君を武器にした日   作:なかりょた

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アンケートを募集しといてあれなんですけど、書き方を変えるのは呪術廻戦0編が終わってからにします。


浸食

雨上がり。

 

地面が、濡れている。

 

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「ここだね」

 

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五条悟の声。

 

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古びた施設。

 

人の気配はない。

 

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「中に一体」

 

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軽い口調。

 

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「まぁ、死なない程度に頑張って」

 

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そのまま、消える。

 

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残されたのは——

 

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夜卜。

 

緋色。

 

そして、

 

乙骨憂太。

 

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「……行こう」

 

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中に入る。

 

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暗い。

 

湿っている。

 

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ぬるい音。

 

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奥。

 

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“それ”はいた。

 

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形が、曖昧。

 

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人のようで。

 

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崩れている。

 

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泥。

 

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「……来る」

 

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緋色が一歩前に出る。

 

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動く。

 

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泥が、流れ込む。

 

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速い。

 

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「——一線」

 

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空間が区切られる。

 

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ぶつかる。

 

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止まる。

 

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でも——

 

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滲む。

 

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越えてくる。

 

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「……っ」

 

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「——縛布」

 

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布が伸びる。

 

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絡め取る。

 

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縛る。

 

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止まる。

 

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一瞬。

 

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その間に。

 

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夜卜が動く。

 

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血。

 

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迷わない。

 

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手のひらを裂く。

 

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流れる。

 

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掴む。

 

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形にする。

 

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刃。

 

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振る。

 

---

 

切る。

 

---

 

深く。

 

---

 

泥が崩れる。

 

---

 

でも——

 

---

 

流れる。

 

---

 

戻る。

 

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終わらない。

 

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乙骨が追撃。

 

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叩く。

 

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弾ける。

 

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それでも。

 

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まとまる。

 

---

 

泥が伸びる。

 

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緋色の足を掴む。

 

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沈む。

 

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「……っ」

 

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引き剥がす。

 

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でも。

 

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重い。

 

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「狼」

 

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仮面が現れる。

 

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喰らいつく。

 

---

 

押し返す。

 

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距離が開く。

 

---

 

でも——

 

---

 

息が乱れる。

 

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夜卜がもう一度作る。

 

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血。

 

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量を増やす。

 

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流れる。

 

---

 

刃。

 

---

 

強い。

 

---

 

斬る。

 

---

 

削る。

 

---

 

でも——

 

---

 

ひび。

 

---

 

崩れる。

 

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消える。

 

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呼吸が浅い。

 

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血が、足りない。

 

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乙骨が押される。

 

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泥が覆う。

 

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逃げきれない。

 

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そのとき——

 

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「……使って」

 

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緋色。

 

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静か。

 

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でも、はっきり。

 

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夜卜は、止まる。

 

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迷う。

 

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それでも。

 

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まだ、選ばない。

 

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緋色が一歩出る。

 

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「かしこみかしこみ申す、」

 

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空気が変わる。

 

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乙骨が気づく。

 

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「……それ、模擬戦の——」

 

---

 

「咎持つ者を囲い断ち、」

 

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円が浮かぶ。

 

---

 

でも——

 

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泥が流れ込む。

 

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侵す。

 

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境界が揺れる。

 

---

 

「誅の理をここに示せ——」

 

---

 

崩れる。

 

---

 

弾ける。

 

---

 

「……っ」

 

---

 

緋色が膝をつく。

 

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成立しない。

 

---

 

今は、無理。

 

---

 

夜卜は理解する。

 

---

 

血でも足りない。

 

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あれも使えない。

 

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詰み。

 

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乙骨が飲まれる。

 

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腕が沈む。

 

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「……夜卜!」

 

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呼ばれる。

 

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その瞬間——

 

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夜卜は、決める。

 

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視線を上げる。

 

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緋色を見る。

 

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武器じゃない。

 

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そこにいる。

 

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「……来い」

 

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間。

 

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「緋器」

 

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応じる。

 

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混ざる。

 

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歪む。

 

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でも——

 

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揃う。

 

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形になる。

 

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刀。

 

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滑らか。

 

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夜卜が踏み込む。

 

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速い。

 

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斬る。

 

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深く。

 

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泥が裂ける。

 

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再生が遅れる。

 

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核が見える。

 

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そこへ。

 

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夜卜は構える。

 

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息を整える。

 

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言葉が、出る。

 

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自然に。

 

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「豊葦原中津国」

 

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空気が震える。

 

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「荒びたらせむ禍のものよ。」

 

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刃が、揺らぐ。

 

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「我、夜ト神きたり降り、」

 

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踏み込む。

 

---

 

「緋器を以って砕き伏せる。」

 

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距離を詰める。

 

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「草々の障り穢れを打ち払わん」

 

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振る。

 

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「——斬」

 

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一閃。

 

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断つ。

 

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静寂。

 

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泥が崩れる。

 

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流れ。

 

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止まる。

 

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消える。

 

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残るのは——

 

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静けさ。

 

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夜卜は立っている。

 

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呼吸が荒い。

 

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でも、倒れない。

 

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緋色が隣にいる。

 

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少し近い。

 

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でも。

 

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離れている。

 

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乙骨が、ゆっくり立ち上がる。

 

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しばらく見て。

 

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小さく言う。

 

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「……やっぱり」

 

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間。

 

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「一人じゃ、ないですよね」

 

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夜卜は答えない。

 

---

 

緋色も、何も言わない。

 

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ただ。

 

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そこにいる。

 

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それだけで——

 

---

 

まだ、保たれている。

 

夕方。

 

高専の廊下。

 

---

 

静か。

 

---

 

夜卜は歩いている。

 

---

 

隣に、緋色。

 

---

 

何も言わない。

 

---

 

でも。

 

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前とは違う。

 

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“近い”。

 

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意識しなくても分かる。

 

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呼吸。

 

視線。

 

間。

 

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全部が揃う。

 

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夜卜が足を止める。

 

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同時に、緋色も止まる。

 

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ズレがない。

 

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「……気持ち悪いな」

 

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夜卜がつぶやく。

 

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緋色は目を伏せる。

 

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「……お揃いは嫌?」

 

瞳が揺れている。

 

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「そういうことじゃない」

 

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考え込むような間。

 

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「便利ではある」

 

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本音。

 

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緋色は少しだけ笑う。

 

---

 

でも——

 

---

 

その笑いは、いつもより歪だった。

 

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---

 

教室の前。

 

扉を開ける。

 

---

 

中に入る。

 

---

 

禪院真希

パンダ

狗巻棘

乙骨憂太

 

---

 

視線が集まる。

 

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まだ、警戒。

 

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真希が腕を組む。

 

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「……で」

 

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「ちゃんと制御できてんのか」

 

「相変わらず気味悪い呪力しやがって」

---

 

夜卜は即答する。

 

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「問題ない」

 

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乙骨がわずかに目を細める。

 

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“嘘”と分かる。

 

---

 

狗巻。

 

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「しゃけ」

 

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パンダが肩をすくめる。

 

---

 

「まぁ前よりは落ち着いてるな」

 

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夜卜は座る。

 

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緋色も隣。

 

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距離が近い。

 

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誰も言わない。

 

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でも、全員気づいている。

 

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---

 

夜。

 

寮。

 

---

 

静か。

 

---

 

夜卜は目を閉じる。

 

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浮かぶ。

 

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白。

 

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鈴。

 

---

 

祈り。

 

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知らない記憶。

 

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目を開ける。

 

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「……またか」

 

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息が乱れる。

 

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「……ごめん」

 

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緋色。

 

---

 

でも。

 

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声が、少し遠い。

 

---

 

「……お前のか」

 

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「……うん」

 

---

 

間。

 

---

 

「混ざってる」

 

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夜卜は黙る。

 

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理解している。

 

---

 

これは——

 

---

 

止まらない。

 

---

 




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