美少女しかいない部活で、部員全員から「私だけは味方だからね」と耳打ちされたんだが   作:古野ジョン

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第4話 質問と回答

「お疲れ様ですー……って、あれ」

 

 ある日の放課後。いつも通りにブースのドアを開けると、そこには一人で椅子に座る瀬峰の姿があった。見慣れたポニーテール姿で、発声練習の原稿を手にしている。

 

「お疲れ様、遊佐くん」

「他の二人は」

「優花さんは部活動委員会の用事だって。ひまりさんは先生に呼ばれたらしいよ」

「そっか」

 

 あたりを見回してみると、たしかに先輩と愛宕の荷物が置かれていた。恐らく数十分もすれば戻ってくるのだろう。

 

「で、今日は何かあるんだっけ」

「いつもと同じ。私たちは練習」

「分かった」

 

 じゃあ俺もデータ整理の続きでもしておくか。この間は謎の閉じ込め騒ぎでそれどころじゃなかったしな。

 

 俺はデスクトップパソコンの前に座り、電源ボタンを押す。やや間があってからモニターのランプが灯り、OSのロゴが表示された。このパソコン、そろそろ新しいのに変えた方がいいと思うけどなあ……。

 

「ねえ、遊佐くん」

「ん?」

 

 背後から声を掛けられた。キーボードを叩いてパスワードを入力しながら、俺は返事をする。

 

「部活には慣れた?」

「えっ? まあ……慣れたけど。機材もだいたい把握できたし」

「そっか。ごめんね、雑用ばかりさせちゃって」

「いいよ別に。あんまり喋るのとか得意じゃないから」

 

 やっぱり二人きりのときはいろいろと話をしてくれるんだな。一応クラスメイトでもあるけど、普段の瀬峰は他の女子と一緒にいることが多いし……あまり話す機会がない。

 

「ところで、ちょっと聞きたいんだけど」

「なに?」

「遊佐くんはさ。……優花さんとひまりさんのこと、どう思ってる?」

「へっ?」

 

 意外な質問に、フォルダを開く手が止まってしまう。振り向いてみると、瀬峰は原稿に目を落としたままこちらを見ようともしない。

 

「どうって……別に、ただの先輩と後輩だよ」

「……そうなの?」

「うん。それが何か?」

「……」

 

 瀬峰が黙り込んでしまった。別に変な回答をしたつもりはないんだけどな。

 

「どうした?」

「えっと、……か、可愛いな~とか思うの?」

「え?」

「優花さんとかひまりさんとかのこと、可愛いな~とか思わない?」

 

 ……何を聞かれているんだ? 志津川先輩はお姉さんの魅力って感じで素敵だと思うし、愛宕は小動物みたいで可愛らしいとは思うけど。それを馬鹿正直に答えるのは何か恥ずかしいな。

 

「ま、まあ……可愛いんじゃないか」

「どのあたりが?」

「どのあたりって……そんなの言えない」

「言えないことなの?」

「語弊があるだろ、それ」

 

 瀬峰はむーっと頬を膨らませ、不満を露わにしていた。そんな顔をされてもこっちだって困るんだけどな。いったいどんな回答を求めているんだ……。

 

「……とにかく、可愛いとは思ってるんだ」

「そりゃあ……まあ」

 

 あの二人を可愛くないと言うわけにはいかないだろう。

 

「じゃ、じゃあさ……」

 

 瀬峰は髪をそっとかきあげ、こちらにちらりと視線を寄越す。そして、呟くように……口を開く。

 

「……私は?」

「何が?」

「私のことは、その……可愛いとか、思う?」

「えっ……」

 

 ……可愛いに決まっている。こんなすらっとしたスタイルで正統派美少女で髪型が爽やかポニーテールが可愛くなかったらそれはこの世界が間違っている。だけど、それを直接言ったら流石に話が――

 

「お疲れ様でーすっ!!」

「ひまりさんっ!!?」

 

 ブースのドアが開くと同時に、愛宕が元気よく入ってくる。これはタイミングが良かったのか、あるいは悪かったのか。その答えなど分からないが、ひとつ言えることは――突然の入室に驚く瀬峰の顔は、普段とギャップがあって可愛いということだった。

 

「あれ? 何か話してました?」

「えっと、それは……」

 

 瀬峰は言葉に詰まっている。さて、何を答えたものだろうか――

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