天座の書架と白紙の勇者   作:maki@

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青の真理/世界の漂白

「魔王が討たれましたか……」

 

 学園の一室――礼拝堂。つぶやきが虚空に吸い込まれていく。それを聞いている者はいない。

 

「ソフィアさんの解析魔法。あれは予想以上に影響力がありますね。どうしたものでしょう……」

 

 マリアは、教え子と魔王の決戦を思い返していた。その表情は冷たく、常のような微笑みはどこにもない。冷酷な『観測者』の目をしていた。

 

「多少のアクシデントは望むところでしたが――世界そのものに影響が出るほど、となると対処の必要も――っ」

 

 ビクリ、と体を震わせる。わずかに硬直した体。しかしすぐに弛緩していく。

 

「必要ないわ。楽しかったもの。きっと、もっと面白くなるわ」

 

 心底楽しいというような声色。再び硬直する体。

 

「――承知しました。では、そのように」

 

 先ほどの声が嘘のように冷たい声。

 

「すべてが漂白されるまで――残りわずか。エピローグをお楽しみください。女神ミュトス様……」

 

 世界の誰も知らない独白。それを吐き出したマリアはいつもの微笑みを顔に浮かべる。

 

「さて、皆さんをお迎えに上がりましょう」

 

 そういって礼拝堂を後にする。最奥に安置された女神像が鈍く輝いていた。

 

 

 

 帰還したルクスたちを待っていたのはささやかな祝勝会だった。

 

 マリア曰く、世界を救ったのだからこれくらいは当然、と用意されたそれは、確かにささやかではあるものの四人では食べきれないほどの豪勢な料理であった。

 

「――本当に、世界を救ったのね……」

 

 アイリスがしみじみと言う。日常に戻り、ようやく成し遂げた実感がわいてきていた。

 

「ええ、女神様のご加護のおかげですね!もちろん、皆さんの頑張りも、ですが!」

 

 クロエが嬉しそうにはしゃぐ。世界の救済、彼女の芯にある使命を果たした達成感はひとしおだった。

 

 ルクスもまた、二人の言葉に頷きながら、ようやく手に入れた平和を噛み締めていた。だが、隣に座るソフィアの様子だけがおかしい。

 

「何よソフィア、さっきから黙ったままだけど。体調でも悪いの?」

 

「それはいけません!せっかく平和になったんですから、それを謳歌しないと!」

 

「――いや、少し考え事をしていたんだ。少し気になることがあってね」

 

 今一つ浮かない表情のソフィア。

 

「あの時の魔王の記述か?」

 

「あぁ、どうにも引っかかることが多い――むぐっ!?」

 

 そう言って再び考えこもうとするソフィアの口に、サラダが突き込まれる。

 

「今はいいじゃない!今日くらいは全部忘れて楽しみましょう?」

 

 下手人のアイリスはそう言ってさらに料理を詰め込んでいく。

 

「むぐっ――わかった、わかったか――もがっ、やめ、やめないか!んぐっ!ちょっ、ルク――あむっ、クロエ、止め――もがっ」

 

「アイリスさん、珍しくかなりはしゃいでますね……」

 

「ま、今日くらいはいいんじゃないか?俺達も今のうちに色々食べてみよう」

 

「そうですね!これなんておいしそうですよっ」

 

「もがーっ!!」

 

 アイリスを振りほどき、咀嚼する機械と化していた状況から逃れる。

 

「はぁ、はぁ……よくも見捨ててくれたね……!」

 

「でも、ちょっとは気が晴れたろ?」

 

「それはそれでこれはこれだろう……!全く、冷たいものだね」

 

 不満げにため息をつくソフィアにクロエがからかうような笑みを浮かべる。

 

「ご不満ですか?もっと愛のある対応が欲しいと?」

 

「んなぁっ……!?」

 

 途端、顔が赤く染めあがる。

 

「……?何の話だ?」

 

「あんたにはわからない話、かもね」

 

 呆れたように自分の食事を再開するアイリス。首をかしげるルクスを放置して、クロエとソフィアがヒートアップしていく。

 

「魔王との戦いでも献身的でしたもんね!最初の爆発を考えたのもソフィアさんでしたし!」

 

「当然のことだろう!最小の消費で最大の効果、何もおかしなところなどない!」

 

 にやにやと攻め立てるクロエ、耳まで真っ赤にして反論するソフィア。

 

「最後の魔法のときも、情熱的に抱き着いて――キャーッ!」

 

「必要なことだっただけだ!あれは魔力の伝達効率を最大化して、操作するための、極めて論理的な判断で……!」

 

「でも、あんた顔真っ赤だったわよ。今と変わらないくらい、ね」

 

「アイリス!?キミもか!」

 

 アイリス参戦。一対二で追い打ちをかけられていく。

 

「ルクスの方も、クエリトルフィロソフィー、だっけ?あんた、あれ意味分かってるの?」

 

「意味って言われても……頭の中に浮かんだだけだからな」

 

「へぇ?だそうだけど、どうなの?」

 

「……何が言いたい」

 

 にやにやとした表情のアイリス。横目にはクロエも似たような表情で、首をかしげているのはルクスばかり。

 

「とぼけちゃって。あたしでも知ってる言葉なんだから、ルクスはともかく、あんたが知らないはずないでしょう?」

 

「アイリスは俺のことをなんだと思ってるんだ……?いや、確かに知らないけど。どんな意味なんだ?」

 

「クエリトル――ルクスさんの聖剣の銘でもありますが、探求者という意味ですね。そしてフィロソフィー……フィロソフィア。知を愛する、でしょうか。つまり――」

 

「愛の告白、と言っても過言じゃないわね!」

 

「過言だ!ルクスもそういう意味で言ったわけじゃないだろう!?」

 

 もはや首から上に赤くないところがないソフィアが叫ぶ。

 

「……?いや、普通にソフィアのことは好きだぞ?」

 

「――――っ!?」

 

「おぉ……」

 

「情熱的ですねぇ」

 

 言葉も出ない。顔を伏せ、悶えるソフィア――それも長くは続かなかったが。

 

「もちろんアイリスとクロエも。みんなが好きだ。みんながいたからここまで来られた。」

 

 時が止まった。

 

「――はぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 長い溜息。同時に二つ。

 

「……こいつ、どうする?流石に擁護できないけど」

 

「……一度、腰を据えて治療した方が良いかもしれませんね……」

 

「主な処置は頭部を強打、かしら」

 

「議論の余地はありますが……やむを得ない場合はそれもありですね」

 

「なんか物騒なこと相談してないか?俺が何したって言うんだ」

 

 半目で見つめてくる二人。

 

「強いて言うなら、何もしてないことが問題というか……」

 

「前途多難、ですね」

 

「も、もういいだろう!?これ以上は、勘弁してくれ……」

 

 ガバリと起き上がり、そのまま頭を下げるソフィア。

 

「ま、今日のところはこのくらいにしておきましょうか」

 

「そうですね。対処するべき部分もわかりましたし……」

 

 また明日。そう言って席を立つ二人。残されたのは顔の熱が引かないソフィアと首をひねりっぱなしのルクス。

 

「……結局、なんだったんだ?今の」

 

「気にしないでくれ、私のことを思うなら、それが一番だ……」

 

「そ、そうか。まぁ、そういうなら……」

 

 ソフィアの胸で鳴る激しい鼓動。制御不能な熱。それこそが、彼女が手に入れた何よりの真理――本物の感情だった。

 

「まぁ、それはもういい。魔王も倒したことだし、これからは本腰を入れて世界の真理を探究するとしよう。キミにも、手伝ってもらうよ?」

 

「もちろん。協力させてもらう」

 

「やるべきことはたくさんある。まずは魔王から記録した記述の精査からだが――あぁ、そうだ。一つ、頼みがあるんだが――」

 

 未来の展望を語り合う二人。そこには確かな絆と希望が溢れていた。

 

 

 

 深夜。学園の図書室。

 

 ソフィアは、山積みの資料と手帳を往復していた。

 

 体は疲れている。しかし、どうにも寝付けない。魔王からあふれ出した記述が頭から離れなかった。

 

 手元にはなじみ深い短杖。そして、蒼穹の聖剣――クエリトル。ルクスに頼み込んで、数日借り受けることになった、彼の愛剣だ。

 

(勇者、魔王、世界の終末――いや、これは、終末ではなく結末……?)

 

 勇者が魔王を倒す。あるいは倒される。それこそが世界の結末である。

 

(おかしい。勇者と魔王の戦いは過去に幾度となくあったはずだ。そして、未来でも魔王はよみがえり、その時の勇者に討たれる。記録にも残って、いて――まさか)

 

 これまで幾度となく繰り返してきたとされる戦い。当然ながらソフィアはそれを記録でしか知らない。

 

(待て、待て!だとしたら!この仮説が成り立ってしまうなら!私たちはこの後どうなる!?)

 

「……ありえない。何かの間違いだ……そんなはずは」

 

 震える手で何度も記述を読み直す。結論は変わらない。仮説を却下する根拠が見つからない。

 

(マリア女史の役割、観測者……もし、あれがそういう意味なのだとして、私たちを含めた五人以外に顔と名前がなかったのは……)

 

「この世界は……私たちは……本物では、現実では、ない……?」

 

 この世界の外側に、もう一つの世界がある。この世界はそこから観測されている物語の一つに過ぎない。

 

 そして、物語が完結した今、この世界を構成するすべての記述は、色は――『漂白』される。

 

「未来……そんなものはこの世界には、ない。これが、世界の真理……?」

 

 つい先ほどルクスと語り合った未来図。それが音を立てて崩れていくような感覚。

 

「あぁ、そうか。その前提でなら……」

 

 半分無意識だった。手元の聖剣に解析魔法を通す。詳しい記述はノイズまみれで読めたものではなかった。しかし――

 

(――思った通りだ。これは記述が乱れているわけじゃなかった。ただ、常軌を逸した数の記述が重ね書きされているだけだったんだ)

 

 前提を書き換え、解析を続ける。十や二十では利かない数の記述。

 

 情報量は膨大。しかし、一つ一つはかろうじて読み取れる範囲に収まっている。

 

(勇者。そしてこの剣。この二つを起点に世界――物語が構成されている。この世界においてこの剣が特別なんじゃない。この剣があるからこの世界が存続している……異常な記述の濃さは、幾度にも積み重ねた記憶の残照か)

 

 一つの壁を越え、凄まじい速度で世界の真理を読み解いていく。

 

(『無銘の剣』、『アペリトール』、『クエリトル』。姿を変え、性質を変え、それでも変わらず勇者の傍に在り続ける。どんな状況でも、どんな世界でも、そう決められているのか)

 

「――つまり、この世界は……何度も、繰り返されている。何者かが観測する物語として、始まりから終わりまでを、何度も、形を変え、気が遠くなるほどに……」

 

 欠けていたピースが次々と埋まる。抱いていた違和感が解消していくそれは、本来であれば喜ばしいことだった――今は、重圧が増えていくだけだったが。

 

「私たち以外の顔と名前がないのは登場人物ではない背景だから。ただ『そこにいる』という役割を果たすだけの影法師……」

 

 いてもいなくても変わらない。認識の外で次々と消え、現れる。その生も死も、世界は認識しない。

 

「騎士、賢者、聖女、勇者――あぁ、魔王すらも、か。この物語の進行を円滑にするための役割――設定というわけだ。私たちですら、観測者の手の上で踊る人形に過ぎない」

 

 一度は退けたはずの絶望。自己の証明。再びそれが影を落とす。

 

「私にルクスと出会う前の記憶がないのは、『そこ』が物語の始まりであり、私が『私』として生み出された瞬間だから。恐らくはアイリスとクロエも……ルクスの記憶が無いことすら、ここに帰結しているのかもしれない」

 

 魔王を倒し、世界を救った今ですら、少年の記憶は戻らないまま。初めから無いものが戻ることなどありはしない。

 

 ふと窓の外を見る。

 

「あぁ、これが、本当の世界の終わり、か」

 

 夜の闇を食い破るように、空の端から白が侵食してきていた。音が消え、色が消え、世界が白紙へと還っていく。

 

 力なく座り込むソフィア。世界の終わりが進行していく。下がった視線が蒼い輝きを捉えた。

 

 蒼穹の聖剣が、淡い輝きを放っている。物言わぬ剣が、『諦めるな』と語り掛けるかのように。その輝きが、記憶の中の少年を想起させた。どこまでも実直で、この胸に熱を宿した、勇者の少年。

 

(あぁ、そうだ。そうだな――)

 

 淀んでいた瞳に力が宿る。四肢に活力が戻る。

 

「そうだ。この世界が現実だろうが、そうでなかろうが、そんなことは関係ない。私の胸にあるこの思いは!熱は!まぎれもなく今この私だけのものだ!」

 

 奇しくもそれは、少年がかつて少女に宣言したものと同じ。自身の主観に拠った、非論理的な自己の証明。しかし今この瞬間、それこそが少女の自我を確固たるものとして支えた。

 

(このままでは世界は初期化され、すべてが無に帰る)

 

 蒼の輝きに手を伸ばす。つかみ取った聖剣が燃えるように熱い。

 

(――そんなことは認めない!消させない!私たちのこれまでを!)

 

 言葉で伝えても、脳に刻んでも、世界そのものが初期化されるなら物理的な手段は意味をなさない。しかし、何度世界が変わっても、変わらず存在するものがある。普通には読みとれないほどに記述の積み重なったこの聖剣もその一つ。

 

(ここに、すべてを託そう。うまくいくかはわからない。白紙にされるかもしれない。でも、この胸で熱を放つ感情を、なかったことにはしたくない!)

 

 自身の全能力を注ぎ込む。もはや白く染まりゆく世界など意識の外だった。感情、記憶。非論理的な熱量を、極限まで圧縮していく。フォーマットは当然、世界の記述。これまで読み取ることはできても書き込むことなどできなかった。世界の記述の改変は神聖魔法――神の御業の領域であるがゆえに。この『悪あがき』が成功する確率など僅かもなかった。

 

 ――その祈りと記述を籠める対象が、『勇者の剣』でさえなければ。

 

 女神によってデザインされたそれは、当然神の力の一端を秘めている。まばゆい程に増していく輝き。ソフィア自身も理解していない要因によって彼女の『悪あがき』は達成された。『勇者の剣』の奥深く。『無銘の剣』となってすら維持され続ける深層――『勇者』にとって大切な物が保管されている空間に、自らその記述を収納する。いつかくる目覚めの時まで、失われないよう、厳重に。

 

 やがて、光が収まった聖剣を改めて握りこむ。

 

「……私の色彩を、ここに置く。消せるものなら、消してみなよ、これを見ている誰かさん?」

 

 集中が途切れ、周囲の風景が視界に戻ってくる。窓の外はもう白に染まっていて、図書室の壁の一部すら崩れている。

 

(さて、どうなるか……)

 

 自分が『消える』感覚など当然知らない。無駄な抵抗だとしても、胸に宿った熱を確かめる。絶対に失いたくないものの輪郭を意識する。――握りしめた手の指が、白く透け始めていた。

 

(できるなら、最後にもう一度、キミと――)

 

 叶わぬ願いを抱いたその時。図書室の扉が激しく開かれた。

 

「ソフィア!!」

 

「――っ!!」

 

 何よりも求めていた顔が、ルクスが、息を切らして駆け込んできた。

 

 彼は窓の外の異常を、そして今まさに消えゆこうとするソフィアの姿を捉え、その顔に絶望を浮かべる。

 

「ルクス……どうしてここに」

 

「わからない! 世界が、人が、消えていく! ソフィア、君まで!」

 

 ルクスが手を伸ばす。彼の指先も、白く透け始めていた。

 

「――世界が終わるんだ。そして、また次の世界が始まる……」

 

「――は?何を、言って……」

 

 近づき、しかし触れ合うことはなく、聖剣を握らせる。

 

「わからなくていい。きっと、キミは忘れてしまうだろうけど……キミがキミである限り、世界は救われるさ」

 

 それは無条件の信頼。少年に救われた一人の少女から送られる祈り。

 

「この『私』はここまでだけど――次の『私』もよろしく頼むよ。面倒な女だという自覚はあるけど、ね」

 

「さっきから一体、何の話を――」

 

 思わず、ソフィアはルクスの胸に飛び込んだ。

 

 消えゆく体温。滑り落ちる手帳。頬に手を添える。焦りと困惑の表情。

 

「愛、なんて不正確な言葉、意味がないと思っていたけれど……ルクス、私は、キミと出会えて、本当の真理を見つけられた。キミのおかげで、何よりも大切だと思えるモノが手に入った!」

 

 ルクスは口を開かない。突然の世界の終わり、先の見えない話。情報量の多さに頭が回らない。

 

 苦笑を一つ。そして思いを告げる。

 

 

 

「キミを愛している。たとえ、世界が終わっても――この思いがあれば、私は私を定義できる。いつか、必ず、もう一度。キミに出会えると、願っているよ」

 

 

 

 思考はまとまらない。しかし、なにかを言わなければならない。そんな衝動が背中を押す。

 

「俺は――!」

 

 その声が音になることはなかった。

 

 暴力的なまでの白が、二人の間を裂き、世界を完全に塗り潰していく。

 

 音が消えた。光が消えた。匂いが消え、感触すら消えていく。

 

 積み上げられた思い出が、物語が、初めから存在しなかったかのように塗り潰されていく。

 

 

 

「次に出会うとき、答えを聞かせてくれ。――あまり、待たせないでくれよ?」

 

 

 

 音のない世界で、最後にそれが、聞こえた気がした。

 

――◇――

 

 静謐な、天座の書架。

 

 女神ミュトスが、色鮮やかに染まった一冊の本を、満足げに棚へ収めた。手には、蒼穹の輝きが失われた白紙の栞。

 

 『リベラ・オルビス~青の物語~』

 

「深い絶望とそれをはねのけるほどの感情。世界の真理に近づき、最後の一秒まで抗おうとする知性。……ふふ、実に美しい物語だったわ。あなたの行動がどこまで『次』に影響するかはわからないけれど――ひとまず、ご苦労様」

 

 心底楽しかった、と言わんばかりの笑み。その笑みのまま、漂白された栞を白紙の本に差し込む。それは新たなる物語の始まり。

 

「予想外の展開が増えてきたわね……」

 

 世界の真実にたどり着いたソフィア。それは少なからず女神に衝撃を与えていた。一介の登場人物が、舞台そのものの裏側に気付くとは、想定していなかった。――それでも、自らの手の上からは逃れられない、とも思っているが。

 

「私が満足できる物語も近いのかしら。ねぇ?あなたはどう思う?」

 

 女神の視線の先には磔の男。未だ動かず、声を発さず、ただ、そこにいる。

 

「……やっぱり限界かしら。まぁ、いいわ。完全に擦り切れるまでは、付き合ってもらうわよ」

 

 再び、世界が生まれる。勇者の少年、三人の少女達。彼らが紡ぐ次なる物語の行方は――

 

 

 

――頁が捲られる。

 

 

 

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