エンディング後の世界で只々毎日を生きているモブ転生者君の日常 作:曇らせは志向の味
俺がゴーレムを破壊した後、特に面倒な敵にも合わずに片っ端から始末しながら順調に最奥扉の前まで足を進めることが出来た。
「やっぱいるよな~……」
最奥の扉の前にはボスではなくボスに会うための門番である二体の甲冑騎士が扉の前にて佇んでいた、こいつらはどちらも聖の魔法を使う魔物でありこれは上位のダンジョンに行くと必ず居る存在である
こいつらは中身がトロールと呼ばれる、古の魔物同士の亜獣戦争で敗北した種族であり彼らは最奥に居るボスの下僕として立たされている。トロールはそこら辺に居るゴブリンやその上位種よりも更に身体能力がありそれの代償なのか知能は低い者が多い。
というかこの世界、歴史を見ていくと戦争が多すぎる。天上戦争、締盟戦争、竜死戦争とこれ以外にも数多くある、そしてこの戦争によって数多くのアーティファクトとスクロールが紛失または継承が途絶えたという。そして近年、聖女教団とか言う怪しすぎる集団が聖の魔法の術式を発見し普及したらしい。
「敵対者、警告」
「撤退、推奨」
「まともな言語すら離せないとは……亜獣戦争で勝っていたらどうなったんだろうな……」
基本的なトロールは言語を話せないが扉の前に居る個体は全員もれなくボスからの祝福を受けており単語のみだが話すことが出来る。
俺がトロールからの警告を無視して前に進むと、トロールはこちらに向かって白銀の大剣の先端を向け最終警告と言わんばかりに殺意を向けてくる。
「悪いなこっちも依頼なんだ
俺が魔法を唱えるとこちらの殺意を感じ取ったのかトロール側も聖の魔法を唱え始めた。
「「
トロール側の魔法は基本的に
俺が唱えた魔法は自身を中心に吹雪を発生させる。これだけだった場合ただの廃棄物確定だがこれに魔力を掛け合わせることで風により体を切りつけながら相手を鈍らせるという、ゲームだったらつよつよな魔法である。
「っ!これで突撃するか!?普通!」
しかしトロール達はこの吹雪を物ともせず自慢の甲冑装備で突っ切ってくる、外装を見るとちゃんと効果はあるようで甲冑は其処かしこが傷だらけの状態であった。
「損傷、軽微」
二体の内の片方がそう言うともう片方は俺から距離を取り始めた、これは魔法を使おうとしており大方
この魔法は敵一体にホーミングし続ける厄介な仕様の魔法であり弾速もかなり早い。
「まあ俺がこの程度で負けるはずがないんだがな」
俺は今もなおこちらに向かって走ってきている一体のトロールに魔力倉庫から一刀の刀を取り出す、これはとある渓谷にて突き刺さっているのを回収した物である。この刀は刀身が緑色なだけのそれ以外は普通の刀である、案外使い心地はよく俺は刀の正しい使い方なんて全く分からない為取り敢えず力ずくで切り裂くのが基本である。
「敵影、魔装、解析不明」
「いちいち解析するとかプライバシーゼロじゃあねえか!」
トロールは俺の言葉に耳を傾けることなどせずに白銀の大剣を勢いに任せて首に狙いを澄ましていた。
俺はそれを迎え撃つように膝を屈め背を下げた後、甲冑の弱点である足の繋ぎ目を狙いこちらに向かってくるトロールの足を薙ぎ払うように切り落とす。
ズシャァァ……
俺がトロールの足の繋ぎ目に刀を食い込ませ真横に薙ぎ払うように切り落とした。トロールの体を守るために装着されていた光を大量に反射していた足の甲冑は、そんな面影すら無くなり遠くに吹き飛びトロールの足から出る血により真っ赤に染まり床に血の池を作り出していた。
トロールの片足が遠くに吹き飛ぶと体の支えが無くなり俺の方向へと倒れ掛かってくる、俺はその巨体を避けるように体を横に翻し地面へと倒れたトロールの体を踏みつけ首に刀の先端を突きつけた。
「
俺が現在踏み潰しているトロールとは違うもう片方が俺が油断しているのかと思ったのか背後から聖の魔法である
「っ!危ないな……」
俺はそんな魔法の塊を刀で真っ二つに切り落とし、魔力の塊である
あまりのんびりとしている場合ではないと感じた俺は未だに俺の足の力に押し勝てていないトロールの首に目掛けて刀の先端を振り下ろした
ブシュ……!!
俺が首に刀を突き刺すとトロールの首からは真っ赤な血液が真上に勢いよく噴射し汚い噴水が出来上がってしまった。俺の全身に返り血が掛り先程まで程々に綺麗であった黒のローブは鮮血に染まっていた。
「最悪だ……妙に臭いな……」
刀に着いた血液をピッと横に払うと再度刀は翠色のした鮮やかな色を取り戻した。
俺は次に先程魔法を放ってきたトロールに対して視線を向け別の武器を魔力倉庫から取り出した。
「一人、欠損」
俺は魔力倉庫に刀を仕舞うと次に両手持ちでないと持てない程のサイズの鉄槌を取り出した。これはとある廃教会の瓦礫の内部に挟まっていた物であり、持ち手は木製だが主な打ち付ける部位は黒色であり何らかの文字が描かれている。
「装甲ごと圧し潰してやるよ……!」
「敵、接近、
俺が残りに向かって走り出すと相手もこちらに向かって魔法を三発ほど発射してくる、俺はそれを難なく避けると魔法で殺害することは不可能だと判断したのか大剣に持ち替えた。
俺は鉄槌を両手で振り上げ甲冑の頭部を圧し潰す勢いで下へ振り下ろす、トロールも自身の頭を守るようにして大剣をこちらに横にして防ぐ。
「まじかッ!今回は強い個体でも引いたかッ!」
前回のダンジョンでは大剣ごとへし折りながら圧し潰したというのに、今回の場合は刃に罅の一つすら無く先程のトロールは一切苦戦しなかったため気にならなかったがさっきの奴でテストすればよかったのか
「
「アブねッ!?」
俺が上から更に押し潰そうとするとトロールは自らの大剣に強化魔法を掛け鉄槌ごと切り裂こうと振り出した。
俺はそのままだと不味いと感じ甲冑の腹部を蹴り上げ背後に飛び回避した、俺が先程までいた場所はブオン!という風を切る音が鳴り俺達は又もや偶然同じ立ち位置となった。
「ははっ!何でこうも上手くいかないんだか」
「排除、再開」
再度地面を蹴り上げ
俺が即座に敵に近づくと先程よりも魔力を入れたからか甲冑の隙間が凍結し始めトロールの動きが鈍くなる、俺は先程よりも鈍くなったトロールの頭に鉄槌を勢いよく振り下ろし頭部の甲冑もろとも砕く。
「損傷、拡大、危険」
メキメキと大きな音を立てながら氷ごと砕く勢いで鉄槌はめり込んでいく。トロールの大剣は又もや俺を切り裂こうと大振りに払おうとするが、腕が凍って上手く動かせないのかガチャガチャと金属の擦れる音を鳴らしながら抵抗の意思を表していた。
「あばよ!砕けろォ!」
ゴシャァ!
豪快な音を立てながらトロールの頭は潰れたリンゴのような形に変形し、先程までこの場に漂っていた聖の魔法の面影が完全に無くなり残されたのは二体の甲冑を着たトロールの死体であった。
俺は鉄槌を魔力倉庫に仕舞うとトロール達に背を向け最奥の扉に視線を向けた。
「毎度思うがなんで必ずここに扉があるんだろうな……」
このボスに続く扉から魔力が少しだが漏れ出ている、ボスに関してのプロフェッショナルはこの漏れ出ている魔力でボスが何かが分かるという……変態の域である。
俺は扉に手を掛け奥へと力を加え扉を開く。
煌びやかな装飾がなされた人が多く行き来するアーリア大陸で最も権力を保持している王都では、現在勇者が魔王を討伐したことによる祭りが催されていた。
異界より呼び出された丁度100代目である霧島月乃と呼ばれる魔王を討伐した歴代最強の勇者であり、使える魔法は数え切れず全てにおいて秀でた才能を保持した人物である。
そんな彼女は現在ノクスベル街と呼ばれる王都に近い中都市のような場所に来ていた。
「……本当に今は春なの?完全に猛暑なんだけど……」
「確かに暑いですね……フィアナさん何かないですか……?」
今現在中世のヨーロッパのような街並みを勇者パーティーの剣士と聖女の二人がどうしようもない気温について文句を溢していた。
「はぁ……君たちは私を便利屋だと思ってないかい?」
「まあまあフィアナ……それにしても本当に暑いね……」
その後ろを勇者と魔法使いが歩きながら月乃は魔法使いであるフィアナを宥めていた。
そんな彼女たちは現在シルヴァリス大森林へと逃げたとされる4体の魔人内の一体を始末するためにノクスベル街のギルドへと向かっていた。
「そもそも魔王を討伐してからこんなにもすぐに魔人の討伐に向かわせるとか……トップの人達も終わってるよねー」
「そんなことを大っぴらに言う物じゃありませんよレオナ」
「まじめだな、聖女様はさッ!」
「貴方みたいに脳が筋肉で詰まってるわけではありませんからね……」
彼女達は軽く口論になりそうな雰囲気になりながらフィアナや月乃は誰も止めようとすらしていない。これは面倒だからではなく彼女達はどうせ喧嘩してもすぐに収まるという信頼から成るものである。
「そろそろ着くんだから……性懲りもなく喧嘩はするものではないよ……」
しかしそれは用事などが無い時の場合であり現在はノスベルク街のギルド付近へとやって来ていた、その為彼女たちの痴態を晒すわけにはいかない為ためフィアナは彼女達の間に割って入った。
「はいはい!貴方達!もう着いたから早くいくよ!」
そんなこんなをしていると月乃が声を上げ。彼女達はギルド内部へと入っていく。
私こと霧島月乃は転生者である、転生者と言ってもそんな横暴な態度を取らずに出来る限り謙虚に生きてきたつもりだが私は史上最強の勇者と持て囃されている。
そんな私は今現在静寂の向こうの都と呼ばれる激ムズ鬱ゲーの世界のノスベルク街と呼ばれている場所のギルドで話をしている。
「それで…貴方達がここに来たってことね……」
「はい放置すればここにまでも被害が及ぶと思われます」
「そうね……でもギルドからの支援はまともに出来るとは思えないわよ?うちの最高戦力も今はロード洞窟に出払ってるし……」
「そこに関しては心配ないです。これは極秘で行うつもりですから」
実を言うと私はこのゲームを何周もしてハッピーエンドを捥ぎ取った所謂、トップランカーの内の一人である。世界が崩壊する時間制限のイベントも死に物狂いで時間以内にクリアした、私は後のストーリーで知られる魔族と人類の最後の戦争が始まる原因である魔人もこのまま始末しようとしたのだが、生憎と逃げられてしまった。
因みに今はギルド長が不在の為、受付兼副ギルド長が私達の対応を行っている。私の横に座っているフィアナからはずっと甘い匂いがして私は幸せです*2
「ところで……先程言った最高戦力とは何でしょうか……?」
ギルド長との話し合いが終わると聖女であるソフィアが疑問を投げかけた。
「そうね……これは私達もお恥ずかしながらあまり知らないのよね……」
「知らない……とは?」
ソフィアはこの言葉を聞いた瞬間に即座に言葉を発した。これに関しては私も気になっていることであり個人を知らないならばまだしもパーティーについて知らないとはだいぶ可笑しなことである……ソロな訳ないよね?
「彼は基本的に自分に関しての情報を言わないのよ……分かってることは彼は男であり、特定の種類の魔法を覚えているのではなくて持っている魔法は誰も全てを知らないこと、そして彼はソロで聖銀王級に上り詰めていることよ」
「「「「……え?」」」」
予想だにもしていなかったことが当たってしまった、この世界においてソロが通用するのは青銅熟練級でありそれ以上はパーティーでないといけないからである。
「それに彼は聖銀王級という肩書だけど多分蒼天白金級は軽くあるわよ……アイツ私に昇格試験をやるやる言ってやってないからね……絶対にとっ捕まえてやるわよ」
「……だいぶ仲がよろしいんですね……」
「これは仲が良いで済ましていいのかぁ?」
ソフィアやレオナが何かを言っているなか私はずっと考えていた。
確かこの鬱ゲーにおいて公式が色んなオリキャラを描いている人に対してちゃんと言及していた筈である、「この世界は過酷すぎるためソロの冒険者はいないとお考え下さい。こちらではそのようなキャラクターを考えては居りません」と。
これは今が現実だからと言うわけでは無く、体験したから分かるソロで上位まで行くことは自殺行為であるということを、しかもゲーム内でも結構な描写がされていたノスベルクにそんなキャラクターが居たら確実に描写されるはずである。ここから考えるに私のようなイレギュラーの可能性がある。
「……月乃?大丈夫か?」
「っえ?うん大丈夫」
「そうか?何処か上の空だったのでな」
どうやら考えすぎていたようだ、これは一度副ギルド長へと話を付ける必要があるようだ。
「……すみませんもう一つお願いをしてもいいですか?」
「ええ良いわよ何かしら?」
「例の彼がここに戻ってきたらどうにかして呼び止めてくれませんか?すぐに向かいますので」
王威の鉄槌
破砕者と魔物に呼ばれ恐れられた大男の全てを圧し潰した死の鉄槌、黒く彼の愛しの人の名が刻まれたその鉄槌は人類にとって未来を照らす希望の光であったという。しかし彼は守り信じた王国に騙され、打ち捨てられたその身は全てを隠すようにとある教会に秘匿され消し去られた哀れな物であったという。
森羅の護刃
かつて行われた悪夢の時間と呼ばれる地獄を作りだした女性の愛用していた愛しの人の名が刻まれた刀、淡く光る翠色の刀身はアーリア大陸を滅亡まで追い込んだ死の象徴である。かの死神の遺体は渓谷に投げ捨てられ記録ごと消し去られた負の遺産であったという。
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