改めまして、ここまでお読みいただきありがとうございます。
ハーメルンというサイトに出会ってから約10年、ずっと読み専でしたが唐突に思い立って執筆したのが今作の始まりです。今読み返すと目を覆いたくなるような文章が散見されますが、なんとか完結までこぎつけることができました。ここからは本作のネタバレ満載で色々と振り返っていくのでもしまだ未読の方がいらっしゃるならここでブラウザバックしていただき是非1話からお楽しみいただければと思います。
・執筆全体を通して
初めての執筆で、特に苦しんだのが地の文の表現でした。本作は基本的に三人称視点で描かれており、各キャラの動きや表情の変化といった描写に予想以上に苦しめられた記憶が強いです。
「〇〇が××した」と書くのは簡単ですがそればかりでは読んでいてあまりにも味気ない。とはいえ、なかなか他の表現が思いつかない。そんな場面が多々ありました。
殊更に困ったのは戦闘時の描写です。二章以外の戦闘シーンでは基本的に魔法や技の名前がほとんど出てきません。(ソフィアだけは全編通して魔法を使用しましたが。)その結果、斬った、躱した、弾いた、受けた、と表現が単調になっていきました。それに加えて戦闘の流れそのものの描写にも苦労しました。先達の筆者様方のような引き込まれる魅力を秘めた描写には届いていない部分が多かったと反省しています。
逆にすらすらと筆が進んだのはルクスとヒロインたちによるラブコメ描写でした。驚くほど素早く描写が進んでいき、私の想定よりも文字数が膨らんで話を分割したこともしばしばありました。書いているうちにキャラが勝手にしゃべり始め、どんどんと描写が膨らみ、プロット時点で想定していた関係性から外れてしまったりだとかですね。その結果ラブコメに関するプロットを全編書き直したこともあります。うれしい悲鳴ではありましたので次回作を執筆する際はもう少しこちらの比重を高めてもいいかと考えています。
もう少し引いた視点で言うと、執筆前に設定やプロットを煮詰めすぎた点も課題だったと思います。ルクスとアッシュの関係、ミュトスの思惑、三色の聖剣とヒロインたち。このあたりで止めておけばよかったな、と。特に、主要人物以外の人間には顔と名前がない、という設定は執筆する上でとんでもない負荷をもたらしました。その結果、ルクスたちの活動範囲の大半が学園と『修練の森』に限定され、ある程度意図したものとはいえ1~3章の焼き増し感が非常に強くなってしまったと思います。また、執筆中に思いついた設定の変更が、それまでに執筆した箇所と矛盾したためお蔵入りになったことも数知れず。もう少し柔軟性のある設定とプロットで次回作は進めたいと思います。
・序章
今作の始まりにして一番の反省ポイントです。脳内設定をぼかして描写することに固執するあまり、1話に重要な読者をひきつけるフックがとてつもなく弱くなってしまいました。その結果、1話で閲覧を辞めてしまう方が多数。この位置に入れておかないと本作そのものの流れがおかしくなるとはいえ、もう少し考えるべきだったと猛省しています。
・1章
アイリスヒロイン章。
序章に引き続き序盤のフックが弱かったことが反省点ですね。ルクスの初めての戦闘シーンがまさかの1章2話。序章を含めて2話にわたってよくわからない設定をにおわせるばかりで「この先が気になる、読みたい」と思わせることができなかったのが悔やまれます。
戦闘描写も今一つでしたね。特に魔王戦などは顕著ですが、敵の攻撃を躱す、こちらの攻撃は弾かれる、敵の攻撃を受けるもしくは弾く。この流れの繰り返ししかありません。読んでいて退屈極まりない。最終決戦の姿か?これが……。1章の時点で、身体強化やクロエの神聖魔法などに名前を付けておけばよかったとこれ以降の執筆で常に悔やみ続けることになります。
それとは打って変わってアイリスとのラブコメ描写は本当に書いていて楽しかったですね。勝手に空回りを始めるアイリスとその行為にまるで気付かないのに勘違いを誘発するような言葉を吐き続けるルクス。この二人の関係性が本作全体のラブコメの方向性を決定づけました。初期設定では1~3章のラストでちゃんと各ヒロインと結ばれ、4章の展開につなげるはずだったのですが……。ルクスのクソボケ染みた行動とそれに一喜一憂するアイリスを描くのが楽しすぎて以降のソフィアとクロエもちゃんと結ばれることなくルクスのクソボケはより一層加速していきました。
章全体の目的としては表の世界観の説明がメイン。ルクスたちに見えている世界を描写し、リベラ・オルビスという世界の外観を描写することを重視しました。魔王、魔物、勇者、騎士、賢者、聖女。キーワードごとにどういったものなのかの説明をしておき、以降の章での描写を極力カットできるようにしました。その分説明描写が多くなり、先述のフックの弱さにもつながってしまいましたね。
・2章
ソフィアヒロイン章。
ここまで来るとある程度執筆にも慣れてきて、比較的『読める』文章になってきたかなと思います。まぁ、この時点で1章の継続読了率の低さに心折れそうではありましたが……。
戦闘に関しては魔法のネーミングセンスにのたうち回った章でした。ある程度直接的な言葉を使った方がどんな魔法かが雰囲気で伝わりやすい。でも直訳の英語にすると途端に厨二臭が強くなりすぎる。結局いい塩梅がわからず、首をひねりながら各魔法の名称を決定していきました。各属性の組み合わせを考えること自体は非常に楽しく、童心に帰った気分でしたね。
ラブコメ描写に関してはもう少しうまく描きたかった、と少し心残りのある章ですね。ソフィアと関係を深め、聖剣の覚醒前後にソフィアから矢印が向き始めるところまでは良かったのですが、それ以降の描写がほとんどできず、足早に魔王戦へと突入してしまいました。ここでもう1話ほど遊びを入れてもよかったと思います。クライマックスでは世界の終わりを前にした一世一代の告白。シチュエーションとしては良いものでしたが1章で決まったルクスのクソボケ設定によりやや中途半端になってしまったかもしれませんね。
章目的は裏の世界観の共有。この世界は物語であり、多くの人物は名前も顔もないモブに過ぎない。それどころか自分自身すらそう作られただけのキャラクターに過ぎない……。ここまでそれぞれの『役割』を前面に押し出していたからこそ、アイデンティティの崩壊につながった部分は良かったと思います。
・3章
クロエヒロイン章。
一番難産だった章です。全体的に筆が止まる場面が多く。かなり苦労しました。
サルヴァトルによる世界の書き換えは小説ならではの表現ができたかな、と自画自賛していました。ただ汎用性が低く、テンポも悪いためほとんど使うことがなかったのが残念です。書き換えという行為があまりにチートすぎたため、急遽激しい消耗がある、という弱点が追加されました。初期案では一切のデメリットもなく好き勝手に世界を書き換えていたのですが、いざ書いてみると戦闘におけるヒロインたちのの必要性が皆無。「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」となったため、制限をかけることになりました。
クロエとのラブコメ描写は2章の反省を活かしてある程度多く入れることができました。ただその弊害として、突然ルクスが曇りだし、それをなぜかクロエではなくアイリスが励ます場面が虚空から発生しました。執筆中も宇宙猫になりながら書いていた記憶があります。いや、本当になんで出張ってきたんでしょうね?クロエと支え合って立ち上がる場面を書こうと思ってたんですが気付いたらアイリスが訓練場で剣を構えてました。クライマックスでは2章同様漂白直前での告白。この時点でルクスは「みんなが好き」という答えを出していますし、これが4章にもつながるのですがクロエは知る由もありません。
章の目的は物語の崩壊。世界を書き換えるサルヴァトルの発現とそれに伴う書架の男の解放。同じ物語を繰り返してきた世界が明確にその形を変えた章でした。これ以降の展開は大筋が完全に決まった状態だったのである意味ではここで本作の執筆は終了でしたね。
・4章
最終章。ここまでの全てはこの章のためにありました。そもそも本作自体が、この章のルクスVSアッシュ以降の流れが頭に浮かんだことから始まりました。そこから逆算した結果三人のヒロインや対応した聖剣が生まれ、天座の書架という舞台装置が生まれました。
戦闘描写で特に苦労したところはありません。流石にここまで執筆していれば多少は慣れてくるものでスムーズに書くことができまし。強いて言うならミュトスとの決戦は少し難しかったかな?覚醒仕立てのエクリプスの力とミュトスの絶対的な力のバランスが取りづらかったですね。
逆にこの章のラブコメは最も難しかったです。聖剣の覚醒とヒロインたちとの記憶を取り戻すところまでは良かったのですが、なぜかその後にいきなりルクスがクソボケを発症しました。何なら各ヒロインの回ではちゃんと告白を受け入れた描写を一度したにも関わらず次の話では恋愛ではなく親愛や博愛になってしまい、直前の3話分が修正を余儀なくされました。私の想定ではこの章はテンプレハーレムラブコメのようなヒロインによるルクスの取り合いとそれに巻き込まれるルクス、という形になるはずだったのですが……。ただ、怪我の功名と言った所か、この判断をしたことでコスモス覚醒までの流れやラストのミュトス復活などの描写に繋がりが生まれたので結果的にはいい方向に収まりました。
最終章なので章の目的は当然すべてに対する決着。ミュトスは退去し、全ての物語が幸せになる願いをかけて、それを見守るルクス。本来は新たなリベラ・オルビスの物語を描写して終了の予定でしたが、最終章を執筆している時に(ここで終わったらあまりにもヒロインたちが不憫過ぎないか……?)と内なる自分が囁いてきたために、三人の少女が天座の書架までルクスを追いかけてきてくれました。
・ルクス
主人公。記憶が無く、常識もない。白紙の勇者としての役割を課せられた少年。それぞれの章で自身の色を手に入れ、最後にはその全てを束ねてその名の通りルクス(光)に至りました。主人公であるにもかかわらず、本作を通して一番描写が安定しなかったキャラだと思っています。記憶があったりなかったり、茶目っ気があったりなかったり。2章では世界の真実に触れた直後にソフィアを励ます強靭な精神を持っているかと思えば3章ではいきなり悩み始めました。ここまで書いてきたラブコメ面での路線変更も含めて最も筆者を振り回してくれたキャラと言えるでしょう。
・アイリス
ヒロインその1。赤の騎士。ルクスに勇気と情熱を教えた少女。1章執筆時に彼女の可愛さに筆が引っ張られたことがルクスクソボケ化の最も大きな要因と言って間違いないでしょう。課せられた運命は守護と自己犠牲。彼女を守りたいという強い想いがあの世界における始まりの聖剣を目覚めさせました。本作での主な役回りは戦闘時の指揮、及びルクスに戦い方を教えること。こと戦闘関係の描写において、彼女が担った役割はあまりにも広かったです。
・アペリトール
真紅の聖剣。『切り拓く者』。持ち主の身体能力を大幅に向上させるほか、刀身に魔力を籠めることで大幅にその威力を高める。トリガーとなったのは少女を守りたいという強い感情。
・ソフィア
ヒロインその2。青の賢者。ルクスに叡智と知恵を与えた少女。1章ではほとんど描写されませんでしたが2章以降は世界の真理に近づく役割、及び様々な解説役としてしゃべり続けていました。課せられた運命は探求と絶望。世界の真理に触れ、自己の崩壊を起こした彼女を救ったのはルクスの論理を投げ捨てた熱でした。彼女と共に真理を求める心が新たな聖剣を目覚めさせることになります。主な役回りは先述の通り解説役。2章以降は解析魔法による情報の獲得も多くありました。というか解析魔法の設定をちゃんと詰め切らなかったために「困ったら解析させるか」という意識が常にありました。
・クエリトル
蒼穹の聖剣。『探求するもの』。持ち主に世界の記述を読む力を与え、自在に干渉することで様々な魔法を行使できるようになる。トリガーとなったのは少女と共に真理を求めるという強い探求心。
・クロエ
ヒロインその3。翠の聖女。ルクスに意思と愛を芽生えさせた少女。3章に至るまで自身を軽んじる殉教と、自分自身の感情の狭間で揺れ続けた少女。課せられた運命は慈愛と殉教。世界のために自らをささげようとする少女を救う、その強い意志が世界すら書き換える力を目覚めさせました。主な役回りは世界の歪さの表現。『聖女』であろうとする彼女を通して、登場人物たちの歪みが伝わっていれば幸いです。アイリスとソフィアの精神が強すぎたために4章での曇らせを一手に担わせたことは大変申し訳なく思っています。
・サルヴァトル
翡翠の聖剣。『救済するもの』。世界を書き換え、思いのままに事象を塗り替える聖剣。あまりにも強すぎたために筆者による弱体化を受けた。それでもこの聖剣が無ければこの物語は成り立たなかったし、今もルクスたちは物語にとらわれたままでしょう。トリガーとなったのは少女を救うという強い意志。
・アッシュ(書架の男)
裏主人公。序章及び断章でその姿を見せ、3章ラストからは存分に暴れてくれました。その正体は始まりの勇者。『ルクス』となる前のルクス。彼の物語とその絶望が女神の目に留まったことでこの物語は始まりました。数多のバッドエンドを追体験し、擦り切れていた彼ですが、女神が現在のルクスを新たに書架に招こうと決めたタイミングで偶然物語の中に放り込まれ、ルクスと自身を消去することで自身の苦しみとルクスの未来に待つ苦しみの両方を消し去ろうとしました。138回に及ぶ繰り返し全てを記憶しており、その絶望を取り込んでルクスの前に現れました。ルクスが手に入れた光と希望を信じ、全てを託して消滅。しかし、その記憶はルクスに受け継がれており、彼は今でもルクスの中で生きているでしょう。
・ケイオス
漆黒の剣。『混沌をつかさどる者』。134回に及ぶバットエンドの記憶。その全てが剣の中に渦巻いている。あまりにも多くの色が混ざり合った結果、光を取り込まない絶対的な闇が生まれた。その圧倒的な存在の重さで、あらゆる世界の記述を黒く塗りつぶす。魔法を全て強制的に消し去ることができ、全力を解放すれば存在そのものすら消し去ることが可能。
・コスモス
白光の聖剣。『調和をもたらす者』。少年が手に入れた3色の鮮やかな色彩。その全てが重なることで生まれた剣。構想時点でこの剣の存在と由来は確定していて、赤青緑の三原色を重ねることで始まりの白に回帰することは予定調和でした。3本の聖剣の力をそのまま使えるのはもちろんの事、それぞれの出力も向上しています。(こっそり世界書き換えにおける消耗もなくなっています)
・エクリプス
黄金の聖剣。『蝕の剣』。古来より光と闇が合わされば最強の力が生まれるのは必然です。モチーフになっているのは皆既日食や金環日食の際に発生する外延部の輝き。コスモスから更に出力が向上すると共にケイオスの力により書き換えの速度や規模が向上している。コスモスともども出番が少なくてもったいないという気持ちでいっぱいです。
・ミュトス
本作全ての元凶にして虚空からヒロインレースに参戦してきた女神。まだ見ぬ感動を求めて数多の世界を弄び、繰り返した。最終決戦でルクスに力を貸してくれた万の物語の裏には、アッシュ同様に億を超えるバッドエンドが眠っている。それらすべての思いをエクリプスを通して直接叩き込まれたことで彼女の知らなかった『生きた感情』を知る。求めていたものを手に入れた彼女はルクスに書架の管理を託して満足して消えていきました……が、突然復活しルクスを巡る争いに参加することに。当初のプロットではヒロインたちが書架に来ることもなかったため当然復活の予定はありませんでしたが、書架での修羅場を書いていく最中に気付けば復活してルクスにキスをしていました。本当にいい空気吸ってるなこいつ。
・マリア
『リベラ・オルビス』における狂言回しにして編集者。ミュトスを楽しませるために様々な暗躍をしていました。彼女自身は女神の意思を代行しているつもりですが、積極的に物語に干渉しすぎる傾向があり、実はミュトスからの評価は高くありません。1~3章ではスタンピードの発生タイミングをコントロールしたり、ソフィアに世界の真理に近づくヒントを提示したり、クロエに自分を犠牲にした救済を提案したりとそれなりにやりたい放題しており、描写外でのアッシュが体験したバッドエンドもその大半が彼女の工作によるもの。最終章ではミュトスとの交信がうまくいっておらず、アッシュの対処に追われており、3章ラストでミュトスが示したルクスへの興味から、彼を書架に縛り付けるための襲撃を決行します。結果的にアッシュに妨害され、彼の反撃で消滅。ミュトスからもすでに忘れ去れておりある意味で最も救われない結末を迎えたキャラかもしれません。
・リベルタス
新たに紡がれる『リベラ・オルビス』の物語の舞台となる街。考古学者の卵である少年が、普通の少女、読書家の少女、孤児院のシスターと繰り広げる平和な異世界ラブコメの舞台です。この世界にはあらゆる悲劇が発生せず、全ての人間が幸福になれるよう、見守られていくでしょう。
こんなところでしょうか?振り返るたびに様々な思い出が過りますが、そのたびに多くの反省点や課題が浮き彫りになってきてとても辛い。しかし、本作は私に執筆することの楽しさも教えてくれました。今後も細々とですがこのサイトの片隅で物語を紡がせていただければと思います。
最後になりましたが、既に次回作の構想に入っています。舞台は現代、ローファンタジーものになる予定です。もしよろしければまた覗いていただければと思います。
では、ここまでのお付き合い本当にありがとうございました。また、お会いできる日を楽しみにしています!