君を武器にした日   作:なかりょた

9 / 13
感想、評価お待ちしております


選び続けたその先に

静かな部屋だった。

 

広くもない。

 

何もない。

 

---

 

ただ。

 

“見られている”感じだけがあった。

 

---

 

夜卜は椅子に座っている。

 

向かいには——

 

五条悟。

 

---

 

緋色は、その少し後ろ。

 

---

 

「で」

 

---

 

五条が軽く手を組む。

 

---

 

「どうするか、決まった?」

 

---

 

「……っ!俺は!」

 

---

 

五条は夜卜の言葉を遮る。

 

---

 

「ま、いいや」

 

---

 

「ちょっと見るね」

 

---

 

その瞬間。

 

---

 

空気が変わる。

 

---

 

何かに“触れられた”感覚。

 

---

 

内側を、覗かれる。

 

---

 

「……へぇ」

 

---

 

小さく、息を吐く。

 

---

 

「やっぱり混ざってるね」

 

---

 

静かな声。

 

---

 

「でも——思ってたのと違う」

 

---

 

夜卜の眉が、わずかに動く。

 

---

 

五条の視線は、夜卜ではない。

 

---

 

その後ろ。

 

---

 

緋色に向いている。

 

---

 

「そっか」

 

---

 

納得したように頷く。

 

---

 

「術式で無理やり成立させてるんだ」

 

---

 

一歩、踏み出す。

 

---

 

「境界を固定して」

 

「ルールを押し付けて」

 

---

 

「本来ありえない状態を、“形だけ”保ってる」

 

「界律巫術、か。なんの因果か、君も境界に触れられる。」

---

 

言葉が、静かに落ちる。

 

---

 

「でも——」

 

---

 

少しだけ、間。

 

---

 

「それだけじゅない」

 

---

 

指先が、緋色と夜卜を示す。

 

---

 

空気が止まる。

 

---

 

「……何?」

 

---

 

わずかに目を見開く。

 

---

 

「2人で」

 

---

 

五条は頷く。

 

---

 

「術式だけじゃ足りない分を」

 

---

 

「無理やり埋めてる。」

 

「それは、愛かもしれない、信頼かもしれない。」

 

---

 

重い言葉。

 

---

 

夜卜が振り返る。

 

---

 

緋色を見る。

 

---

 

「……私は」

 

---

 

声が震える。

 

---

 

「私はただ——」

 

---

 

言葉が止まる。

 

---

 

五条は遮らない。

 

---

 

「……できるから、やってるだけ」

 

---

 

静かな声。

 

---

 

それだけ。

 

---

 

五条は小さく息を吐く。

 

---

 

「だろうね」

 

---

 

軽く肩をすくめる。

 

---

 

「でもさ」

 

---

 

視線が、今度は夜卜へ向く。

 

---

 

「それだけじゃ足りない」

 

---

 

一歩、近づく。

 

---

 

「こっちもやってる」

 

---

 

夜卜を指す。

 

---

 

「……は?」

 

---

 

五条は少しだけ笑う。

 

---

 

「気づいてないの?」

 

---

 

「君」

 

---

 

ほんの少しだけ、間。

 

---

 

「選び続けてるよ」

 

---

 

沈黙。

 

---

 

「毎回ちゃんと」

 

---

 

「緋色を“人”として扱ってる」

 

---

 

言葉が、ゆっくり落ちる。

 

---

 

夜卜の中で、何かが引っかかる。

 

---

 

戦闘。

 

違和感。

 

揺れる感覚。

 

---

 

それでも。

 

---

 

手放さなかった理由。

 

---

 

「……最初から、そうしてる」

 

---

 

無意識に、口に出る。

 

---

 

五条は小さく頷く。

 

---

 

「うん」

 

---

 

「それやめた瞬間、終わりだね」

 

---

 

静かな断言。

 

---

 

空気が重くなる。

 

---

 

「支え合ってる、か」

 

---

 

五条が呟く。

 

---

 

ほんの一瞬、間。

 

---

 

「——いや」

 

---

 

視線が鋭くなる。

 

---

 

「縛り合ってる、の方が正しいかな」

 

---

 

沈黙。

 

---

 

「どっちかが崩れたら終わり」

 

---

 

「普通は成立すらしない」

 

---

 

「でも成立してる」

 

---

 

わずかに、口角を上げる。

 

---

 

「面白いね」

 

---

 

冷たい一言。

 

---

 

夜卜は、何も言えない。

 

---

 

ただ、一つだけ分かる。

 

---

 

これは偶然じゃない。

 

---

 

「……そういう状態、かよ」

 

---

 

小さく呟く。

 

---

 

五条は軽く頷く。

 

---

 

「そういう状態」

 

---

 

そして。

 

---

 

「で?」

 

---

 

少しだけ首を傾ける。

 

---

 

「どうする?」

 

---

 

静かな問い。

 

---

 

「やめる?」

 

---

 

一瞬。

 

---

 

緋色が、わずかに息を止める。

 

---

 

夜卜は——

 

---

 

迷わない。

 

---

 

「……やめない」

 

---

 

短く答える。

 

---

 

その言葉を聞いて。

 

---

 

緋色の肩から、わずかに力が抜けた。

 

---

 

五条は少しだけ笑う。

 

---

 

「いいね」

 

---

 

軽く言う。

 

---

 

「じゃあ——」

 

---

 

「面倒見るよ」

 

---

 

それが。

 

---

 

すべての始まりだった。

 

書き方変えてほしいですか?

  • はい
  • いいえ
  • どちらでもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。