君を武器にした日   作:なかりょた

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思い付きを供養しようと思って新しい小説を投稿しました。「領域展開ですの!!」というタイトルです。主人公は白井黒子ちゃんです。よかったらぜひ。


模擬線

呪術高専の校庭。

 

広い。

 

何もない。

 

ただ——

 

視線だけがある。

 

---

 

夜卜は立っている。

 

その少し後ろに、緋色。

 

---

 

距離は近い。

 

でも。

 

触れてはいない。

 

---

 

「じゃ、軽くやろうか」

 

---

 

前に立つのは、

五条悟。

 

---

 

軽い声。

 

---

 

「お互い様子見でいいよ」

 

---

 

その一言で。

 

空気が変わる。

 

---

 

対面には、パンダ。

 

少し離れて、まきと乙骨。

 

---

 

狗巻が小さく呟く。

 

---

 

「しゃけ……」

 

---

 

開始の合図はない。

 

---

 

それでも。

 

---

 

動いた。

 

---

 

パンダが踏み込む。

 

速い。

 

重い。

 

---

 

夜卜は避ける。

 

最小限で。

 

---

 

「お、いい動き」

 

---

 

軽く言う。

 

---

 

次の一撃。

 

---

 

受ける。

 

---

 

腕で。

 

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鈍い音。

 

---

 

押される。

 

---

 

(重い——)

 

---

 

一瞬。

 

---

 

選択がよぎる。

 

---

 

“使うか”

 

---

 

視線が、わずかに動く。

 

---

 

緋色を見る。

 

---

 

緋色は——

 

---

 

止めない。

 

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ただ。

 

---

 

見ている。

 

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静かに。

 

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「……使わなくていい」

 

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小さな声。

 

---

 

でも。

 

---

 

夜卜は動かない。

 

---

 

次の一撃が来る。

 

---

 

避けきれない。

 

---

 

踏み込まれる。

 

---

 

その瞬間。

 

---

 

「——壱岐」

 

---

 

声が落ちる。

 

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五条。

 

---

 

時間が、一瞬だけ引き延ばされる。

 

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「それ」

 

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わずかに顎で示す。

 

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緋色の方。

 

---

 

「使うなよ」

 

---

 

軽い声。

 

---

 

でも。

 

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「壊れるから」

 

---

 

その一言で。

 

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空気が、冷える。

 

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夜卜は、何も言わない。

 

---

 

ただ。

 

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一歩、下がる。

 

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受け流す。

 

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避ける。

 

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パンダが笑う。

 

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「へぇ、やらねぇのか」

 

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少し首を傾げる。

 

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「よくわかんねぇけどさ」

 

---

 

「なんかあるんだろ?」

 

---

 

興味。

 

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でも。

 

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核心には届いていない。

 

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夜卜は答えない。

 

---

 

代わりに。

 

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動く。

 

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踏み込み。

 

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最短。

 

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打つ。

 

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軽い。

 

---

 

でも、正確。

 

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「お、いいね」

 

---

 

パンダが受ける。

 

---

 

その瞬間。

 

---

 

わずかに、揺れる。

 

---

 

夜卜の中で。

 

---

 

境界が。

 

---

 

混ざる。

 

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(……まずい)

 

---

 

一瞬の違和感。

 

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視界が、ブレる。

 

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呼吸が、合わない。

 

---

 

そのとき。

 

---

 

手が、触れる。

 

---

 

ほんの一瞬。

 

---

 

緋色。

 

---

 

「……大丈夫?」

 

---

 

小さな声。

 

---

 

それだけで。

 

---

 

整う。

 

---

 

呼吸が。

 

---

 

視界が。

 

---

 

夜卜は、軽く息を吐く。

 

---

 

「……大丈夫だ」

 

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誰に言ったのか。

 

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分からない。

 

---

 

でも。

 

---

 

緋色は何も言わない。

 

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ただ。

 

---

 

少しだけ、距離を戻す。

 

---

 

パンダが目を細める。

 

---

 

「今の、なんだ?」

 

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乙骨も見ている。

 

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まきも。

 

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誰も、分からない。

 

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でも。

 

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一つだけ分かる。

 

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「……繋がってる」

 

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乙骨が、小さく呟く。

 

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言葉にするには曖昧なもの。

 

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それでも。

 

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確かにあった。

 

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五条が、くすりと笑う。

 

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「でしょ?」

 

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軽い声。

 

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でも。

 

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目は、笑っていない。

 

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「面白いよ、この二人」

 

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その言葉だけが。

 

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少しだけ、重かった。

 

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夜卜は何も言わない。

 

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緋色も同じ。

 

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ただ。

 

---

 

また、隣にいる。

 

---

 

それだけで——

 

---

 

崩れなかった。

 

---

 

---

 

さっきよりも、静かだった。

 

---

 

視線が、集まっている。

 

---

 

理由は一つ。

 

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今、立っているのが——

 

緋色だからだ。

 

---

 

夜卜はいない。

 

少し離れた場所で、見ている。

 

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距離がある。

 

---

 

でも。

 

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完全に切れてはいない。

 

---

 

「じゃあ次」

 

---

 

前に立つのは、

五条悟。

 

---

 

「優太」

 

---

 

呼ばれたのは、

乙骨憂太。

 

---

 

「……はい」

 

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前に出る。

 

---

 

視線は、外さない。

 

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「……一人で、やるんですか」

 

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五条は軽く頷く。

 

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「うん、一応ね」

 

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その言い方だけが、少し引っかかる。

 

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「……始め」

 

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動いたのは乙骨。

 

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速い。

 

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振るう。

 

---

 

止まる。

 

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見えない“線”。

 

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「——一線」

 

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空間が区切られる。

 

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越える。

 

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ズレる。

 

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「……っ!」

 

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遅れる。

 

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「——縛布」

 

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絡む。

 

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止まる。

 

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引きちぎる。

 

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それでも。

 

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遅れる。

 

---

 

面。

 

---

 

狼。

 

---

 

噛みつく。

 

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距離が開く。

 

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緋色は動かない。

 

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ただ。

 

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整えている。

 

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戦場を。

 

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乙骨が息を整える。

 

---

 

「……やりづらい」

 

---

 

小さく。

 

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「次で、決める、」

 

---

 

両者が動き出す。

 

---

 

その瞬間。

 

---

 

ほんの一瞬。

 

---

 

緋色の意識が、揺れる。

 

---

 

視線が——

 

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探す。

 

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無意識に。

 

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そして。

 

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口が、動く。

 

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「——貸して」

 

---

 

言いかけて。

 

---

 

止まる。

 

---

 

「……あ」

 

---

 

気づく。

 

---

 

ここには、いない。

 

---

 

今は——

 

---

 

一緒に戦っていない。

 

---

 

ほんの一瞬の空白。

 

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それだけで。

 

---

 

呼吸が、わずかにズレる。

 

---

 

乙骨は、それを見逃さない。

 

---

 

踏み込む。

 

---

 

速い。

 

---

 

強い。

 

呪力任せの身体強化。

 

---

 

境界を、押し越える。

 

---

 

歪みを、無理やり。

 

---

 

それでも——

 

---

 

止まる。

 

---

 

ほんの一瞬。

 

---

 

その“遅れ”

 

---

 

緋色は、取り戻す。

 

---

 

視線が戻る。

 

---

 

揺れが、消える。

 

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手が上がる。

 

---

 

「かしこみかしこみ申す、」

 

---

 

空気が変わる。

 

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「咎持つ者を囲い断ち、」

 

---

 

閉じる。

 

---

 

円。

 

---

 

「誅の理をここに示せ——」

 

---

 

完成——

 

---

 

直前。

 

極の番

 

誅伐の——

 

---

 

「はい、そこまで」

 

---

 

止まる。

 

---

 

すべて。

 

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五条悟が、立っている。

 

---

 

「それは、今はダメ」

 

---

 

軽い声。

 

---

 

でも、完全に遮断する。

 

---

 

緋色は、ゆっくりと手を下ろす。

 

---

 

乙骨が息を吐く。

 

---

 

「……今の、何ですか」

 

---

 

「……危ない」

 

---

 

正しい理解。

 

---

 

夜卜は、何も言わない。

 

---

 

ただ。

 

---

 

見ている。

 

---

 

緋色を。

 

---

 

緋色は、戻る。

 

---

 

何もなかったように。

 

---

 

でも。

 

---

 

ほんの少しだけ。

 

---

 

さっきより、近い。

 

---

 

五条が、軽く言う。

 

---

 

「分の悪い賭けはおすすめしないな。」

 

---

 

「やめときな」

 

---

 

二人は、何も言わない。

 

---

 

ただ。

 

---

 

隣にいる。

 

---

 

それだけが、変わらない。

 

 




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