吹雪は鎮守府で新しい提督を待っていた。前回の提督の秘書艦だったからだ。どんな人なんだろう…。お願いだから前の提督みたいな人は嫌だ。なんて思ってると、なんか降りてきた。ほうきに乗った人が。だが、服装はジーパン、Tシャツ、パーカーというどこにでもいるお兄さん。でもほうきに股がって降りてきた。で、顔はまさかの男の娘。そのめちゃくちゃ過ぎるビジュアルに戸惑いつつも吹雪は聞いた。
「あの、提督、ですか?」
「うん。俺、新任提督。よろしく」
「そ、そうですか…では、鎮守府に案内しますね?それと、少しヒドイ惨状なんですが…」
「あぁ、パパ……親父から聞いたよ。前の提督がひどかったんでしょ?とりあえず執務室行こっか」
「は、はい。では案内しますね!」
「いや、面倒だからこうしよう」
提督がパチンッと指を鳴らすと、二人は鎮守府前から消えた。気が付けば執務室に移動していた。
「しかし執務室ひどいな…なんか死ねとか提督いらねぇとか書いてあるんだけど…」
「あ、あれ?いつの間に執務室に!?」
「えっと、吹雪ちゃんだっけ?なんなのこの執務室」
「あ、えーっと…前の提督がひどかったので…みなさんが落書きしたんだと思います…」
「みなさんってことは他にも艦娘がいるってことか」
「あの…怒らないで下さいね……」
「なんでさっきからそんなにビクビクしてんの?別にこれくらいどうってことないし、前の提督のして来たこと知ってるから怒らないって。俺が艦娘だったら多分提督的にして砲雷激戦してるし」
「そう、ですか……?」
「さて、まずは綺麗にしないとね……」
提督は言いながら鞄から棒のようなものを抜いた。手首から肘くらいまでの長さ、それを軽く振ると次の瞬間には部屋は片付いていた。
「……えっ!?」
「はいおしまい。って、吹雪の前髪に埃が付いちゃったね」
で、優しく埃を取ってあげる提督。吹雪は顔が真っ赤になっていた。
「あ、ありがとうございます……」
「ふふん」
吹雪はすごく聞きたかった。何者なんですか?、と。だが、前の提督への恐怖心が今だに残っていて、なにも聞けない。
「さて、じゃあとりあえず部屋新しくしないと。綺麗にはなったけど住みずらそう」
「あの、それより今この鎮守府にいる艦娘に挨拶された方が…」
「あー…」
「あっ……ご、ごめんなさい!」
「え?なにが?」
「い、いえ…過ぎた真似を…」
「いや俺もそうした方がいいと今思ったんだけど…」
「へ?そ、そうですか?」
目をパチクリさせる吹雪。
「うん。早く名前覚えたいし。ていうか前の提督のおかげで多分、俺かなり嫌われてるだろうし。助言してくれてありがとな」
「い、いえ!では案内しますね!」
少し元気になり、部屋を出る吹雪。それを若干微笑みながら見つめ、杖を鞄にしまって、その鞄を持つと提督は吹雪の後を追った。