静かな部屋だった。
広くもない。
何もない。
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ただ。
“見られている”感じだけがあった。
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夜卜は椅子に座っている。
向かいには——
五条悟。
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緋色は、その少し後ろ。
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「で」
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五条が軽く手を組む。
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「どうするか、決まった?」
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「……っ!俺は!」
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五条は夜卜の言葉を遮る。
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「ま、いいや」
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「ちょっと見るね」
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その瞬間。
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空気が変わる。
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何かに“触れられた”感覚。
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内側を、覗かれる。
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「……へぇ」
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小さく、息を吐く。
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「やっぱり混ざってるね」
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静かな声。
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「でも——思ってたのと違う」
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夜卜の眉が、わずかに動く。
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五条の視線は、夜卜ではない。
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その後ろ。
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緋色に向いている。
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「そっか」
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納得したように頷く。
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「術式で無理やり成立させてるんだ」
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一歩、踏み出す。
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「境界を固定して」
「ルールを押し付けて」
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「本来ありえない状態を、“形だけ”保ってる」
「界律巫術、か。なんの因果か、君も境界に触れられる。」
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言葉が、静かに落ちる。
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「でも——」
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少しだけ、間。
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「それだけじゅない」
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指先が、緋色と夜卜を示す。
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空気が止まる。
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「……何?」
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わずかに目を見開く。
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「2人で」
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五条は頷く。
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「術式だけじゃ足りない分を」
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「無理やり埋めてる。」
「それは、愛かもしれない、信頼かもしれない。」
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重い言葉。
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夜卜が振り返る。
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緋色を見る。
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「……私は」
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声が震える。
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「私はただ——」
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言葉が止まる。
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五条は遮らない。
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「……できるから、やってるだけ」
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静かな声。
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それだけ。
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五条は小さく息を吐く。
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「だろうね」
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軽く肩をすくめる。
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「でもさ」
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視線が、今度は夜卜へ向く。
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「それだけじゃ足りない」
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一歩、近づく。
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「こっちもやってる」
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夜卜を指す。
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「……は?」
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五条は少しだけ笑う。
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「気づいてないの?」
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「君」
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ほんの少しだけ、間。
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「選び続けてるよ」
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沈黙。
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「毎回ちゃんと」
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「緋色を“人”として扱ってる」
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言葉が、ゆっくり落ちる。
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夜卜の中で、何かが引っかかる。
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戦闘。
違和感。
揺れる感覚。
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それでも。
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手放さなかった理由。
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「……最初から、そうしてる」
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無意識に、口に出る。
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五条は小さく頷く。
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「うん」
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「それやめた瞬間、終わりだね」
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静かな断言。
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空気が重くなる。
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「支え合ってる、か」
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五条が呟く。
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ほんの一瞬、間。
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「——いや」
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視線が鋭くなる。
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「縛り合ってる、の方が正しいかな」
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沈黙。
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「どっちかが崩れたら終わり」
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「普通は成立すらしない」
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「でも成立してる」
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わずかに、口角を上げる。
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「面白いね」
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冷たい一言。
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夜卜は、何も言えない。
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ただ、一つだけ分かる。
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これは偶然じゃない。
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「……そういう状態、かよ」
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小さく呟く。
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五条は軽く頷く。
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「そういう状態」
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そして。
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「で?」
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少しだけ首を傾ける。
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「どうする?」
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静かな問い。
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「やめる?」
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一瞬。
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緋色が、わずかに息を止める。
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夜卜は——
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迷わない。
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「……やめない」
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短く答える。
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その言葉を聞いて。
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緋色の肩から、わずかに力が抜けた。
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五条は少しだけ笑う。
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「いいね」
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軽く言う。
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「じゃあ——」
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「面倒見るよ」
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それが。
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すべての始まりだった。
書き方変えてほしいですか?
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はい
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いいえ
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どちらでもいい