ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~   作:アイスが食べたいマン

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今回も長いです。


~トラブルクエスト、襲いかかる記憶~

 

「へぇ~双子のプリンセスは面白いこと考えるね?」

 

ここはデビルーク王室の一室、どこから入ってきたか不明だが男は何かのプログラムをいじっている。

 

「この前ケイズくん達を始末した日に、双子のプリンセス達が話していたのを盗み聞きしてよかったよ~」

 

男は独り言をいいながら、作業を進めていく。

 

「これでいいかな~さて、キミが本物の優斗くんか、確認させてもらうよ?」

 

そういって男は笑いながらその場を去る。

 

「もう、ナナったら一人で勝手に地球見物に行くなんて!」

 

悪魔のしっぽが生えたピンク髪の女の子が部屋に入ってくる。

 

「あら、電源をつけっぱなしで行ってしまったかしら?」

 

彼女は異変に気づくことなく、そのまま作業を再開する。

 

 

 

スポーツフェスタから数週間たった、あれから以前旧校舎で出会った、お静さんが御門先生が作ったバイオロイドで霧雨静として転校してきた。

 

「…手紙か」

 

教室で授業の準備をしていると机から宛先不明の手紙が封筒に入っている、ラブレターにしては随分とシンプルだな。

 

「招待状?このカードを開いてください?何だこれ?」

 

開けてみると予想もしてなかったことが書いてあった、ララさんの発明品か?

 

(……まあ、開ければわかるか)

 

ララさんの発明品なら、おそらくリトも巻き込まれてるだろうから俺も行くか。

 

 

───時雨優斗がエントリーしました!───

 

 

招待状を開くと辺り一帯が光に包まれ、ナレーションが聞こえてくる、エントリーね、一体何が始まる?

 

「……は?」

 

目を開けると教室ではなく、そこには草原が広がっていた、俺は、一体どこに飛ばされた?

 

「キャ───ッ」

 

聞き覚えのある悲鳴が上から聞こえてくる、上を見ると古手川さんが降ってきた。

 

「大丈夫?古手川さん」

「…な!!」

 

俺は落ちてきた古手川さんを抱えるとそれに気づいた古手川さんは顔を赤く染め上げる。

 

「あ…ありがと」

「………」

 

お礼を言われるとは思わず、無言になってしまう、てっきり早く下ろしてと言われるか、ハレンチな!と言われると思っていた。

 

「な…なんでそんな見つめるのよ!」

「ごめん、なんでもないよ」

 

俺は古手川さんを下ろして再び周りを見る、古手川さんもここが学校出はないことに気づいて、周りを見渡す。

 

「え…?どこなの、ここ…」

「俺も分からない、今、古手川さんが手に持っている招待状を開いたらここに居た」

 

俺は手に持っている招待状を古手川さんに見せながら伝えると、古手川さんは招待状を開いて確認する。

 

「時雨くん!中に何か書いてあるわ!」

「中に?」

 

古手川さんに言われて、俺も招待状を開いて確認すると中にはこう書いてあった。

 

これは体感RPGです。クリアするまで元の世界へ戻れません。

 

「…RPGね」

 

たしかリトや美柑が前にそんな感じのゲームをやっていた気がするけど、まさかここは、ゲームの世界か?

 

「空に文字が!?」

「文字?」

 

古手川さんに言われて空を見るとそこには″敵が現れた″と書いてある。

 

「キ──ッ!」

「古手川さん!」

 

小さくな黄色いモンスターが飛び出して古手川さんへ向かっていく、俺は古手川さんの前に出てモンスターへ、ストレートを食らわせる。

 

「古手川さん、そのまま俺の後ろに隠れて」

「え!?う…うん」

 

俺は構えてモンスターを見るが、敵を倒したというテキストが表示されてモンスターはコインに変わった。

 

「一体どういう生き物なの…?」

「…わからない」

 

ストレート一発で倒れたのか、それにこれはコインというより、お金か?

 

「時雨くん、見て!向こう…街があるわ…」

 

古手川さんが見ている方向を見ると街が見える、さっきまで街なんて見えなかったが、いつの間に?

 

「とりあえず、行ってみようか」

 

俺と古手川さんはなにか手がかりがないかを探しに街まで歩いていった。

 

「やぁ!ストッタの街へようこそ!!」

「ストッタ…って、ここ日本じゃないんですか?」

「やぁ!ストッタの街へようこそ!!」

「いえ、そうじゃなくて…」

「やぁ!ストッタの街へようこそ!!」

「なっ何この人!!非常識だわ!!!」

「…古手川さん、とりあえず落ち着こうか」

 

ずっと同じ言葉を話す街の人に対して声を荒らげる古手川さん、日本じゃないのは街を見ただけでわかるよと思うよ、古手川さん。

 

「多分、ここゲームの世界だよ」

「ゲームの世界!?ってことは…やっぱり、ララさんの仕業?」

「おそらくね」

「まぁ、他にはありえないものね」

 

ララさんが地球に来てから結城家のゲームでよく遊んでいた為、私もゲームを作ってみたいってなったのかもしれない、でもそれにしては少しおかしい気がする。

 

「優兄───!」

 

俺を呼ぶ声が聞こえてくる、呼ばれた方を向くと美柑とリトと西連寺さんの三人がこちらへ向かって歩いてくる。

 

「やっぱり優兄もいたよ」

「美柑、そっちにララさんはいないのか?」

「あれ?優兄の方にはいないの?」

「いない」

 

俺と美柑が話していると、古手川さんが不思議そうな顔をして話しかけてくる。

 

「妹さん…?」

「違う、リトの妹だ」

「あなた、人の妹に優兄って呼ばせてるの?まさか、そういうのが好きなの?」

「待て、すごい勘違いしてる、リトとは幼なじみで───」

 

古手川さんにすごい勘違いをされてしまった為、俺とリトの関係を話すと「あぁ…そういう事ね」と言われる。

 

「とりあえず、ララを見つけて元の世界に帰らねーとな」

「ホントにララさんなのかな…」

 

リトの言葉に西連寺さんが考察する。

 

「もしララさんなら、クリアするまで元の世界に戻れないとか…変じゃない?いつもみたいに発明品のうっかりとかならわかるけど………」

 

西連寺さんの考えは正しいと思う、ララさんはクリアするまで元の世界に戻れないなんてしない、それに何よりララさんなら、プレイヤーとして参加するだろう。

 

「え…でも…それじゃあ誰が…?」

 

リトが呟くが問題はそこだ、もしもララさんじゃないなら、″誰が何の目的でこんなことをしたのか″が分からない。

 

「で…これからどーするの?」

 

俺が考えていると美柑がみんなに向けて聞いてくる。

 

「とりあえず、このRPGってやつを進めるしかない」

「そーだな、クリアしねーと元の世界には戻れねーって事だし…」

 

俺は正直RPGはよく分からないから、攻略の為の戦力になれるかどうか、戦闘ぐらいは役に立つと思うが…

 

「ちなみに西連寺と古手川はゲームとかやる?」

「うちはゲーム機がないから…」

「私は小さい頃、お兄ちゃ…兄と一緒にやったことあるけど…RPGとかさっぱりだわ…」

 

西連寺さんも古手川さんもゲームは未経験者らしい。

 

「へー古手川、アニキとかいるんだ」

「なによ、いちゃ悪い!?」

「いや…別に悪いなんて…」

「結構兄弟率高いんだね、私もお姉ちゃんいるし…時雨くんは兄弟いるの?」

「…いないよ」

 

俺にはそんな人、もういない。

 

───優斗っ!あっちに行ってみよ?

 

───あ、優斗またアイス食べてる!食べ過ぎは体に良くないからダメだって言ってるのに…

 

─── 優…斗。たく…さんの人を、すくってあ…げて?そして、⬛︎⬛︎⬛︎より⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎に

 

…⬛︎⬛︎さん。

 

「優兄、どうしたの、大丈夫?」

「…大丈夫だよ」

「…ホントに?」

 

美柑は俺を心配そうな顔をして小声で聞いてくる

 

「優兄、泣きそうな顔してたよ」

「本当に大丈夫だよ、美柑」

 

俺はそういいながら、美柑の頭を撫でる。

 

「優兄、最近よく頭撫でてくるけど、なんで?」

「ごめん、嫌だった?」

「…イヤじゃないけど、むしろ──」

 

美柑の言葉が後半聞き取れなかったが、なんていったんだ?

 

「時雨くんはゲームをってあなたは何をしてるの?」

「美柑の頭を撫でてる」

「こんな時にあなたはなにをしてるのよ!ってそれよりもあなたはRPGやったことあるの?」

 

美柑と話していると古手川さんに質問される。

 

「リトの家でゲームはやったことあるけど、RPGはない」

「まぁ、優斗の家にゲームないしな」

 

俺の家にゲームが仮にあったとしても俺はやらないと思う。

 

「こーなると経験者はオレと美柑だけか、まぁ経験が役に立つかわかんねーけど」

「まぁ、あんた達旅人かい?」

 

俺達が話していると村人が話しかけてくる。

 

「旅をするなら、職業を設定しないと戦いに勝てないよ!町外れに転職屋があるから行っといで!!」

「転職屋?」

 

職業ってのがよく分からないが、転職屋で職業を決めないといけない様だ。

 

「とりあえず、転職屋に行ってみるか?」

「そーだな」

 

俺達は町外れにある転職屋へ向かうことになった。

 

「ようこそ!転職屋へ!」

 

転職屋を見つけて中に入ると同じ顔をしたバニーガールがたくさんいる。

 

「ここでは、プレイヤーそれぞれに適した職業を設定できまーす!職業を設定するとその職業に合わせた身体能力や特技・魔法などが使えま~す、設定しますか?」

「あ…じゃ、とりあえずハイ」

「5名さまごあんな~い、それでは転職ON!!」

 

バニーガールの問に美柑が承諾するとバニーガールはレバーを下ろす、俺達は光に包まれた。

 

ゆい:武闘家 Lv1

みかん:魔道士 Lv1

はるな:勇者 Lv1

 

「え…私勇者!?」

「な…何なのこのハレンチな格好はっ!!」

「いいね…これ」

 

三人の姿はそれぞれ変わっていて、テキストには職業とレベルが表示される。

 

「ちょ…オレのこの職業なに!?花屋って!!

 

リト:花屋 Lv1

 

「職業は自動で決定しまーす」

「…自動ね」

 

リトは自分の役職に納得いってないようだ、正直俺も納得していないが…、俺は自分の姿と役職を見る。

 

ユウト:神父 Lv1

 

…正直最悪な気分だ、できるなら今すぐ職業を変えたい。

 

「…職業は変えることは───」

「さぁ、これで冒険の準備はOK!!がんばって北の大地にいる大魔王を倒してくださいねー!!」

 

俺の言葉を遮り、俺達はバニーガールに無理やり外へと追い出される、これでやるしかないのか、正直かなり気が進まない。

 

「とりあえず、次の街に行くしかないか」

「結城くんの言った通りその方が良さそうね」

「そうだね、次の街に行きながら色々確認してみよ特技とか魔法を確認して見ないとね」

「………」

 

リト達が次の街に向かう為に話している、俺はそれを無言で眺めることしか出来なかった。

 

「…優兄」

 

そしてこの時の俺は気づくことができなかった、美柑が俺を見て心配そうな顔をしていたことに…

 

「この森を抜ければ次の街だってさ」

「それにしても、いきなり大魔王を倒せって…ムチャクチャな話ね」

「もしかして大魔王ってのがララさんなのかな?」

「ララさんならありえるけど…どうかしらね」

 

古手川さんの言った通り、もしプレイヤーで参加する可能性があるなら、それも有り得るな。

 

「………」

 

俺は歩きながら、特技と魔法を確認する。

 

神の御加護 神の天罰

神の祝福 ⬛︎⬛︎の願い

俺は神への忠義なんてとっくに捨てている、それなのに俺はまた神なんかに…

あの人は神に忠義を尽くしていた、なのに神は救わなかった、神なんざいない、そんなものになにかを祈っても意味なんてなかった。

 

「時雨くん、結城くん…前歩いて…ってどうしたの時雨くん!顔色悪いわよ!?」

「ホントじゃねーか!?優斗、お前体調悪いのか?」

「…なんでもない、大丈夫だ、とりあえず、俺とリトは古手川さんを見ないように前を歩くから」

「………」

 

それだけ伝えて俺はリトを連れて前を歩き出す、ダメだ、昔の事ばかり思い出す。

 

「ひぁっ!?」

 

俺とリトが前を歩いていると、後ろから古手川さんの悲鳴が聞こえた。

 

「なななっ何するのよ、ヘンタイ!!」

「え!?何で!?」

 

古手川さんがリトに掴みかかって怒り出すと後ろから、敵が現れた!とテキストが表示されると共に三体のモンスターが現れた。

 

「きゃあっ」

 

一匹が古手川さんの腕を掴むも古手川さんが反撃の蹴りを入れてペロモンAを倒した!というテキストと共に一体敵を倒す。

 

「え?」

「おおっ、さすが武闘家!!」

「…リト、興奮しすぎだ」

「よ──し!!オレも!!」

 

リトは興奮しながら、何かを持ちベロモンBへと向かっていくとリトはジョウロを使ったとテキストが表示された。

 

「ガァァァァ」

「…ってやっぱ意味ねー!!」

 

ジョウロを使ったリトはベロモンBを怒らせて攻撃を受けそうになる

 

「結城くん!!」

「ダメだ、西連寺さん、その距離だと間に合わない!」

 

西連寺さんがリトを助けに向かうが、離れている為、どう足掻いても間に合わない、…仕方ない、使ってみるか。

 

「主よ、彼を守り、彼女に力をお与えください」

 

【ユウトは神の御加護を使った!】

 

俺は持っていた聖書を開いて唱えると、リトを守るようにバリアが展開されて、西連寺さんは動きが早くなり、持っていた剣が光り出す。

 

「なんだっ!?」

「え?」

 

リトは展開されたバリアに驚き、西連寺さんは自分が早く動け、敵を一撃で倒したことに驚く。

 

「今のリトのバリアと西連寺さんの動きは優兄が呪文を唱えたから?」

「す…すげーユウトはサポート系の職業なのか!」

 

なるほど、俺はサポートをしてリト達を強くするタイプなのか。

 

「よ…よし美柑、あと1匹だ!魔法で倒せ!!」

「うん!えーと、今のレベルで使える魔法は……」

 

美柑は魔法書と書かれた本を必死で読む。

 

「とりあえず、これでいいや!!ププリン!!」

 

なんだか、プリンが出てきそうな魔法だな。

 

「どんな魔法だ!?」

「えっ!?」

 

プリンと音を立てて古手川さんの胸元がはだけてしまった、この呪文何に使うんだ?

 

【ペロモンCは見とれている】

 

「へっ」

 

リトは顔を真っ赤にして爆発し、ペロモンCは見とれていた、美柑はあまりの衝撃に目が点になっている。

 

「ハレンチな─────っ」

 

バゴォと音を立て、1番近くにいたリトが殴られてペロモンCと一緒に吹っ飛ばされる、古手川さんから少し離れた為、殴られずに済んだ。

 

「見られ…見られちゃった…時雨くんに…」

「ゴ…ゴメンなさい古手川さん!?あんな魔法だなんて知らなくて…」

 

美柑がうずくまった古手川さんに謝りに行っているとペロモンCが立ち上がる。

 

「グワッ!!」

「モンスターが立ち上がってる!逃げて!美柑ちゃん、古手川さん!?」

「美柑!古手川さん!」

「え?」

 

俺は美柑と古手川さんの向かい、前に立つ。

 

「主よ!このモンスターに報い与えよ!」

 

【ユウトは神の天罰を使った!】

「ぐががあぁあがぁ」

 

俺が呪文を唱えるとペロモンCに電撃が走り、動きが止まる、俺はそのままペロモンCに向かって回し蹴りをするとペロモンCは倒した!とテキストが表示される。

 

「…大丈夫か?美柑、古手川さん」

「優兄、私は大丈夫だよ」

「……」

「古手川さん?」

 

古手川さんは無言で俺を見つめる、おそらくさっきのことだろうな。

 

「…そのあなたは…見たの?」

「不可抗力で見たから、一発殴っていいよ、古手川さん」

 

俺はそういって目を閉じるが何もされない。

 

「…今、助けてくれたことでなかったことにしてあげる…」

「ありがとう、古手川さん」

「なに…この雰囲気…まさか古手川さんも優兄が?」

 

俺達が話していると美柑が小声で何かを呟いている、なんて言ってるかまでは聞き取れないな。

 

「リト、無事か?」

「優斗、オレ達こんな調子でクリアなんてできるのか…」

「…わからない、けどやるしかないだろ」

 

この世界から出来るだけ早く抜け出して、こんな職業とは早くおさらばしたい、だからやるしかないんだよ。

 

 

 

 

一方、北の大地、魔王城では。

 

「なんだアイツ!おっぱい見て顔赤くして、こんな調子で大丈夫なのか?」

「そんなに心配することないですわ、なんといってもこちらには、切り札があるがあるのですから」

 

フードを被って姿を隠した二人が話しあっている。

 

「あとは大魔王様の働き次第、キョーコ様、湯加減はいかがですか?」

「ん───ちょーどいいかな!」

 

キョーコ様と呼ばれた人物は一人で大浴場に入っていた。

 

「うふふ、ゲームのキャラがお風呂入るなんておかしいと思う?」

「いえ、キョーコ様はこのゲームで唯一のカスタムキャラですから」

 

キョーコの質問にフード被った緑色のアクセサリーを身につけた人物は答える。

 

「…にしてもさ、なんでこいつのスキルは1つ文字化けしてるんだ?」

 

水晶に映し出されている優斗をみてフード被った赤色のアクセサリーを身につけた人物が質問する。

 

「え?ナナが入れたんじゃないの?」

「私は知らないぞ!モモじゃないのか?」

「…ナナじゃない?もしかしてバグかしら?」

優斗のスキルを見て話す二人を遠くから見ている人物がいることを。

 

「ふっ」

 

彼女達はわかっていなかった、カスタムキャラはキョーコの他にもう一人いて、隠れて密かに彼女達を観察していることに。

 

 

 

 

【モンスターを倒した!】

【リトのレベルが上がった!】

 

「ふ〜けっこうやっつけたな」

「呪文も少しずつわかってきたよ」

 

【リト:Lv8 HP41/41】

【みかん:Lv8 HP37/37】

 

あれから俺達はモンスターを狩り続けた、そのおかげもあり、レベルと自分たちの能力がわかるようになってきた。

 

「ゲームだけあって攻撃を受けても、あまり痛くないけど、さすがに疲れるね…」

 

【はるな:Lv9 HP37/37】

 

「ところで気になってるんだけど、このHPってのは何なの?」

 

【ゆい:Lv9 HP39/39】

 

「ああそれ、ヒットポイントだよ、ゲームの中での命のポイントみたいなものね」

「無くなったらどうなるの?」

「多分、戦闘不能であーなると思う」

 

リトが指を指す方を見ると3つの棺を引きずって歩いている男がいた。

 

「たしか、転職屋の人が全滅するとスタート地点に戻されるとか言ってたな」

 

【ユウト:Lv9 HP21/43】

 

「なんで時雨くんのHPはそんなに減っているのに、私たちはMAXあるのよ」

「オレ達は攻撃を受けたら、優斗がずっと回復してくれてたからさ、HPがMAXなんだよ」

 

俺のもう一つの魔法、神の祝福は仲間のHPを回復するものだった、みんながダメージを食らう度回復していたこともあり、みんなはHPは減っていない。

 

「どうしてあなたは自分を回復しないのよ」

「…しないんじゃない、できなかった」

「できなかった?」

「この神の祝福ってやつは自分を回復できないみたい」

 

神の祝福は自分を回復することができなかった、それにこの呪文を唱えると何故か少しの間、動くことができない、その為かなりダメージを貰った。

 

「優斗のサポートがなかったら、こんなにレベル上がらなかったぜ、ありがとうな?」

「…そうか」

 

使う度、昔のことを思い出して嫌だったが、リトに感謝されて少しは気が楽になった。

 

「でも優斗のもう一つの文字化けしてる魔法、あれなんなんだろうな?」

「さあな、何をどうやっても使えないからな」

「バグってんのか?」

 

⬛︎⬛︎の願いは使えなかった、文字化けしている理由も使えない理由も分からない。

 

「…とりあえず、優兄のHPを回復させる為にも、早く宿を見つけたいところだけど…」

「見て!次の街だ!!」

 

西連寺さんが次の町を見つけてくれた為、俺達は街へ向かう為に動き出す。

 

「くくっ旅人とは珍しいな…ここはヘボンの村だぜぃ」

「村の名前なんてどーでもいいわ」

「そうそう、早く宿で…優兄!!どうしたの!?」

 

なんでだ?なんでこの村がこの世界にある?この村は…

 

「おにいさん、パンを買ってくれませんか?」

「…は?」

 

声をかけられた方を向く、そこには見覚えのある、一人の少女がたっていた。

 

「な…んで?なんで…君が…ここに?カレンちゃん」

 

俺が任務で助けられなかった少女、カレンちゃんがいた。

 

 

~回想~

 

前世の話だ、俺は輝と駿の三人で任務に当たっていた。

内容は国外へ逃亡した日本人のテロリストの抹殺もしくは捕縛、その潜伏先の可能性が高かった、海外のとある村に俺達は訪れた。

 

「総司令の命令できましたけど、本当にこんな村に国外逃亡したテロリストがいるんすかね?」

「確かにこの村に逃亡すれば、すぐにバレそうだけど…」

「輝、駿、慎重に行くぞ?村に被害は絶対に出すな?」

「言われなくてもわかってるよ、君もテロリストを殺さないようにね?」

 

そんな会話をしながら、俺達は変装して顔を隠し、村へ入っていった、テロリストはすぐに捕まり、俺達はほかの部隊にテロリストを渡す。

 

「おにいさん、これ買ってくれませんか?」

「…これは?」

 

帰還まで少し3日程、自由時間が出来た俺達は、三人で別れて行動しているとボロボロな姿をした少女に話しかけられる。

 

「私のつくったパン」

「…パン?」

 

パンとは言えないほど歪な形をしていて触っただけでわかる、とんでもなく硬かった、少女の後ろを見ると大量のパンの在庫があった。

 

「硬いけど、味はおいしいと思います!あとはえっと…」

少女は頑張ってパンの魅力をアピールする。

 

「だから…その!」

「…それ、いくら?」

「え?」

「全部買うよ」

「本当に?」

「在庫も全部ください」

 

それからだ、帰還までの3日間、少女──カレンちゃんは俺に出会うとよく色んな話をしてくれるようになった。

 

「私ね!お金持ちじゃなくていいから、普通の大人になって、好きな人と結婚して、幸せな生活を送りたいの!」

 

カレンちゃんの夢

 

「…おにいさん、私ね?早く昔のお母さんみたいに元気になって欲しい」

 

カレンちゃんの願いを俺は聞いた。

お母さんは病気で動けず、カレンちゃんが働かないといけないこと、昔のように元気になってほしいことを聞いた。

 

「おにいさん!今から家に来て!お母さんが会いたがってるんだ!」

「…迷惑じゃなければ行くよ」

 

俺はカレンちゃんの家でお母さんにあって気づいてしまった、カレンちゃんのお母さんはもう助からない、手遅れだっということに、そしてお母さんもそれを知っていることに。

 

「…カレンちゃん、今から一緒にパンを作らない?」

「え?」

「美味しいパンの作り方知ってるからさ」

「ホントに!?」

 

だから、俺はカレンちゃんにパンの作り方を教えた、一人でも作れるように、お母さんが安心して逝けるように。

 

帰還する前日、輝からとんでもないことを聞かされた。

 

「優斗、緊急事態」

「なんだ?」

「捕まえた彼がとんでもないことを吐いたらしい」

「とんでもないこと?」

「3日後、この村が戦場になる」

「は?」

 

テロリストの男は笑いながらいったらしい、次のテロで使用する武器と爆弾をこの村で試す為、3日後、この村に仲間が来て村を潰すらしい、そこには他にも逃げていたテロリストが居る。

 

「総司令に今すぐ連絡する、応援を呼んで迎え撃つ」

「…いや、それができないんだ」

「何?」

「総司令から帰還命令が出たんだ、別の国で起きた人質になった日本人を救えってね」

「…この村はどうなる?」

「それなら大丈夫、別の部隊がこちらに配備される」

 

その言葉を聞いて俺は安心した、輝も「この村は大丈夫だよ」と言っていた為、俺達は別の救出任務に行く為、すぐに移動することになった。

 

「おにいさん、行っちゃうの?」

「カレンちゃん、俺達の仲間がこの村を守る為に来るから、大丈夫だよ」

「…うん」

「何かあったら、俺も必ず助けに行く、俺達の仲間が来たら、すぐにこの村から離れるんだ」

 

俺達はカレンちゃんや村の人に全て説明する、村が戦場になること、俺達の代わりに別の仲間が来ることを。

 

「おにいさん、ありがとう!パンの作り方を教えてくれて!お母さん喜んでくれた!!」

「そっか、よかったよ」

「いつか必ず、私もニホンに行くから!その時はニホンの料理を教えて!」

「わかった、必ず教える」

 

この3日後、俺達の代わりに配属されるはずだった部隊は来なかった。

村は壊滅、逃げていた村人とカレンちゃんは銃殺された。

 

 

~優斗side~

 

「ごめん、俺の…せいで…ごめん…カレンちゃん」

 

目の前にいる死んだはずのカレンちゃんの腕を掴み、俺はうずくまる。

 

「優兄!どうしたの!?」

「大丈夫かよ、優斗!?」

 

美柑とリトが俺に駆け寄る。

 

「おにいさん、パンを買ってくれませんか?」

 

カレンちゃんは同じ言葉を繰り返す、偽物だってわかってる、けど俺は…俺は…守れなかった。

 

「結城くん!とりあえず、どこかに入りましょう!」

「あぁ、そうだな!優斗いくぞ!」

 

リトに腕を引っ張られる、カレンちゃんはずっと俺を見て同じ言葉を繰り返していた。

 

「優兄、これお水、少し落ち着いた?」

「ごめん、迷惑かけた」

「時雨くん、あなた本当に大丈夫なの?顔色悪いわよ?」

 

大きな建物に俺は椅子に座らされた、美柑がどこからか水を持ってきてくれて、古手川さんからは心配される。

 

「大丈夫だよ、古手川さん」

「時雨くんが動けるなら、少しこの建物の人にどこに宿があるか聞いてみない?」

「西連寺の言う通りだけど、優斗本当に平気かよ」

「あぁ、動けるよ、迷惑かけて本当にごめん」

「………」

 

俺達はこの建物の人に宿の場所を聞く為、動き出す。

 

「「「いらっしゃいませ───!!」」」

 

建物のエレベーターに乗り扉が開くとそこに広がるのはカジノだった。

 

「こんなところにカジノなんて」

「……カジノ」

 

───良いか?優斗、ここは戦場だと思ってやれ、ディーラーや対戦相手の動きをよく観察しろ。

 

───イカサマを見抜き、全てをベットして相手を潰せ、わかったな?

 

この世界は俺の過去をえぐるような職業や場所や人ばかり出てくる。

 

「あれ?優斗!みんなもどうしたの?」

「…里紗に沢田さん、君たちもこの世界に来てたのか」

「…優兄、また名前呼びしてる人が増えてる」

 

露出が多めのレオタードの姿をした里紗と沢田さんがいた。

 

「な…なんてかっこーしてんだ!おまえら」

「これ!運が上がるラッキーレオタードなんだって!」

 

里紗がポーズをとってこちらを見てくる。

 

「優斗、セクシーな私にときめいちゃった?」

「………」

「ってあんた、どうしたの、顔色悪くない?」

「…気のせいだ」

 

俺は里紗通り過ぎて周りを見渡す、似ている、このカジノも前世で俺が教官に連れていかれた場所に…

 

「ちょっとあなたたち!こんな異世界にまで来てなにハレンチなことしてるの!!」

 

古手川さんの叫びが聞こえてくる、古手川さんの方を見ると里紗と沢田さんにもみくちゃにされている西連寺さんと、何故か古手川さんをしたから覗いているリトがいた。

 

「なに、見てんのよっ!」

「ご…ごめんなさい───っ!!」

 

古手川さんは下から覗いていたリトを踏みつける、一体何してるんだか。

 

「じゃ、私らスロットマシーンしてくるんで!」

「ガッポガッポ稼いでこの世界の男達を跪かせてやるわ───っ!」

「…二人ともやるなら、あの台を狙え」

「「え?」」

 

俺の言葉に二人は立ち止まる。

 

「なんで、あの台?」

「…あの台にはカメラがない」

「え?カメラ?」

「監視カメラで遠隔で操作されてる台がいくつか存在する場合がある」

 

この場所は俺が知ってる場所によく似てる。

 

「それとポーカーやブラックジャックをするならあの台ではやるな」

「なんでよ?」

「ディーラーのトランプカードの配り方、あれはセカンドディールだ」

「セカンドディールってなに?」

「セカンドディールはトランプ配りの際に一番上を配る振りをして二枚目を配るイカサマだ」

「「イカサマ!?」」

 

イカサマと聞いて驚く二人、このイカサマはポーカーにおいては代表的なイカサマだ。

 

「時雨くん、なんでそんなに詳しいのよ、まさかあなた!ギャンブルとかやってないでしょうね!!」

「やってないよ」

 

前世でもやらされてたの方が正しい。

 

───ここでは観察眼と洞察力が身に着けられるのに適した場所さ

 

───これが私の娯楽さ、クズどもが破滅する姿は見ていて気分がいいだろ?

 

再び頭に響く冬華教官の声、今日は本当によく前世を思い出す。

 

「……クッソっ」

「優斗、あんた本当に大丈夫?汗すごいわよ!」

「…疲れてるだけだ、悪い、俺は先に外に出る」

「…優兄」

 

みんなにそういうと俺は出口へ歩き出す、あとからリト達もNPCに宿屋の場所を聞いて戻ってきた。

 

「優斗、宿屋の場所わかったぜ」

「…そうか、ありがとう」

「時雨くんの体調も心配だし、とりあえず、宿屋へ行きましょう」

 

俺達は宿屋に向かっていた。

 

「いらっしゃい!5名様一泊食事付きで、150ラブルになりまーす!!」

 

宿屋に入ると受付にはメガネをかけたおじさんが元気よく話しかけてくる。

 

「じゃあ、これでお願いします」

「まいどーでは2階へどーぞ!!」

「時雨くん、結城くん…」

「え?」

「…何かな」

 

リトが支払いを済ませてくれて、俺達2階へ上がろうとすると古手川さんから声をかけられる。

 

「女ばかりだからって、ハレンチな事したら許さないわよ」

「んな事するかー!!!」

 

さっきのカジノでリトが下から覗いていたこともあって忠告したのだろう。

 

「それと時雨くんは早く寝なさいね、大丈夫って言ってたけど、この村についてから、相当顔色悪いわよ」

「古手川さん、心配してくれてありがとう」

「べ…別に私はあなたを心配した訳じゃなくて、あなたが倒れたら、攻略が───」

「でも、俺は大丈夫だから」

 

俺は大丈夫っという言葉を聞いた美柑は振り返って俺を見る。

 

「大丈夫なわけないよ!」

「…美柑?」

 

美柑が俺に近づいて言ってくる。

 

「この世界に来てから、優兄辛そうだよ、魔法だって使う度に泣きそうな顔してた」

「………」

 

美柑に全て気づかれていた、美柑は今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 

「神父の職業になった時も!この村に来て、NPCの女の子を見た時も!カジノで籾岡さん達にアドバイスしてる時も全部辛そうだった!!」

 

この世界に来た時から、俺の事を美柑はずっと見ていたんだ。

 

「辛いなら、苦しいならそう言ってよ!一人で抱え込まないでよ!」

「美柑、落ち着けって!」

「リトは黙って!」

 

リトの静止を振り払い美柑は続ける。

 

「優兄、昔から私とリトに何か隠してるよね?」

「………」

「優兄が睡眠薬がないと寝れないのはそれが原因なの?」

「は?睡眠薬」

 

美柑の言葉にリトは驚く、なんで美柑が睡眠薬のことを知ってる?

 

「…なんでそのことを」

「前に優兄の部屋に行った時に見つけたの」

 

合鍵を持ってる美柑は何時でも俺の家に来ることができる、きっと俺がいない時に見つけてしまったんだ。

 

「優兄は何に苦しめられてるの?」

「………」

「…私やリトにも話せないことなの?」

「…ごめん」

 

俺は謝ることしか出来なかった。

 

「…私そんなに頼りない?」

「それは違う、美柑には沢山頼ってる、きっと美柑がいなかったら俺は…」

 

きっと俺は美柑やリトに出会わなければ、今頃、既に壊れてた、だからなんとしてでも守りたかったんだ、俺のことを知られたくないんだ。

 

「話してよ優兄、頼ってくれてるなら」

「…それは」

 

全てを話せば、楽になれるけど、話してしまえば春馬さんのことにも巻き込む事になる。

何より話してしまえば、美柑とリトとこれまでの関係性でいられなくなるんじゃないかと思って話せなかった。

 

「もういい!優兄なんて知らないっ!!」

「美柑!」

 

美柑は2階への部屋へ向かって走っていく、リトも美柑の後を追いかけて先に行ってしまった。

 

「………」

「…時雨くん」

「あなた!早く美柑ちゃんを追いなさいよ!」

「今の俺にそんな資格ないよ、古手川さん」

 

追っても話すことなんてできないんだ、なら下手に追わない方がいい、それにそろそろ訪れる、別れの日の前に嫌われておいた方がきっとお互いに楽だから。

 

「ごめん、少し風に当たってくる」

「ちょっと時雨くん!」

「古手川さん、少しだけ一人にしてあげよ?」

 

俺はそれだけ言い残して外へ向かっていった。




思ったより文字数が多くなった為、分けることにします。
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