崩れる。
手を伸ばす。
届く。
でも、支えきれない。
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「……おい」
呼ぶ。
返事はない。
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「起きろよ」
揺らす。
反応はない。
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「……緋色」
静かだった。
さっきまでの空気が、嘘みたいに。
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何も、動かない。
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そのとき。
何かが、流れ込む。
呪力。
制御していない。
勝手に。
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「……やめろ」
分かっている。
これは違う。
でも、止まらない。
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夜卜の術式。
“器成呪術”
素材をもとに武器を作る力
夜卜に許された最後の方法
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触れている。
緋色に。
その“中身”に。
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「……来るな」
呟く。
でも。
応えるように。
呪力が収束する。
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光が、形を持つ。
崩れて、集まって。
変わっていく。
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「……やめろ」
もう一度。
でも。
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止まらない。
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気づいたときには。
手の中に、あった。
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刀。
赤い刃。
緋色の血みたいな。
静かな重さ。
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「……緋色?」
握る。
冷たいはずなのに。
感じる温かさが懐かしい
そして、妙に馴染む。
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そのとき。
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「——夜卜」
声がした。
聞き間違えるはずのない、あの声が
いつも優しく語りかける、あの声が
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息が止まる。
ゆっくり振り返る。
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そこに。
緋色がいた。
何事もなかったみたいに。
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「……呼んだ?」
いつもと同じ声。
同じ温度。
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「……お前」
言葉が出ない。
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「うん」
頷く。
それですべてが伝わった。
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「それ……」
刀を見る。
緋色を見る。
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「分かってる」
短く言う。
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「私、死んだの」
淡々と。
事実だけを。
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「で」
少しだけ間。
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「あなたが、私を使った」
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沈黙。
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「……ごめん」
夜卜が言う。
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「謝ることじゃない」
すぐに緋色が返す。
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「いや——」
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「あなたの術式でしょ」
遮る。
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「……仕方ない」
「それに」
「私は、…私は、夜卜が私を選んでくれて、…嬉しい」
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その言葉は。
軽くて。
重かった。
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「……戻るのか」
夜卜が聞く。
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「無理」
即答。
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「でも」
少しだけ、視線を落として。
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「消えない」
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「ここにいる」
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夜卜は、刀を見る。
緋色を見る。
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同じ存在。
違う形。
知ってる形と知らない形。
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「……一緒にいんじゃねって言ったよね」
ぽつりと呟く。
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緋色が少しだけ首を傾げる。
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「そうなっちゃったね」
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静かに、笑う。
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緋色は少しだけ間を置いて。
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「……よろしく、夜卜」
と困ったように笑う。
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その距離は。
近くて。
遠かった。
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最終回じゃないですよ。何ならこっから始まります。感想、評価どしどし募集中です。皆様わかってると思いますけど、アンケートは夜蛾=さしす世代、五条=五条が教師になってから、ですよ。一応説明しておきました。
高専からスカウトに来るのはだれ?
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夜蛾
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五条
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まだこない(修行期間突入)