斯くて少年は『天』へと至る   作:プリンと生姜と醤油

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生まれたときからすぐれた才能と知恵があること。


天資英明

 

ジリリリリリリンッ!!!!

 

 午前7時、けたたましく鳴り響く目覚まし時計で目を覚ます。寝ぼけ眼をこすりながら欠伸をひとつ、今日も極上の朝ごはんを食べるためにリビングへと向かう。

 起きたばかりでまだぼんやりとした頭で今朝の献立は何だろうと考えながら階段を降りてリビングの扉を開け、既に起きていた家族たちに朝の挨拶を告げる。

 

「おはよー」

「おはようさん」

「はいおはよう、早く朝ごはん食べちゃいなさいね」

「おはよう」

 

 

 上からあたし、パパとママに、 弟のりょーくん。とってもハッピーな青葉一家で~す。

 あたしの名前は青葉モカ。我が家の近くにある女子校、羽丘女子学園に通っているピカピカの高校1年生。

 ガールズバンド、Afterglowのギターも担当しているロックな女の子であります。

 

 

「2人とも今日から晴れて高校1年生ね。あんなに小さかったのに……」

「母さん、感慨に浸るのはもう散々やっただろう。素直に祝ってあげなさいよ」

「……分かってるわよ。ほらほら、1日目から遅刻なんてお母さん許しませんからね、早くご飯食べて支度しちゃって」

「は~い」

 

 

 目の前に並ぶ朝食をバランスよく口へ運び1つずつ咀嚼していく。さんまの塩焼き、漬け物、お味噌汁、ホカホカのご飯。およそ朝食のラインナップとしては花丸満点と言わざるを得ない。

 そしてそんな素敵な朝ごはんを用意してくれた愛すべき弟もまた花丸満点であると言える。モカちゃんは堅固な意志を持つパン派なのだが今この時だけはお米に浮気してしまいそうだ。

 

 

「亮介も、早く食べて学校行く準備しておいてね」

「分かってる」

「りょーくん花咲川かー。モカちゃんは一緒の学校が良かったな~」

「俺も姉ちゃんと一緒の学校に行きたかった。けど近くで共学なのが花咲川だけだったから」

「他は全部女子校だもんねー、知った時ちょっとビックリしちゃった」

「俺もビックリ、共学で驚愕」

「バカ言ってないではよ行け」

「はーい」「うん」

 

 

 ご飯を食べ終わって部屋に戻り、パジャマを脱いで制服を手に取る。新品特有の手触りを楽しみつつ着替えを進める。シャツを着て、スカートを穿き、ブレザーへ袖を通し、ネクタイを締める。

 3年間続けたこの動作でさえどこか新鮮さを感じてしまうのは、わたしも存外浮き足立ってしまっているということなのだろうか。

 着替えも終わったので荷物を持って部屋を出ると、同じタイミングで部屋から出てきたりょーくんと出くわす。

 

 

「おお~、りょーくんはやっぱり何着ても似合いますなー」

「姉ちゃんも似合ってる」

「ありがとね~、でもりょーくんはイケメンだし背も高いから制服姿がよく似合うよー。」

「姉ちゃんも小さくて可愛いから制服似合うだろ」

「むむむ。小さいとは聞き捨てならぬ、これでも蘭達より身長高いんだよ?」

「俺からしたら皆ハムスター」

「195cmの傲慢……」

 

 

 そんな他愛ない会話を挟んで共に玄関に向かう。中学の頃はりょーくんの部活の朝練や登校ルートの違いもあって朝一緒に出たりすることはなかったのだが、入学式なのだから今日くらいは一緒に出ても問題はないだろう。

 

 

「いってきまーす」「いってきます」

「「いってらっしゃーい」」

 

「そういえば、りょーくんは部活何に入るの?」

「バスケ」

「やっぱりー? りょーくんなら何やっても一番だし、色々やってみてもいいと思うんだけどな~」

「今は他にやりたいことないし、友達も高校でバスケやるらしいから」

「そっかー。でも花咲川にバスケ部あるのかな~?共学化って去年からだよね?」

「去年インターハイに出てたからあるよ」

「おお~、下調べバッチリって感じだねー」

「いぇい」

 

 

 別れ道に着くまでの瞬きのように短い時間、けれど永遠にも感じられるほど楽しい時間。終わって欲しくはないけれど、いつか終わりは来るもので。

 

 

「じゃあ俺こっちだから」

「蘭達には会わなくていいの~?」

「わざわざ今会う必要もないだろ、どうせ入学式が終わったらつぐみの家に集まるんだから」

「それもそっかー。じゃあまた後でね~」

「ん。後で」

 

 

     □□□□

 

 

「へー、じゃあ亮介はバスケ得意なんだ」

「得意っていうか、それが一番長く続けてるってだけ」

「なら得意でもいいんじゃない? 私もウサギのお世話はいつまでも続けてられるよ」

「たえはウサギ飼ってるんだったか」

「うん、20羽飼ってるんだ。オッちゃんに、しろっぴーにパープルちゃん、団十郎にドロちゃんに……」

「多くねえか、飼育費用ハンパねぇだろそれ」

「基本的にはお母さん達もお金出してくれてるけど、私もバイトしてるから何とかなってるよ」

「ギター続けながらだろ?すげえと思うよ」

「えっへん」

 

 

 亮介が学校に着きクラス分けの表を眺めて自分のクラスを確認していたところ、同じく自分の所属するクラスを探していた少女、花園たえと出会った。

 最初は軽く挨拶を交わした程度だったが、2つ3つと言葉を交わす内にみるみる交友を深めて今やお互いの趣味や特技を把握するまでに至る。ここまで約10分。

 

 

「亮介って新入生代表なんでしょ? 首席入学ってことだよね、天才だ」

「通知表中学3年間オール5の男」

「苦手な教科とかないんだ、すごい」

「得意不得意は特に、やれば何だってできる」

「じゃあ楽器とか始めてもすぐに上手くなれるってこと? ギターなんかも?」

「弦楽器でも管楽器でも打楽器でも」

「ド変態だ」

「しばくぞ」

 

「ここが体育館だよね?」

「でなきゃ何なんだって話だが……あ、もう他の奴ら全員席ついてるな」

「じゃあまた後で」

「ああ、後でな」

 

 

     □□□□

 

 

 入学式は滞りなく終了し、クラス内での自己紹介も終わって部活動体験の時間である。今は入学式後に知り合った戸山香澄と体験したい部活の場所へと向かっている最中だ。

 

 

「青葉君ってバスケ部に入りたいんだよね? いつから始めてるの?」

「中学入った時に何となくで始めた」

「へ~、大会とかって出たことあるの?」

「全中っていう中学最大の大会で三連覇」

「え、三連覇!?三連覇ってことは……1年生からずっと優勝してたってこと!?」

「そう、つっても最後の年はほぼ控えだったけど」

「ほえ~……すっごいなあ」

「……ん、この辺までか」

「あ、本当だ!じゃあ青葉君、また明日ね!バイバイ!」

「また明日な」

 

 

 香澄と別れて体育館へ向かう亮介。その行き先はもちろん決まっていた。

 ────花咲川男子バスケ部。共学の高校としては実質去年設立されたばかりの花咲川学園において男子部唯一の全国大会出場経験を持つ部活。

 去年入学の1年生、そして転校によってここへやって来た2年生の合わせて9名で構成された少数人数の部活ながら、東京三大王者と称される正邦高校や泉真館高校などの強豪にも引けを取らない実力を誇るニュービー。 

 そんな花咲川バスケ部にて、現在亮介は─────

 

 

「入部届け貰えますか」

「オイオイ気がはえーよ1年。まずは部活の紹介やら色々やってだな……」

「……すいません、今日はちょっと用事があって。出来れば早めに帰りたいんで今日は入部届けだけ貰えれば」

「あー、なるほどな? まあそれ自体は別にいい、とりあえずここの部分に名前と学籍番号だけ書いといてくれりゃそれでOKだ」

「分かりました。……この志望動機と出身校の部分は? 」

「そこは任意で構わねえよ。まだ時間があるなら書いてってもいいぞ」

「んじゃあとりあえず……」

「よし、じゃあまた明日来てくれよ。そん時ちゃんとウチの部の紹介してやる」

「はい」

 

 

 無事に入部届けを出し終わった亮介はその足で幼馴染たちとの待ち合わせ場所である羽沢珈琲店へ向かう。

 店で頼むドリンクの選出にしばし迷ったがいつも通りオレンジジュースでいいだろうと結論づけて亮介は校舎を後にした。

 

 

     □□□□

 

 

「あれ主将(キャプテン)、それ新入生の入部届けですか?」

「おお、1年にしちゃかなりタッパのある奴だったぜ。人の少ねえウチなら即戦力間違いなしだ、嬉しい限りだぜ全く」

「へえー、なになに?てい…こう……帝光中?帝光中出身!?

え、ちょマジでか!?マジだ!!?」 

「なんで直接受け取ったアンタが知らねえんだよ!!」

「いや名前書いて帰るだけっつってたから名前だけ確認しててそっちまで意識が向いてなくて…」

「それで見落とせるような名前じゃねえでしょうが!」

「分かったよ悪かったよ!」

 

 

「しっかし、帝光中か…」

「? なんかダメなとこあるんすか?」

「別にダメってわけじゃねえよ。ただ、今年卒業っつったらあの『キセキの世代』と同世代だろ? あれだけの才能を目の前で見せつけられて、心が折られたりしてねえんじゃねえかって少し気になってな」

「心配ですか? 柄にもないっすね 」

「違ぇよタコ、それでいざ『キセキの世代』とご対面って時に日和ったりするような奴なら入部なんざ認めねえって話だ」

「あー、なるほど」

「ハァ……ちょっと厄介な奴を抱え込むことになりそうか?」

 

 

 波乱の予兆は高波の如く。既に少年を取り巻く者全てを飲み込む勢いで迫ってきていた。

 そしてここにも波乱がひとつ、ひっそりと少年の元へと忍び寄っていた。

 

「~♪久しぶりに会ったら、青葉っちビックリするっスかね~」

 

 『キセキ』の一角は、すぐそこに。




青葉と青峰で色被っちゃってるけど作者がモカちゃん推しなのでこれで行きます。
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