――― 鬼岩島 ―――
自衛隊の迎えのヘリに搭乗している千冬が、海自の護衛艦艇に包囲されている鬼岩島の上空に辿り着いた時、夕暮れが近い為に薄暗くなりかけていた。
だが既に鬼岩島に上陸した自衛隊のヘリや探照灯群によってあらゆる箇所…
「……何だアレは?」
…特に千冬が座席から離れて見詰める岩壁に凭れて死んでいる烏賊型怪獣が照らされていた。
しかも烏賊型の頭部が半分無くなっていた。
「…間も無く着陸しますので席に着いて下さい」
「…ああ、すまない」
着陸態勢に入ろうとしたので千冬がパイロットに注意された。
そして千冬が席に着いたのを確認したパイロットは、ヘリを自衛官達が忙しなく動き回っている鬼岩島に着陸コースに入れた。
「…久し振りだな!」
ヘリが着陸して長髪を押さえながら降りた千冬を迷彩服の女性士官……それも肩の階級証を見たら佐官が出迎えた。
只、この女性仕官左脇に日本刀を帯刀すると言う、他人から時代錯誤と思われてもおかしくない事をしていた。
「…桜!! やはりお前だったか!」
此の島に千冬を呼び寄せ、そして今出迎えている女性士官…先輩であり親友である大神桜に微笑んだ。
「…もう良い! 任務に戻ってくれ!」
通常なら抱き合う等をしたかもしれなかったが、桜も千冬も年齢上に性格もあって微笑み合うだけで桜はパイロットに命じ、直ぐヘリは離陸して行った。
「…で福音は?」
「向こうだ」
千冬の要望に答えて桜は福音が収納されているテントへと先導した。
「……千冬、箒と一夏は元気なのか?」
「二人共、元気にしているぞ。
特に箒は先日、束から新型ISを貰った」
その移動中、桜の質問に千冬が答え、千冬の愛弟の一夏だけでなく箒の事を聞いたのには理由があった。
と言うのも桜は箒の剣道(と言うか剣術)の師匠であり、IS開発者の束の所為で政府から隔離保護を受けて、家族と離散した箒の後見人としてIS学園入学まで彼女の世話(此の期間中、箒の為に桜は自ら閑職に着いた上に自衛隊を半ば休職状態にしていた)をしていたのだった。
此の為、どうしても箒が気にしてしまうのだが、千冬はそれを察して微笑んでいた。
只“束”と“IS”の二つの単語を聞いた桜は千冬が“ゲッ”となる程に思わず不機嫌さを出したが、彼女はISを嫌う珍しい人物であったからだ。
更に桜は白騎士事件以降のIS中心の男卑女尊社会以前から己の実力で現在の二佐へと昇り、そして此の島の調査隊の指揮を取っている事もあってか、IS世界大会(モンテ・グロッソ)初代王者にして最強のIS乗りの千冬が時折男性自衛官達から冷たい目線を向けられていたのに反して、桜は彼等から尊敬の敬礼を貰っていた。
…で話を戻して、そうこうしている内に目的のテントに辿り着いた。
そしてテントに入ると防護服を纏った技術士官達が台の上で横たえている、大破した福音を調査をしていたが、桜と千冬に気付いて一斉に敬礼した。
「……失礼」
福音を一目見た千冬は断りを入れて自分自身の手と目で福音の確認をしようとしたが…
「…待て、コイツを着けろ。
微量だが福音には放射能が着いているぞ」
…桜が止めて防護手袋を投げ渡し、受け取って技術士官達が防護服を着けている理由を驚きながら知った千冬は直ぐにそれを着けて改めて福音を調べ始めた。
「……桜、此はどうなっているんだ?
此のISにどうすればこうなるんだ!?」
だが全く大破原因が分からかった千冬は烏賊型のもあって桜に怒鳴りながら質問した。
だが技術士官達が驚き後退した千冬の怒鳴りに、桜は千冬を手招きして外に連れ出した。
「…実を言うと私達も原因が解明出来ていない」
「出来ていない!?」
「否、何かの大質量に潰された……否、もしかしたら踏まれたからだとは分かってはいるんだ」
「…て事はアイツが犯人なのか?」
思わず詰め寄ろうとした千冬だったが、桜の言葉から予測して烏賊型に目線を向けた。
「否、確かにゲソラは福音の撃墜に関係はあると思ってはいるが、直接は関係は無い」
「ゲソラ?」
「アイツの名前だよ。
大烏賊怪獣ゲソラ、太平洋戦争時に南海の島・セルジオ島に上陸したの旧国軍も確認した、空想上の存在かと思われていた世界最大の烏賊だよ」
だが烏賊型ことゲソラが犯“人(怪獣と言うべき?)”説を桜が否定した。
「もっとも福音がゲソラのものと思われる電撃を受けた形跡はあったから交戦はしたと思われる」
「じゃあ何で否定した?」
「ゲソラは放射能を帯びてはいない。
だが死因の頭の火傷からは大量の放射能が着いていた」
「なるほど、それでこんな香ばしい匂いがするのか」
「ああ、御陰でみんな酒を飲みたがっているよ」
自分の頭を指しながらの桜の説明に、千冬が冗談を言って桜が苦笑した。
「…と言う事はゲソラを倒したのが福音を墜としたのが犯人だな。
ゲソラは何にやられたんだ?」
「……それが分からないから苦労しているんだよ…」
千冬の質問に桜は溜め息を吐きながら答えた。
「私達はゲソラは
「……ISじゃないな。
原子熱線砲は大き過ぎてISには搭載出来ない上、装着者が被爆する危険性もある」
自分が呼ばれた理由を察しながら千冬は未知のISによる物では無いと判断した。
「だろうな。 衛星も鬼岩島から何も捕らえていないから、犯人は海に潜るか潜水艦に乗り込んだろう」
「そう言えば衛星画像等は無いのか?
コアやブラックボックスを調べるなり、福音の装着者が無事だったら聞き込みをすれば言うじゃないか?」
「衛星は当時鬼岩島上空に雲が覆っていた所為で何も映していない。
コアとブラックボックスは完全に破壊されて再生不可。
装着者ナターシャは確保はしたが、全身骨折等の生きているのが不思議な程の意識不明の重傷……と言うより殆ど植物状態で聞き取りが不可能」
「お手上げだな…」
千冬と桜は揃って大きな溜め息を吐いた。
「福音の撃墜と言い、ゲソラの事と言い、分からない事ばかりだな」
「もう一つ謎があるぞ。
それもとびっきりのが」
桜はキョトンとした千冬を、福音のとは別の……武装した自衛官達に警備されたテントに案内した。
するとその中に錆だらけの損傷した核弾頭が存在していて千冬を驚かせた。
「…機密事項だが、調べたらコイツはあの白騎士事件で発射された物のだと分かった。
しかも厄介な事に肝心の中身が全く無い」
「白騎士事件!!?
何であの事件のが此所に!?
アレ等は全て深々度の上に潮の流れが速過ぎて回収不可能と判断されたんじゃなかったのか!?」
核弾頭が白騎士事件の物のだと知らされて千冬の顔から血の気が引いていた。
そんな千冬に桜は核弾頭共々何とも言えない目線を向けた。
「…此の島のだけでなく近年太平洋上で何かが起こっているのは確かだ。
二年前にロサンゼルスの沖合でバラバラに引き裂かれた大海老怪獣エビラの発見、一夏のニュースで消えたが、去年の九十九里浜に大海蛇怪獣マンダの遺体の漂着、そして軍民問わずに艦船……特に原潜や放射能物質運搬船の謎の沈没に西太平洋の謎の漁獲量の消滅だ」
マンダの部分で桜は千冬に抗議の目線を送ったが、当の本人は動揺していた。
「……白騎士事件が……何かを起こしてしまったのか?…」
意味合いは少し違っていたが、此の千冬の言葉は妙に的を獲ていた。
「……兎に角、此の島の近くにまだ何かがいるかもしれない」
「勿論、空自と海自が必死に捜索しているよ。
只、政府の所為で中途半端だがね」
此の件に処かやる気が無い政府の上、法的束縛の多い自衛隊がそれに従うしかない自分に桜が頭を掻いていた。
だがそんな時に突然テントの扉が開いた。
「…大神二佐!! 至急司令部に来て下さい!」
「…何か見つかった?」
「いえ、気象庁から連絡がありまして…」
「気象庁から?」
伝令の報告に桜と千冬が目線を合わせながら首を傾げた。
取り敢えず、司令部へと二人揃って駆け足で赴いた。
「どうした? 気象庁から何を伝えられた?」
司令部に到着早々、桜は海図とパソコンの見ながら意見を交している部下達に問い質した。
「津波です。 気象庁が奇妙な津波を津波センサーが捕らえたと連絡が入りました」
「津波?」
論より証拠、桜(と千冬)に部下の一人がパソコンを見せた。
そこには気象庁から送られた……本来円状に次々に反応するセンサーが少し歪な楕円状…しかもかなり鋭角で反応していた。
「……此は潜水航行している何か大きなものが通過している」
しかも厄介な事に此は日本本土を目指していた。
「此の予測到達地点は分かったか?」
桜に言われて部下が直ぐ海図に予測到達地点をとある日本沿岸に円状に描いた。
「…っ! もしかして目的地は此所じゃないか?」
何かに気づいた千冬が予測の円のほぼ中心のある場所を指差した。
「…伊浜原子力発電所!?」
桜達は驚いてはいたが、千冬の予測は高い可能性で当たっていると判断した。
「此は伊浜原発にどれくらいで到着すると思う?」
「…見た処、約100ノットで動いていますので恐らく零時前後かと」
「……防衛省は此の事を予測出来ていると思うか?」
桜が部下達に尋ねた直後、通信員が彼女の所に駆け寄った。
「防衛省が二佐に緊急指令を通達して来ました!」
それを聞いた桜達が姿勢を正した。
「命令!! 大神桜二佐、アンノンが接近中の伊浜岡原発に直ちに赴き、現地部隊を指揮を取り原発を守備せよ!
尚、規定に基づいてIS学園にも協力要請を提出、受理されたとの事です!」
指令を聞いた桜は千冬に振り向き、彼女が頷くのを確認した。
因みに世界中から人材が集まるIS学園はその関係で治外法権を有している為(書類上は日本の所有だが)、学園とその学園に電力を提供する伊浜原発(てか殆どIS学園専用になっている)の防衛には色々と面倒事があった。
だが今回は桜と千冬の関係から、少なくとも面倒が余り起こらないと思われた。
「…それと織斑女史、IS学園から現地指揮を取る様にと通達が来ています。
担当の一年生と山田女史は既に人数分の打鉄と共に伊浜原発に向っています。
無制限武器使用の許可も下りています」
「分かりました。
二年生と三年生や他の教師達は分かりますか?」
「…それが二年生は三年生は他の教師達共々来ません」
「何だと!?」
ストレートで言ったら“自分達と一年生のみで戦え”と通達された千冬が思わず怒鳴ってしまった。
「…海自と空自が動かない上に戦車が少数だと!?」
更にこの間に指揮する部隊の資料を見ていた桜も同じ様にしていた。
詰まり自衛隊とIS学園は揃って指令の割に投入戦力は最低限だったのだ。
実は後日判明するが、両者共違和感を感じる桜達と違って伊浜原発に向っているのは原子熱線砲搭載の潜水艦…詰まり在来兵器の延長線の物だと予測していたのだった。
詰まり交戦(するかもしれない)相手を舐めていたのだった。
「…お互い苦労するな」
「そうね…」
戦力に不満タラタラであったが、それを了承するしかなく千冬と桜は特大の溜め息を吐いてヘリへ乗り込んで行った。
尚、此の時、例え自衛隊もIS学園も最大限の戦力を彼女達に与えていたとしても結果は対して変わらなかったと後世の研究者達は結論付けていた。
何故ならそれだけ強大な存在であったからだ。
そしてIS関係者達は後に言う………此の時から、大いなる力を有するISが茨の大いなる責任を果たす時であったと…
~ 大いなる力には、大いなる責任が伴う ~ byベン・パーカー
スパイダーマンより
感想・御意見お待ちしています。
捕捉情報・嘗てのゴジラ災害(一作目の出来事)は当時以降の政府の性でほぼ風化しています。
よって余程の人物じゃない限りゴジラはしりません。
次回いよいよ一夏達の前にゴジラ出現!!