ゴジラvsモゲラ   作:サイレント・レイ

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第16話 兵器王誕生(前中編)

――― 整備工場 ―――

 

 

「……コイツが、モゲラか…」

 

「ああ、計画書では知ってたが、デカイよな」

 

 箒と一夏が、通路の手摺から身を乗り出して最終工場が行われているモゲラを見上げていた。

 

「コイツに、私達が乗る事になるんだな」

 

「でも、また訓練が厳しくなるな…」

 

 一夏の溜め息を吐きながらの発言に、箒が抗議のモノと思われる冷たい目線を向けていた。

 しかしそれは出現が多発している怪獣への切り札となるモゲラへの期待と責任感からきているモノであった。

 そして世界的に開発が優先的に進められている対怪獣兵器の表れであったが、ISもそれは同じであった。

 元々、従来兵器を駆逐したISは“絶対防御”と言う最強の楯を有していた事に反し、矛と言う攻撃面に関して疑問符が付いており……“矛盾”で言うと、常に楯の方が勝つ傾向があった。

 まぁ、白騎士と言う例外があるものの、ラファールシリーズが火力面が従来兵器の延長線上でしかなかった事を例に、第一&第二世代機は此の問題に苦しんでおり、一夏と箒の学生時代では最新世代であった第三世代機が稼動時間を犠牲(鈴音の愛機である、中国製ISの甲龍と言う例外があったが)にして攻撃面の強化が行われていたが、束お手製の紅椿の登場によって第三世代機も含めて全てのISが旧式化してしまった。

 特に、紅椿の『絢爛舞踏』……ISのエネルギーを回復させる単一能力は世界には衝撃であり、世界各国が『絢爛舞踏』の研究及び複製(但し、どれも紅椿に遠く及ばないデッドコピーであったが…)が行われて、準第四世代機といえる機体群は防御性能が急上昇した。

 此の為、IS同士……取り分けて準第四世代機同士のだと非常に決着が着きにくくなり、実際に全ての公式戦でKO勝利が稀になり、現在のISの開発主体は一撃必殺の攻撃力を持たせる事となっていた。(此の為に登場時に前のめり傾向が強すぎて欠陥機と言う低評価だった白式が再評価される事となった)

 

「…篠ノ之さん、すみませんが、此方まで来て下さい!」

 

「あ、はい!!」

 

 少し一テンポ遅れたが、下の方から……モゲラの下腹部辺りにいる麗花に呼ばれた箒が急いで彼女の所へ向かい、一夏もそれに続いた。

 

「御待たせしました!」

 

「早速ですみませんが、紅椿を展開して下さい」

 

 麗花の要請に従って、箒は直ぐ紅椿を展開し……そのまま紅椿を脱ぎ始めた。

 

「…おお、来てたんか。

そして準備も出来てんだな」

 

「あ、神那さん」

 

 箒が紅椿から降りて三年近く纏い続けた愛機を見上げていたら、此のモゲラだけてなく、IS含めて此の基地全ての兵器のの整備を任されている戦部神那整備長が赤いISと共にロフトで上がってきた。

 

「…!?」

 

「アンタが束の妹さんか。

まぁ、よろしく頼むわ!」

 

 元々此の部隊で一緒だった上に神那が千冬の愛機・暮桜の専属整備士であった事から一夏は何もなかったが、箒は神那の巨体の上に厚手のツナギの上からでと分かる程の女性としての肉付きが最高である見た目に加えて“女傑”の言葉が似合う豪快な笑いに少し引いていた。

 

「…で早速で悪いが、コイツの最適化(パーソナライズ)を行ってもらうぞ」

 

「はい!」

 

 素直に了解した箒は神那の手を借りて、新たな機体・準第四世代機“戦王”に登って纏った。

 そして神那による調整が行われ始め、同時に紅椿の方にも他の整備士達が取り付いていた。

 

「…よし、後は慣らしでの最終調整さえすれば一次移行(ファーストシフト)が出来る筈だ」

 

「はい、コイツとは上手くやっていけそうです」

 

「戦部整備長、ダミープラグが上手くセット出来ません。

チョット此方に来て下さい」

 

「ああ、分かった」

 

 戦王に最低限の処置を施した神那は、部下達に呼ばれて紅椿の方に向かった。

 

「……で、ソイツはA型だよな。

G型には見えないんだけど」

 

「ああ、コイツはA型だ。

どうやら紅椿に近い仕様になってる」

 

 先述の通りにISに一撃必殺の攻撃力が追求された結果、ISは二つの型に分派していた。

 一つはA型…白式に限りなく近い機体の多い近距離格闘型であり、当然ながらAは近距離格闘型の色が強い紅椿の頭文字からであった。

 此の型に求められるのは当然の刀剣や槍等の近接用武器だけでなく、必要最小限の機体その物の巨体化(と言うより小型化)と速度と機動力であり、現在の公式戦で使われる機体の大半は此の型であった。

 だが此の型には欠点があり、最優先で格闘性能を追求した事で益々ピーキーで扱いにくくしてしまい、此の為に現在の各国の代表候補生は格闘界の“大会(orランキング)”上位入賞が選ばれ続けていた。

 更に軒並み揃って拡張性が全く無い上、銃や砲兵器は殆ど装備出来ないので現代の軍事用に余り向かず……要するに防空能力一点張りで汎用性が無かったFー14(蛇足ながら、此の戦闘機は正式採用を任した機体を元とし、防空能力に疑問符が着くが高い汎用性を誇るF/Aー18に駆逐された)のIS版が多々存在する型となってしまい、日本のみではゴジラと戦えば被爆する危険性から、此の戦王以外のA型ISは基本的(軍事用のも極少数はあるが…)に競技用のしか開発運用がされていなかった。

 此の為、世界的には怪獣の多発している事もあってもう一派である遠距離砲撃型であるG型が主流になろうとしていた…

 

「…よし、準備が出来たな。

桜には連絡したか?」

 

「はい、大神司令から許可が下りました」

 

…話を戻して、どうやら紅椿の処置が終わって、更に桜への許可を取り付けたのを確認した神那は、大きな息を吐いた後に箒に振り向いた。

 

「…紅椿に最終作業を行うがいいか?」

 

「やって下さい」

 

「本当に良いんだな?」

 

「……二言はありません!」

 

 念入りに箒から許可を得た神那は、直ぐに紅椿をクレーンで吊るしてモゲラの下腹部に運び入れると、部下達と共に防護服を纏って紅椿を奥へ押していった。

 

「本当によかったのか?

紅椿は束さんが作ったのだから…」

 

「姉さんが作った物なら尚更だ。

責めてゴジラを倒す事への礎になってもらわないとな…」

 

「……そうか…」

 

 箒に若干の迷いと未練を感じた一夏が彼女に問い詰めようとしたが、箒の決意に圧された様だった。

 因みに現在の処、ゴジラ復活の原因はIS躍進となった白騎士事件に全てがあるとほぼ認知(IS信者の一部は未だに否定しているが…)され、此の三年間の間に白騎士事件の当事者が自分達の姉達である事を一夏と箒は察していた。

 で、その事を思っているのか、一夏と箒は揃って黙って奥で行われているだろう神那達の作業を見つめていて、その二人を麗花が桜へ報告しながら少し距離を取って見つめていた。

 暫くして神那達が防護服を脱ぎながら戻ってきた。

 更に余程暑かったのか、神那はツナギの上半分を脱いで上半身黒シャツ一丁で汗を拭っていたが、それに一夏が「お!」と小声を漏らした直後に箒に肘で殴られていた。

 

「お疲れ様です」

 

「整備長、どうでした?」

 

「ああ、上手く動力炉に繋がった。

麗花、悪いが桜に連絡しといてくれ」

 

 神那に敬礼しながら了解した麗花は直ぐに桜の所に向かっていった。

 

「……あの、整備長、上手くいくと思いますか?」

 

「ああ、上手くいくさ!

アンタの姉ちゃんはいい仕事をしてたよ。

まぁ、モゲラは壊れるかもしれんが、紅椿は大丈夫さ」

 

 紅椿が内心不安になった箒がモゲラに何かのケーブルを次々に繋いでいる部下達に指示を出してる神那に質問したが、当の神那は笑って否定した。

 只、紅椿は兎も角として、“モゲラが壊れるかもしれない”との発言に周囲はギョッとしていたが…

 

「神那さん、それは幾らなんでも…」

 

「分かってるさ。

だけどな、コイツにはブラックボックスが多すぎな。

特に動力炉辺りは私ら整備員でもさっぱり分からないんだ」

 

 なんとも情けない事だが、実際問題モゲラは日本単独で建造した物ではなく、ロシアとアメリカとの共同で行われた為にブラックボックス等の色々な不都合が起こっていた。

 まぁ、人によってはアメリカ辺りは有無で揉めはするが、確実なのは外交下手な日本が二大大国から旨味を得る事が出来たのは確かであった。

 

「まぁ、不安があるが、設計図があるんだし、なんとかなるだようよ!」

 

 豪快に笑う神那が一夏の背中を何度か叩いてはいたが、不安を拭う事は出来ていなかった。

 

「んじゃ、私はやる事あるから行くぞ。

此所は危ないから、お前らも離れてろよ」

 

『…間も無くモゲラの動力炉に火を着ける作業に入る。

よってモゲラに大量の電力を注入を開始する為、各員モゲラから離脱し、責任者は自分の部下達の所在を確認せよ。

繰り返す…』

 

 何所かに向かった神那の注意だけでなく、桜の注意を呼び掛けるアナウンスが流れた後にサイレンが鳴り始めたので、モゲラに取り付くか内部にいた者達が慌ただしく確認を取りながら離れ始めていた。

 

「箒、俺達も行くぞ!」

 

「ああ、私ももう大丈夫だ」

 

 当然一夏と箒もそれに従い、箒が戦王を解除したら直ぐに連絡路に避難した。

 

「しかし何て言うか、色々と面倒だよな」

 

「ああ、ISも面倒な処があったが、コイツも色々面倒臭そうだよな。

まあ、それでも韓国のメカゴジラ……じゃなくて……ああ、機龍号だったな。

アイツよりはマシである事には代わり無いんだがな」

 

「だよな。 技術が無いから機龍号には原子炉を載せようとしているって聞いてるぞ」

 

「全く闘鶏に葱背負った鴨を戦わせる様なもんだぞ」

 

「ほんと、ゴジラに喰われるぜ」

 

 元々モゲラはその巨体に相応しい動力炉を日米露三国揃って作る事が……否、原子炉やレーザー核融合炉があるにはあるのだが、それ等だと損傷等をした場合にゴジラに核物質を吸収される危険性が多方面から指摘され普通は論外であった。

 その為にモゲラは動力炉に紅椿を組み込み、ダミープラグによって『絢爛舞踏』を常時発動させる事で解決していた。

 だがそれだけでなく、モゲラにはISの技術と経験が……特にG型のが遺憾なく使われおり、此の事から一部からモゲラが“巨大なIS”だと称する者達がそれなりにいた。

 でそのG型ISとモゲラ等の対ゴジラ兵器の事も書かなくてはいけないが……それ等は次回に語るとしよう…




 感想・御意見お待ちしています。

 今回でISの準第四世代移行、格闘型と砲撃型の二派に分かれたとしていますが、此れは作者の予想から書いてます。


「此はクロスボーンガンダムの一作目からヒントを得たと聞いてるが?」

 はい、あの作品ではビームシールド実用化で防御力が向上した為、決着が着きにくくなったって書かれたからね。
 でガンダムで言えば、A型はクロスボーンガンダムやモビルファイター(Gガンダムの皆さん)、G型はΖΖガンダムに該当する筈です。

 あ、因みに箒の新ISである戦王は“魔神英雄伝ワタル”の戦王丸を基本的に元にしています。

一夏
「神那さんも“サクラ大戦の桐島カンナ”に“魔神英雄伝ワタルの戦部ワタル”を混ぜているしな。
てかほぼ“ガンダム0083のモーラ・バシット”になってる気がするが?」

 それは言うな。
 書いてて気付いた事だから…
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