カーストルーム・オブ・ザ・デッド   作:戦竜

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第7話 行軍

綾小路たちの一行は、校舎の奥へ向かっていた。

 

目指す先は、理事長室。

正確には、月城理事長代理のいる可能性が最も高い場所――

職員棟上階の管理区域だ。

 

走っている、という表現は正しくて、同時に正しくない。

 

速度だけを言えば、彼らは確かに前へ進んでいた。

だがそれは、何も考えず一直線に駆け抜けるような単純な疾走ではなかった。

 

止まる。

聞く。

確認する。

撃つ。

また進む。

 

その繰り返しだ。

 

廊下の角、階段の踊り場、教室の半開きになった扉、

割れた窓ガラスの向こう、暗くなった非常口のあたり。

この学校はもう、生徒たちが毎日通っていた日常の通学路ではない。

どこに何が潜んでいるか分からない、敵性領域だった。

 

しかも敵は、ただ正面から現れるとは限らない。

 

廊下の奥からふらふらと近づいてくる者もいれば、

開け放たれた教室の中から突然飛び出してくる者もいる。

階段の途中で倒れていたはずの身体が、近づいた瞬間だけ跳ね起きることもあった。

 

この学校全体が、すでに罠のようなものだった。

その中を、綾小路たちは進んでいた。

隊列は、自然に形作られていた。

 

最前列に立つのは綾小路清隆。

手にしているのはレミントンM31ショットガン。

重いが、その重量こそがいまは信頼に変わっていた。

 

人を守るための武器としてはあまりにも粗暴で、あまりにも直接的な道具。

しかし、だからこそ分かりやすい。

近距離においては絶大な制圧力を持ち、

命中精度に多少のブレがあっても散弾によって補える。

とりわけ、頭部破壊が最優先となるこの戦場では、

他の銃器よりも即効性が高かった。

 

綾小路は銃に慣れているわけではない。

少なくとも、周囲からそう見えるべき人間ではない。

だが彼は、手にした瞬間からショットガンという

武器の使い方の本質を理解していた。

 

正確に一点を撃ち抜く必要はない。

狙うべきは集団の流れ。

最も危険な角度。

味方の射線を遮らず、かつ一撃で複数の接近を止められる位置。

 

それを計算したうえで撃つ。

それだけだった。

 

その少し後ろ、綾小路の右側寄りに龍園翔。

手にはHK416というアサルトカービン。

武器としての品の良さなど一切考えていないような持ち方だったが、

逆にそれが龍園らしかった。

構え方そのものには雑さがある。

だが、撃つ瞬間の判断は異様に早い。

 

どのゾンビが真っ先に味方へ届くか。

どの進路を潰せば集団の動きが止まるか。

どこまで連射して、どこで止めるか。

 

そうした戦いの流れを読むことにかけては、龍園は本能的な鋭さを持っている。

暴力に慣れている人間の目だ。

しかも今は、以前のようなただ粗暴なだけの荒さではなく、

どこか研ぎ澄まされた冷静さが混じり始めていた。

 

左側には堀北鈴音。

彼女はM4A1の銃身を短くしたCQB(近接戦闘)モデルを抱えるように構えていた。

 

まだ扱いに完全に慣れているわけではない。

だが、堀北は分からないことを分からないままにしない人間だ。

 

1年生から聞いた説明。

安全装置。

引き金の重さ。

反動の方向。

マガジンの装弾数。

射撃時に銃口がぶれやすい角度。

 

そうした情報を頭の中で整理し、ひとつひとつ手順に落とし込んでいる。

感覚で撃つのではない。

理解して撃つ。

 

だからこそ彼女は、連射性能のある武器を手にしても無駄撃ちをほとんどしない。

 

後方には軽井沢恵と椎名ひより。

ともにハンドガン。

軽井沢はベレッタM92FS。

ひよりはM1911A1コルト・ガバメント。

 

この二人が銃を持っているという事実だけを切り取れば、

数時間前までの日常と比べてあまりにも不釣り合いだった。

軽井沢は本来、前線に出て何かを打ち倒す側の人間ではない。

ひよりもまた、静かな読書と穏やかな会話のほうが似合う少女だ。

 

だが、いまは違う。

生き延びるために必要なら、彼女たちも戦うしかない。

 

最初こそぎこちなかった。

引き金を引くたびに肩が跳ね、発砲音に目をつむりかける。

だが、人間は極限状態の中で急激に変わることがある。

 

軽井沢は、怖がりながらもきちんと撃つ。

ひよりは、震えを抑えながらも照準を外さない。

 

10発撃てば7発は頭部へ入る。

もちろんそれは訓練された射手の精度ではない。

だが、パニックの中で銃を持たされ、

しかも相手がかつて人間だったものであることを思えば、驚異的な集中力だった。

 

その後方に橋本正義。

 

彼は戦うよりもまず、坂柳有栖を運ぶことへ全力を注いでいた。

坂柳は歩けない。

それはこの状況では決定的なハンデだ。

 

だが、橋本は余計な口を挟まない。

いま何が最優先かを理解している。

 

坂柳を背負う。

隊列の中で最も安全な位置へ維持する。

危険が迫れば一旦下ろしてグロック17と呼ばれるハンドガンを撃つ。

そしてまた背負う。

 

単純なようでいて、体力も判断力もいる役割だった。

 

坂柳は橋本の背中の上から、隊列全体を見ていた。

 

彼女自身は武器を手にしていない。

だが、視野の広さと判断の正確さにおいては、

この隊の中でも最も価値のある戦力だった。

 

どこから音がしたか。

どの教室の扉がわずかに揺れたか。

どの進路を選べば囲まれにくいか。

誰の弾数が減ってきているか。

誰の集中が切れかけているか。

 

坂柳の役割は、弾を撃つことではなく、

誰にも接近を許さない布陣を維持することにあった。

 

そうして見ると、この隊列は奇妙なほど完成されていた。

 

前衛に制圧力の高い綾小路と龍園。

中核に堀北。

後方で援護と処理を担う軽井沢とひより。

移動と防衛を両立する橋本。

その上で、全体へ指示を飛ばす坂柳。

 

偶然にしては出来すぎている。

だが、こういう場では偶然に最適へ寄ることがある。

人間関係や普段の立場とは別のところで、

誰がどこにいるべきかが自然と決まっていくのだ。

 

そして今、この一行は、

生き残るために理想的とすら言えるチームワークを形成しつつあった。

 

ゾンビは、止まらなかった。

 

どの廊下にもいるわけではない。

だが、いない場所のほうが少ない。

 

職員室棟へ向かう途中、

最初の群れが現れたのは2年用の特別教室棟へ続く連絡通路だった。

 

薄暗い。

照明は半分以上落ちている。

窓ガラスの向こうには、曇った空と、崩れかけた校舎の一部が見える。

 

その連絡通路の奥から、3体。

いや、4体。

 

制服姿のものが二体。

体育教師のジャージのような格好をしたものが一体。

もう一体は、誰だったのか判別しづらい。

 

ふらつきながら、しかし確実にこちらへ向かってくる。

 

「綾小路くん、左から二番目」

 

坂柳の声が飛ぶ。

 

「足が速いです」

 

綾小路は頷かない。

返事もしない。

だが、体はすでにその指示を処理していた。

 

ショットガンを持ち上げる。

狙いを定めるというより、散弾の広がりを計算して

どの角度で撃てば二体をまとめて処理できるかを読む。

 

引き金。

轟音。

 

前列の二体の頭部がほぼ同時に弾け、

後方の一体も首から上を大きく揺らして壁へ叩きつけられる。

完全に沈まなかった一体へ、

すかさず龍園がアサルトカービンを二点バーストで叩き込む。

 

乾いた連射音。

 

残りも沈黙。

 

「……気持ちいいくらい分かりやすいな」

 

龍園が口元を歪める。

 

その笑みには、以前のような獰猛な楽しさだけではなく、

どこか勝ち筋を掴んでいる冷静さが混じっていた。

 

「油断しないで」

 

堀北が言う。

 

「通路の先、まだ音がする」

 

実際、その通りだった。

 

倒れた死体――もう死体と呼んでいいのか分からないが――

の向こうから、別の足音が近づいてくる。

遅い。

だが一定だ。

 

今度は右側の教室からも物音がした。

机を引きずるような音。

ガラスの破片を踏みしめる音。

 

「右、二体出ます」

 

坂柳。

 

橋本が一瞬だけ坂柳を下ろす。

次の瞬間、教室の扉を押し破るようにゾンビが出てきた。

 

橋本が迷わず撃つ。

ヘッドショット。

片方が沈む。

 

もう片方へ、軽井沢の銃声。

 

一発。

外す。

 

だが二発目で額を捉える。

ゾンビはその場で崩れた。

 

軽井沢は自分の手元を見て、小さく息を漏らす。

 

「……っ、ちょっと、心臓に悪いんだけど……」

 

声は強がっている。

だが、その手はまだ少し震えていた。

 

ひよりが、その横から静かに前を見る。

 

「でも、ちゃんと撃てています」

 

彼女は穏やかな声で言う。

その穏やかさが、逆にこの地獄の中では奇妙に強かった。

 

「軽井沢さん、ちゃんと当ててます」

「……そういう問題じゃないのよ」

 

軽井沢は半泣きのような顔をしながらも、銃口を下げない。

それが、彼女がもう逃げるだけの立場ではなくなっている証拠だった。

 

彼らは進みながら、少しずつ戦い方を覚えていった。

 

綾小路以外のメンバーは、銃の扱いに慣れているわけではない。

それでも、1年生たちから最低限の手ほどきは受けている。

 

安全装置。

弾倉交換。

ジャムした場合の対処。

撃つときに肩へ当てる位置。

複数回撃つときの息の整え方。

近距離でのハンドガンの構え。

視線を先に向け、銃口は遅れて追わせること。

 

ほんの数分、あるいは十数分の即席指導にすぎない。

それでも、この学校で鍛えられてきた精神力は伊達ではなかった。

 

日々、理不尽な試験を越え、退学の圧力と競争の中で生き抜いてきた。

心が弱い人間なら、とっくに折れていた。

 

だから彼らは、いまも折れない。

 

ぎこちなさはある。

未熟さもある。

だが、その未熟さを生き残りたいという執念が押し切っている。

 

軽井沢は、怖がりながらも当てる。

ひよりは、静かに狙いを修正していく。

堀北は装弾数を頭の中で計算しながら、必要なときに必要なだけ撃つ。

龍園は荒っぽく見えて、実際にはかなり的確に頭部へ連射を決める。

綾小路は散弾効果を最大限利用して、一発で二体、三体をまとめて止める。

 

戦果だけを見れば、最も数を落としているのは綾小路だった。

 

ショットガンという武器そのものの特性もある。

だがそれ以上に、最も危険な位置にいる敵を常に見抜いていることが大きい。

 

群れが三方向へ散るなら、どこへ撃てば集団の流れそのものを止められるか。

後方の仲間へもっとも早く届く一体はどれか。

狭い廊下で撃った反動と煙を考慮し、二射目までに誰がフォローへ入るべきか。

 

綾小路の中では、その全部が無言のうちに処理されていた。

 

それは戦闘経験というより、最適解を選び続ける習性に近かった。

 

しばらく進んだころ、一行はひとまず廊下の角に身を寄せ、呼吸を整えた。

 

周囲に目立った物音はない。

さっきまで交戦していた群れも、ひとまず掃討し終えた。

 

静かだった。

 

火災報知器の音も、ここまで来ると少し遠い。

その代わり、どこか別棟で何かが崩れるような、重い音がときおり聞こえてくる。

 

その短い静止の中で、軽井沢がぽつりと口を開いた。

 

「……ケヤキモールって、どうなってるんだろうね」

 

その問いには、何気ない好奇心ではなく、不安が滲んでいた。

 

外部の避難所。

物資のある場所。

校舎よりもずっと安全そうな場所。

 

そういうイメージが、まだ誰の頭にも残っているのだろう。

 

ひよりが控えめに言う。

 

「確かに……食料はたくさんありそうですし」

 

少し言葉を選ってから続ける。

 

「籠城戦、のようなことはできそうですが……」

 

その発想は自然だった。

 

いま、この学校は全域が危険だ。

ならば、動き回るより拠点を作って立て籠もるほうがよいのではないか。

生存本能としては正しい。

 

だが、坂柳は即座に否定した。

 

「私はそもそも、長期的なサバイバルを想定していません」

 

橋本の背中の上から、淡々と告げる。

 

「籠城戦は視野に入れていない、ということね」

 

堀北が確認するように言うと、坂柳は小さく頷く。

 

「ええ。籠もるという行為は、一見すると防御に見えますが、

実際には主導権を失う行為でもあります」

 

その言葉は、いかにも坂柳らしかった。

 

守る。

耐える。

待つ。

 

それらは安全そうに見えて、

状況の主導権を外部へ預ける行為でもある。

食料が尽きれば終わる。

感染が内部で起きれば終わる。

出口を塞がれれば終わる。

相手が待つだけでこちらを詰ませられる存在なら、

籠城は自滅の先延ばしにしかならない。

 

綾小路も短く言った。

 

「可能な限り最短で脱出する」

 

龍園が鼻を鳴らす。

 

「食いもんなんざ、せいぜい水とエネルギー取れるもんが人数分ありゃ十分だ」

 

その言い方は乱暴だった。

だが、本質は突いている。

 

この状況で必要なのは、暮らすための物資ではない。

逃げ切るまで死なないための最低限だけだ。

 

堀北も、軽井沢も、ひよりも、その言葉には反論しなかった。

 

実際、そうなのだ。

 

ベッドも、調理設備も、贅沢な食料もいらない。

必要なのは、三日程度をしのげるだけの水分とカロリー、弾薬、情報、移動手段。

 

坂柳が続ける。

 

「長くても三日程度での脱出を目指すべきです」

 

その声は落ち着いていたが、内容は冷徹だった。

 

「それ以上になると、精神面の消耗も大きい。

加えて、傷を負った時点で致命的になりうる以上、

一般的な医療品の優先順位は低い」

「医療品もいらないってこと?」

 

軽井沢がわずかに顔をしかめる。

 

「包帯とか、消毒とかも?」

「ゼロではありません」

 

坂柳は訂正する。

 

「ただ、この感染が通常の外傷と同じ理屈で対処できる保証がない以上、

最優先ではないということです」

 

そこで少しだけ間を置いた。

 

「強いて言えばですが、

ウイルス感染時に投与できるワクチンが入手できれば理想的です」

 

その言葉に、空気がまた少し変わる。

 

ワクチン。

 

もし、そんなものが本当に存在するなら。

噛まれた時点で終わりというルールそのものが変わるかもしれない。

 

堀北が顎へ手を当てながら言う。

 

「武器は今あるもので、少なくともゾンビ相手には十分戦えている」

 

視線は前方、まだ薄暗い廊下の先を向いたままだ。

 

「怪物相手にも、立ち回り次第では対処の余地があるかもしれない。

だとすれば、武器庫を目指す目的は新しい銃そのものより、

弾薬の確保ということになるわ」

 

理路整然としている。

そして、そこまでは正しい。

 

だが、綾小路はすぐに首を縦には振らなかった。

 

「ゾンビ相手なら苦戦しない」

 

そう言ってから、わずかに声を落とす。

 

「だが、あれ以上の脅威――

さっきの怪物については、全員で確実に勝てる保証がない」

 

その一言の重みを、全員が知っていた。

 

ロケットランチャーを積んだ怪物。

あるいはその前に現れた、二メートル超の灰色の巨体。

あれらは、ゾンビとはまったく別のカテゴリの脅威だ。

 

ゾンビは数が恐ろしい。

だが、ルールは単純だ。

頭を破壊する。

接近を許さない。

それでまだ対処できる。

 

怪物は違う。

耐久力。

機動力。

武装。

そして、おそらくは知性に近い標的選定。

 

同じ銃を持っていても、同じ理屈では倒せない。

 

ひよりが静かに言った。

 

「戦闘能力は……ゾンビの比ではありません」

 

その声には実感がこもっていた。

彼女は派手に恐怖を表へ出すタイプではない。

だがそれだけに、その言葉の重さは本物だった。

 

軽井沢が「うへー……」と露骨に嫌そうな顔をする。

 

「そういうの、もう出てこなくてよくない?」

 

半ば本気で言っているのだろう。

だが、その軽口めいた反応が逆に緊張を少しだけほぐした。

 

堀北が軽く息を吐き、現実へ戻るように言う。

 

「つまり、椎名さんと軽井沢さんはハンドガンだから、

もう少し強力な武器が必要というわけね」

「私もそう思います」

 

坂柳が即答する。

 

「少なくとも対大型個体を想定するなら、現在の装備は不安が残る」

「それに弾もな」

 

龍園が付け加える。

 

「今のペースで撃ってりゃ、あっという間に枯れる」

 

綾小路は無言でショットガンの残弾を確認する。

数字はまだある。

だが、十分とは言えない。

 

彼らはいま、最小限の交戦で進んでいる。

それでも消耗は確実に積み上がっていく。

 

もしこの先で、また怪物級とまともにぶつかれば。

もし囲まれれば。

もし退路を塞がれれば。

 

今ある弾だけで持ちきれる保証は、どこにもなかった。

 

その会話の最中にも、ゾンビは迫ってくる。

 

静寂は、ここでは長く続かない。

 

廊下の先で何かが壁へぶつかる音。

階段の下から上がってくる、引きずるような足音。

半開きの理科準備室の奥で、何かが倒れる気配。

 

「来ます」

 

坂柳の声。

 

全員の意識が戦闘へ戻る。

 

「左の教室から一体、階段下から二体。廊下正面はまだ遠いですが、すぐ増えます」

 

橋本が坂柳を背負い直し、位置を整える。

 

綾小路が前へ出る。

龍園が少し右へ散る。

堀北が中央。

軽井沢とひよりが後方を固める。

 

隊列が、一瞬で戦闘用の形へ戻る。

 

左の教室の扉が揺れ、内側からゾンビがもつれるように出てくる。

顔を上げた瞬間、堀北のアサルトライフルが短く唸る。

 

三発。

無駄なく。

頭部へ。

 

そのまま倒れる。

 

階段側から二体。

ひよりが一体へ照準を合わせ、一拍置いて撃つ。

当たる。

額。

もう一体へ、軽井沢。

 

「っ……!」

 

発砲。

外す。

すぐに二発目。

今度は首から上を大きく揺らし、相手が階段へ転げ落ちる。

 

そこへ龍園のカービンが追い打ちを入れる。

 

沈黙。

 

「……行くぞ」

 

綾小路が言う。

 

誰も反論しない。

 

無駄な戦闘はしない。

できるだけ交戦を避ける。

あくまでも目標は、理事長室のある職員棟上階だ。

 

ここで立ち止まり、

目の前に現れるものすべてを掃討しようとすれば、弾が先に尽きる。

気力も削られる。

そして、おそらく怪物のほうが先にこちらへ辿り着く。

 

だから、交戦は最小限。

必要な敵だけを落とし、空いた進路を抜ける。

 

その方針が、全員に共有されていた。

 

彼らは再び走り出す。

 

長い廊下。

割れた窓。

薄暗い階段。

校舎のどこかで鳴る破壊音。

 

その中を、綾小路たちは進む。

 

月城のもとへ。

この学校の真相に近い場所へ。

そして、おそらくは次の地獄へ。

 

それでも止まらない。

 

止まった時点で終わることを、もう全員が理解していたからだ。




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