筆がのりました。
空気が、重い。
息を吸うだけで、喉が焼ける。
連戦で呪力も体力もない。
だが、
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呪霊の気配が迫ってくる。
速い。
瞬間、横の壁が突き破られる。
呪霊。
それが姿を現した。
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形は、人に近い。
頭からは白髪の髪が伸びている。
だが歪んでいる。
輪郭が、定まらない。
呪力が乱される。
緋色が術式を使う。
「——縛布」
だがあの呪霊には効かない。
「っ!....術式が制御できない。」
呪霊が笑う。
狂ったように笑う。
そして、
「綺麗な術式だなぁ」
「ククッ、精密な呪力操作ができなきゃ使えないんじゃないか?」
こちらを嘲笑うように言う。
「そんなもの、壊してやる」
呪霊の目はひどく濁っていた。
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その手には、刃。
いや——
“刃だったもの”。
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ぐちゃぐちゃに歪んだ、何か。
まるで、壊れた武器。
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「……それ」
夜卜が呟く。
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呪霊が、わずかに揺れる。
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笑った。
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「同じだ」
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声は濁っている。
でも、はっきりと届く。
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「お前も」
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「それを使っている」
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視線が、夜卜の手に落ちる。
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刀。
緋色。
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「道具だ」
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「同じだ」
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その言葉。
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何も言い返せない。
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「……違う」
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小さく、呟く。
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「何が」
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返される。
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言葉が、出ない。
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事実だった。
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使っている。
振るっている。
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武器として。
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「……夜卜」
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緋色の声。
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「いいよ」
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静かに言う。
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「使って」
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「私は、それでいい」
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「違う」
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即答。
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でも。
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その理由が、言えない。
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呪霊が俺を見て、笑う。
「ククッ、ごっこ遊びもここまで来ると滑稽だな。」
呪霊が、動く。
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速い。
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来る。
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反応が、遅れる。
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振るえない。
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「……っ」
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間に合わない。
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衝撃。
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吹き飛ばされる。
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地面に叩きつけられる。
息が、止まる。
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「使え」
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呪霊の声。
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「道具だ」
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「壊れるまで」
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「使え」
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視界が揺れる。
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立ち上がれない。
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「……違う」
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もう一度。
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でも。
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弱い。
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何も変わらない。
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「夜卜」
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緋色の声。
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少しだけ、近い。
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「私は、ここにいる」
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「使われてるわけじゃない」
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「一緒に戦ってる」
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その言葉。
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さっきより、少しだけ届く。
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「……一緒」
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繰り返す。
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そうだ。
心のどこかで緋色を道具だと思ってたんじゃないのか?
だから使うのを躊躇ったんじゃないのか?
でも、気づいた。
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あの日。
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「一緒にいんじゃねって」
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言った。
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緋色も、頷いた。
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それは——
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嘘じゃない。
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「……道具じゃない」
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ゆっくり、立ち上がる。
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手の中の刀を、見る。
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「お前は」
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「緋色だ」
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静かに言う。
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その瞬間。
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何かが、噛み合う。
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「……行くぞ」
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呼吸を整える。
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構える。
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そして。
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言葉が、出る。
祝詞を、唱える。
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自然に。
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還る場もなく
逝くこともままならない
おまえに
留まる場を与える
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声が、通る。
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我が名は夜ト
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諱を握りて
ここに留めん
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仮名を以て
我が僕とす
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名は訓いて
器は音に
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我が命にて
神器となさん
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名は緋
器は緋
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来い——
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「緋器!」
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世界が、変わる。
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刀が、応える。
緋色が、答える。
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今までとは違う。
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軽い。
重い。
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自由だ。
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水のように。
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思考より先に、動く。
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「……これが」
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理解する。
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受け入れた。
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使うんじゃない。
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共に、戦う。
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踏み込む。
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速い。
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さっきとは別物。
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呪霊が動く。
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遅い。
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斬る。
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躱す。
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流れる。
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刃が、形を変える。
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自在に。
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呪霊の身体を、削る。
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「……忌々しい」
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呪霊が呟く。
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後退する。
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初めて。
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押している。
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「同じじゃない」
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夜卜が言う。
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「緋色は」
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「道具じゃない」
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「俺のだ」
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「俺の」
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一瞬、言葉が詰まる。
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「俺の、相棒だ」
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呪霊が、唸る。
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呪力が、集まる。
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刀へ。
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歪な刃が、膨れ上がる。
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「——壊す」
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来る。
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夜卜も、構える。
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自然と、分かる。
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やり方は、知らない。
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でも。
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身体が、知っている。
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残りの呪力をすべて注ぎ込む。
祝詞はいらない。
速度を優先する。
刀の峰を指でなぞるように呪力を纏わせる。
踏み込む。
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振るう。
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ただ、それだけ。
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「——斬」
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一閃。
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斬撃が、飛ぶ。
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ぶつかる。
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呪霊の斬撃と。
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拮抗。
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押し合う。
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だが。
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少しずつ。
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押す。
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押し切る。
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断つ。
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呪霊の身体が、裂ける。
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崩れる。
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消える。
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最後に。
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「そんな……」
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声が、漏れる。
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「それじゃまるで……」
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歪んだ顔が、揺れる。
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「本物の……」
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言葉は、最後まで出なかった。
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そして、夜卜も倒れるように気絶する。
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静寂。
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体の主導権は緋色に移る。
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「夜卜、呼んでくれた。」
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緋色はそう呟く
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「夜卜の体を出口まで運ばなきゃ」
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「体、借りるね。」
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返事はない。
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歩き出す。
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「相棒、か」
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「一歩前進だね」
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声に嬉しさがにじみ出ている。
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「外に出たら、膝枕でもしてあげようか。」
そこにいたのは、呪術師でも道具でもない、一人の少年に恋をした少女だった。
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今、呪術廻戦とノラガミ両方の漫画とアニメ見直してます。やっぱり面白いですね。
わかりにくいかもしれませんけど、今回の呪霊のモデルは、らぼう君です。
高専からスカウトに来るのはだれ?
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夜蛾
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五条
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まだこない(修行期間突入)