――― 伊浜原発・沿岸 ―――
学園の待機命令を無視して、米軍と行動を共にある怪獣を追跡していた楯無であったが、自分達が伊浜原発で暴れているガイラ(とそのガイラに引き裂かれている大蛸)と、そこからガニメに注意がいった僅かな間にその怪獣が急速潜行した所為で見失って、慌てて辺りを照らして探していた。
「…何所? 何所に行ったの!?」
楯無は血相を変えて探し回っていた。
『更識君、落ち着くんだ。
奴は原発を標的にしている筈だから此所から離れる訳がない』
そんな楯無にヘリに登場している山根が注意した。
「ですけど…」
『…妹を気にしているのか?』
どうやら楯無が平常心を半ば失っているのは、妹の簪を気にしていたからの様だった。
「……学園は間違っています。
アイツは現状のではどうする事を出来ません」
元々モナークに関わりを持っていた楯無は、今捜索している者の脅威を知っていた。
此の為、ガニメと伊浜原発が周囲ごと津波に襲われている事など気にしていなかった。
たが…
「……っ! いつの間にあそこに!?」
…何かの生物の咆哮が響き渡って振り向いた先に、目的の者がガニメと組み合って戦い、その怪獣目掛けて沿岸の山から多数の銃火が点滅していた。
只、何人かが二頭の怪獣に気後れして空に逃げ出し、気持ち悲鳴が聞こえる銃撃をしているのが一年生達である事は直ぐに分かった。
「……簪、あそこにいるの!?」
殆ど感であったが、そこに簪がいると判断(しかも当たっている)した楯無であったが、肝心の本人がどっちに含まれているまでは分からなかった。
その為、一年生達がパニック状態で誰も通信に出れそうになかったので、急いで自機ミスティル・レイディで確認を取ろうとしたのたが…
「……っ!?」
…ガニメを掴んで派手に振り回した怪獣が一年生達がいる山に、ガニメを地滑りを起こす程に叩き付けた。
「簪ぃぃー!!!」
楯無が悲鳴を上げる中、怪獣は嬉しそうに咆哮しながらガニメを足蹴していた。
――― 伊浜原発 ―――
一夏達と、大蛸を撃破したガイラの戦いは津波が押し寄せようとも戦いは構う事なく続かれていた。
否、一夏達はガイラの動きを一瞬たりとも見逃さない様に集中し過ぎていて津波に気付いていなかった。
「……うん?」
「何をやっている一夏!」
只、一夏はガニメが逃げた先から銃声と悲鳴、更にガニメと何か別の咆哮に地鳴りが聞こえた気がして振り向いたが、ラウラに注意されて直ぐ戻った。
だがガイラは津波と……それに伴って現れた存在にも気づいて、口に笑みを浮かべた。
「…今だ!! 行くぞ一夏!」
「おう!!」
ガイラが自分達から目線を逸して隙を見せたのを箒が見逃さず、一夏と左右からガイラの慌てて振り回した両腕を回避し、懐に飛び込んで胸部に大きなX字の傷を着けた。
更にセシリア達生徒達や自衛官達に、駆け付けた戦車部隊が切り傷の交差点目掛けて一斉に銃撃した。
此等の攻撃に流石に傷から大出血したガイラも痛かったのか、両腕を振り上げて悲鳴を上げた。
「此はいけるんじゃない!?」
「ええ、気持ち再生速度が遅くなった気がしますわ」
此の為、好機と捕らえたヘリ群がガイラへ接近戦を仕掛けたが、ガイラは数機殴り飛ばした。
勿論、それ等は墜落していったが、その内のー機が自衛隊の燃料弾薬保管場所に突っ込んで爆発し、生徒や自衛官が悲鳴を上げながら逃げ纏い、燃料弾薬が次々に誘爆していった。
だがその中に防護壁を泥の様に踏みつぶした黒く巨大な足の一つが落下し、更に至る所を無残に潰されたガニメの遺体が無造作に捨てられた。
そして足の主は、消火を試みている自衛官達を吹き飛ばしている爆炎のど真ん中を、平然と地鳴りに近い足音を上げながら前進していた。
原発を挟んだ反対側にいる此の者に一夏達処か、ガイラまでが動きを止めて振り向き、凝視した。
只、一夏達は自身の目を疑いながら呆然としていたが、真の標的を確認したガイラは傷を再生させると、両腕を掲げて身体を大きく見せながら咆哮した。
それに対し、爆炎が照らす……背中に背鰭を多数生やした黒い恐竜型の怪獣は唸り声を上げながらガイラを睨んでいたが、長い尻尾を振って身体を前に突き出しながら大きく咆哮した。
大蛸やガニメと比べ物にならない覇気を発し、笑みを浮かべるかの様に上唇を上げる恐竜型の返しに、今まで強大さを見せつけていたガイラが一瞬怯んでいた。
――― 同・司令部 ―――
「何だアイツは!?」
「アイツ、ガイラよりデカいぞ!」
「織斑先生! 海岸を警備していた生徒達と連絡が出来ません!」
原発を挟んで相手を怯ませようと威圧合戦をしている二頭の怪獣に呆然としている現場の者達に反して、此所司令部の面々はパニック状態に陥っていた。
「「落ち着け!! 落ち着かんか!」」
だがそんな中、桜は自衛官達を、千冬は摩耶を落ち着かせながら生徒達を、此の間になんとか再編しようとしていた。
そんな桜と千冬の近くに楯無が山根を抱えて降り立った。
だがそんな桜達を無視して二人は恐竜型を注目していた。
只、楯無は時折辺りを見渡して簪を探し、量産型IS・打鉄を纏った生徒を見つけては人違いであった度に溜め息を吐いていた。
「……更識!!
ってソイツは誰だ!?
一般人を此所に連れ込むな!」
此所で二人に千冬が気づき、先ず山根の正体を問い質した。
そして同時に追い出そうとしたが、山根が米軍(と事実上の自衛隊のも)の許可証を見せたので後ろの桜共々たじろいだ。
「私はモナークの山根猪四郎です」
「…山根……モナーク?」
聞いた割に山根の名と“モナーク”に千冬は桜と目線を合わせながら首を傾げた。
「モナークはローマ法皇を中心に設立した大航海時代から続く世界中の未確認生物を調査研究機関です。
此の山根博士はそのモナークでもトップの博士なのです」
「じゃあ、なんでその御仁がこんな所に?」
「……アイツですよ。
ガニメだけでなく、エビラやマンダ……ゲソラを倒したあの怪獣を求めに来たのです」
桜の質問に山根は身体を揺らしながら咆哮する恐竜型を指差した。
「ゲソラ!? じゃあアイツが福音を落としたと言うのか!?」
千冬に山根は頷いた。
更に桜の部下が恐竜型から福音とゲソラに付着していた放射能が感知したと報告が届いた。
「…山根博士、アイツは何者なのですか?」
「元々奴は南太平洋の海洋民族ラゴスから龍を意味するジラと呼ばれ、信奉された両生類の恐竜の子孫が、アメリカの水爆実験であの姿になったのです」
千冬と桜は“核実験”の単語に反応してお互いの目線を合わせた。
「…それでアイツの名は?」
「…戦国時代にとある宣教師がジラの神々しさから頭に神を付け、
「「ゴジラ…」」
恐竜型の名がゴジラである事を聞いてオウム返しをした千冬と桜だったが、二人の反応が微妙に違った。
現に千冬はゴジラを見つめいるが、桜は何かに思い当たって部下にゴジラの情報を探させていた。
「…防衛省にあの怪獣のデータがありました。
半世紀以上前に保安隊(自衛隊の前身組織)が交戦していました」
伝令がゴジラの情報を伝えながら桜と千冬に野砲群に横目を向けているゴジラの白黒写真を映したアイパッドを手渡した。
「…思い出した。 昔、東京を灰塵と化すまで大暴れした怪獣か!」
「そんなに酷かったのか?」
ゴジラを思い出した桜だったが、千冬は全く知らない様だった。
「奴による東京の被害は、関東大震災や東京大空襲を足したものでさえ遥かに凌ぐものだったらしい。
と言っても東京襲撃以降、姿を眩ましていたがな」
千冬が目を剥いていたが、伝えた桜自身もゴジラの悪行の割に詳細を知らない事に疑問を感じていた。
「しかしなんでアイツは、今になって此の場に現れたんだ?」
千冬の疑問に桜は“確かに”と表情をし、その答えを知っているだろう山根に向いた。
「それはゴジラが核物質を糧にする怪獣だからです」
「「核を!?」」
ゴジラに関連する“南太平洋”と“放射能”の二つの単語から桜と千冬は何か嫌な予感を感じた。
「はい、ゴジラは元から放射能吸収の性質を持ってはいましたが、比較的大人しい存在だったんです。
ですが、嘗てアメリカが太平洋上で行った核実験での核物質の過剰摂取が原因で巨大凶暴化して今のあの様な姿になったのです」
「詰まり奴は食事をしに来たのか。
とは言っても、当のゴジラはそれを忘れているみたいだがな」
ゴジラが極めて好戦的な性格だと思った桜は、予測より大幅に遅れたのはゴジラが大蛸とガニメとの交戦を優先した為だと察した。
現に原子炉に全く見向きせずにガイラを威圧しているゴジラは自分の縄張りに浸入した者の迎撃とは余り見えず、強者と交戦出来るのを喜んでいる様に見えた。
「…ゴジラが此所に現れた理由は分かりましたが、何故今なのですか?」
山根に質問した千冬だが何となく答えを察している様だった。
「私達はゴジラが長期間休眠していたのは、東京を灰塵にした二度目の襲撃にあると見ています。
あの襲撃でゴジラが核エネルギーを使い過ぎた性で休眠せざるをえなかったと思っています」
「…何故?」
「出現した当時は核弾頭以外原子力関連が存在していなかったのに、感情任せに暴れた所為で核エネルギーが補充出来なかったからです。
それ以降もアメリカとかも少なくとも太平洋上での核実験を止めていましたし」
「それにあの巨体です。
普通だったらそのまま衰弱死してもおかしくはないのですが、多分海底の天然ウランでも細々と摂取していた為、なんとか長期休眠状態で生きていたのでしょう。
此の事をモナークを通じて知ったアメリカはソ連への核戦略上、ゴジラを風化したのです。
勿論、日本も保安隊関係の官僚達も保安隊無用論が起こるのを恐れたので、全面的に協力しました」
因みに此れにはゴジラ迎撃戦でアメリカ製兵器が悉く役立たず立った為、他国兵器への転換(実際にソ連やイギリス等が自国の物を売り込んでいた)を恐れたアメリカ軍事企業群の圧力もあった。
此の副作用でFー22等の最新兵器を最優先で提供を受ける事が出来ていた。
「…だが白騎士事件で撃ち落とされた大量の核弾頭のを吸収して再び目覚めたのですね」
千冬に山根は頷いた。
「じゃあ、奴は休眠状態からの反作用で、今まで餌と核エネルギーを求めて暴れていたのだな」
「それに厄介な事に原潜や原発等の原子力関連が溢れている現代では、もうゴジラが再び休眠する可能性は限り無くありません」
山根がある意味死刑勧告をした直後、ゴジラとガイラが相手に向かって前進した。
感想・御意見お待ちしています。
現実ではFー22は失敗していますが、本作では自衛隊はFー22を配備しています。
桜
「今回執筆に関して悲劇があったが、よく復活出来たな」
うん、YouTubeでギレン総帥のガルマ国葬演説を何度も聞いていたから何とかなったよ。
桜
「…お前、それ逆に危ない」