君を武器にした日   作:なかりょた

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新たな仲間

教室は、静かだった。

 

人数が少ないせいもある。

 

それでも——

 

どこか、張りつめている。

 

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扉が開く。

 

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入ってきたのは二人。

 

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夜卜と、緋色。

 

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その瞬間。

 

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空気が変わる。

 

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言葉にはならない違和感。

 

肌に触れるような、歪み。

 

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乙骨が、わずかに息を呑む。

 

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「……なに、これ」

 

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まきは視線を逸らさない。

 

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「……変な感じ」

 

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狗巻が小さく呟く。

 

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「しゃけ……」

 

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パンダだけが、少し楽しそうに目を細めた。

 

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「おお……なんか来たな」

 

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前に立つのは——

 

五条悟。

 

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「はいはい、静かにね」

 

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軽い声。

 

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でも。

 

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誰も、気を抜かない。

 

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「じゃあ、自己紹介いこうか」

 

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順番に名前が呼ばれる。

 

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パンダ。

 

軽い。

 

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狗巻。

 

短い。

 

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乙骨。

 

少し硬い。

 

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まき。

 

ぶっきらぼう。

 

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そして——

 

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「壱岐」

 

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夜卜が前に出る。

 

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「壱岐夜卜です」

 

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それだけ。

 

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余計なことは言わない。

 

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その横。

 

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緋色が一歩出る。

 

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「雨宮緋色です」

 

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一瞬、間。

 

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「……よろしくお願いします」

 

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静かな声。

 

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なのに。

 

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空気が、さらに重くなる。

 

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乙骨が、一歩引く。

 

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「……近づくと、分かる」

 

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まきも、わずかに眉をひそめる。

 

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「歪んでる」

 

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その言葉は、正確だった。

 

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何かが混ざっている。

 

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揺れている。

 

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でも——

 

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崩れてはいない。

 

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「……あー、それね」

 

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五条が、軽く笑う。

 

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場の空気を、崩すみたいに。

 

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「ちょっと特殊なだけ」

 

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あっさりと言う。

 

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「心配しなくていいよ」

 

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乙骨は視線を外さない。

 

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「でも……普通じゃない」

 

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「うん、普通じゃないね」

 

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あっさり認める。

 

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「でも、制御できてる」

 

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軽い口調のまま。

 

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「少なくとも、君たちよりはね」

 

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少しだけ、空気が緩む。

 

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まきが小さく息を吐く。

 

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「……なるほどね」

 

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完全には納得していない。

 

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でも。

 

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引くほどでもない。

 

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その程度。

 

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パンダが一歩近づく。

 

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「なあ、お前らさ」

 

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興味を隠さない。

 

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「なんか繋がってるよな?」

 

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夜卜は答えない。

 

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代わりに——

 

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緋色が、ほんの少しだけ夜卜を見る。

 

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確認するみたいに。

 

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夜卜は、何も言わない。

 

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でも。

 

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視線だけで、返す。

 

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それだけで十分だった。

 

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「……事情があるだけです」

 

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緋色が静かに言う。

 

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それ以上は言わない。

 

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言えないのか。

 

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言わないのか。

 

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分からない。

 

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でも。

 

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それ以上、踏み込ませない何かがあった。

 

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狗巻が、小さく呟く。

 

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「こんぶ……」

 

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乙骨はまだ見ている。

 

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けれど。

 

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さっきまでの警戒とは、少し違う。

 

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「……でも」

 

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小さく、呟く。

 

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「嫌な感じじゃ、ない」

 

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その一言。

 

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完全ではない。

 

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でも。

 

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拒絶でもない。

 

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五条が、くすりと笑う。

 

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「でしょ?」

 

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軽く言う。

 

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「面白いよ、この二人」

 

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その言葉だけが。

 

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少しだけ、引っかかった。

 

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教室の空気はまだ硬い。

 

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距離もある。

 

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でも。

 

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完全に拒まれてはいない。

 

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ただ。

 

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分からないだけだ。

 

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それが、一番近い。

 

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夜卜は何も言わない。

 

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緋色も、同じだった。

 

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ただ。

 

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隣にいる。

 

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それだけが、はっきりしていた。

 

 




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