エンディング後の世界で只々毎日を生きているモブ転生者君の日常   作:曇らせは志向の味

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第九話 贄と空を駆ける怪物

 

 元の世界への帰還方法は複数ある……と思う。俺が魔術学園に所属していた頃に調べ上げたものの一つとして、勇者がこの世界にやってきた方法の王宮にある召喚魔法の大魔術印である。

 これは魔王への対策のために制作されたもので、この考えは単純でこちらの世界に呼び込めるのであればその逆も出来るのではないか。そういった考えである。このために勇者との接触が必要だったのだが勇者の態度的にこれは消去法的に消すことにした。

 

 だがこれだけで諦めるものではない、この世界には空間魔法と呼ばれる魔法があり。これはその名の通り空間を操る魔法であり、王都に設置されている英雄像の一つミスリックと呼ばれる大魔法使いと同じレベルの知名度である。

 空間魔法は特異魔法に分類されるが案外継承している人物は多いため。現在は空間魔法について奔走しているところである。

 

「……にしたって空間魔法なんかノスベルクで見つけれるはずがないんだがな……」

 

 俺は現在小言を漏らしながらシルヴァリス大森林の南東部を練り歩いていた。因みに本日は冒険者としての活動は休みだ。

 

 現在地の地形は俺が前回居たロード洞窟の前世の二階建ての家程の木々とは違い。軽く40Mはあるだろうか、そんな大木が連なる竜族や龍人族が住まう地が俺の現在いる場所だ。

 今回の休日の目的はスクロールの確保でありサブ目標としてアーティファクトの回収である。

 

「……でも今日はやけに竜族が居ないな。ギルド長が言ってたパーティーが何かしでかしたか……?」

 

 どれ程歩いているのだろうか。軽く二時間ほどは歩いただろうか、随分と長い間歩いているのだが一向に魔物が表れていこない。

 本来であれば既に大量に魔物が出ている筈なのだが……魔力の痕跡が一切目に映らない。

 

 このままでは大森林に来た意味がなくなってしまう。がしかし、竜族が特に出現しやすい場所がこの南東部には存在しており、此処から更に南下していった場所に存在する湖である。

 

竜鳴きの湖……とでも神国のオッサンが言ってたか?」

 

 俺がその場所の存在を知ったのは、ノスベルクに来ていた神国のお偉いさんの護衛の際に張本人から言われたのだ。

 流石にあの頃に単独で行くと簡単に死ぬしかなかったが、今ならば遠距離チクチクしていれば勝てるのである!*1

 

 俺は魔力倉庫から両手斧の戦斧を取り出し、跳躍の首飾りのクールダウンが溜まっていることを確認すると俺は湖の方向へと歩き始めた。

 

「竜狩りだったら……風魔法が良いか?あの速度で走られると他の魔法じゃ当たらないからな……」

 

 風魔法は他の魔法とは違い広範囲的な攻撃を主軸とした魔法であり、異常な速度で動く竜族に対して最も効果が続くものである。

 

 因みに風魔法の代表的な人物として王国の騎士団の第三部隊の隊長である。名前は覚えるつもりが無かったため知らないが、全力を出せばハリケーンすらも召喚できるという逸話があるらしい。

 

「腕が訛ってないと良いんだが……ウィンド・スラッシュ

 

 俺は目の前にある大木に向かって通常の風魔法であるウィンド・スラッシュを発動した。

 魔力によって作り上げられた刃のような風は前世では見られなかった大木を容易く切り裂いた。それによって爆音のような音を立てながら、木々の上に居座っていた鳥型の魔物が多く飛び立っていった。

 

「これなら竜族共を討伐できるな……もっと広範囲な殲滅魔法とかはないのか?」

 

 風圧によって後方へと倒れた大木に目を背け、例の湖へと歩みを進めることにした。

 因みにこの南東部の森林には神格魔獣が潜んでいるという噂があるらしいが……最近になってその噂が途絶えたため勇者パーティが駆除でもしたのだろう。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 異常なほどに高く伸びている森を歩き続けること二十分程、突如として憂鬱になる程の木々が無くなり霧が立ち込める巨大な湖へと辿り着いた。

 湖のほとりには大量の岩石があり、もし本当に竜族が出ると言われれば疑ってしまうかもしれない程に静かな空間が俺の目の前では広がっていた。

 

「……一切居ないんだが」

 

 到着したのは良いが如何せん竜族の根城と言われた湖には竜族の影はおろか、他の魔物も何もなかったのである。

 

 

 俺は現在地点から湖を時計回りに回るようにして移動している。その道中で魔物が使用していたであろう武器や魔法の痕跡はあったもののその元凶の影も形も何もなかったのである。

 竜族は程々な知能があり基本的に数人組で徒党を組んで狩りを行う、嘗ての亜人もしかり獣人と比べてしまえば知性は劣るものの代わりとして竜族は多種族とは違う強力な魔法を保持している。

 

「痕跡とかはあるんだけどな……そこらへんの魔獣で全滅するような奴らじゃないぞ?」

 

 竜族はほぼ全員が雷魔法を習得しており、雷魔法によるトンデモ加速と縦横無尽に駆け回る電流により殺害される冒険者は後を絶たない。

 雷魔法とは言っても多種多様な魔法を保持しているのではなく、彼らが持つ奇鉄と呼ばれる多くの魔物を贄として作り出される金属に一種類の雷魔法を織り交ぜるという、奇怪な方法を使い奴らは魔法を我が物としているのである。

 

 奇鉄は今の技術でも解明がされておらず、分かることは異常なまでに硬く魔法と極めて高い親和性があるということだけである。正直言ってしまえば俺は奇鉄がとても欲しい*2

 そもそもとして魔物は装甲自体が異常なほどに硬いため武器の破損は日常茶飯事で、そんな中で異常なまでに強固な魔法適性が有るとすれば俺達冒険者からすれば喉から手が出るほど欲しいのである。

 

「偶々どこかに落ちてる奇鉄は無いかな……」

 

 先程から歩き回って数分間、剣は突き刺さっているが全てには通常の鉄や町から流れてきた物が大半であった。

 ふと湖の奥を見ようと視線を向けるが濃いの濃霧に覆われており、聞こえたものは風により揺れている大自然の木々である。

 

 これ以上移動しても無駄だと考えた俺はすぐそばにあった大きな岩石に腰を掛け、辺りに何もないことを確認し岩石の表面に寝そべった。

 

「あークソッ……今日は流石に切り上げるか?」

 

 俺は現在に至るまでに一体も魔物に会っていないことから愚痴を溢した。

 

ガサ……

 

 俺がそんな言葉を言った瞬間に近くの茂みから音が鳴る。この音はあからさまに自然の音ではなく何者かが動いた音である。

 俺は即座に岩石から飛び起き直ぐ傍に置いた戦斧を持ち、いつでも風魔法を発動できるように構えておく。背後にも神経を張り巡らせ仮面の奥の俺の額に冷や汗が垂れた。

 

「キシャアァァァ!!」

 

 構えを取った瞬間に茂みの中からリザードマンが一匹だけ飛び出してきた。敵の持つ武器は奇鉄によって作られていることがはっきりと理解した。

 武器は剣の形をしており、大体は黒色なのだが定期的に異常とも言える色が多く織り交ぜられていた。

 

「やっぱりかッ!!」

 

 敵は姿勢を低くして俺の胴体を二つに叩き割るような姿勢で走りこんでいた。俺はそれに対するように左手の戦斧を剣の刃に充てるように構え、右手に握りしめた斧を敵の頭を潰すように振りかぶった。

 剣が俺の戦斧により阻まれると敵は余計な焦りをこちらに表さず背後に飛び俺が上から下へと振り上げた斧は空気を斬ったが、即座に姿勢を整え再度敵との距離を目で計る。

 

「やはり、そう簡単には当たってはくれないか……」

 

 ほんの数秒間の睨み合いが起こり異常なほどに静寂が場を支配した。最初に動き出したのは敵からで雷魔法のボルト・ランスを発動し、的確に俺の頭へと向けて直進していた。

 どうやら奇鉄による剣にはボルト・ランスが練り込まれているようで、この魔法は俺が使ってきた派生魔法とは違い等級が振り分けられている通常の魔法にふりわけられる。因みにS〜E級までがありランスはCというかなり微妙な等級である。

 

 話を戻そう、ボルト・ランスは槍という名前があるが槍のような見た目ではなく、魔力により出来た雷撃の塊である。速度は流石は雷魔法と言うべきか速くこの距離ではかなり回避が困難だ。

 がしかし、魔法は回避以外にも対処法は多くある。その内の一つが……叩き割るである。

 

パァン!!

 

 俺は勢い良くこちらに向かってきているボルト・ランスに対して、戦斧に魔力を流し空気中にバチバチと電気を流しているライト・ボルトを真上から振り下ろし今しがた叩き割った。

 

「案外簡単に破壊できる物なんだな。魔法って」

 

「キエェェェ……」

 

 自信満々に繰り出した魔法が簡単に破壊されたことに狼狽えているのか、リザードマンは先程まで威勢良く出していた鳴き声が弱まり後退りをした。

 俺はそのまま逃げてしまわないように敵が反応するよりも速く右手の斧を180度上へ回転させ敵の前へと走り込む。

 

グシャ……

 

 俺の右手の斧がリザードマンの下顎を貫き、勢いを失わないまま上へ上へと貫いていく。その途中で抜け出そうと体をジタバタと動かしていたがそれは無意味に終わった。

 そして突如として敵の動きが停止した。どうやら斧の刃が脳みそにまで届いたようで、だらんと落ちた腕から剣が地面へと落下した。リザードマンは頭が小さくそれ故に簡単に脳味噌まで届いたようだ。

 

「……魔物の持つ武器はやっぱり消えるのか」

 

 俺は即座に斧を引き抜き地面へと落下したはずの剣へ視線を向けた。原理は全くもって理解は出来ないが魔物が持っていた武器は所持者が死ぬと共に粒子状となって消えてしまう。これは敵が持つ武器が誰かの窃盗品だった場合にはその場に落ちるため、魔物側が作った場合にのみ限るのだろう。

 

 他の増援がいないかどうかを確認すると、俺は岩に腰をかけるついでにリザードマンを地面へと埋めておく。

 

「ようやくこれで一体か……流石に効率が悪すぎるな……」

 

 何故か上がっている濃霧により覆われた空を再度仰ぎ、俺は考えに耽る。

 本来ならば大量にいるはずの竜族が居ないというのは流石に不可解がすぎるし、絶対に昨日の魔人の件と同様に面倒な予感しか俺の頭の中では働かない。運良くグリフォンでも飛んできてくれないかな……*3

 

 俺が微塵も見えない空を見上げていると、突如として俺の肌にピリピリとした不愉快な痛みが迸る。寒気を感じて立ち上がり岩から離れると突如として岩がプラスに掛けられたかのように砕け散る。

 

「飛んでこないかとは思ったが……本当に来ることは流石に想定しないだろ、しかも不意打ちで」

 

 俺は上空へと視線を飛ばし耳を覚ます、先程の攻撃は前世にも神話の内に居た生物であるグリフォンというキメラの魔法である。奴は風魔法を操る竜族の一体であり、多分だがあれはB級魔法のウィンド・バレッドの上位互換の魔法であるA級魔法ハイ・ウィンド・バレッドである。

 グリフォンは何事もなかったかのように、背中に生えている自慢の翼を使い濃霧の中を優雅に降りてくる。奴はそのまま下降してくると自身が砕いた岩の上へと着地した。グリフォンはゲーム的に言えば野生に湧く一般ボスのようなものだ。*4

 

 グリフォンの対処法は空を飛行している間に強力な魔法で地面へと墜落させそこを全員で攻撃するのが基本である。

 

「いやー……どうするかな」

 

 

*1
卑怯者

*2
乞食此処に極まれり

*3
あいつ少ししか竜族の血は混ざってないけどな

*4
ボスが自然湧きするなよ……





派生魔法
 本来の魔法から派生して生まれた紛い物。
 メタ的に言うと魔法名が漢字で書かれているのが派生魔法。それ以外は通常魔法か特異魔法か魔術。

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