エンディング後の世界で只々毎日を生きているモブ転生者君の日常 作:曇らせは志向の味
レオナ side
人々が行き交う道を横目に私は今ノスベルクの家々の上を次々と飛び移りながら移動していた。
向かう先はただ一つで昨日月乃が私達に報告した人物に会いにギルド場へ向かっているところである。
「空間魔法の可能性……なぁ?」
月乃から言われた彼の情報は空間魔法の可能性があるということだった。空間魔法とは遥か昔に存在が確認されたのが最後であった。
私は正直言ってしまえばバトルジャンキーだ、勇者の旅に連れていってもらってからは戦いに明け暮れていたので今までは何も感じなかったが勇者との戦いの旅が終わり私は乾いていた。
そんな時に白羽の矢が立ったのが例の彼だ、私は戦いに繋がる物なら何でも興味があるそれこそ空間魔法なんて最高級の餌である。
「……ブースト」
私は体の奥底から燃え上がってくる興奮を抑えきれず身体強化魔法を発動する、発動したものは初心者から上級者までもが使う魔法のブーストは身体能力を上げる基礎的な魔法である、戦闘でもない限りそれ以上の魔法は使い意味が無いだろう。
家の屋根を次々と乗り移り風を全身に感じながら進んでいく、屋根を破壊しないようにして移動するのが面倒な点だがそこを除けば最高の移動方法である。しかし月乃やフィアナにこれをおススメした際に説教を食らったため彼女達の前ではしないようにしている。
私が移動するとついにギルド場が目に入った、ノスベルクで一世を風靡した姿で佇むギルド場は大量の魔力が渦待っていた。
「待ってろよ……私の渇きを潤してくれよ!」
ブーストを解除しギルド場近くの屋根から降りる、私はちゃんと身なりが整っていることを確認すると扉に手を掛け奥に押す。
開いた先に居たのは多くの探索者であり先程までは楽しく談笑していたのであろう、私が入った瞬間に彼ら彼女らの表情と視線はこちらに釘付けになり少しピリピリした空気が漂った。
月乃から言われた彼の特徴は見たこともない紋様が刻まれた魔道具よりも先進的な仮面に黒いローブを羽織った人物らしい。肌は一切分からず種族は人間なのかどうかは分からなかったらしい。
私は周りを見渡すと一人それらしき人物が目に入る、受付から少し離れた位置の壁にもたれ掛かっている先程の条件に当てはまっている人物であった。
「もしかしてアンタか!?」
私は入り口から勢いよく駆け出し例の人物に近寄る。
彼は手に持っていた魔核を仕舞い気だるそうにこちらに顔を向けた。
「月乃が言ってたぞ!何でも脅されても全く微動だにしない可笑しな奴が居るってな!」
私は周りからの視線を全身に感じながら彼に近づいた、しかしどれだけ近づいたとしても魔力の波を一切感じなかった。
しかし私の体はその気配を無視するかのような高揚感に襲われていた。目の前の人物と戦いたい、この渇きを潤したい、そう言った感情に襲われていた。
「それにノスベルクの最終兵器って言われてるらしいじゃねえか!そんな奴と戦ってみたくてよォ!」
私は背に背負ってある愛武器である大剣に手を掛けて引き抜いた。
「…ッ!?」
しかしその行動は失敗に終わってしまった。私が振りかぶろうとした瞬間に彼は壁を蹴り私の手首を掴み、掴むと同時に彼の背後に影が表れ突如として一本の触手が表れた。触手は掴んでいた大剣を弾き遠くに飛ばしてしまった。
私はこの魔法に見覚えがある、この魔法はフィアナが神都にて
彼は私の腕を引き近くまで引き寄せる。近くで彼の顔を詳しく見ようとしたがその前に彼が声を紡ぐ。
「ここはギルド場だぞ?そんな場所で戦おうとするな」
あ……めっちゃカッコいい声……
私の顔に熱が溜まる感覚が伝わる。彼がこちらの様子を窺うように顔を覗き込もうとするが赤く染まった顔を見られるわけも行かず、私は俯きながら声を出した。
「……あ、あぁ」
私自身でも驚くような情けない声が出た、足は竦み動けないと警告を先程から鳴らしているが脳が早く離れろと真逆の声を出している。どうやら彼も私の行動を察したのか先程まで掴んでいた手を離し再度壁にもたれ掛かる。
私はしばらく脳が働いていなかったが先程飛ばされた大剣を思い出し即座に拾う。
拾った後も私はしばらくの間彼から少し離れた場所で立っていた。
「……何かあったんじゃないのか?」
少しの沈黙が流れた後、彼は突如として口を開く。その質問は当然のことであった。
「い、いや?それはさっき言った通りだが……」
私がその発言をした瞬間に彼は突如として頭を抱える。どうやら私の先程の発言に対して困惑しているらしい。
「勇者の仲間は戦闘狂しか居ないのかよ……」
?どうやら何かを言ったようだが聞こえなかった。私は自身の顔に溜まる熱を誤魔化すように矢継ぎ早に会話を続けようとする。
「と、ところで!さっきの魔法って派生魔法だろ!?どうやって覚えたんだよ!」
あからさまに面倒だという雰囲気を相手から感じたがお構いなしに私は言葉を紡いだ。
勇者には多くの伝説がある……らしい。
如何せんつい最近まで経験を積むのに奔走していたため、稀に遠征などで噂を聞いた程度しかなかった。
曰く神都にて深穴が発生した際に単身で内部に突入しその身で大半の魔物を殲滅したという。
曰く死に塗れた軍隊を僅か一振りで殲滅したという。
曰く、吹雪に閉ざされた北方戦線にて、たった独りで七日七夜を戦い抜き、最後には魔獣の骸で城壁を築いたという。
曰く、曰く、曰く……
例を出せば止まらない程の逸話がある……流石に最後の噂は嘘だと思いたいが生憎とこの世界はゲームである本当である可能性も否めないのだ……
そして現在の俺の状態も嘘であると思いたい。
「……頼むから一度黙ってくれ」
俺はほぼゼロ距離にまで近づいてきている目の前の剣士の肩を掴み後ろに向かって力を籠める。
「おいおいおい!そんなこと言うなよ!アタシらの仲だろ!」
「まだ会って数分だからな?」
こいつは本当にイかれているんじゃないか?今のところ出会った中での勇者の仲間は魔法使い以外は全員が異常なことになっている。
彼女は俺の手を掴みこちら側へと徐々に前進しようと近づいてきており、流石にこのまま力で押し負けてしまうと俺の体が挽肉になってしまうので死ぬ気で力を籠める。
「テメェッ……!力が強すぎんだよ……!」
「伊達に勇者パーティのタンク役やってないからなッ!」
「じゃあせめて常識だけは身に着けてこいやッ……!」
俺の腕は徐々に押し負けて来ている、如何せん学園に所属していた頃に身体強化系についての魔法は全く持って才能がなかったようだ。結晶でもあればよかったんだが……無い物ねだりをしても仕方がない。
それにしてもこれで未だに素の力とは……本当に人かどうかが怪しくなってきている。
「それにしてもお前、その
「お前もそれを言うのかッ……!」
「ってことは周りの奴にも言われてんだなッ!」
「一回待ちやがれ!」
流石にこのままにしておくわけにもいかないため、少々ズルをさせてもらう
この二つのアーティファクトの効果は簡単に言えば
詳しく言うと例のコインは少し錆びれた金色に輝くコインであり表面には謎の言語が刻まれている、効果はコインを投げて表を出した際に自身の望む結果に帰ることが出来る。しかし
そして
話を戻してここまで説明すれば分かるだろう、例のコインを使い砂時計で運という媒介消費を踏み倒し現実改変の成功と言う結果だけを生み出すのである。それにより俺は現在進行形で圧し潰そうとしている剣士が偶々魔力の暴発により圧し潰すことを失敗する……という結果を生み出したい!*2
「オラ!大人しく…ボン!!
こちらに向かって力を籠めようとしていた彼女は突如として大きな音を立てながら白目を剥き、体の何所から出ているのかは不明だが黒い煙がモクモクと立ちギルド場の天井まで立ち上っていた。
その身体は重力に従って地面へと先程の圧力を全て失い落下していった、大きな音を立てて無気力な状態のまま倒れ伏した彼女はまるで先程までの猛攻が嘘だったかのように静かにそして大きな問題を残したまま倒れていた。
「……これどこに連絡すれば良いんだ?」
勇者パーティーに連絡をすれば良い……のだろうが如何せん連絡先も勇者と会いたくないのが本音である。出来れば例の魔法使いが良いのだがあの時*3に見たベッタリ具合から多分ハッピーセットの感覚で付いてくるのであろう。クレーム待ったなしのアンハッピーセットである。
しかし此処に放置して置くのも忍びない、まあこいつが10対0で悪いのだが……
しかし有名人の知り合いなどはどこの世界でもヘイトが集まるものだ。ここで面倒なことになったらこちらにも被害が被る可能性が有る……
「はぁ……めんdddっど」
俺は深いため息を吐くと共に長い程の思考を重ねその回答を出した。
「……
何もない空間から闇よりも深い霧が浮かびそこから二本の獣じみた触手が這い出てて来る、前世だったらこの展開はアレな事が始まるのだろうが生憎と将来の婚約者がいるであろう人物を襲うような真似も、そもそもとしてそんな不貞行為を働くことはしない。
二本の触手は彼女の腹部に巻き付き空中へと持ち上げる、剣士のサラサラとした髪が空気によって揺らされ鍛え上げられたのであろう腕が無気力に下がっていた。彼女は何か言葉を発することもなく只々呼吸が繰り返されているだけであった。
「面倒な事を増やす奴が増えてしまったな……待ってるだけなのに何でこんな事になるんだ……?」
俺はそう呟くと思い出したように使用したアーティファクトの確認を行った、
この罅の拡大量的に後3.4回使ってしまうとこのアーティファクトは粉々に砕け効力を失ってしまうのであろう。
「……これどうやって言い訳しようか」
俺はアーティファクトの損失から即座に思考を切り替えて直近の最大級の問題に視線を向けた。そろそろ俺が待っていた原因である副ギルド場が来てしまうかもしれないのだ、俺が持ってきた問題を解決した矢先に新たな問題を持ってきてしまうと俺は死んでしまうかもしれない。
……俺とは一切関係がなかったことにしてしm「ギルド長から呼び出しらしいわよー!」
終わった
氷獄戦線の死守戦
北方戦線にて行われた魔王直轄の魔人の一柱であるイシュカルドと北方からの侵略を防ぐための防壁が存在する地帯で行われた長きにわたる戦争。100代目勇者の登壇により戦況は覆りイシュカルドの配下である100万を超える魔物で屍の砦を築き、配下の血で染まった聖剣で本人の首を切り落としたことで戦争は幕を閉じた。
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