ガールズ&パンツァー Interview Log ~戦車道少女たちの記録~   作:Colonel.大佐

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File11 大洗女子学園 園みどり子

大洗女子学園 園みどり子

〔彼女の戦車道選手時代の写真と今の姿を見比べると、その様変わりに随分と驚かされる。大洗女子学園のカモさんチームことルノーB1bisに搭乗していた彼女は、当時学園の風紀委員として辣腕を振るっていた。戦車道の人員不足により選手として駆りだされた彼女の戦歴は驚くほど短い、だが風紀委員という立場に立っていた彼女は戦車道選手たちとは密接な関係にあった。彼女は現在、大洗女子学園に常駐する警察官として、生徒達と学園艦の安全を影で支えている。〕

 

 まず最初に断っておくけれど、私は戦車道についてあまり多く語れる立場にないわ。

 大会の準決勝に初参加して、それから大会決勝、何度かの練習試合や親善試合があって、もうその年には卒業して戦車道から離れていたから。これと言った功績もないし、特に秀でた戦車道の才能もあったわけじゃないし、結局のところは員数合わせのうちの1人だったのかも。

 今、有名になっている選手たちとの繋がりもあまり無くて……いや、一人いたわね。冷泉麻子さん……彼女についてなら、私はよく知っているわ。

 

 ――冷泉麻子選手とはどのような関係でしたか?

 

 冷泉さんについては……もう犬猿の仲と言ってもよかったわね。

 1年生で初登校した日から覚えているわ、私が風紀委員になって1年目の春。オリエンテーションで高等部は賑わっていたけれど、暫くして教員から「新入生が足りない、連絡もつかない」って話が入ってきた。

 学園艦は広いから迷子になる生徒もいるし、それこそ何か事件があったら大変だと思って私はすぐにその新入生を探す事にしたのよ。学校の中をくまなく探してもいない、学生寮にいるかと思って、学生寮に行ってもいない。ではどこへ?どこに?

 成果が得られず、こうなったら近親者に連絡して……と思いかけた所で校舎の裏山を車で走っていた時に見つけたわ、既に日は暮れて夕方、木陰に寝転がって本を読みながら――あるいは読もうとして、昼寝をしていた彼女の姿をね。

 何とか起こして心配していた事や必死になって探していた旨を伝えたけれど……帰ってきた返事は「そうか、すまん」の一言だけだったわ。

 それから彼女を学生寮まで送る車の中で一通り説教の連続よ!恐らく大洗の学園艦史上もっとも問題児との戦いの始まりだったわ……

 

 ――そんなに問題児でしたか?

 

 そうよ、問題児の中の問題児。

 授業をサボる、日が暮れてから学校に登校する、挙句無断で学校を休む、早く学校にこれたとしても午前中に出れたらまだ早い方、遅刻せずに学校へ来れたら奇跡、そういう人だったわ。そんな調子だからさぞ学業は疎か……と思っていたけれど、冷泉さんは学業に関して言えばほぼトップクラスで学年主席。出席日数だけが彼女を縛り付ける唯一の枷だったし……

 それに、私の事を変な渾名で呼ぶのも冷泉さんが始めたの。園みどり子だから、略してそど子、だと。

 

 〔顔を俯かせ、ぶつぶつと小声を漏らしてから、元の調子へと戻る〕

 

 ま、まぁとにかく冷泉さんは問題児だった。こうなったら彼女を真人間へ戻すのが私の使命だと思い始めて、それからはずっと腐れ縁よ。

 私や、彼女の中のいい武部さんと一緒に何度も何度も遅刻癖を正そうと努力はしたけれど、1年間たっても冷泉さんは変わらないままだったわ。今思えば彼女が低血圧で朝が苦手だという事を加味すれば納得は出来るけど、学年主席を誇る生徒がみすみす素行が悪くて出席日数不足で留年するとなれば風紀委員としては何としてでも救うべきだと思ってたんだけど。

 でもそんな冷泉さんが変わったのは、2年目の春からだった。あの時の事は今でも思い出せるわね。

 ちょうど新学期が始まって忙しい時期で、入学した生徒の顔と名前を何としてでも覚えるのが辛かったけれど、黒森峰女学園から転校してきたある1人の生徒が切欠だったんじゃないかと私は思っている。

 

 ――西住みほ選手ですか?

 

 その通りよ。

 西住さんは私から見てもごくごく普通の生徒でしか見えなかった。当時はね。戦車道に関する非凡なまでの才能や、指揮官としての貫禄、大洗の運命を背負った天才……なんて言われた事もあったけど、西住さんは一度戦車を降りたらどこにでもいる普通の生徒でしかなかった。

 西住さんが冷泉さんを助けた、というのもごくごく自然の事だったわね。入学式も終わって暫く経ったある日、いつものは遅刻してきている冷泉さんが、西住さんに肩を借りながらギリギリ遅刻して学校にやって来た。普通なら冷泉さんに手を貸そうとするのはいつも一緒にいる幼馴染の武部さんの役割だったけれど、その日だけは違った。

 それからはあくまで私ではなく、他の人から聞いた話になるけれど、それが切欠で冷泉さんと西住さんは係わり合いを持つようになって、戦車道によって日々の生活を、ようやく改めるに至ったという感じだった。実際に冷泉さんが遅刻をしない日は、日を追うごとに増えていった。

 私が幾ら言っても出来なかった事をされたのは、ちょっと悔しかったような気もするけれど、結果的に冷泉さんは変わることが出来たし、その後も無事卒業できた。もっとも私が卒業してから色々と波乱はあったみたいだけれど。あの頃は冷泉さんとは別の新しい問題が色々と浮上していて……

 

 ――どんな問題ですか?

 

 学園艦に潜入する他校生徒の対処よ。

 戦車道で容認されている偵察行為の一つとして、相手の学校まで押しかけて戦力を探って帰ってくる――なんてものがあるけれど、まずそれを最初にやろうとした人は学校内という私有地に不法侵入するという事に気が付いていたのか疑問に思えて仕方ないわ。言うなれば招かれざる客、私達にとっては悩みの種だったわ。

 大洗が戦車道を始めて暫くしてからはそういった事は全くなかったけれど、準決勝を勝ち終えたあたりからその手の「偵察」に精を出す学校が、毎月現れてたりしたわ。

 確かに情報を収拾するのは重要だと思うし、私も試合中に偵察を行った事はあるけれど、さすがに戦車道に関わっていないタイミング、それもよりによって放課後とか練習中にやってくる偵察は本当に頭痛の種でしか無かった。こと秋山さんが実際に他校でそれをやらかした後は、どの学校も大っぴらにやるようになってもう大変だったわ。

 大洗は戦車の性能で劣っていて、大抵の学校はノーマークでいいという感じが最初にあったけれど次々に強豪校に勝ってからはそういった偵察が増えてきて、西住さんが心配を始めたし、せっかく優勝の実績を勝ち取っても、その強さが一代で終わってしまえば大洗はまた廃校の影におびえなければいけない、そういう事態を回避するためにも常に大洗は偵察を未然に防ぎ、強さを維持しなければならない、という方針を打ち出す事になったわ。

 でも、大抵の事は通常の風紀委員の仕事で賄えたわ。

 例えば、不審者の通報、学校内の見回り、市街地での見回りとかで事は足りたし、授業中なのに他の場所をうろついている生徒を注意するいつもの事でさえスパイ摘発に繋がったし、基本的な部分では苦労する事は無かったけど。

 

 ――では何が問題でしたか?

 

 一番の問題はその後の事務的な対応ね。

 まず捕まえるとどこの学校か聞く、大変なのは大抵の学校の生徒が、スパイ映画でも見て覚えたみたいに「答えられない」とシラを切ったりする事がもう大変なのよ!相手の学校側に連絡をつけて、それから正式な偵察行為であるかを戦車道連盟に連絡する、それから送還、もしその学校が公式試合前の対戦相手だったら試合終了までこっちで預かる、そういった行為の書類仕事や面倒を全部風紀委員が見る事になっていたから大変で仕方なかったわ。

 それ以外にも、生徒達が巧妙な手口で風紀委員を欺こうとする事すらあったわ。

 例えばある学校を例に出すと、迷彩服を着て望遠カメラを引っさげて裏山にある戦車道の演習場に潜伏して本場そのものの偵察をやろうとした子たちがいたわ。ところが練習中に休憩をしようと思って、戦車から降りた瞬間に茂みの中から鉢合わせ!大騒ぎになったわ。

 他に大胆な所だと、大洗の制服をどこからか入手して「戦車道を体験受講したいんで見学してもいいですか!」と堂々と格納庫まで入り込んできた学校もあったわね、間抜けな事にもう必修選択科目の選択期限が終了していて本来ありえない事が一発でバレて捕らえられたわ。

 数えたらキリは無いけれど、とにかく色々な手段で偵察しようとしてくる生徒を取り締まるのは楽じゃなかったわね。その後はルールがちょっと変わったり、大洗の戦力の安定化と特に秘密にする情報がなくなった事で収束したけれど。

 でも、今の大洗女子学園はあの頃に比べて生徒数も増えて賑やかになったけれど、今はそれほど昔のような大騒ぎも起きていなくて、平穏そのものな感じよ。確かに平和である事はいい事であるし、私としても願っている事ではあるけれど、それはそれで、寂しくはあるわね。

 今でもちょっと恋しいのよ、あの頃の賑やかな毎日が。

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