ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~   作:アイスが食べたいマン

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遅くなってすみません、そして今回は長いです。


~スポーツフェスタ~

とある訓練所で優斗と戦国冬華が戦っていた。

 

「チェックメイト」

「ッ!?」

 

目にも止まらぬ速さで優斗の喉元に木刀が来るが、喉元に当たる直前で寸止めされる。

 

「カウンター狙いは悪くない、だが考えが甘かったな?」

「………」

 

戦国冬華は木刀を下ろして、優斗を見る。

 

「虹崎輝はお前にとってどう見えていた?」

「…いきなりなんだ?」

「質問に答えろ、優斗」

「不思議なところはあるけど、誰よりも真っ直ぐで悪党すら善人に変えられるような奴」

 

その答えを聞いた、戦国冬華は笑う。

 

「そういう善人が誰かを守ろうとして一番最初に死んでいく、虹崎輝がそうだっただろ?」

 

そうこれは虹崎輝が死んでから、数週間後の話。

 

「優斗、忘れるな?悪党は変わらない、クズはクズのままだ」

「俺は輝を───」

「だがな、変われるやつもいるかもしれない」

「え?」

 

優斗にそれはとって思いがけない言葉だった。

 

「信じてみたいなら信じてみろ、私は悪党は変わらない、殺し尽くせば世界は平和になる、そう思って捕縛せずに殺している、それが正義だと信じてな」

 

戦国冬華は続ける。

 

「ただし忘れるな?守るためには悪党を殺さないといけない場合もある、全員は救えない」

「それは───」

「誰かを守りたいなら、奪う覚悟も奪われる覚悟もしておけ」

「奪う覚悟…」

「誰も殺さないなんて、甘い考えで誰かを救えると思うなよ?」

 

優斗と戦国冬華が同じ部隊にいた時の最後の会話、優斗は知らなかった、この後、彼女は国を裏切り、国家反逆者となることを…

 

 

 

沙姫さんの家に泊まってから数週間が経つ、

学校に登校すると、全学年の生徒が体育着に着替え、校庭にいる。

 

「彩南高スポーツフェスタ!!いよいよだね!リトっ」

 

ララさんの声が校庭に響く、今日はスポーツフェスタと言ってはいるが、体育祭と変わらない。

 

「協賛が天条院グループってのが気になるわね…」

「…そんな心配しなくても大丈夫じゃない?」

 

古手川さんはスポーツフェスタの看板の下に書いてある協賛名に天条院グループと書いてあるのを見て呟く。

 

「今日は一般客もいるから、さすがに沙姫さんも変なことはしないと思うよ」

「…あなたは天条院先輩の肩を持つのね」

「別に肩を持ってるわけじゃないよ」

「どうかしら、名前を呼び合う様な仲になった人の話なんて信用出来ないわ」

 

この前、沙姫さんの屋敷に泊まってから、古手川さんの機嫌が悪い。

 

「ララ様───」

「美柑!ザスティン!!」

 

ララさんを呼ぶ声がする方を見ると、美柑とザスティンがいた。

 

「頑張ってくださいララ様!デビルーク王家の名に恥じぬよう!」

「ムチャしないようにね」

 

ザスティンはララさんを応援して、美柑は俺達にムチャしないように伝える、美柑は俺に近づいてくる。

 

「優兄は特にムチャしないようにね」

「わかってるよ」

「本当に分かってる?」

 

そういいながら、美柑はジト目で俺を見る、体育祭でムチャすることは無いと思うけど。

 

「ホーホホホ!」

「沙姫?」

 

俺と美柑と話していると沙姫さんの声が聞こえてくる。

 

「ごきげんよう皆さん、今日はゆっくり楽しんでいらしてね!」

 

そのまま沙姫さんは俺に近づいてくる。

 

「優斗!あなたも楽しんで良い思い出を作りましてね」

「俺なりに楽しませてもらいます」

 

楽しみはするが全力は出さない、俺が全力を出したら、大人気ない気がする為、程々にやるつもりだ。

 

「少しいいか?君に頼みがある」

「九条先輩?」

「このスポーツフェスタで我々…沙姫様率いる3年D組が優勝した場合、沙姫様と二人で豪華客船でディナーをして貰いたい」

「優兄と豪華客船のディナー!?」

「沙姫さんとディナーですか?」

「…優兄が名前で呼んだ?」

 

豪華客船のディナー?それくらいなら別に構わないが豪華客船なのは何故だ?あと美柑が俺をすっごい顔で見てる。

 

「それくらいなら全然構いませんよ」

「優斗!い…今の話、ほ…本当ですの?」

「優勝賞品も沙姫さんが出してくれたんですよね?なら沙姫さんが優勝した場合の賞品も必要ですよ」

 

俺がそういうと沙姫さんの目に闘志が宿る。

 

「凛、綾、絶対優勝しますわよ!」

「「はい、沙姫様」」

 

沙姫さんは二人を連れて歩き去っていく。

 

「名前も呼び合ってて仲良さそうだね?優兄」

「…美柑、怒ってる?」

 

美柑は笑顔でそういってくるが、目が完全に怒ってる。

 

「優兄、絶対に優勝してね?」

「え?どうして?」

「…取られなくないから」

 

美柑は俯いて小さな声で告げた、取られたくないか…

 

「おーい時雨、ララちぃ───!」

 

美柑と話していると、籾岡さんが俺とララさんを呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「美柑、一つだけ言ってくね」

「…何?」

「必ず優勝してくる」

 

俺は美柑を見て宣言する、俯いてた美柑は俺を見る、さっきまで程々でやるつもりだったが、美柑の言葉を聞いて気が変わった。

 

「だから俺をことを見てて欲しい、美柑に応援して欲しい」

「ッ!?」

 

俺は左手を伸ばして美柑の頭をわしゃわしゃと撫でる、何故こんな事を美柑に伝えたいと思ったか分からない、ただ、俯いた美柑を見て伝えないといけないと思ってしまった。

 

「優兄、髪が乱れちゃうよ」

「ごめん」

「もう、ほら籾岡さんが呼んでるよ、行ってきなよ優兄」

 

籾岡さんの方を見ると来ない俺を見ながら、不満そうな顔をしていた。

 

「スポーツフェスタが終わったら、天条院さんと何があったか教えてね?」

「わかった、行ってくる」

 

俺は走って籾岡さん達の所へ向かった。

 

「……優兄のバカ、頭撫でられて、そんなこと言われたら、余計好きになっちゃうじゃん…」

 

籾岡さん達の所へ着くと籾岡さんが俺に近づいてくる。

 

「時雨おっそーい、待たせるなよ~」

「待たせてごめん、なんの話しをしてたの?」

「これだよーユウト!豪華客船!!」

「豪華客船?」

 

話を聞いてみると、どうやら優勝したクラスには豪華客船の特別ディナー招待券が全員に貰えるらしい、沙姫さんの豪華客船のディナーの話はこういうことか。

 

「よーし!みんなで頑張って優勝しよ!ねっ春菜!!」

「うん!みんなで行けたら、楽しそうだもんね」

 

ララさんは気合いが入ったようで拳を握りしめて告げる、リトを見ると西連寺さんを見ながら、「はるなちゃん」と小さな声で呟いていた。

 

「やるぞー!2-A!!」

「「「お───っ!!」」」

 

2-A、全体にも優勝すると気合いが入る、ほぼクラスメイト全員は優勝賞品目当てのようだ。

 

「体育祭を賞品のためにがんばるなんて…不純だわ」

「でもやる気がないよりマシだよ」

 

正直、俺は優勝さえ出来れば個人の目的なんてなんでもいい。

 

「…時雨くんも随分やる気みたいだけど、あなたも賞品目当て?」

「違うよ、優勝するってさっき宣言したからさ」

「宣言?」

「うん、だから絶対に優勝する」

 

美柑に宣言したからには絶対に勝つ。

 

「優勝する為に古手川さんも一緒に頑張ってくれない?」

「あなたに言われなくても最初からそのつもりよ」

 

古手川さんと話していると最初の競技のナレーションが聞こえてくる。

 

「時雨ー最初の競技はペア競技だって、私と出ようぜ」

 

籾岡さんから声をかけられる、ペア競技ね、二人三脚とかかな?

 

「了解、ちなみに競技は何?」

「…出てからのお楽しみ」

「お楽しみ?まあいいか、籾岡さん出るからには絶対勝つよ」

「お、いいね~あんたにしてはやる気じゃん」

「まあね」

 

あとで俺は参加する前に競技内容を聞いておくべきだったと後悔する。

 

「時雨!いっくわよーっ!」

「…なんだこれ」

 

俺は何故か籾岡さんを背負っている、何だこの競技。

 

「優斗!?あなたもわたくしが考案したこの競技に参加なさるのっ!?」

 

沙姫さんは驚いた顔をして俺達を見る、この競技、沙姫さんが考案したのか。

 

「天条院センパ~イ」

「なっ!?」

 

籾岡さんは沙姫さんの名前を呼んだ瞬間、オレに抱きついてくる。

 

「天条院先輩の考案した競技のおかげで、優斗を後ろから抱きつくことができるな~」

「ゆ…優斗ですって!?」

「あ、そういえば、天条院先輩は優斗とキスしたこともありませんよね」

「キスっ!?」

 

籾岡さんはこの前の仕返しと言わんばかりに煽りに煽る。

 

「籾岡さん何言っ───」

「これからは里紗って呼べよ、優斗」

「ッ!?」

 

俺の耳に籾岡さんは囁く、後ろに籾岡さんを背負っている為、やりたい放題される。

 

「呼ばなかったら、今ここで耳を舐めてやるよ」

「籾岡さんやめ───」

「里紗だろ?」

 

今この状況で耳を責められたら、絶対に立ってられない。

 

「……里紗さん」

「さん付けするんだ?あーそゆこと、そんなに耳を舐められたかったの?言ってよダーリン」

「…里紗」

「…いいね、最高じゃん」

 

籾岡さんは名前呼びに満足したようで俺の耳元から離れる。

 

「この状況になることわかってたな?」

「なんの事だか分からないな~」

 

恐らく、籾岡さんはこの状況になるのをわかっていた、だから俺に競技を伝えなかった、伝えれば出ないかもしれないと考えたんだろう、完全にやられた。

 

「…籾岡里紗、あなた覚悟はできてまして?」

「天条院先輩も私のダーリン狙っといてタダで終わると思わないでくださいね?」

 

その光景を見ていた沙姫さんは籾岡さんを睨らみ、籾岡さんもまた沙姫さんを睨む。

 

『さーいよいよ始まります、最初の種目おんぶ競走!実況は私、放送部の猿山ケンイチと特別ゲスト校長でお送りします』

 

猿山のナレーションが始まりみんな競技に参加する人は全員がスタートラインへ向かう。

 

「猿山って放送部だったんだ」

「知らなかったの?」

「だって興味なかったし」

 

猿山、お前泣いていいぞ、まあ、俺も知らなかったけど…

 

「…籾───」

「は?」

「里紗、これから名前呼びにしないとダメ?」

「名前呼びじゃなきゃ、ダメに決まってんじゃん」

 

これから、俺は籾岡さんのことを里紗と呼ぶことが確定した。

 

『それでは各自スタートラインへ』

 

放送が入り、俺は里紗を背負ってスタートラインに並ぶと右にはリトとララさんのペアと左には沙姫さんと藤崎先輩のペアに挟まれる。

 

『よーい、スタート!』

 

スタートの合図と共に各自、一斉に飛び出す、先にゴールに着いた方の勝ちだが、それで終わると思えない、きっと他にもなにかある。

 

「優斗、あんたこのままだと負けるわよ!」

「…大丈夫、この距離ならすぐ抜ける、それより里紗は俺にしっかり捕まってて、何かある」

 

俺は藤崎先輩の後ろについていくと前から悲鳴が聞こえてくる。

 

「キャ!!?」

『お───っといきなり先行のペアに悲劇!スケスケ…もといビショビショだー!!』

『うーん、ナイストラップ!ですなぁ』

『どーでもいい野郎共にもトラップの洗礼が!!』

 

ほかのペアも飛び出してきたネットに捕まったり、ボクシンググローブに吹き飛ばされたりとトラップに引っかかっている。

 

「ホホホ、お先に───」

『おっとその中を軽やかに進む、天条院ペア!おっと?その天条院ペアに後ろからピッタリ着いていくのは時雨ペアだっ!』

「なっ!?」

 

俺は沙姫さんペアについていく、やっぱり罠の配置を知ってるな?

 

「もしかして天条院先輩は…」

「里紗気づいたか、沙姫さんペアは罠の配置を知ってる」

「だからあんたは天条院先輩のこと後ろから、追っかけてたの?」

「正解」

 

(やっぱり、普通にゴールするだけの競技なわけないよな?)

 

沙姫さんペアと俺達はそのまま罠を掻い潜り、ゴールまで一直線となる。

 

『お───っとララ選手、尻尾のビームで前方の罠ゾーンを消滅させた───!!』

「な…なんですって!?」

 

後ろから凄まじい音と共に罠が破壊される、ララさん、さすがにビームだめでしょ。

 

「フフ…でも大分、差はつきまし───っ!?」

「沙姫さん、俺達がいますよ?」

 

俺はこのタイミングで沙姫さんを追い抜かす。

 

「優斗!このままゴールするわよっ!?

「言われなくてもわかってるよ!」

 

俺はゴールまで全力で走る、一人姿が見えない人物を探しながら。

普通にゴールするだけなら、沙姫さんのペアは藤崎先輩よりも九条先輩の方が勝機はある、なのにペアが藤崎先輩の時点で九条先輩はどこかで何かを仕掛けてくると思っていた。

 

(そこにいたか、九条先輩)

 

そして見つけた、前方、二時の方向の木の上にスナイパーライフルを構えてこちらを見ている九条先輩を見つけた。

 

(あれは、M40A5か?)

 

M40狙撃銃シリーズ、アメリカ海兵隊が使用しているスナイパーライフルでM40~M40A3まで装弾方式が5発カートリッジだったが、M40A5は10発弾倉と装弾数増加やアタッチメントも色々追加されたスナイパーライフル。

弾速は777.24m/s、普通なら避けられない。

 

(昔使ったことはあるが、この世界でも見ることになるとはね)

 

モデルガンは使ったことがないが、クリスマスパーティーの時に使われていたモデルガンも精巧な作りだったが、弾速は遅いように感じた。

 

(いくらM40とはいえモデルガンだ、本物より弾速は出ないはずだ)

 

本物のM40より弾速が遅いなら、九条先輩がトリガーを引くタイミングを見誤らなければ、恐らく避けられる。

 

「里紗、振り落とされないように俺にしっかり捕まれ」

「え?」

 

俺は九条先輩を直視する、九条先輩もスコープ越しで見ている俺に気づいたようでスコープから目を離し驚いているが、再びスコープを覗いてトリガーを引く。

 

「キャッ!?あんた急に止まらないでよっ!」

「ッ!?」

 

俺は一度立ち止まり後ろへバックする、玉は外れて地面に着弾して、地面に白い煙が舞う、なるほど目眩しね。

 

「悪いが、全力で走るぞ 」

「ちょっ、優斗!?」

 

俺はゴールまで全力で走る、そして九条先輩がボルトアクションをして再び狙いを定める前にゴールする。

 

『時雨ペアが1位でゴールっ!!』

「…あんた、ちょっと乱暴すぎない?」

「1位になったから許して欲しいな」

 

ゴールした俺は里紗を下ろしていると、おおっ!と言う声が聞こえてくる、振り返るとそこには体育着が破れて下着姿の沙姫さんがいた。

 

「綾!大丈───…」

「すみません沙姫さん、今見た事はすぐに忘れます」

「いやぁぁあぁぁぁ」

『転んだスキに別のペアが2位でゴール!!』

 

倒れていたリトとララさんペアと沙姫さんと藤崎先輩ペア以外、全員ゴールしてしまった。

後で事情を聞いたが、どうやらリトがコケて、ララさんがその拍子に沙姫さんの体育着を掴んで破いたらしい。

 

その後もスポーツフェスタはどんどん進んで行く、徒競走が終わりパン食い競走では新井さんが1位になった。

 

「ほひはめうんみてた?」(時雨くん見てた?)

「ごめん、なんて言ったか全然わからない」

 

校舎の近くで新井さんはパンを食べながら話しかけてくる、新井さん、食べてから話そうか。

新井さんはパンを食べ終わると再び俺に話しかけてくる。

 

「時雨くん、見てた?」

「うん、見てたよ、1位になるなんてすごいね」

「じゃあさ!ご褒美くれない?」

「ご褒美?」

 

ご褒美って何もあげるものないけど?

 

「わ…私の、あ…頭撫でてよ…」

「はい?」

「体育祭が始まる前に女の子の頭撫でてたじゃん」

 

見られてたのか、まあ、それくらいなら全然いいか?

 

「わかった、こっち来て」

「え?ホントにいいの!?」

 

俺の言葉を聞いて、新井さんは笑顔で近づいてくる、俺は左手を伸ばして頭を撫でる。

 

「…んっ」

「こんな感じでいいかな?」

「あと30秒ぐらいやって…」

「いや長くない?」

その後、30秒ほど頭を撫でて頭から手を離すと新井さんは顔を赤くして俯く。

 

「…これ…良い」

「それは良かった」

「聞こえたの!?」

「しっかり聞こえた」

「っ!?私戻るね!!」

 

独り言を聞かれたのが恥ずかしかったのか、走ってみんなの元へ戻っていく、俺も戻るか。

みんなの元へ戻ろうとすると、手を引っ張られ校舎の中へ引き込まれる。

 

「たくさんの女の子とイチャイチャするのは楽しいかしら?」

「…御門先生」

 

御門先生は俺を壁にまで引き寄せると御門先生の手がドンっと突き迫る。

 

「あの……何をして…」

「他の子達と楽しそうにイチャイチャしてる所を、見せつけられて妬けちゃったわ」

 

そういいながら、御門先生は俺の顔に近づいてくる、学校の生徒は全員外にいるとはいえ、またキスされるのか?

 

「ハムッ」

「やめ───っ!?何を…」

 

キスされると思った俺は顔を背けると御門先生はそのまま耳に甘噛みしてくる。

 

「あなた本当に耳が弱いのね、じゃあこんなのはどうかしら?」

 

御門先生はそういうと耳の中に舌を入れてくる、抵抗しようで手で押し退けようとするが、力が入らず取り押さえられる。

 

「ッ!?やめ…ろ」

 

力が抜けて座り込みそうになると御門先生は俺の足の間に股を入れて逃がさないようにしてくる、そしてそのまま御門先生は耳を舐め続ける。

 

「なにをしているのですか、ドクターミカド?」

「…ヤミちゃんに美柑ちゃん」

 

御門先生が声をした方を見ると美柑と体育着を来たヤミさんがいた。

 

「優兄のこと、離して貰えますか?」

「これからがいい所なのに…」

「ドクターミカド、離れてください」

 

美柑とヤミさんの殺気が尋常じゃない。

 

「…残念だけど、今日はここまでね」

 

御門先生が俺から離れると俺は体に力が入らず、そのまま床に座り込む。

 

「時雨くん、また大人のキスしましょうね?」

「「は?」」

 

御門先生は美柑とヤミさんに見せつけるように唇を舐めてこの場を去る。

 

「ドクターミカド、あなたまで優斗を…」

「また、ライバルが増えた…」

 

美柑とヤミさんが何かを呟く、俺は壁に手を付きながら何とか立つと二人が近づいてくる。

 

「優斗、説明してください」

「嘘つかないでね、優斗?」

 

俺は二人に囲まれる。

 

「…今話さないダメ?」

「今話して(ください)」

 

数週間前にあったケイズの事件を話す、もちろん俺が戦ったことは話さなかった。

 

「それでキスをされたと?」

「…そうだよ」

「ドクターミカドとえっちぃキスをしたのですね?」

 

美柑とヤミさんは顔を見合わせる。

 

「ヤミさん、これは…」

「はい強敵ですね、美柑、やはりここは一時的でいいので共闘しませんか?」

「…そうだね、ヤミさん───」

 

美柑とヤミさんが二人で何かを話し合っていると外から声が聞こえてくる。

 

「リト!どうしたの!?」

 

競技中にリトが何かあったらしい。

 

「二人とも話はあとにして行こう」

「ヤミさん、この話は後でしよ?」

「そうですね」

 

二人がなんの話をしていたのかわからないが、俺達はリト達の元へ向かった。

 

「リト、何があった?」

「私を庇って…」

「足くじいちまったみてーだ…」

 

説明を聞くと男女混合1kmマラソンで、別の走者とぶつかりそうになった西連寺さんを庇ってリトが怪我をしてしまったらしい。

 

「保健室に連れていくわ」

「私も行くよ!」

 

西連寺さんの言葉にララさんが同行しようとするとリトがそれを制止する。

 

「大したことねーって…それより次の競技ララ、出るんだろ、頼んだぜ」

「リト…」

 

ララさんは心配そうにリトを見つめている。

 

「大丈夫だよ、リト!ちょーどあんたの代役連れてきた所だから」

 

美柑がそういうとヤミさんが前に出てくる、ヤミさんが体育着を着ていたのはそういうことか。

 

「ヤミさん、出てくれるの?」

「優斗、私は出ますよ、でもその代わり美柑、約束忘れないでくださいね?」

「わかってるよ、ヤミさん」

 

約束?一体なんの約束をしたんだ?

 

「コーチョーが体操服貸してくれたの!」

「いや~お似合いで何よりです!!」

 

色々犯罪臭がするんだが、大丈夫か?

 

「ところでヤミさん!それ、″私物″なんで後で返してくださいねっ!洗わずに!!」

「断ります」

「ぎにゃぁあぁぁあぁぁ」

「私物って…校長…」

「頼むから早く捕まってくれ」

 

ドン引きする古手川さん、今回ばかりは俺もかなり引いてる、こいつ、マジでなんで捕まらないんだ?

リトは西連寺さんに任せることになり、俺達はクラスの待機場へ戻ることになった。

 

『次の種目は男女混合しっぽ取りゲームです!』

「ヤミさん、一緒に出ようか?」

 

せっかくならヤミさんにも体育祭を楽しんでもらいたい。

 

「…わかりました」

「もしかしてまだ怒ってる?」

「…別に怒ってません」

 

ヤミさん怒ってる時のセリフだね、さてどうしようかな。

 

「ヤミさん、あの───」

「今度、あなたの家に泊まりに行きます」

「はい?」

 

ヤミさんが俺の家に泊まりに来る?え、ゲームとか何もないけど?

 

「結城家じゃなくて、うちに?」

「はい、それと一日私に付き合ってください、それでドクターミカドの件は許します」

「一日付き合うのは構わないけど、泊まるのは…うちには何もないけど、それでも良ければ───」

「いいと言いましたね、日程は決まり次第連絡します、その日は必ず空けといてください」

 

ヤミさんが今度うちに泊まりに来る&一日出かけることになった。

 

「優斗、早くスタート地点に行きましょう」

「そうだね、行こうか」

 

俺とヤミさんがスタート地点へ向かうと先にララさんが待っていた。

 

「あ、やっと来た!こっちだよ!ユウト、ヤミちゃん!」

 

俺たちに向かって「こっちだよー!」と全力で手を振るララさん、ララさんに近づくとそこには沙姫さんと九条先輩がいた。

 

「ララ!先程の屈辱、忘れてなくてよ!」

「沙姫?」

「全力でかかってきなさい!この競技で貴方に勝つことで復讐とさせてもらいますわ!」

 

沙姫さんはララさんに宣言する、隣にいた九条先輩も俺に近づいてきた。

 

「…君もこの競技に出るのか?」

「出ますよ」

「君はおんぶ競走の時、私の狙撃を躱したな、あんなこと普通の高校生にはできない、いくら君が時雨でもだ」

 

九条先輩は間違いなく俺を怪しんでいる、まあ、普通モデルガンとはいえ躱すのは難しいのだろうな。

 

「沙姫様この競技、私の自由にやらせて貰えませんか?」

「凛、どうかしましたの?」

「本気の彼と戦ってみたいのです、我儘をお許しください、沙姫様」

 

九条先輩は沙姫さんにお願いする。

 

「…わかりましたわ、凛」

「沙姫様、ありがとうございます」

「優斗!凛のためにあなたも全力を出しなさい!」

 

沙姫さんに全力を出せと言われたけど、この空気本気で戦わないとダメか、それに本気でやらないと九条先輩が納得しないか。

 

「わかりました」

「…君の全力見せてもらう」

 

それだけ言って沙姫さんと九条先輩は自分たちのスタート地点に戻っていく、後ろを見るとハチマキを持って困った顔をしているヤミさんがいた。

 

「優斗、これを腰につけるのですか?」

「そう、相手のシッポを奪えば勝ち、奪われたら負けだ」

「…変わったゲームですね」

ヤミさんにルールを説明していると猿山のナレーションが聞こえてくる。

 

『男女混合シッポ取りゲームのルールを説明します!今回、各クラスから三名の生徒に参加してもらい、バトルロイヤル形式で戦ってもらいます』

 

バトルロイヤル、最後の1チームになるまでやるのか?それに校庭で各クラス、三人1チームとなると30名以上参加していることになる。

 

『この男女混合シッポ取りは相手のシッポを取ることが出来れば、どんなことをしても構わない、なんでもありのルールです!』

 

なんでもありだと、それだとトランスとかララさんが発明品を───

 

『それでは開始していきましょう!よ───い、スタート!』

「よーしがんばるぞー!」

「倒します!」

 

スタートの合図と共にララさんとヤミさんは駆け出していく。

 

「まあ、さすがに二人とも自重するよな?」

「いきなり余所見か?」

 

こちらに全力で走ってきた九条先輩の手が俺のシッポに向かってくる、俺はその手を躱して九条先輩を見る。

 

「他の生徒ガン無視の最短で来ましたか、ガチですね?」

 

 

~九条side~

 

 

こちらを見ていなかった時雨優斗のシッポに向かっ向かって手を伸ばすが、何事も無かったように躱される。

 

「ないとは思うが、君が他の生徒に倒される前に倒しに来た」

「なるほど、それで最短できたと」

 

私は構えて戦闘体制に入る、彼の強さがどんなものか分からない、だがクリスマスパーティの時に1つだけわかったことがある、彼は速い、それも気づいたら武器が取られていたほどに…

 

「空手ですか、剣道に狙撃の腕といい、空手の心へもあるんですね?」

「…なぜ空手だとわかった?」

「その構え方は空手のオーソドックスな構え方です」

 

彼は観察眼にも長けていると思っていたが、構えだけでバレるとは思っていなかった。

 

「来ないんですか?」

「………」

 

時雨優斗は構えることなくただ立っているだけ、なのになんだ?このプレッシャーは、それにいつもと雰囲気も違い、全く隙がない。

 

「じゃあ、俺から───」

 

彼が話した瞬間、私は距離を詰めて飛び膝蹴りをする。

 

「なっ!?」

「良い膝蹴りですね」

 

時雨優斗は何も無かったように私の飛び膝蹴りを受け止める、私は瞬時に離れて右手で正拳突きを、彼に向かって叩き込む。

 

「ッ!?」

「容赦ないですね?」

私の正拳突きは彼に右腕を掴まれたことによって止められる、私は掴まれてない方の左腕を使い、そのまま彼の顔に向かって裏拳をする。

 

「甘いですよ?」

「これもダメか!」

 

裏拳した腕も捕まれ、私はそのまま地面に倒される。

 

「ッ!?」

「降参ですか?」

 

時雨優斗は片手で私の両腕を抑えて、顔に向かって突きをするが当たる直前で止める。

「俺はこの体育祭に優勝しないと行けませんが、これ以上、九条先輩に手荒な真似はしたくありません、負けを認めてください」

 

私自身が理解してしまった、彼には勝てない。

 

「今だァァ隙ありぃぃぃぃ」

「「「さすが弄光センパイ!!卑怯なことを平然とやってのける!!!」」」

 

たしか3年の弄光泰三だったか?が時雨優斗に向かって走ってくる。

 

(時雨優斗の視線が弄光泰三に向いた今ならっ!)

 

倒れている私は脚で時雨優斗を蹴るが、それすら時雨優斗によって防がれてしまう。

 

「くっ───!?」

「九条先輩、考えは悪くなかったですよ」

 

時雨優斗はそういうと私を解放する、解放された私は彼から一度距離を取る。

 

「…邪魔するなよ?先輩」

「うぉぉぉぉ───グァッ!?」

 

時雨優斗は弄光泰三に回し蹴りをする、回し蹴りは弄光泰三に当たりって軽く吹き飛ぶ、今の回し蹴りはなんだ?父上でもあんな動きはできない。

 

『3年の弄光先輩が脱落だっ!』

 

ナレーションが校庭に響き渡る、弄光泰三は気絶しているようだ。

 

「手加減したので弄光先輩は大丈夫ですよ、それで九条先輩、まだやりますか?」

 

時雨優斗は私を見る、彼の左手にはシッポが握られていた、手加減しただと、あれが本気じゃないのか?それにまさか、さっきの回し蹴りをした時にシッポを奪ったのか?

 

「諦めてくれた方があり───」

「私はまだ負けてないっ!」

 

彼の言葉を遮り、自分に言い聞かせる、負けるわけにはいかない!我儘を許してくれた沙姫様の為にも!!

 

「わかりました、俺も負けるわけにはいかないので…大人気なく行かせてもらう」

 

彼の雰囲気がまた変わった、彼は手を貫手に変えて突きの体制に入る、それが君の本気なのか、時雨優斗。

 

(普通に攻撃しても彼には勝てない、なら彼の腕を掴む!)

 

私は構える、突きを利用して背負い投げをする為に、この考えは甘かったとすぐに知ることになる。

 

「チェックメイト」

「…は?」

 

突きをする為に踏み込んだ時雨優斗は、目の前から姿を消し気づいたら背後にいた、何が起きた?まさか、目で追えなかった?

 

「勝敗は着きましたよ、九条先輩?」

 

彼の手には私のシッポが握られていた。

 

 

~優斗side~

 

 

人数が多く客席から目立たないだろうと思い、つい本気でやってしまった。

 

「…私の負けだ」

 

九条先輩も負けを認めて座り込む、恐らく勝てないとわかっていたはずなのに、最後まで立ち上がって俺を迎え撃とうとカウンターの構えを取っていた。

 

「君の戦い方は完成されている、とても普通の学生にはできるようなものではない」

「そうかもしれないですね」

「…君は一体何者なんだ」

「………」

 

御門先生には正体がバレていたから話したが、九条先輩にバレていないから話すわけにはいかない。

 

「答えるつもりはない───」

「あれ~おっかしいなぁ?」

 

九条先輩がなにか話そうとしていると後ろからララさんの声が聞こえてくる、後ろを見ると手が大量についたメカが暴れている。

 

「あれ、なんですか?」

「私に聞いても分かるわけないだろ!」

 

俺は思わず九条先輩に聞いてしまう、手が大量についたメカはものすごいスピードで九条先輩に向かってくる。

 

「九条先輩、すみませんっ!」

「なっ!?」

 

俺は九条先輩を抱えて手を避ける。

 

「こ…これは…早く、お…降ろせ!」

「今降ろしたらあのメカに捕まりますよ?」

 

俺はララさんに走って近付いて理由を聞くと、ララさんは困った顔をする。

 

「あはは、制御出来なくなっちゃった!」

「なっ!どうするのよこれ!」

 

古手川さんの叫びが校庭に響き渡る、メカを止めた時には校庭はめちゃくちゃになっていてスポーツフェスタは中止になった。

 

「時雨優斗!」

 

放課後、九条先輩に呼び止められる。

 

「…君につたえわすれていたことがあった」

「…なんですか?」

「君が何者なのかわからないが、次は負けない!」

 

九条先輩は顔を赤くして俯く。

 

「それと…その…君にちゃんと礼を言わなきゃと思ってな」

「礼?なんのお礼ですか?」

「さっき君は私をあのメカから助けてくれただろ、だから…その…あ…ありがとう」

 

それだけ言って九条先輩は走って去っていく、てっきり何者か問い詰められると思っていたけど、お礼を言われるとは思わなかった。

 

「体育祭、楽しかったな」

 

この世界に来て戦闘以外で全力を出したのは何時ぶりだろうか、輝が教えてくれた学校生活も意外と悪くないな。

 

 

おまけ

 

 

「はい、ヤミさん今日約束した優兄の寝顔写真!」

「ありがとうございます、美柑」

 

ヤミは体育祭に参加したら、優斗の寝顔写真を美柑から貰う約束をした為、体育祭に参加していた。

 

「これ…いいですね」

「そうでしょ?」

 

ヤミは優斗の写真を見て笑みを浮かべる。

 

「ヤミさん、共闘の話だけど」

「わかっています、ドクターミカドや籾岡里紗などに優斗を取られないようにする為ですよね?」

「優兄を私とヤミさんで包囲してほかの人を寄せつけないようにする」

 

二人は手を取り合い話し出す。

 

「最終的には優斗を二人だけの物にするですよね?」

「さすがヤミさん話が早いね!早速作戦会議しようか?」

「そうですね」

 

優斗が知らない場所で秘密の取引と共闘関係が結ばれていた。

 

 

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