エンディング後の世界で只々毎日を生きているモブ転生者君の日常 作:曇らせは志向の味
「ほらここがギルド長が居る部屋よ、早く入って」
俺はギルド場の職員のみが入れる扉を超えてギルド長が待っている部屋の前に来ていた。
「こんなお偉いさんが居る場所に来れるなんて思いもしなかったよ」
「はいはい、無駄口叩いてないでさっさと行ってくれない?アンタが連れてきた勇者パーティの人のせいで更に対応する問題が増えたんだから……」
「それは俺は悪くないと思うんだがなぁ……」
そんな文句を溢しながら俺はドアノブに手を掛けて捻る。
本音を言ってしまえば俺は今、途轍もない程に緊張をしている。今までの人生でこういった有権者の元に行くことなんて無かったためだ。
ドアが完全に開き部屋の内装が俺の視界へと広がった。
「ようやく来たかい、噂はかねがね聞いているよ我らが希望レイン・アルフェルト君」
扉を開けた先には巨大な執務机があり、執務机を取り囲むかのように多くの勲章が飾られていた。その椅子に座っていたのはここノスベルクのギルド長を務めている存在である筋骨隆々の大男のハロルド・グリズリーである。
因みに彼が先程言った名前は俺の名前であり、この世界においてこの名前を知っているのは三名のみでありその内の一人がハロルドである。因みに副ギルド長は知らない為只今初めて知ったことになる。
「こちらこそ貴方の逸話は多く聞いている。無敗の武神ハロルド殿」
俺がそう言うと彼の眉が上がると同時に口角も上へと上昇した。
因みに彼の伝説について説明するとハロルドは全盛期のころからは少しは弱まっているかもしれないが、今もなお王都にて開催されている最強決定戦にて、過去に13連勝という異常な数の連勝を獲得し出禁を言い渡されるという前代未聞の出来事を成し遂げるという話がある。
「ふっふっふ、そう呼ばれるのも随分と久しぶりだね」
「アンタが仕事ほっぽり出してサボってるのが一番の原因だからね?」
先程まで俺の背後に居た副ギルド長はいつの間にかハロルドの横におり、溜息を吐きながら上から見下ろしていた。
「まあ立ったまま話すのもなんだそこの席に座ってくれ」
「ああ失礼する」
俺が椅子に座ると共に彼の表情が先程のようなフレンドリーな表情から真面目な硬い表情へと変化した。これだからこの手の話題は副ギルド長に全部
仮面の下で俺が苦い表情をしていると、彼が先に口を開き本題へと入り始めた。
「さてアイスブレイクは不要だろう……例の魔人についての件だ」
……やはり俺が発見した魔物は魔人だったようだ。魔人とは人間と魔物が融合した結果の存在であり元の人間の魔力量や力量によって差が分かれるらしい。
因みに魔人の大多数は勇者が殲滅したようで残ったのは魔王直轄の魔人数名だけなようで、直観だが俺が会ったのも元魔王直轄の魔人で勇者パーティがノスベルクに来た理由でもあるだろう。
「と言ってもあまり確認することも無いんだがね……」
「大方、今の時期に出てくる魔物で強力なのとか神格魔獣が精々でそれ以外は神国とかに逃げたからね。平和なのはいいけど残党処理が面倒なのよね」
「神格魔獣は勘弁だがな。命が幾つあっても足らないぞ」
しかし意外なことにそこまで会話することは無いようだ。
因みに神格魔獣と言う名前が出たが、こいつらは基本的に活発的な行動を示さず縄張りの内に入らなければ安全である。だが神格と言う名前が付けられている通り一般冒険者では相手を視認できれば上々といったものであり、大体は視認する前に殺害されている。
「因みにこの……強力な魔力による斬撃痕ってのはどういったものだったんだい?」
「それはそのまんまの意味だが?俺が魔人を視認した瞬間に大鎌で薙ぎ払ったような斬撃が飛んで来たんだ」
「……それってもしかして禍々しい剣から繰り出されてたりするかしら?」
「ああ魔力で形成された剣を持っていたな、影のせいで全容は見えなかったが」
「もしかしてそれって……」
はぁ……と両者からため息が吐かれあからさまに疲労感が表に出される。どうやら今回の魔人について何か理解したようだ。
俺が一人だけ何も理解できずに首を傾げている中、ハロルドが重々しく口を開き言葉を紡ぐ。
「一応その魔人について検討が付いたよ。多分だが君が遭遇した魔人は勇者パーティがノスベルクに来た理由でもある、魔力による戦闘をベースとした魔人の一柱エーテリオンだな」
俺はその名前を聞いた瞬間に心の中でやっぱりな、という気持ちが充満した。元々勇者がノスベルクに来た理由については俺も聞いており今回の件も正直言ってしまえば見当はついていた。
「一人とは言わないってことは魔王直轄の魔人だな?だとすると例の斬撃は納得だったな」
「生きて帰ってこれたことだけでも奇跡的だったのに、攻撃すらも避けれるなんてアンタは前世でどんな得を積んだのよ……」
「……ただの平凡な人生だったんじゃないか?」
やめてくれ副ギルド長、その
と、いうか勇者は例の攻撃を避けながら何体も魔人を殺したのか??アレは本当に人なのかどうかが怪しく感じてくる……
「ところでその……エテ、何とかの魔力使いとは何だ?魔術師や魔法使いとは違うのか?」
「エーテリオンだね。彼は自身の魔力を具現化しそれを放出することで戦闘を可能としている、どうやら彼は魔法や魔術は使えないようだが侮ってはいけないよ」
「元々その程度で侮る程未熟者じゃないがな」
「それなら安心だよ。最近の冒険者は相手との力量の差を理解できない子が多いからね」
この世界には魔法使いと魔術師、そして無道者の三種類が簡単に言えばある。
その内の無道者とは犯罪者を指す意味の言葉ではなく、神から祝福を得られなかった者のことを指す。大方ファンタジーモノの作品で言えばこの手の人物は虐げられる運命にあるが子の世界は違う、案外無道者という者は其処かしこにおり黎明の旅団の一人も無道者だという。
「取り敢えず魔人についてはこちらからも勇者パーティに伝えておくよ。君が気絶させた剣士の彼女も先程パーティの仲間に連絡が取れたから安心しておいてくれ」
「分かった。なら俺はこれ以上ここに居る意味は無いな、勇者が来る前に帰るとするよ」
俺は椅子の肘置きに手を置き席を立つ。このまま勇者達に会ってしまうと前回は無罪だったが、今回は仲間の一人を気絶させてしまった。つまり前回みたいに殺されそうになってしまうと多分だが俺は死ぬ。
そんな最悪な妄想をした瞬間に俺の背筋に冷や汗が垂れてしまう。このまま留まるわけにも行かずそそくさと扉へと向かう。
「ああ、そういえば……」
俺が扉の近くまで差し掛かると背後でハロルドが口を開き声を出す。
「竜殺しの凱旋団が魔人の件で来るようだから気を付けてくれよ」
「……持て成すなら分かるが気を付けてとは何なんだ……?」
「まあ……会ってみればわかると思うよ」
竜殺しの凱旋団……その名前の通り竜狩りを要としたパーティであり、装備を狩った竜で揃えているそうだ。あまり詳しい情報は聞かされていないが竜殺しと言うくらいの為、相当な実力を保持しているようだ。
例のギルドについて以外の情報が無いことを確認した俺はドアノブに手を掛け捻り、部屋の外へと足早に撤退した。
さーてと!勇者以外の帰還方法を探すとするかな!
「久しぶりに来たと思ったら、これまた面倒なことになったってるわね……」
俺は数日前に来たバーである黒曜の杯亭に再度訪れていた。
カティアは面倒くさそうに机に頬杖を突き、こちらに対して紫色の瞳をこちらに向けていた。
「はぁ俺も自ら好んで問題ごとに突撃しているわけじゃないんだが……」
「それは学園時代から変わってないことと言えばいいかしら?問題はどうしてそれを今のところ全て解決できているかなんだけどね?」
随分と懐かしい話題が出てきた。
正直言ってしまえば学園時代はあまり覚えていない、正直言ってしまえばあの頃は傍から見ても随分と可笑しかった。帰る方法を永遠に探し続けていたのだ、今は余裕があるから良いがあの頃は盲目的だったようだ。
「それにしても懐かしいな……そう言えばクラスに俺を目の敵にしてた奴が居ただろ?アイツどうなったんだ?」
「あー……イグニスのことでしょ?彼なら王都の騎士団で小隊の隊長をやってるっぽくて、どうやら実力が認められて将来は安泰らしいわよ」
「そりゃあ良かったな。アイツもお前と同じくめげずに俺に挑み続けてたからな……それ相応の実力者になるとは思ったがそれ程までとは……」
金髪のどこかの貴族の子供だろうイグニスは、俺がカティアと長いこと居ることに不満を持っていたのか定期的に勝負を挑んできていた。
正直言って俺自身はアイツのことは嫌いではなかった。どれだけ挑み負けようとも諦めずに毎回毎回上達してやってくるのはとても面白かった*2。アイツは顔も良かったからなきっといい家庭を築けるんじゃないか?
「……それとクロムウェルはどうなった?確か国王の直轄の魔術師に任命されたとかいって学園のころは一目置かれていた気がするんだが……」
「あれニュースは見てないの?今や四代魔術師の一人になったらしいわよ。王都襲撃事件の頃に成果を上げたみたいでね」
「四代魔術師かぁ……随分と皆偉い立場になったみたいだな……」
四代魔術師……国王直轄の魔術部隊であり、四人で構成される少数精鋭部隊である。彼は魔術の才があるとは思っていたが流石に四代魔術師にまでいくとは思わなかった。
本来ならばここで周りとの差に絶望するところだろうが、生憎と絶望しても意味は無いため何も感じません*3
「大体は皆学園卒業後に王都で職に就いてるからね。
「元々、学園の進学後の手当てが王都を主軸としてやってるからな。再度学園で働く奴もいただろ?」
「あーいたね。あの仕事量の学園で教師やるって頭可笑しくなったのかと思ったよね」
「あの
カティアは再度深いため息を吐き、棚の下からグラスを取り出しワインを注ぎそのまま飲み干してしまった。
「職務怠慢な店員だな」
「生憎とこのこのお店は人が全く来ないのよ。だから何しても実質いいのよ」
前世だったら何所から撮られているかも分からないネットに怯えているところだが、この世界には蒸気技術が精々であり。貴族の間ではカメラに似たような物はあるらしいのだが、庶民に復旧していないということはそういうことだろう。
しかし蒸気技術以外にも魔道具と呼ばれる物がある、例えば俺が現在いる黒曜の杯亭に設置されている謎の木を映し出している水晶玉で、魔道具は基本的に魔力を流し込むか結晶により稼働する道具である。
大方、どこかのクエストで魔核でも破壊した際に見つけたのだろう。
「……どうしたの?あの魔道具でも気になった?」
「ああ、あれは結晶で動かしているのか?」
俺が問うとカティアは表情を変えずに言う。
「ええそうよ。確かナンパの口実として貰ったやつだったかしら?まあそいつはもうまともに冒険者を出来てないと思うけど」
「……何したんだ?」
「簡単な話よ。あからさまにこっちを見下した口説き文句だったから、股を蹴っ飛ばしてナンパの時に触られた胸の件でギルドに報告してサクッと追放よ」
こいつにナンパをした奴も随分と命知らずなんだな。こいつはギルド内でも名の売れた存在であり、女性のみではなく男性の方でも話題には上がるはずだろう。
……いやこういう奴に常識を解くのは無粋だな。
「随分と手慣れてそうな言い方だな」
「私の仲間がね……頻繁にやられるから。それで慣れちゃったのよ残念なことにね」
「……俺、まだお前がどこのパーティーに所属しているのか分からないんだが」
「なんてことの無いただの中堅パーティーよ。男がいないから色恋にはちょっと弱いけど……」
彼女は話をするとあからさまにどんよりとした雰囲気を漂わせた。正直言って彼女ほどの顔や性格ならば彼氏の一人や二人*4出来そうなものである。
異世界だから……とでも言うべきか今世の人間はほぼ全員が美男美女である。そんな中で仮面を付けている俺は一体……?
「パーティー……かぁどういったものなのか知っておきたいな」
「アンタの場合は仲間が居る方が足枷になるんじゃないの?自由奔放だし」
「そもそもとして仲間が集まるかどうかも問題だがな……王都に居た方が良かったかもな……」
俺はそのままカウンターに項垂れ言語化できないような声を上げた。
日本に帰らせてくれ……
魔核結晶
魔核を破壊した際に内部に埋め込まれている事がある、魔力が具現化した物。魔核にはダンジョンに親和性の高い魔力が循環しており、結晶を介して魔法を発動することが出来る。結晶は物理以外において破損することは無く再現無しに魔法を使用できる。但し少しでも傷がつくとそのまま瓦解してしまうため、戦闘にはあまり使われない。
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