エンディング後の世界で只々毎日を生きているモブ転生者君の日常 作:曇らせは志向の味
冷たい風が俺を覆い羽織っているローブを靡かせる。
俺が勇者達との対談にて虚空跳躍の首飾りを使用し逃げたのが先日の出来事。
現在俺は依頼により
街と言っても此処は既に幾度にもよる
「にしても此処も随分と久しぶりだな……」
俺が前回ここに来ていた理由は王都襲撃事件にて一度犯人の一部を取っ捕まえるために駆り出されたのが原因だ。
あの頃は未だに黒曜騎士級で燻っていた為、街を観光するのは出来なかったが現在はのんびりと歩いている。*1
……勇者?誰だそいつは
冗談は置いといて先程から勇者の会話から避けている理由は単純に後悔しているからである。
何故ならば俺はあの瞬間こそが元の世界に帰る手がかりを手に入れるチャンスだったというのに、俺は聞けなかった。*2
しかし!俺は忘れていなかった!如何やら勇者はノスベルクに長い間滞在するつもりなようだ!これはこれは有用な情報だ!
俺は内心でウキウキしながらノスベルク郊外の街を歩いていく。
街は瓦礫が周りに散乱しており、地面や周りの家屋には剣や魔法の痕跡がくっきりと残っていた。流石に死体などは無いが戦いの痕跡が遺されている。
「……魔核は何処だ?」
俺は現在、観光と同時に
魔核とはダンジョンから漏れ出た大規模な魔力の塊が具現化したものである。これはダンジョンを形成するのではなく魔物を作り出す物である。
「大体裏路地にあるものだが……」
俺がそう言いながら家屋の隙間などを見るがそれらしきものは無い。
実を言うと魔核がある位置は既にギルド場からの情報により大体の場所を割り出されている。
場所は俺が居る場所から北側に結構な距離を歩いた場所に存在するようだ。そこは廃教会が存在する場所で確か聖都からの使いが昔は何人か居たが現在は流石にいないだろう。
「……もうちょっと観光してからにするか」
俺は廃教会への方角に向かいながらも寄り道をした。
アーリア大陸に存在する世界の巨大都市の一つ王都、カルディア海を超えた先のラグナスト大陸の神都、そして同じくラグナスト大陸に存在する聖都である。
聖都は聖の魔法を扱う人々が多く存在し、その希少性からか随分昔に協定が結ばれ世界各国に教会が設置された。
現在俺がいる廃教会は聖都により建設された場所である、廃教会は幾度による襲撃により壁は破壊され魔法による破壊痕が残り入り口の扉は左側が朽ちていた。
「聖の魔法の残留がここにも……結構最近だな……」
俺は地面に残された聖の魔法の残留を手で掬うように確認し、再度廃教会に向かって視線を飛ばした。
教会からは魔核があることはあからさまに視認できそれと同時に何かしらの不穏な空気が漂っていた。
「最近になって処形隊でも送ってきたのか……?」
処形隊……聖都が持つ武装組織であり聖の魔法を主体とした部隊である、その中でも十字団と呼ばれる部隊は聖都の長の直轄の執行部隊で魔王戦に駆り出されたらしい。
中立国である聖都の処刑隊は結構多くの場所に存在しており教会の護衛を行っている。
だからこそ俺は処刑隊の存在を疑ったがこんな何年も放置されている場所に送らるはずも無いと思い記憶を消した。
「それにここに価値なんてあんまり無いしな」
此処に住んでいる人には申し訳ないがここには価値は少ない。
俺は廃教会の扉に向かって歩き朽ちた扉に手を掛けた。そのまま力を前に向かって押し込み扉を開けた。
「……マジか」
廃教会の内部は長椅子が多く並べられその多数は草に飲み込まれ、天井には光は宿っていないが未だに圧倒的な存在感を放つシャンデリアが吊り上げれていた。中央には教えを説く際に使われる机に十字架が両脇に二本倒れていた。
一番の問題は演説台の前に立つ一人の人間とその奥に浮遊する魔核であった。
「もしもーし?聞こえてるか?その球体は危ないから離れたほうが良いぞー?」
俺が背後から声を掛けるとその人物はゆっくりと振り返りこちらに視線を向けた。それと同時にその人物の全体に日の光が掛る。
「ッ!?」
俺は人物の顔を視認すると共に背後に向かって地面を蹴り距離を取った。
演説台の前に立ち人物は頭に角を生やし身体は紫色に変色しており、こちらを覗く瞳には全てを焼き尽くすような深紅が宿っていた。
ズガアァァァ!!
俺が背後に飛び退くと共に先程まで居た俺の場所に巨大な傷跡が出来上がる。俺が視線を上げ演説台を見ると人型の魔物の手には魔力による剣が握られていた。
魔力倉庫から翠色に輝く刀を取り出すと先を相手に向ける。人型の魔物の口を見ると口角が上がると同時に魔物は突如として消え去った。
「はっ……?」
まさに一瞬の出来事であり俺は脳の処理が追いつかずしばらくの間その場で立ち尽くしていた。
廃教会の内部が俺以外が居なくなるのを確認すると共に風が破損した壁の隙間から吹き荒れた。ローブを風が揺らすと俺は口を開けた。
「夢……じゃないよな?」
一度頬を抓ってみるがちゃんと痛みが伝わってしまった。どうやら夢ではなく現実なようで俺はこのまま立ち尽くしているわけにも行かず、未だに浮遊している魔核に対して近づき刀で叩き割る。
魔核は魔力の霧となり空間へと溶け込んでいった、消えていく様は花吹雪が吹き荒れているかのような様子であり俺の体にも魔力倉庫を顕現した際に使用した魔力が禍福されるような感覚が澄み渡る。
先程まで人型の魔物が居た場所に手を触れると、そこに在ったのは溜まりに溜まった埃であり俺が欲しがっていた特定材料である魔力の断片などなく、手袋が汚れてしまっただけである。
「これは流石にギルドに報告か……?」
正直言って面倒くさい、ギルドに報告をする際は何故か大量の手続きや長い時間の拘束が行われてしまう。プライベートタイムや元の世界への手がかりを探したい俺は流石にやりたくはない。
しかしここで俺が何かしらの情報を挙げない場合、犠牲者が増えてしまうのもまた事実先程受けた攻撃は正直言ってギリギリだった。……面倒くさい*3
俺は割れた魔核を魔力倉庫に放り込み刀を手に持ち警戒は解かずに廃教会を出た。これから残業確定ってマ?
ノスベルクのギルド場……ここは基本的に俺は朝早くの時間のみ出勤するのだが今日は珍しく正午の時間帯で帰ってくることとなった。
俺が今いる時間帯は最も人が行き交う時間帯であり、喧しくて耳が取れてしまいそうな程である。
「……?アンタ珍しわね、何時もは夜遅くに帰ってくるのに」
「今回は運が良かったんだ。それよりも大事な情報がある」
俺がそう言うと副ギルド長はあからさまに嫌な表情をした。だがこれもは理解できる俺がこういう時は面倒ごとしか起こらないと決まっているからである。
「はぁ~また面倒ごと?アンタいい加減にしてよね……」
「俺だって好きで面倒ごとを起こしているわけじゃないんだ……少しは休憩をしたいさ」
「それは分かっているけど……はぁ……」
彼女は溜息を吐き机に頬杖を突く。
「それで?大事な情報って何?」
彼女から話を切り出されると俺は口を開いた。
「人型の魔物がノスベルク郊外の街で確認された。最低でも紅蓮金剛級以上だ」
俺がそう言うと彼女は口を大きく開け死んだような顔を見せた。分かるぞ俺もその立場だったらそんな表情してたと思うからな。
彼女を落ち着かせた後、ギルド長にも話をする必要があるようで俺は少しの間待っていることとなった。
流石にその場で立ち尽くしているわけにも行かず、かと言ってギルド場内で何か出来ることも何もないため俺は壁にもたれ掛かり暇つぶしを行うことにした。
俺は魔力倉庫から先程叩き割った魔核を取り出し隅々を隈なく眺める。例の人型の魔物はこの魔核に何かしらの小細工をしているのではと思ったが……どうやら何も無いようだ。
王都の研究者は魔核で
「おいあれって……!」
俺が魔核を眺めているとギルド場に居る探索者がざわつき始める、どうやら現在入ってきた人物に対して何かあるようだ。
入口に対して視線を飛ばすと大剣を背負った大柄な顔は出ているが鎧を着た女性が立っていた。彼女は髪が赤く染まっており身体の周りには夥しい量の魔力が流れ出ていた。周りの探索者は例の魔力で怯んでいるのかざわついているのみであった。
俺が彼女の顔を眺めているとどうやら誰かを探しているようで周りをキョロキョロと見渡していた。あの魔力量的には蒼天白金級と言う上から二番目のランクは最低でもあるであろう。
いやーそんな奴の仲間なんて大変だろうなー「もしかしてアンタか!?」
「月乃が言ってたぞ!何でも脅されても全く微動だにしない可笑しな奴が居るってな!」
イッタイダレノコトダロウナ
彼女は俺の近くまで他の探索者からの視線を浴びながらこちらへ近寄ってくる。先程勇者についての名が出たことから仲間なのだろう、背に背負っている大剣から多分だが鬼神で呼ばれる剣士なのだろう。
俺の傍まで来ると魔力が一層高まりそれと同時に彼女は背の大剣を手に持ち引き抜いた。
「それにノスベルクの最終兵器って言われてるらしいじゃねえか!そんな奴と戦ってみたくてよォ!」
俺はその言葉を聞いた瞬間に壁を蹴り剣士の彼女の手首を掴み取ると、
「ここはギルド場だそんな場所で戦おうとするな」
彼女との距離感がほぼゼロになってしまったが大丈夫だろう、なんせ顔も身体の肌色も全て隠してあるのだ彼女の前には機械仕掛けの仮面のみが映っている。それに今は本当に緊急事態なのだ無罪だろう*4
「……あ、あぁ」
俺が警句を言うとどうやら効果があったのか彼女は後ろに後ずさりしていった、もしかしたら気持ち悪いのもあったのかもしれないが。俺は彼女を掴んでいる手を放しもう一度背後の壁にもたれ掛かる。
流石にもう戦うつもりは無いのか愛武器である大剣を拾うと少し距離を取って立っていた。
「……何かあったんじゃないのか?」
俺が今最も感じている疑問を彼女に問いかける。先程言っていた戦いたかったという発言は流石に本心でないことを願いながら。
「いやそれはさっきも言った通りだが?」
未だに頬は赤くなっているが彼女は先程までぎこちなく行動していたのが嘘だったかのように冷静に返した。俺は先日の勇者の発言と照らし合わせて頭を抱えて言った。
「勇者の仲間は戦闘狂しかいないのかよ……」
それに対して目の前の剣士は会話の流れを無視するかのような発言をした。
「ところで!さっきの魔法って派生魔法だろ!?どうやって覚えたんだよ!」
「はぁ……」
俺はどれくらい溜息を吐けばいいんだ?
Q 何で帰る方法を聞かなかったんですか?
A あの空気で聞けるはずがありません
Q 何で急に消えたんですか?
A 「体が勝手に……」で殺しかけた人と同じ空間に居たくありません
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