ガールズ&パンツァー Interview Log ~戦車道少女たちの記録~   作:Colonel.大佐

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File14 大洗女子学園 エルヴィン

大洗女子学園 エルヴィン

〔インタビューの合間、彼女は息抜きとして私に、当時の軍装コレクションを見せてくれた。クローゼットには当時から収拾しているというドイツ軍の制服・戦闘服がずらりと並んでいる。「今ではこのサイズで着れるかどうかは不安だが」と彼女は笑いながら語る。それから、一際大事に保管されている軍帽を私に見せてくれた。戦車道の選手であった当時、プライベート・学業問わず身に付けていたという年季の入った軍帽は、かのロンメル将軍が使用していた物と同じレプリカ品である。彼女は当時の事を思い出しながら、当時のチームメイトに関する話を私に語り始めた〕

 

 これらのコレクションは全て自費で賄っていた。カエサルもおりょうも左衛門佐も同じく、当時は学生だったから集めるのはかなり苦労していた。学園艦だから本土のメーカーから取り寄せると更に手間賃がかかるし、何よりもレプリカでも相応の値段がするのでしょうがない。学園艦が寄港する貴重な日だと、私達はこぞって陸に上がって最寄のショップ等に殺到した。

 私達が好きな分野の衣装やレプリカのお陰で当時仕送られてきた小遣いは全て使っていたようなものだった。そこで出番となったのが学園の被服科だった。授業という名目で衣装を作る事に長けていた彼女たちに頼み込んで、図面や資料を元にレプリカの制作依頼をする事も多々あったな。

 流石に、特定の趣味に対して全てを捧げるような酔狂な真似をしているのは私達だけだろうと思っていたが、戦車道を始めてから知り合った仲間で、1人だけ私に近い事をしている者がいた。グデーリアンだ。

 

 ――グデーリアン、とは誰ですか?

 

 ああ、そうか。説明が必要だったな。あんこうチームの装填手を担当していた彼女の事だ。ある程度仲が良くなって、それから私は彼女に対して同じ様に通り名……いや、魂の名前をつけようと言う事になったのだ。カエサルは彼女をモントゴメリーと言おうとしていたようだったが……流石にモンティは無いだろうと私も思ったし、彼女も良しとしていないようだった。確かにモンティは名将であるかもしれないが、ドイツ好きにとっては正直あまり良いイメージのない将軍である事は確かだった。そこで私はそこでドイツ軍の名将ハインツ・グデーリアンから名前を取り、グテーリアンと呼んだ。彼女もその名前をいたく気に入ってくれた。あの電撃戦の生みの親である偉大な将軍、彼女はその名前を関するに相応しい人物だった。

 グデーリアンは戦車……と言うよりは軍事に関して語らせたら右に出るものはいなかった、隊長や生徒会長なら彼女の話も解ったかもしれないが、それでも知識量に関しては我々の想像を遥かに超えていた。グデーリアンは幼少期から戦車に関して身をささげているような人物だった。好きな物に対する情熱のかけかた、それらに対する愛情。その姿勢に我々がグデーリアンへ共感しない筈が無かった。

 グデーリアンと始めて会話したのは、サンダース大付属高校との試合が終わった後の事だった。当時は戦車に関して深く理解しているのは隊長だけだ、と漠然とした認識があった。私達は練習後に思い切って隊長に色々と質問をしようとしたが、他のチームも同じような状態で隊長は質問攻めの嵐に見舞われた。戦車道に関して大ベテランなのは隊長だけだったから、そうなるのは当然の流れだ。

 だが、その時、グデーリアンが手を挙げてこう言った、「メカニカルな事なら多少は解ります」と。

 あれが私とグデーリアンとの本格的な出会いだったな。そこから私達は矢継ぎ早のように質問をした、どうやったら砲撃のコツをつかめるのか、どう効果的に運用すれば出来るのかという実践的な質問から、果ては三号突撃砲に纏わる詳細なカタログスペックや運用実績についての事、それから「三号突撃砲は戦車なのか?」という疑問まで。

 グデーリアンはまるで、予め用意された台本をすらすらと語るように私達の質問に対して流暢に答えていった。隊長とよく一緒にいる装填手、私達はそれぐらいのイメージを抱いていただけに、その鮮やかな語りと豊富な知識には驚かされた。

 結局その日は質問が終わってから解散したのだが、私は帰宅して寝床に着くまでグデーリアンの事が気になって仕方なかった。

 私達のチームは歴史に詳しい者たちで集まっている、だが、それぞれのカバーする歴史の範囲は一部に特化していて、その実、他は浅く広くという事が殆どだった。当然ながら私が切り出しても皆に理解されないディープな話も数え切れない程あった。グデーリアンはそれについて知っているかも知れない、それから同じ様に話をしてみたい、もっと彼女の事を知ってみたい、と。

 意外にもそのチャンスは早くやってきた。生徒会長のからの提案で戦力増強のために、学園艦内に廃棄されている戦車を見つけ出し、戦力化せよとの命令が下った。

 それぞれチームを分けて捜索するという任務だったが、そこで私は意を決してグデーリアンを誘ってみた。返事はすぐに返って来た。

 それからいつものメンバーと共に、グデーリアンが加わった。カエサルが八卦(※1)を使いおおまかな捜索場所を決めた。それからは只管歩いて戦車を探した。その間に私はグデーリアンと出来る限り話をしてみた。彼女はやはりその道について博識である事は間違いなかった。戦車に纏わる話を聞いて、戦史に纏わる話で盛り上がり、戦争映画や史実のネタで盛り上がったり。

 逆に彼女と親密なせいで、私が他の3人から白い目で見られるのではないか、と思ってしまう事が多々あったが、そこはグデーリアンらしく、幅広いネタが通じて他の3人とも仲良くやっていたのもまた意外だったな。ああ見えてグデーリアンの教養は実に深い、軍事に関わる事であれば彼女にまさに生き字引だ、特に戦車に関しては大洗学園艦で最高の知識を持っていただろうな。無論、その知識が戦術・戦略的に役立ったのは言うまでもないだろう。

 そして、その日に私達は新しい戦車を発見した。フランスの戦車だ。

 

 ――ルノーB1bisですか?

 

 そう。まさしくそれだ。

 ルノーB1bisは第二次大戦時におけるフランス初期の戦車だ。WW2初期における戦車黎明期ではドイツ戦車が最強の戦車であると語られがちだが、スペックを考慮してもルノーB1bisは開発された当時としては強い戦車だったとも言える。装甲はそれなりにあるし、車体に固定されているとは言え、主砲の威力は中々のものだ。

 もっとも、初戦ではドイツの電撃戦とフランス軍における戦車運用の非効率さから大敗を喫したのは事実であるし、大戦中には戦車自体が革新的な進化を遂げて、すぐに旧式戦車になってしまったのは歴史が証明している。ああ、少し話がそれてしまった……

 とにかくルノーは戦車不足にあえぐ大洗にとっては有効な戦力の一つだった。もしこれが他の学校の庭から発掘されたとするなら、大抵の場合はスクラップにするか売り飛ばすか射撃訓練の的にするぐらいしか利用価値がないだろうが、私達はとにかく戦車が不足していた、どんなに価値が低く、使えない戦車とレッテルが貼られていようが最大限に利用するのが我々のポリシーだった。

 実にたくましい話だと思う。継続戦争時のフィンランドのように、使える戦力なら何でも利用し、それを有効活用するというのは中々やろうとして出来る事ではない、大洗と継続高校ぐらいしか出来ない芸当だ。

 だが、発見したルノーはアンツィオ高校との試合では使用されなかった。本格的な稼働はプラウダ高校との試合からだったな。

 

 ――技術的な問題でもあったのですか?

 

 とんでもない。自動車部は優秀だった、発見した時はゴミだらけの沼に半分沈んでいたルノーはその翌日には稼働できる状態までレストアされていたよ。沼につかり続けていたエンジンをすぐに直して、車体の隅々まで整備を行って完全に動けるように手配できたのは当時の学校では私たちぐらいなものだ。

 問題は搭乗員不足だ。戦車道の受講者はギリギリで戦車の定数に足りていたから、今更使える戦車を即手に入れたからと言ってすぐに使用できるわけではない。よしんばルノーに乗った所で、習熟訓練も足りていない、それも他の戦車から引き抜かれたコンビネーションもばらばらな人間が乗り回した所で百人力とも言える戦力になるとは到底思えない。

 そう言う意味では「余りもの」というレッテルを貼られるのは仕方ない戦車ではあったが、適任がいた。風紀委員だ。

 大洗の風紀委員はまさに異例で、100人近くの風紀委員がそど……園みどり子なる風紀委員長の指示の元で行動していた。常に規律正しく、徹底した指揮系統とマニュアルで運用された精鋭の風紀委員……とは言っても学園艦のちょっとした自治とか校規を正すための集まりだったのだが。

 新しい人員が入ってきて戦車道は活気づいたが、少々頭の痛い出来事も増えた。

 当時の私達は思い思いの格好をしていた、それこそこれだ、

 

 〔手にした制帽のレプリカを見せる〕

 

 こういった、本来なら校則では許されない服装をしている私達に対して、彼女達がどう反応するか目に見えているだろう(笑)

 こっぴどく注意されたり、規則正しくしなさいだの、風紀委員のルールに従いなさいだの、とても賑やかな日々になったよ。とは言え、彼女たち風紀委員は適任以上の働きをしていたと思う。確かに彼女たちは後々に評価された大洗女子学園の戦力でもごくごく普通の存在だと言われていたし、撃破スコアの点においても大洗の戦力では比較的少ない方とも言えた。

 だが、彼女たち風紀委員は活躍した期間こそ短いながら、期待以上の活躍をしたとも言える。彼女たちは飛び入り参加で、全国大会という日程内で飛び入り参加した程度の面子に過ぎなかったが、それでも驚異的な速さで戦車に関するノウハウを習得し、それをあの短い期間で披露したと言うのは驚嘆に値する。しかしあの大学選抜チームとの戦いまでずっと戦い続けた。第33SS武装擲弾兵師団(※2)に匹敵する活躍……と言うのは過大評価かもしれないが、とにかく風紀委員は頑張った。ただ、それ以上に周りのチームが奮戦したとも言えるが……

 

 

(※1……中国に伝わる易経(占い)の一つ、風水を利用した占い)

(※2……第二次世界大戦末期にナチス・ドイツ武装親衛隊に設立されたフランス人義勇兵師団。ドイツ末期戦において勇猛に戦った)

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