ガールズ&パンツァー Interview Log ~戦車道少女たちの記録~   作:Colonel.大佐

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File07 サンダース大付属高校 ケイ

サンダース大付属高校 ケイ

 

〔戦車道の強豪であるサンダース大付属高校。このチームに纏わる武勇伝や伝説は数多く存在するが、中でもあの全国大会における大洗女子学園との試合で見せた「フェアプレイ」に関しては戦車道の公平さとスポーツマンシップを体現した名試合として後に評価されている。その判断を下したのは当時の隊長ことケイ選手その人である。サンダース大付属高校を卒業後、サンダース大学でも戦車道を選んだ彼女は戦車道日本代表選手に選ばれ、日々訓練に励んでいる。取材当日、彼女はせっかくだからと母校サンダース大付属高校の戦車道演習場に私を案内した。「今でもたまに昔を懐かしんでここへ来る」と彼女は語る、私は練習風景を眺める彼女の背中に今でも色濃く残る指揮官としての風格を見た。彼女は当時の状況を克明に語り出す〕

 

 戦車道に慢心は禁物とよく言うけど、当時の私達はあまりにも慢心で気が緩んでいた。

 心のどこかで彼女達を格下と見ている部分はあったの。昔は戦車道が盛んだったとは言え、たった5両の戦車で何が出来るのか?聖グロリアーナの試合で随分と愉快なカラーリングの戦車を使って戦っていた素人集団で、しかも負けている、私達から比較すればアリと巨人くらいの戦力差。全国大会の一回戦で大洗と当たった時は「やった」って考えちゃったのよ、これで一回戦目は楽勝だ、試合当日はさっさと終わらせて帰ってシャワーでも浴びてバーベキューでもしましょうか、って感じで。

 だからこそ情報収集もテキトーでいいでしょ、って感じだった。車長会議でおざなりな研究会をやっていたけど全員揃って「私達の敵じゃない」って結論に落ち着いたの。でも情報収集では随一だった副隊長のアリサが私に進言をしてきた。聞き捨てならない情報があります、って。

 アリサが独自のルートで調べてきた情報だと、大洗の隊長は西住流の関係者だって話だった。黒森峰と西住流には私も強い因果があったの、私が1年生の頃、全国大会準決勝でサンダースは黒森峰相手に史上最悪の敗北をしていたの。私はフラッグ車に乗っていて、試合の最後を直に見届けていたのよ。

 あの時、撃破されてキューポラから顔を出した私の前には、タイガー戦車と当時の黒森峰隊長……西住まほが居た。あの敗北はとても悔しかった、だって私が乗っていたのはファイアフライ、あのタイガーを撃破する事も出来たのに。

 

 〔険しい表情が一瞬だけ浮かぶが、すぐに穏やかな表情に戻る〕

 

 まぁ、そんな一件もあってか私は血の気が一気に引いたわ。すぐにアリサの両肩を掴んで「それって本当なの!あの隊長が!?」と叫んだ……アリサは目を丸くしながら答えたわ、「いえ、黒森峰隊長の妹です」って。私は一安心すると同時に、相手が第62回大会を契機に黒森峰を去ったあの副隊長であったと知ったの。

 第62回大会は二回戦で敗退していて、正直な話、決勝の中継を見ている間は「どうせ黒森峰がまた優勝をするんでしょ」って気持ちがあったわ。だからこそ、プラウダの逆転勝ちには意外さを感じたけど、あれは明らかにスポーツマンシップを欠いた、下らなくて幼稚で、面白みも全くない不愉快な試合だった。あんな最悪のコンディションで三号戦車を撃って氾濫する川へ沈めたプラウダも、試合後にフラッグ車を放棄して助けに向かった副隊長をバッシングした黒森峰もね。

 でも、あんな状況下で迷わず飛び込んで、沈み行く三号戦車を助けに向かった副隊長の勇姿に私は感動したわ。西住みほ、私は彼女の名前を決して忘れないと思った。

 だからこそアリサから「相手の隊長は西住みほ」という話を聞いて、私は一回戦が楽しみで仕方なかった。相手はどんな試合を仕掛けてくるのか、この試合は楽しめそうだ、って。その間、エキサイトできる事は幾らでもあった、オッドボール三等軍曹が私の学園艦に遊びに来たり、とかね。

 それで試合までの間、私は彼女を迎え撃つため、そして満足できる試合をするために編成を練って戦術を考えた。フラッグ車はアリサ、虎の子のファイアフライはナオミ、私は……いつもの乗りなれたシャーマン戦車初期型。序盤から強い戦車をぶつける事だって出来たけど、私個人としてはそんな芸の無い戦いはしたくなかった、そう考えればあの編成が一番妥当だったわね。

 互いに全力をぶつける事になるであろう試合、だからこそ張り切って試合に臨んではみたけど……まさか、信じていたアリサがあんな事をするなんてねぇ……

 

 ――無線傍受の事ですか?

 

 そうよ。昔からアリサの勘は鋭くて、試合展開が物凄く優位に運ぶ事が殆どだったの。大体アリサが「ここらへんに相手チームが集結しそうな気がする」と言って、そこへ向かうと確かに相手チームがいる。私が何で解ったか問いただすと「女の勘です」と一言。これがあるから、私はアリサを優秀な副官として重宝していたし、特に気にせずに進めていたけどね。

 でも裏では私に黙って無線傍受をやっていた。別にルールブックに無線を傍受してはいけません、なんて記述はどこにも無いわ(※1)。でもそれは盗み聞きで、同時にアンフェアな事でもある。偵察とは訳が違うわ、偵察は「自分が捕まる・見つかる」というリスクを背負って行うもの、ただ座って情報を盗むだけの無線傍受は戦車道の道から外れているわ。

 私のモットーは「戦車道はスポーツであって戦争じゃない」、そりゃまぁ、戦争で使われた戦術を使ったり、実際に戦車を使ったりするわけだけど、スポーツである戦車道にそんなズルの行為……チートを使うのは御法度よ。私は常にそう思い続けてきたし、これからも変わらない。その後の反省会でこってり絞ったら、アリサも反省したようだど……

 でも、みほには全てお見通しだったみたいね。見事に無線傍受を逆手に取られたわ。

 

 ――と言うと?

 

 無線が傍受されている事を知って、あえて偽の情報を流したのよ。アリサはそれに気が付かずに、偽の情報を信じて私に流し続けた。

 結果的に私達は罠に頭からはまってしまったわ、偽の情報でおびき出されてドックチームが真っ先に行動不能にされたわ、待ち伏せでね。でも撃破された報を聞いて、私は驚きはしたけど、すぐにワクワクしてきたわ。やっぱり相手は只者ならないツワモノ、私が楽しみにしていた相手。だからこそ血が騒いだわ、これはいい試合になりそうだって。

 でも、アリサのフラッグ車が全車両に包囲され、追い掛け回された時点で私は怒りに駆られていたわ、こんな素敵な試合をアリサが台無しにするんじゃないかって。そこで私は彼女達に敬意を払わなければいけないと思ったわ、だからこそ、あそこで同じ数の車両で勝負に出た。私の最も信頼するベテランのチームを選抜して、ナオミと一緒に彼女たちを追ったわ。先頭を走るのはアリサのフラッグ車、ついで大洗の戦車チーム、そして私達。

 延々と続くような追跡劇……でもナオミの腕は確かだったわ、彼女たちの戦車は次々に撃破されて脱落していった。あと3両で全滅まで追い込んだ所で、四号戦車が行動に出たの。

 丘陵の上からアリサを狙うという作戦……あまりにも大胆な作戦であったけど、あれは一種の賭けだったようね。私はナオミのファイアフライに追撃を命じた。

 後で試合の録画VTRを見せてもらったり、ナオミの話を聞くには、あのナオミの砲撃を四号は見事に避けてみせたわ。まさに信じられない話だけど、黒森峰を撃破してみせた彼女達を考えれば今でも納得できるわ。

 いつの間にか無線は慌しくなっていた。四号の追撃に回ったナオミのファイアフライは沈黙したままで、アリサは興奮気味に叫び続けていた。丘陵の上に陣取った四号が当てるのが先か、それともナオミのファイアフライが仕留めるのが先か。生まれて始めてよ、優勢なのにあれだけ緊張したのは。

 それから無線越しにファイアフライの砲声を聞いた。それから、四号の砲声。

 目の前を走っているアリサのシャーマンから黒煙が上がったのを見て、四号が砲撃を命中させた事を知ったの。まさかと思って無線機に耳を押して当ててアリサの報告を待った。

 ……返事は返ってこなかったわ。

 私達の負けではあったけれども、消化試合のようなやる気の無い今までの試合に比べたら、途轍もなく熱くて、そして素晴らしい試合だった……

 それから私は試合が終わって、彼女達……そしてみほと始めて顔を合わせることが出来た。だからこそ力強くハグして、私はこの試合の素晴らしさを語ったわ。他のみんなはちょっとビックリしていたみたいだけど(笑)

 それから反省会とか、やる事は山積みだったけれど一回戦であれだけ白熱した戦いを出来たのは、あの試合とプラウダ高校との試合ぐらいよ。それから、またあれと同じくらい白熱した試合を望んでいたけど、大学の戦車道ではあまり良い試合に当たる事は無かったわ。サンダース大学自体、戦車道に力を入れるのは高校だけという風潮(※2)もあったみたいだけど。

 だからこそ、私は世界大会というステージを目指してここまで来たわ。

 

 ――今回の日本代表選抜も、かなりの努力があったと聞きましたが。

 

 もちろん!私にとっては必ず選ばれなきゃいけない、いや、出なきゃいけない使命があったからよ。みほと肩を並べて戦車道をする事が出来る、これ以上の理由があると思う?

 私のこの考えにナオミの賛同してくれた、今では2人で肩を並べてみほと一緒に試合や練習に望んでいる。出来ればアリサも一緒にいてくれた方がいいんだけど、アリサは仕事が忙しいし戦車道から一歩引いちゃってるのが残念よね。まぁ、アリサの事だから暫くすれば自分から言い出してくるでしょ。

 もしアリサも加わったのなら、もう一度彼女たちと戦ってみたい所ね。あの四号戦車と私のシャーマンでね!

 

(※1……現行のルールブックにも無線傍受についての言及はないが、欧州など一部地域では制限されている)

(※2……サンダース大付属高校の戦車道は戦力は全国一であるが、大学の戦車道は高校と比較すると遥かに小規模である)

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