ガールズ&パンツァー Interview Log ~戦車道少女たちの記録~   作:Colonel.大佐

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File06 サンダース大付属高校 アリサ

サンダース大付属高校 アリサ

 

〔シャーマン戦車を中心とする、日本では珍しい物量戦中心の戦車道を主体としたサンダース大付属高校。この学校で副隊長を任命されていたアリサ選手は技術・情報面を主体した戦車道を行っていた。彼女が大学生時代に発表した諜報戦を主体としたレポート「戦車道情報戦主力論」は今現在も広まっている。現在は戦車道連盟と提携する関連企業で働き、戦車道で使用されるカーボンの安全性向上、撃破判定装置の改良、戦車道向けのオプション装備の開発などに大きく貢献している。オフィスの一角で当時の事を振り返る彼女は、あの試合前後に何があったのかを淡々と語り始めた〕

 

 シャーマン戦車は優れた戦車だったわ、世界各国で使用され、整備もしやすく故障も少なく扱いやすくそこそこ強い。でも黒森峰のような強豪を相手にする試合では噛ませ犬としての扱いが殆どだった。全国大会も後半に進めば物量戦で押し切る事も出来るけど、一回戦で10両、準決勝で15両、決勝で20両……パンターやティーガーを相手にするにはあまりにも足りないわ!こんなザマで勝てる訳が無いと踏んだ私は、考え抜いた末にルールやレギュレーションを違反しない方法で黒森峰に勝つ方法を模索した。その結果が情報戦だった。

 軍事知識のある奴なら指揮や偵察と言った「情報」が戦場では重要になってくる事は誰でも知ってるはずよ、そこで私はAWACSのような空中管制機と諜報機関を兼ねたような車両を作る事を提案した。もちろんサンダースの校風や隊長の意思に相反する存在である事は解っていたわ、でもやらなければ勝てない。私は自ら機械を作り上げて無線傍受機を作り、戦車のスペースを改造して秘密の「指揮車両」を作り上げた、隊長にはもちろん内緒で。お陰で私が副隊長になってから、戦車の性能で負けた事はあっても戦術で負けた事は無かったわ。私の傍受した情報を元に、サンダースは優勢を保っていた……あの大会までは。

 対戦相手が大洗女子学園と聞いた瞬間、私は「やった、これで一回戦は楽に勝てる」って仲間達と喜んだし、実際に情報を集めてみてもその考えは揺るがなかったわ。それにサンダース大付属校が近々、統廃合が予定されている学園艦の一部を吸収合併する話も聞いていて、その統廃合予定の学校が大洗女子学園だとも聞いていた。廃校寸前の貧乏で実績もないような弱小校が勝てるわけがないと私は踏んでいた。

 もちろん、隊長が黒森峰を去った戦車道の家元だという話も聞いていたけど、戦車の性能差はどう足掻いても埋められないと楽観していたわ。そんな矢先、オッドボール三等軍曹(※1)事件が起こった。

 

 ――オッドボール三等軍曹事件とは何ですか?

 

 大洗女子学園のスパイが私達の学校へ潜入した事件よ。こちら側のブリーフィングに相手校の生徒が思い切り紛れ込んでいたのよ!相手側から口を開いて、こちらが怪しいと思わなかったらあいつは情報を丸々盗んでいたし、最悪の場合、私達のシャーマンに何か細工でも施す可能性だってあったわ。それに部外者が紛れ込んでいる事に誰も気が付かなかった。

 ブリーフィングで見慣れない顔の生徒が隊長に質問をぶつけているのを見て最初にナオミが気が付いた。そこで私は堂々と誰何した「所属と階級は?」って、返事はすぐに返ってきた「第6機甲師団、オッドボール三等軍曹であります」って。そんなふざけた名前の選手がいるわけないわ!腹立たしい事に私が捕まえろと叫んでも誰一人、捕まえようともドアの前に立ちふさがろうともしなかったわ。お陰でまんまと情報を盗み出された挙句、サンダースの学園艦から取り逃がしてしまった。おかしな話よ、数百人もいる風紀委員や本職の警備員達が草の根分けても見つける事が出来なかったのよ。

 私はすぐさま隊長に進言したわ、すぐに編成を変えましょう、相手に情報を渡すような真似はしないで下さい、と。

 でも隊長はすぐに却下したわ「だってこの方が面白いし、あんな勇敢な行動をした彼女に悪いじゃない」って。勇敢な行動?不法侵入じゃない!

 だからこそ、一回戦の試合前に隊長が大洗女子学園の面子を招待してきなさいと言われた時は、正直心のどこかで「何でこんな連中を相手に……」って気持ちがあったわ。今思えばあの頃の自分に「鏡を見てモノを言え」といいたかったわ。無線傍受で自分の思うよな状況を作っている自分を棚に上げておいて、何を言ってるんだか……

 おまけに無線傍受を逆手に取られて試合に負け、その一件で反省会で猛烈な吊るし上げよ。

 

 〔ため息と共に目を伏せる〕

 

 サンダース大付属大学戦車道始まって以来の汚点、卑怯者、戦車道の何たるかもわかっていない大馬鹿者。皆から投げかけられた言葉は酷いものだったわ。

 大半の仲間は隊長側の言い分に回ったし、ナオミも「そう言われても仕方ない事」と言っていたけど、隊長は結果的に許してくれた。許してくれるまで時間はかかったけども……その間、同じ車両に乗っていたチームメイトの進言もあって私のシャーマンから無線傍受機は外された。自戒を込めて私はそれを完膚なきまで分解した。

 あの頃は何毎も上手く行ってなくて、隊長から許されたとはいえチーム内の目も厳しくなっていて、プライベートでも色々あって正直自棄になりそうな気もあったし、プラウダとの練習試合も憂さ晴らしのつもりがコテンパンにやられておしまい。戦車道なんか辞めてしまって普通の生活をしようとすら考えていたけど。皮肉な事に私を救い来たのはあの“オッドボール三等軍曹”だった。

 隊長は彼女を気に入ったらしくて、実際に彼女や大洗女子学園の隊長を学園艦に誘う事があって、個人的な食事会に私が呼ばれた事があった。私が取り逃がしたスパイを前に一緒に食事だなんて、願い下げもいい所よ。サンダース流のバーベキューのもてなしが終わった所で、隊長は大洗の隊長や生徒会長と談笑中、空気が気まずくて演習場を一望できるベランダへ出たら彼女がいたわ。

 あの癖っ毛を揺らして、「あれ、どうしたんですか?」って。どうしたもこうも無いわよ、あんたのお陰でここ最近調子が狂いっぱなしだ、って大声を上げて言ってやりたかった。でも、そんな気持ちを抑えて黙って突っ立っている私に、彼女は質問を投げかけてきた、「今は何の戦車に乗っているんですか」とか「サンダースの練習ってどんな感じなんですか」とか。私は答えないでずっとベランダから外の景色を眺めていた。

 彼女はやがて心配し始めた。私はついに痺れを切らして口を開いた、「ほっといて頂戴」って。彼女は色々と察したのか、私の横に立つと話を始めた、「無線傍受の件なら気にしなくてもいいですよ」って。

 それからこう続けたわ、「ルールブックにも記載されていない戦術を使う事は違法ではないですし、むしろ勝つ為の秘策としては申し分なかったですよ」……更に一言「私だって偵察に来たんですし、これでおあいこにしましょうよ」って。

 別に私は彼女たちへ無線傍受を使った事に負い目を感じている訳ではなかったけど、彼女の言葉は救いだった。今思えばあのセッティングには隊長が裏を引いていたのかも。今となってはどうでもいい話だけど。

 それから私達は時間が許す限り話をして、互いの家族、趣味、戦車のこと……それから「あの時」なにをしていたかを話した。

 別に彼女は誰から命令を受けたわけでもなく、自分の意思で私達の学園艦へ偵察に来た事、自分でサンダースの制服作って潜入したこと、それから捕まって学園艦に戻れない事を覚悟して潜入したこと、風紀委員に見つかりそうになりながら、ギリギリのタイミングでやってきたコンビニの定期便で帰還したこと。

 それから彼女がどれだけ正確な情報を収集していたか知る事が出来た。はっきり言うわ、私が今までやってきた程度の情報収集や無線傍受なんて目じゃないほどの正確さがこの「偵察」にあったんだと。

 

 ――それが後のレポートに繋がったと?

 

 ええ。

 実際に私も彼女にコツを教わったりして、偵察に関するノウハウを教えられた。それを本格的に実践したのは大学に入ってからだけど……

 その日の交流で、私は彼女の本当の名前をようやく知った。名前は秋山優花里、私と同じく癖毛で、副隊長で、歳が同じの選手。彼女たちが学園艦に帰る時、私はアドレスを交換して、またいつか試合でもしましょうと約束した。その約束は私が3年生、そして隊長になった際に果たされた。練習試合ではあったけど、互いのベストを尽くして……それこそ死力を尽くしてぶつかったわ。互いに小細工なし、戦術と腕だけを頼りにする勝負。

 結局、練習試合で私は負けてしまったけど、あれで隊長の言っていた「フェアプレイの戦車道」が何であったか、ようやくわかった気がしたわ。

 それから全国大会にも行って、サンダースは久々にベスト4まで進出できた。その間に私が実際に組織した偵察チームは効果的に対戦相手の学校から情報を収集したわ。あれも“オッドボール三等軍曹”のお陰ね。

 

 ――今後、戦車道に復帰するつもりはありますか?

 

 今のところは無いわ。隊長……ケイ元隊長から誘いの話が来てるけど、残念ながらパスするしか無いみたい。戦車道から引いた今となっては、選抜のテストに合格できる自信もないし。

 それに、まだまだ仕事が山積みで終わりそうに無いからよ。完全な水密機能付きカーボンの実用化に目処が立ちそうだし、私が片付けなくちゃならない課題は沢山あるわ。でも……参加したいわね。また昔みたいに、あの時と同じ様に。

 

(※1……アメリカの戦争コメディ映画「戦略大作戦」の登場人物。当時、秋山優花里選手がサンダースの学園艦に潜入した際の偽名)

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