「私は愛に飢えてる嘘つき。そんな私がアイドル?」
虐待を受けた孤児院で、一人の老人と出会った。

金がいる。知名度がいる。とりあえずやってみろ。

バカみたいなことを言うその人に、思わず笑ってしまった。

それが、星野アイの始まりだった。

不器用な手紙のやり取り。
アイドルとしての苦悩。隠し子。襲撃。起業。
がむしゃらに走り続けた先で、ようやく気づく。

あの人は、ずっと愛をくれていたのだと。

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第1話

 

「もう、ルビーもアクアも小学生かぁ……」

 

時間って経つのが早いねーと、何処か他人事につぶやく美魔女。

星野アイ。母さんは学生時代にアイドルとして活動し、ドーム公演を経て伝説となった。

 

今ではその過程で築きあげた知名度を使い、広告モデル件、社長業をしている。

人間関係では、嘘はとびっきりの愛。それは知っている。

だけど、商売は信用が第一。そこに嘘はつかない。

 

今では敏腕社長としても名の知れた母さんだが、

ルビーを見つめるその表情は、何処か物憂げに見えた。

 

「アイ、どうしたの?」

 

「……。うん、ちょっとね、昔のこと思い出しちゃって」

 

そう言ってルビーを見つめながら、

何処か遠くへ思いを馳せているアイは、とても悲しそうだった。

 

「昔ね。私が小学生くらいんときに、おじいちゃんに会ったんだ」

 

「……」

 

「おじいちゃんは、別に家族ってわけじゃないのにさ。独りで遊んでた私をたまたま見つけて話を聞いてくれたの」

 

「でも、いうことがすっごく極端でね」

 

「何かをなすには金だ、金がいる。金を稼ぐなら知名度がいる。

とりあえずやってみろ、失敗なんて重ねた分だけ成長するだけだ」

 

「あのときの私は人なんて信じられない、私が世界で一番不幸だーって顔してたと思うのにね。

思わずぽかんとしちゃってさ、落ち込んでる気分もどこかいっちゃってね。

そんな相手にあんなこと言ってくるんだもん。吃驚しちゃったよ」

 

「思わずさ、バカみたい。って笑っちゃったんだよ」

 

あはは、と苦笑するアイ。

その表情は、怒ってはいなくてとても懐かしそうだった。

 

「でね。

現れたもの突然なら、去るのも突然だったんだ。

会長って後ろから声かけられて去っていったんだけど」

 

「何かあったら、この連絡先に手紙を出しなさい」

 

「そう言って名刺を渡してくれたんだ。

あの四宮財閥とも繋がる大企業の会長さんだよ?

今になって思えば、とっても気を遣ってくれてたんだって思えるけどね」

 

「当時はそんなのわかんないからさ。

吃驚してたら、嵐のように去っていってただけだったんだけど」

 

「今になって思えば、あの人にあのとき会えていて本当によかったって思んだ」

 

===

 

あのおじいちゃんに会ってから、私は変わった。変わろうとした。

でも起きたのは劇的な変化じゃなくて、小さく変わっただけだと思う。

 

どうなるかはわからないけど、まずやってみることにしたんだ。

 

まずは孤児院のこと。

ご飯にガラスが入ってるって、警察に訴えてみた。

状況がガラリと変わった。施設も変わった。

 

そのときの孤児院の先生を見てたら、嘘ばっかりだった。

 

知名度って、どうやって稼ぐのか調べてみた。

どこにものってなかったから、知名度の高い人って誰だろう?って調べてみた。

よくわかんなかったけど、よくテレビで見る人がそうなのかもって思った。

 

言葉ってなんでこんなに軽いんだろうって感じた。

私が言う言葉、周りが言う言葉。どこもかしこも嘘っぽい。

親に捨てられて、たまたまおじいちゃんが言ってたことを鵜呑みにして活動してるけど

私は、上っ面な言葉を投げかけてる私がだんだん嫌になった。

 

嘘、嘘、嘘。

嘘で塗り固められた今がすっごく辛い。そう思ってたとき。

 

サイトー社長とあったんだ。

私がアイドル?何いってんだろうこのヤンキー髭もじゃって思ったよ。

 

それでサイトー社長にそのまま言ったらさ、

最初は嘘かもしれない。でも、いつか本物が手に入るって言ってきたんだ。

 

その言葉は、嘘じゃないって信じたかったのかもしれないね。

なら、まずはやってみるかって思えたんだから。

そして、私の求めてたものを得られるチャンスだって思ったんだ。

 

「サイトー社長、アイドルって知名度稼げる?」

 

直前までの嘘つきの話はどこ言ったっていうのかな。唖然としてたなーあの時の社長。

 

そこでもらった名刺を見て、おじいちゃんの名刺を思い出してさ。

家に帰ったら、おかげさまで変わってきましたってお手紙出してみたんだよね。

 

百均の紙封筒とか、紙で、頑張って字だけは綺麗に書いてたかなー。

お礼と。今はどうなっているかとか、アイドルやってみようと思う。

失敗しても成長だもんね。って添えて。

 

そしたらさ、数週間後に1通のお手紙が届いたんだ。

 

なんて書いてたかって?

「心・技・体」の3文字がデカデカと書かれた紙とさ
そのあとに、やってみるのは良いこと。だが全力でやってみろとか。
アイドルは狙われる、身体も鍛えろ、とか。

もうさ、すっごいシンプルだったんだよ。
思わず笑っちゃったよね。

 

そこから、サイトー社長に言って合気道の道場を紹介してもらってたかなー。
ほら、名前にアイって入ってるし、男も女も関係ないって感じのものらしいからさ。

とりあえずやってみよう、でもやるからには全力で!の精神でね。

 

 

アイドル活動もあったから辛かったけど、

今、無事に話せてるのはそのおかげなんだよねぇ……。

いや本当に、襲われるとは思わないじゃん。

 

ん?ああ、でね。

 

そこからは只管トレーニング、トレーニング。

合気道、アイドル、全力でやってみたよ。

流れがあり、間があるって感覚でわかってきたから。

アイドルにも活かせてたんだよねぇ。

武術が生きるなんて思ってもなかったんだけどね。

 

襲われるってイメージはなかったけど、アイドルって体力勝負なんだよ。

歌って踊って、でも疲れた表情は一切なし。笑顔を振り撒くの。

最初はもうへとへとでさ。1曲で限界だったよ。

 

だからずっとランニングしてたかなー。

合気道の練習でも体力つけろーって言われ続けてたからね。

 

チームの仲間とも合わせて練習、練習、ひたすら練習。

そんな日々を終えたら、ようやく地下アイドルみたいな場所?で公演だったかな。

 

言葉通りに全力でやって、ファンになってもらって、次に繋げてたっけ。

でも、今そのときを全力で楽しんでたよ。

あのときの言葉は、嘘だったかも知れないけどね。

 

 

 

でね。公演を終えてから、またおじいちゃんにお手紙を書いたんだ。

アイドルの公演を初めてやった。人は少なかったけど全力でやってるよ。

あと、合気道も始めたこと。チームの仲間ともそこそこやれてること。

 

そんなことを書いてたかな?

 

でさ、この返信なんてもうすっごくシンプルでね。

即実践、良きかな。次は何を見据えてる?

 

これだけだよ?え、って思ったよね。褒めてよって。

でも、同時に考えてみたんだ。アイドルになって、トレーニングもきついけどだんだん慣れてきて。

やればできるってイメージが身についてきてた時期だった思う。

じゃ、次は何を目指してみようか?は確かに考えた方が良いことだったんだよ。

だから考えてみた。

思い出したのは、知名度を稼いでお金を稼ぐこと。

そして、私も愛を与えられる本物になること。

 

原点はこれだって思ったんだよね。

だから知名度を上げるために、ファンを増やすことを考えて、今以上に頑張ってた。

 

アイドルとしては一気に売れてきたんだと思う。

ファンになってくれる人も増えてきたし、知名度も上がってきた!って思ったよね。

 

……。そしたらさ、だんだんチームの仲間とあわなくなってきて。

皆んなも頑張ってるのは知ってるんだけどさ。私がやりすぎてたから、

僻み嫉みっていうのかな。あの子はいいよねーって、ね。

 

あはは、あんまり面白くないよ?

 

私は私なりに頑張ってるんだし、皆んなも頑張ってる。

でも必ず報われるとは限らないんだなーって身に沁みてわかったよ。

その発散方法が嫉妬。いじめ、嫌がらせ。

 

流石にキツくなって、おじいちゃんに助けを求めちゃったよね。

 

それなのに、帰ってきた手紙なんてさ。

「人間関係で躓いたか。敵を作りすぎるな、だが媚びるな。

相手を変えることなんてできん。

相手の人間性を見極めろ。」

 

流石にムカッときたよ。

……。でも、振り返ってみると正しかったんだろうね。

正論じゃかわれないって、おじいちゃん。。。

 

そう今なら笑って話せるけど、当時はそれどころじゃなくてさー。

 

辛いものは辛くて、愛に飢えてること思い出しちゃって。

それでできたのがあなたたち、ルビーとアクアだよ。

同じように愛に飢えてる子がいてね、一緒に愛って何かを知る練習って思ってたら、

いつの間にか孕んでたんだから吃驚だよね。

 

流石にまずいってサイトー社長に相談してさ、宮崎に行ったんだよ。

 

ドーム公演とか延期になったのは申し訳ないけど。

おかげさまで、頭も冷えたし、愛を与えられるようになるかな?って期待もしてたんだ。

 

ゴローせんせーにもお世話になったけど、

あのときの時間は今後を考えるいいきっかけにもなったかなぁ。

合気道とかできなくて身体がどんどん鈍っていったのは辛かったけどね。

 

出産して、東京に戻ってからはミヤコさんにお世話になりっぱなしだったなー。

二人をもっと可愛がりたかったけど、合気道、アイドル、子育て全てに全力だと流石にへとへとだったから。

本当に感謝している。二人もミヤコさんのこと大好きだったもんね。

 

それから色々あったよね。

ベビーカーに乗ってアイドル公演来てくれた時は、本当に嬉しかった。

あのときの笑顔を知れたから、もっとアイドルとして飛躍できてたんだと思う。

 

流石にこの頃になったら、もう1度お手紙書いてたかな。

正論ばっかりじゃ受け取れないけど、あなたの言う通りだったと思う。

守るものができたから、お金を稼ぎたい。

知名度はどう使うの?こんなこと聞いてたかな。

 

流石に帰ってくるまで時間かかったんだけど、

細い字で、乗り越えられたようで一安心。

知名度を使い金を稼ぐなら、モノを売れ。だが信用は売るな。

 

たったこれだけだよ?もー!って思っちゃったのもしかないと思わない?

 

だいたい、アイドルをやって嘘ついてる私に信用を売るなだよ?

もう売りまくってるっての、って思っちゃったよね。

でも、だからこそ。商品とか紹介するモノでは嘘ついちゃいけないって思えたんだ。

 

必ず本物がいいってわけじゃなくてもさ。

私はこれを信じているってものを出す。売る。伝える。

それが大切なことなんだろうなって感じられたから。

 

このくらいからかな。私が広告モデルをやりはじめたの。

もー最初はひどかったよ?

何って?物がだよ。

 

アイドルが伝えるなら適当な物でも売れるだろうっていうのかな。

紹介されるものが酷すぎて、改めて人間不信になりそうだったよね。

 

そっからは、しばらくは商品使わせてもらっていいと思った物しか伝えませんってカットしまくったよね。

 

そしたら逆に、商品数減りすぎて吃驚したんだけどさ。

もー詐欺師多すぎない?って呆れもしたよ。

 

でも、信用は売るな。この言葉は……うん、商品に対しては頑張ろうって思えたよ。

もうアイドルで隠し子もいるのに何言ってんだろうって頭では思ってたけどね。

だからこそ、かもしれないけどさ。

 

アイドルの稼ぎだけじゃ心許なかったものだけど、

広告モデルも並行してやって、かつ自分が試したものしか紹介しないってスタンスが伝わってからは

アイドル以上に稼がせてもらってたよね。

だから、そろそろかなーって気持ちもしてたんだ。

 

 

 

アイドル、広告モデル、商品試用、なんて色々やってたら

あっというまに時間は立って、気づけばドームライブの日。

いやー、まさか本当に襲われるとはね?

 

合気道で鍛えてて本当に良かったって思ったよね。

なんて言うのかな、気配を感じとるーなんてかっこいいことは言えないけど。

違和感を覚えられたから、チェーンロックつけて開けられたし。

そのおかげでセーフだったんだけど。

 

うん、改めて。あのとき不用心に開けなくて良かったよー。

 

慌ててサイトー社長に応援呼んで、警察沙汰にはなったけどなんとかおさまってさ。

しばらく包丁は見たくないかなーって思って料理が雑になったのはごめんって。

でも買い食いばっかりも楽しかったでしょ?

 

……家計には痛かったけどね。

まあ、あのとき刺されて死んじゃったーとかじゃなくて、本当に良かったよ。

 

あのときに、もしかしたら死んでたかも知れないって思えて

ようやくあなたたちに伝えられたよね「愛してる」って。

 

うん、今じゃもう恥ずかしくもない本心、本物って思えるけど

あのときは怖かったんだよ。

私が伝えるのは嘘ばっかりだって思ってたから。

 

広告モデルとして、信用を積み重ねたのももしかしたらよかったのかもしれないけど。

私が本物を伝えられるって、小さな足がかりにはなってくれてたと思うし。

 

あれがあったから、私は心から愛してるって伝えるライブができたんだ。

なんか、伝説のライブとか言ってもらえるのは嬉しいけどね。

私にとっても全力のライブだったから。

 

そこで合わせて、解散宣言と、起業宣言。

 

知名度を使った次のステップとして起業は度肝抜かれてたみたいだけど。

今では形になってくれてて良かったなーって思うよ。

 

……。

でね。

 

また、お手紙を書いたんだ。

あなたのおかげで知名度を使って稼ぐこと。本物の愛を知れたって。

ありがとうっていうお手紙を。

 

……。そしたらさ、

帰ってきたのは、知らない人からの返事で。

 

先日亡くなったと教えてもらったの。

 

……。

辛かったなぁ。

 

たぶん、一番最初に不器用ながら、本当の愛を与えてくれた人ってあの人だったから。

私を一人の人としてみて、接してくれてた人だったからさ。

 

手紙見てボロボロ涙がこぼれてきて、

感謝と申し訳なさと悔しさと、ごちゃごちゃだった。

 

手紙で教えてくれてたんだけど、ドームライブの日にね。

チケット買ってくれてたんだって。

でも、入院してて見れなかったから遠隔中継のものだけ聞いてくれてたんだって。

 

もう2度も泣かすなって思ったよね。

でも、応援してくれてたんだなって。

相手を思いやるやり方って、一つじゃないんだなって、

身をもって教えてくれてたんだよ。

 

……。

 

うん、おじいちゃんにお世話になったってお話。

なーんて、暗い話はここまでにしよ?

 

今日はめでたい入学式なんだから!




続きません。読了ありがとうございました

3/24 誤字訂正 入園▶︎入学

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