面を踏み抜いてグリフォンの首へと刀を仕向ける。敵も暴れている状態ではないと感じたのか片翼しかない翼を使い強い風を発生させようとしてくると、俺の行動に集中しているグリフォンの翼に向けて
グリフォンが俺から一時的に痛みにより翼に意識が即座に向かう。それにより出来た一瞬の隙を見逃さないように途中まで振りかぶってた刀を再度振り上げ魔物特有の装甲を貫くように切り捨てた。……はずだった、肌にまたもや痛みが迸ると共に突如として雷のような電流が空間を裂いて流れ出る。
「……ッ!?何が起こった!?」
刹那、時間が遅れてやってくる。鼓膜が破裂したかのような空虚がやってくると共に勇者の時に感じたように魔力が全身に突き刺さる。
新たな敵が来たと思い魔法がやってきた方角へと視線を向ける、先程までその場に鎮座していたグリフォンは見るも無残な姿へと変貌していた。出来れば先日のパーティが良いのだがここ最近の出来事のおかげで魔人の可能性が出て来てしまった。
俺が警戒心を高めていると濃霧の中から砂を踏む音が鳴り響きその音は徐々に近づいてくる。
「あー……俺には敵意が無いんだ、暴力もあまり好まないしな」
聞こえるように声を上げ両手を真上に上げる、いつでも跳躍の首飾りを発動できるように警戒心はマックスにしておく。
俺の声を聴いたのか地面を踏む足の音は突如として消失した。どうやら敵意がないようで安心した。
「……もしかして噂の謎の冒険者さん?この大森林に来ていると聞いてはいたけど湖にまで来ていたとは」
耳に爽やかな男の声が入ってきた。どうやら先程の攻撃の犯人は彼のようだ、俺のことを知っているということは大方先日の竜殺しの凱旋団の内の誰か一人だろう。
それか俺がまだ知らない勇者パーティの仲間の可能性あるがわざわざ此処にまで出向くことは無いだろう。
「俺の名前を知っているみたいだが……申し訳ないが俺がアンタとの面識があるとは思えないんだが……先ずは名前を聞かせてくれないか?」
俺が実際に思っていることをそのまま出すと、彼はうなるような声を上げ再度こちらに向かって歩みを進めてきた。
少し警戒の色を強めたが随分と緩い状態で歩いてきているためそれは杞憂に終わった。……俺が言えたことじゃないがこんなにも無警戒で近寄ってきていいのか?
「……そうだね。じゃあ先ずはこっちに顔を見せてよ、ここに来たのもそれが目的の一つだったしさ」
「こっちからしたらお前が安全かどうかを理解できていないからな……そう易々と近寄ることは出来ないんだ」
俺がそう言葉を言ったとしても彼は止まることは無しにこちらに向かって歩み寄ってくる。本当に安全かどうかをこちらが理解できない為、俺は正直言って怪しいとしか言えない。
「まずは信用からってことか……じゃあこれで安心してくれるかな?」
彼が言い切るとともに霧の中から一つのカードがこちらへと投げられてくる。片手でキャッチするとないとは思うが罠がないかどうか裏表を確認するが……何もない。どうやら本当に安全なようでようやく俺はカードの内容へと視線を下した。
「アンタが例のパーティ……竜殺しの凱旋団の一員か。」
カードには竜殺しの凱旋団所属 アイン・シュベルク
そう書いてあった。
「そうそう!これで君も信用してくれたかな?いやー巷では結構有名な自信があるんだけどねーあんまり知られてないみたいで残念だよ……」
「俺は今の情報に疎いからな……そんな落ち込まなくてもいいんじゃないか」
そんな会話をすると彼は漸く俺の視界に入る。長身な体に金髪の髪、軍服を綺麗に着ているがその優雅さは先程のようなおどけた雰囲気とは相反して際立っており、自身の自慢であるかのように背中に羽織ったマントを揺らしながら歩いてきた。
「……同情は無用だよ。それに君はそこまで交友が活発的ではないと聞いているからね」
「同情はしたつもりはなかったんだがな。それと……アイン殿、とでも言えばいいか?竜の装備を着ていると聞いたが今は着ていないのか?」
俺は彼を見た瞬間に思った事をその場で口にした。あまり情報を知らないとは言ってもそもそもとして聞いていた前提情報とは食い違っていたからである。今の服装も女性受けが良さそうと言えば良いだろうが噂になっている方が気になったからである。
「アインでいいよ……こっちでもその噂は流れてるんだね。別に君だってその装備をずっと着けている訳じゃないでしょ?僕達は確かにあの装備を着ていたがあれは今後一生表舞台に出ることは無いよ」
アインはどこか悲しげに、それでいて思い出を語るかのような表情で理由を語った。これでも冒険者として多くの人間を見てきた身であり人の状態はある程度は理解しているつもりである。
「……理由は聞かない。ところで何か目的があったんだろう、ここで油を売っていてもいいのか?」
「?理由なら先程言ったじゃないか。今は各々個人の時間だからねギルドに居た赤髪のお姉さんに場所を聞いたら此処に居るってさ。もしかして昇格試験中だったかい?」
一応ギルドには今日は完全に休日だから何も情報は言ってないはずなんだが……何故俺の位置情報が割れているのだろう。これは本当に一度問い詰める必要がありそうだ。
アインはやれやれといった雰囲気で笑いながら喋っていた。
「一応今日は完全に休日にしていた筈なんだが……因みに俺は昇格試験はしてないんだが条件は何なんだ?」
「あれ、試験中じゃ無かったなら良かったけど……何で昇格条件を知らないのかは謎だけどね?因みに今年の条件は特級魔物か上級魔物の変異種の討伐だよ。あのグリフォンは変異種だからそうかと思ったんだけど……」
「何だって?」
え?あれ変異種なの?普通に今まで戦ったことがなかったから分からなかったけど……
気を取り直そう。変異種とは魔物の保有する魔力が内部で暴発したことにより通常の個体よりも狂暴性が強くなり、魔力の増加に伴い魔法の質や量などが格段に上がった個体が魔物の変異種である。今年の昇格試験の条件に変異種の討伐が含まれているとは知らなかった。
如何せんこれ以上にランクなどが上がってしまうと、現在の仕事に加えて指名クエストと呼ばれる物が出てしまう。そうなると俺の行動時間が減少してしまうため昇格試験を受けてなくてよかったと心の底から思う。
「……昇格条件もだがあのグリフォンが変異種だってことも今初めて知ったぞ。流石にアレが変異種というのは過言過ぎるんじゃないか?」
「えー?でもどこからどう見ても変異種なんだけどなー?魔力の層が普通の魔物とはあからさまに違うよ。僕が
「確かに肌にピリピリとした痛みなら来たが……もしかしてあれが魔力の層ってやつか?」
俺はそもそもお前達とは違って魔力の層とかなんたらは一般人だから分からないんだよ……というかもし肌に感じる例の痒みが魔力の層だと言うならば目の前のアインしかり百代目勇者である月乃も異常な魔力の層が存在することになる。こいつら本当に人なのか?
「まあそんなことはどうでも良いんだよ。僕が元々此処に来た理由は君について詳しく知ることだったからね」
「随分とキザな言い方をする……まあいい俺もそろそろ街に帰ろうとしていたところだ。今回は碌な成果も得られなかったからな」
「それなら良かった!僕もこんな場所での話は嫌だったからね。君がまともな感性を持っているようで良かったよ」
俺は常識枠だ。そう小言を言いながらアインの横を通り帰路を辿ることにした、しれっと横にアインが並ぶと背が意外と高いことが分かる。これでも身長が高いことに自信は有ったのだが彼が横に立つと自身が無くなってしまう。因みにアインは俺と頭一つ分くらいの身長差がある。
「……俺の横に並ばないでくれるか?何だか自信が破壊される気がする」
「そんな連れないこと言わないでくれよ。それに身長のことを言ってるなら大丈夫さ僕が高いだけで君も高い部類なんだからさ」
「同情になってないからな……」
しれっと俺の肩に手を回して歩いているがやめてくれ。一応セクハラには該当するんだぞ、この世界ではそんなこと関係ないと思うが。
そんな愚痴もあったのだが俺達はそのままノスベルクのギルドへと歩みを進めアインとはまた後日会うことにした……何でだ?
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