ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~   作:アイスが食べたいマン

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今回も長いです。


~トラブルクエスト、記憶と教会~

「…ここは?」

 

雪の中、殺し屋から逃げて力尽きた子供は、教会のベットで目を覚ます

 

「起きた!君、大丈夫?」

 

白髪の綺麗な髪で修道服に身を包んだ少女が子供に声をかける。

 

「君は、教会の外で倒れてたの!名前はわかる?親御さんは?」

「っ!?」

 

近づいてくる、少女に子供は後退り、ベットの端まで追い詰めらる。

 

「それに君の体も傷だらけで服にも血がついてた!一体何があったの?」

 

少女は子供に事情を聞こうとするも子供は困った様子で周りを見る。

 

「優華、落ち着ついて、彼怖がってるから」

「神父様!」

「初めまして、私はここの神父をしている者だ、君は?」

 

神父は自己紹介をして、子供に問いかける。

 

「…分からない」

「え?」

「分からないって言うのは?」

「…アンタとかクソガキって呼ばれてたから、名前分からない」

 

子供の話を聞いた二人は言葉を失う。

 

「…質問を変えようか、お母さんはどこにいるのかな?」

「…殺した」

「「っ!?」」

 

子供は自分の手を見てもう一度言う。

 

「殺されそうになったから、殺した」

「自分の子供なのに、殺そうとしたの?酷いよ」

「…虐待か」

「ぼくはこれからどうなる?」

 

子供の問いに神父は悩む、幼い子供とはいえ人を殺してしまった人間を置いておくべきかと…

 

「神父様、この子をここに住まわせてあげられませんか?」

「優華、彼は───」

「わかってます!でもこの子は被害者でもあります!それに聖書にも書いてあります、福音を信じれば、どんな人間でも必ず救われると!」

「ッ!?」

 

優華と呼ばれた少女は子供を抱きしめて神父に言う。

 

「それにこの子の面倒は私が見ます!だからお願いします!」

 

神父はため息を吐き、仕方ないと言って何かを用意する。

 

「優華がそこまで言うなら仕方ない、君、これを着なさい」

「…これは?」

「これは修道服だ、それを着て毎朝必ず、主の前で懺悔しなさい」

神父はそういうと修道服を子供に渡す。

 

「それが条件でここに住むことを許可しましょう」

「…ここにいていいの?」

「君、いいんだよ!よかったね!」

 

少女は子供よりも嬉しそうに喜ぶ。

 

「私は雨宮優華!よろしくね!」

「え?うん」

「それじゃあさっそく、君の名前を決めよっか!何がいい?」

「…なんでもいい、優華さんが決めていい」

「わかった!」

「優華、はしゃぎすぎだよ、って聞いてないなこれは」

 

優華は子供の名前を考えるのに必死で新婦の話を聞いていない、神父は呆れ気味になっているが顔は笑っていた。

 

「優斗!雨宮優斗ってどう?」

「ゆうと?」

「優しいって書いてって言っても難しいかな、こうやって書くんだよ!」

 

優華は紙に雨宮優斗と名前を書いて、子供に見せる。

 

「優斗の名前の意味は優しくて、星空みたいに広い心を持つ人になって欲しいからこれにしてみたの!どうかな?」

「…優斗」

「優華、いい名前だと思うけど、苗字が君と同じなのはなぜかな?」

「私、ずっと弟が欲しかったから!」

 

優華は笑顔で子供の頭を撫でながら答える。

 

「雨宮優斗、わかったそれでいい」

「じゃあ決まり!今からこの教会と優斗の部屋を案内するからおいで!」

 

優華は優斗の手を掴み走り出す、これが雨宮優斗と雨宮優華の出会い、二人はこれから、とても楽しい日々を過ごす。

 

「神様へのお祈りはこうやるの!」

「こう?」

「そう!こうやって毎日私と一緒にお祈りしようね!!」

 

二人で毎日、神に祈ったり。

 

「優華さんが作るシチュー美味しい」

「そうでしょ!」

「…ぼくも料理してみたい」

「本当にっ!?じゃあ明日から一緒に作ろうよ!!」

 

二人で一緒に料理を作るようになったり。

 

「優斗!おいで!これがお祭りだよ!!」

「…お祭り?」

「そう!屋台で美味しいご飯を買ったり、色々できるんだよ!」

「…屋台」

「優斗っ!あっちに行ってみよ?」

「優華さん、これはなに?」

「金魚すくいだよ!」

「金魚すくい?」

「そうだよ!一緒にやってみよ!!」

 

ある日は二人でお祭りにいって金魚すくいをしたり。

 

「優斗!凄い!まだ6歳なのに小学生の範囲の勉強を全部できるようになるなんて、凄いよ!!」

「優華さん、頭なでて?」

「すごいね!優斗!本当にすごいよ!」

「……うん」

 

優華が優斗に勉強を教えたり。

 

「あ、優斗またアイス食べてる!食べ過ぎは体に良くないからダメだって言ってるのに…」

「優華さんも一緒に食べよ?」

「もー仕方ないな、それが最後だよ?」

 

一緒にアイスを食べたり幸せな日々を過ごした。

 

「優斗!7歳の誕生日おめでとう!」

「ありがとう、優華さん」

 

そんなある日、この日は優斗の誕生日で、優華にプレゼントとして二つの花と犬のストラップ貰った優斗は、こんな質問をした。

 

「優華さん、どうして花と動物が好きなの?」

 

優華はその質問に丁寧に答えていく。

 

「動物はね?神様の被造物なんだよ、だから大切に愛してあげないといけないんだよ!」

「…神様の被造物」

「あとはすっごい可愛いっていうのもあるかな!!」

 

優華は優斗に向かって笑顔で答える。

 

「じゃあ花は?」

「可愛い所とか綺麗な所とかあるけど、1番は花言葉を楽しめるところかな」

「花言葉?」

 

花言葉の意味が分からない優斗は首を傾げながら優華に聞く。

 

「お花にはそれぞれ象徴的な意味を持った言葉があるの、チューリップは思いやり、ひまわりは憧れとかね!」

「じゃあこの花は?」

 

優斗は優華から貰った花を見て聞く。

 

「この花は、プライダルベールと柊は…内緒だよ!」

「え?なんで?」

「この花言葉は、優斗が大人になったら自分で調べてみてね!」

「教えてよ」

「だーめ、大人になったら調べてください!」

 

優斗の頭を撫でながら優華はそういって笑う。

そんな幸せな日から一年後の優斗の誕生日に悲劇は起きた。

 

「ぐわあああぁぁぁ」

 

神父の悲鳴を聞いた優斗は部屋を出て声のする方へ向うと、壁も床にも血が飛び散っていた。

 

「ッ!?神父様!」

 

優斗は血だらけになって倒れた神父を見つけて駆け寄るが、既に息はなく死んでいた。

 

「なんだ!何があった!?」

「キャ───っ!!」

 

誰かの悲鳴が聞こえてくると同時に部屋に優華が入ってくる。

 

「優斗っ!?」

「優華さん!?一体何があったの!!」

「いいから早く逃げ───」

「逃がしませんよ~!」

 

部屋に鉈を持った男が入ってくる、優斗はその声に聞き覚えがある気がしたが思い出せない。

 

「やーと、見つけましたよ?確か今は雨宮優斗って名乗ってましたっけ?」

「…誰だ?」

「忘れちゃいましたー?まあ、実際は初対面ですもんねー」

 

男はケラケラ笑いながら、優斗を見ると表情が変わる。

 

「三年前、お前を取り逃した殺し屋だよ」

「ッ!?あの時の!」

「お前とお前の母親殺せって依頼されてたのに、お前が母親殺して、俺から逃げやがったせいで殺し屋人生めちゃくちゃだよ、どうしてくれんの?」

 

男は優斗を睨みつけて近寄る。

 

「お前探すのに三年かかってムカついたから、今ここにいる奴、全員惨殺して回ってたとこだよ」

「優斗を探してた?殺す依頼?ふざけないで!優斗の人生をめちゃくちゃにするのはもうやめてよっ!!」

 

優華は優斗の前に庇うように立つ。

 

「は?うるせぇんだよ、その今すぐガキ渡せ、そうしたら見逃してやるよ」

「渡さない!優斗は私の大切な弟なんだから!」

 

男は舌打ちをして優華に近づく、優斗は近くにあった十字架の置物を男に投げつけた。

 

「いってぇなぁ!」

「優華さん!今のうちに逃げるよ!」

 

優斗は優華の腕を掴み部屋の外へ向かって走り出すが、部屋を出ようとしたところで銃声が聞こえる。

 

「っぁぁあぁぁ!!」

「優斗!?」

 

優斗の足に弾丸が貫通した、今の優斗の足では男から逃げることは出来ない。

 

「優華さんだけでも逃げて!!」

「ダメ!優斗も一緒に逃げないと!!」

「いいねぇ!血も繋がってないのにお互い守りあっちゃうのー?そーだいいこと思いついたぜ?」

 

男は笑う、そして何か思いついたように銃を優華に向けてトリガーを弾く。

 

「…え?」

「優華さん?優華さんっ!?」

 

優華の腹部に弾丸が貫通すると優華は倒れてしまう。

 

「お前がこんな教会に逃げ込まず、三年前に殺されとけば、この女も死ななかったのになぁ?」

「…お前」

「お前と関わったヤツは全員不幸になるのさ!さあ今度こそ死ね、クソガキ!!」

 

男は銃を優斗に向けて再びトリガーを弾くが、優斗に弾丸が届くことはなかった。

 

「あ?お前、まだ立てたのかよ」

 

優斗を庇うように優華が前に立っていた。

 

「…優斗…そんなこと…ないよ?」

「…優華さん?」

「邪魔だ!どけや!」

 

優華の腹部に再び弾丸が撃ち込まれるも、優華は立っていた。

 

「私は…幸せだった…優斗出会えて…よかったよ…」

「ダメだ!優華さん!?」

「うぜぇんだよ!クソ女が!」

 

男はトリガーを弾くも弾丸がでない、弾切れだった、男は持っていた鉈で優華に近づきを斬り捨てる。

 

「優華さん!」

「はっ!こんなガキ構わなければ、もう少し楽に死寝ただろうに邪魔しやがって!」

「…殺す」

「は?」

「お前だけは絶対殺すっ!!」

 

優斗は立ち上がり、先程投げつけた十字架の置物を拾って膝に殴りかかる、男も鉈を振りかぶるが、優斗の方が早かった。

 

「がァァっ!?このガキ!いってぇじゃ───っ!?」

 

膝を殴られた男は体勢を崩し床へと倒れる、優斗は間髪入れずに男の頭を何度も殴る。

 

「あぁあぁぁぁぁぁっ!!!!」

「がぁ、やめ…っがグゾガギィ………」

 

男は次第に声を出さなくなるが優斗はやめなかった、何度も何度も動かなくなった男を十字架の置物で殴り続ける。

 

「優…斗…ダメ……だよ?」

「優華さんっ!」

 

優斗は優華の声を聞いて足を引きずって駆け寄る。

 

「優華さん、ダメだ!死んじゃダメだよ!」

「優……斗……聞い…て?」

 

血だらけの優華は最後の力を振り絞り優斗の頭を撫でながら伝える。

 

「優…斗、たく…さんの人を、すくってあ…げて?そして、⬛︎⬛︎⬛︎より⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎に…なっ…て…ね…」

 

優華の手は優斗の頭から離れ、目を閉じて動かなくなってしまう。

 

「優華さん?嘘だ、嘘だよね?」

 

優斗は何度も優華の身体を揺らすが目を開けることはない。

 

「アァァアァァァァァァァっ!!!」

 

優斗は叫ぶことしか出来なかった。

数時間後、一人の女性が教会へ来て優斗に近寄る。

 

「この男を殺したのはお前か?」

「……そうだ」

 

優斗は優華の亡骸を抱えながら言う。

 

「お前、名前は?」

「……ぼくは…いや俺は…雨宮優斗だ」

「そうか、お前は力が欲しいか?」

「…力?」

「誰かを守り、悪党から全てを奪う力だ」

 

これが優斗にとって最も大切な人、雨宮優華との大切な思い出であり、初めて絶望した話でもある、そして戦国冬華との出会いでもある。

 

 

 

 

私は宿屋のベットで布団を被って泣いていた。

 

「…美柑、少しいいか?」

 

リトの声が聞こえてくる、正直今は誰とも話したくない。

 

「…嫌だ、今は誰とも話したくない」

「優斗のことなんだ、優斗に美柑には絶対に話すなって言われていた事なんだけどな」

「…何?」

 

話す気分じゃなかったけど、優兄の事ならと思い、私は布団から出てリトの話を聞くことにした。

 

「優斗と優斗の親父さんは本当の家族じゃない」

「……え?」

「親父さんは優斗を利用する為に、優斗を引き取ったんだと思う」

「…何を言ってるの、リト?」

 

リトに言われた言葉に私の理解が追いつかない、利用って何?家族じゃないってどういう事?

 

「天条院先輩が、このままだと優斗が不幸になるって言われたから、優斗に聞いたんだ」

「…優兄が不幸になる?」

「優斗に聞いたけど、答えてくれなかった、でも1個だけ、わかったことがある」

 

リトは私を見て話を続ける。

 

「優斗はオレ達を巻き込まねーようにしてる、親父さんがオレ達に手を出さないようにする為に…優斗はオレ達を守ろうとしてくれてるんだよ」

 

リトはそれからもオキナワで優兄が話していたことを話してくれた。

 

「…リト、多分それだけじゃない、優兄はきっと他にも大切な何かを隠してる」

「そーだな、美柑この世界から帰ったら優斗に聞こう」

「…でも、もう優兄は話してくれないよ、私、優兄に酷いこと言っちゃったから」

 

そう、私は優兄に酷いことを言ってしまった。

 

───もういい!優兄なんて知らないっ!!

 

私の言った言葉を聞いた優兄の顔を思い出す、今にも泣きそうで優兄を絶望させてしまった。

 

「………」

「…美柑、きっと優斗も謝れば許してくれるよ!それにあいつだってずっと話さず黙ってたんだ、それくらいで怒ったり嫌ったりしねーよ!!」

 

リトは私を励まそうとしてくれていると部屋の扉が開く。

 

「ごめんね、入らない方が良かったかな?」

「え?いや大丈夫だぜ!西連寺!」

 

リトの言葉聞いた西連寺さんは、申し訳なさそうに入ってくる。

 

「西連寺、優斗はどこにいんだ?」

「少し風邪にあたって来るって、美柑ちゃんは大丈夫?」

「…少し落ち着きました」

「…美柑」

 

気持ちの整理は少しできた、優兄には言いたいことが増えたけど、まずは優兄に謝ろう。

 

「あれ、古手川もいねーじゃん」

「古手川さんは時雨くんと少し話してくるって」

 

この世界に来てから思ってたけど、古手川さんもやっぱり優兄のことが…

 

「なんでもかんでも燃やして解決っ!!マジカルキョーコ参上───っ!!!」

 

私がそんなことを考えていたら、部屋にマジカルキョーコが入ってきた。

 

 

~優斗side~

 

 

外で風に当たる、俺の頭によぎるのは先程、泣いて2階に行った美柑の顔だった。

 

「ずっと笑ってて欲しかったのにな」

「時雨くん」

「…古手川さんか」

 

星空を見ながら、一人で呟いていると後ろから声をかけられる。

 

「このままだと風邪ひくわよ、そろそろ部屋に戻ったら?」

「今、部屋には美柑がいるだろ?」

 

俺は美柑の顔を見る勇気はない、泣いている姿を見てしまえば、俺はきっと──────

 

「…あなたの過去に何があったか、私には分からないわ」

「………」

「幼なじみの結城くん達に話せないってことは、きっと想像ができないほど、辛い記憶なんだと思う」

 

古手川さんは俺の手を握ってこちらを見る。

 

「あなたにどんな過去があっても、きっと美柑ちゃんは受け入れてくれるわよ」

「…仮に古手川さんにとって大切な人の過去が、人を殺した過去でも古手川さんは受け入れてくれる?」

「え?」

 

俺は古手川さんに何を言っている、こんな事言っても困らせるだけ──────

 

「受け入れるわ」

「!!」

「そんな過去でも受け入れるわ、でももちろん、理由は聞くわよ」

「なんで?」

「だって大切な人だからよ」

 

古手川さんの目は俺を捉えて離さない。

 

「……そっか」

「ほら、部屋に行きましょ?みんな待ってるわよ」

 

古手川さんに手を差し伸べられる。

 

ゴバッ

「うわ────っ!」

 

その手を掴むか迷っていると、部屋から爆発する音と同時にリトが落ちてくる。

 

「古手川さん、危ない!」

「え?」

 

古手川さんの手を掴み、引き寄せると先程まで古手川さんがいた地点に、リトがそのまま顔からダイブする。

古手川さんを引き寄せなかったら、リトはそのまま古手川さんにダイブしていただろうな。

 

「結城くん!?」

「リト、大丈夫か?」

「痛ってぇ!って優斗に古手川!?」

「…なにがあった?」

「マ…マジカルキョーコが部屋にきて!?」

 

マジカルキョーコって確か、ララさんが見ていた特撮番組だったか?

 

「リトくん!さっき言ったこと、ゆっくり考えてよ、私は魔王の城で待ってるから!」

 

空を見ると箒に乗った魔女風の帽子と露出のすごい下着をつけたマジカルキョーコがいた。

 

「結城くん!?」

「リト!大丈夫!!」

 

西連寺さんと美柑も宿から出てくる、美柑はもう泣いてはいないみたいだな。

 

「お土産に中ボス置いてくね、倒すと特別なアイテムも出るから、がんばって──!」

「中ボス!?」

 

【キョーコの刺客 ゴーリキ】

 

金棒を持った巨大な鬼が出てくる、いや、これどう倒せと?RPGとか戦車がないと無理だろ。

 

「キャ───ッ」

「こ…こんなんに勝てるか──────っ」

 

ゴーリキは俺達を踏みつぶそうと動き、美柑がいる所へ向かって金棒を振り下ろされる。

 

「あっ」

 

美柑は振り下ろされる金棒を見るだけで、動くことができずにいる、俺は美柑に向かって走り出す。

 

「美柑っ!!」

「優兄!?」

 

俺は美柑を抱きしめるて横へ飛ぶ、金棒は先程まで美柑がいた大地をえぐっていた。

 

【ゴーリキを倒した!!】

 

何とか金棒を避けてゴーリキを見ると、テキスト表示されていた、何が起きた、いや今はそれよりも───

 

「美柑、大丈夫か怪我は無い!?」

 

抱きしめていた美柑を確認すると特に怪我は無さそうだった。

 

「…優兄」

 

───もういい!優兄なんて知らないっ!!

 

先程、美柑に言われた言葉を思い出す、俺は嫌われたんだったな。

 

「…ごめん美柑、嫌だったね」

「え?あっ」

 

俺は美柑から離れてリト達の元へ向かう、美柑を泣かせた今の俺に話す資格はない。

リト達の元へ向かうとバニーガール姿のヤミさんがいた、テキストに職業:遊び人とかいてある。

 

「見掛け倒し…何かありましたか?優斗」

「何もないよ、なんでそんな格好してるの?」

「転職屋へ行ったらこうなりました……」

 

このゲームの職業はよくわからないな。

 

「優斗、美柑はどこに?」

「…私ならここにいるよ、ヤミさん」

「美柑?どうして───」

「ヤミさん、私は大丈夫だから」

「とりあえず、結城くんに何があったか聞いてから色々考えましょう」

「…確かに俺と古手川さんは、何が起きたか分からないから教えてくれ、リト」

 

俺達は一度、現状の確認の為、部屋に戻ることにした。

 

「…ってワケなんだ」

 

リトから説明を聞くと、魔王マジカルキョーコにララさんは囚われている。

そして部屋に現れたマジカルキョーコはリトにララさんを見捨てて、マジカルキョーコの彼氏になったら元の世界へ帰してくれると言ったらしい。

 

「…要求が馬鹿げてる」

「そんなのムチャクチャだわ!」

 

そしてもう一つ確信したことがある、このゲーム世界はララさんが作ったものじゃない、別の誰かが何かしらの目的で作った物だということ。

 

「キョーコの言う事は聞けない…!オレはララを助けに行く…皆もいいかな…?」

「当たり前だよ、行こう!ララさんを助けに」

「卑劣な相手に屈する訳にはいかないでしょう」

「プリンセスには仮がありますし…仕方ないですね」

 

リトがみんなに聞くとみんないいよと返事をしてくれた。

 

「優斗、美柑、二人はどうしますか?」

「…私は行く」

「時雨くん、あなたは少し休んだ方が───」

「いや、俺も行く」

 

ララさんがこのゲーム世界を作ってないということは、この村とカレンちゃんのNPCは偶然じゃないかもしれない、カジノも意図的に置かれた物の可能性だってある。

 

「ところで、その机に置いである箱はなにかな」

「ああ…さっき倒した怪物から出てきたので拾っておきました」

 

西連寺さんの疑問にヤミさんが答える。

 

「そういや、キョーコがレアアイテムがどうとか…開けてみるか」

 

リトはそういうと箱を開けて中身を取り出す。

 

【キョーコの導き】

 

「キョーコの導きって…」

「ねえ、なんか光出したわよ!?」

 

キョーコの導きとテキストに書かれたペンダントが光り出す、気づけば俺達は空に浮いていた。

 

「何だァアア!?」

「へっ」

 

リトと美柑は驚きの声をあげる、俺達はそのまま地面に落下する。

 

「みんな大丈夫───」

俺はリト達を見て───主にリトを見て唖然とする、リトは西連寺さんの下着に顔を突っ込んでいた。

「キャ──────」

「なんであなたはいつもそうなのっ!!」

 

リトが古手川さんの蹴りを食らって吹き飛ばされる。

 

「今のは転送アイテムだったようですね」

「ここは…大魔王の城…?」

 

美柑の言葉を聞いて俺も周りを見る、周りは崖だが、一つの巨大な城が立っていた。

 

[皆さーん!]

「ペケ!?」

[よかった!もうここまで来たんですね]

「…じゃあここが最後の…?」

 

ボロボロのペケが美柑に抱きつく。

 

[事情はララ様の所へ向かいながら話しますので早く!]

「よ…よし」

 

俺達はペケに案内されて城の中へと入っていく。

 

「じゃあ、ホントにこれララが仕組んだ物じゃないのか!?」

[ハイ!ララ様も招待状でこの空間へ連れてこられたので……]

 

やっぱりララさんの作った発明品ではなかった、そうなるとこの世界を作った人物は俺の過去を知っている可能性がある。

 

「この世界はどこかの惑星なの?」

[よく調べてみないとわかりませんが、歪曲空間を利用して作られた電脳世界だと思われます]

 

歪曲空間を利用した、なんだ?前にも似たような話を聞いた記憶があるがなんだった?

 

[どういうわけか、空間の構成パターンが以前、ララ様が作りかけてやめた3D体感ゲームに似ているのですが…]

「ララが!?」

「ッ!?みんな止まれ!何が来る!!」

 

前からなにかの気配がした俺はみんなを止めると、敵が現れた!のテキスト共に三体の巨大なモンスターがこちらに向かって走ってくる。

 

「そーいや、私たちほとんど初期レベルのまんまじゃん!!」

「か…勝てるワケね──!!花屋だし…」

 

美柑とリトがそういった瞬間、ヤミさんがトランス能力を使って敵を向かっていく。

 

「主よ!このモンスター達に報い与えよ!」

 

【ユウトは神の天罰を使った!】

 

俺は魔法を使いモンスター達の動きを止める、ヤミさんは動きの止まったモンスターを切り裂く。

敵を倒した!とテキストは出るが、経験値は入らなかった。

 

「さっさと行きましょう」

「あ…ああ」

「ヤミさんが倒すと経験値が出ないんだね…」

「ゲームの設定無視してるからだろ」

「…なんでもいい、早く行くぞ」

「優斗?」

 

俺達はそのまま先へ進むと敵が現れた!とテキストが現れると同時に見知った顔が現れる。

 

「ホ──ホホホ、お待ちなさい!ここから先は行かせませんわ!!」

「天条院センパイ!?」

「センパイも来てたのか…ってなんで敵!?」

 

沙姫達が俺達の目の前に立ち塞がった、今はできるだけ戦闘を避けたかったが…

 

「マジカルキョーコという娘から魔王側につけば、元の世界に戻れると聞きましたわ!まさか優斗達が相手だとは思いませんでしたけどね!」

「…どいてもらえませんか、沙姫さん」

「優斗、こちらに来るなら───って優斗!あなた顔色悪いですわよ!」

「…そんなことはどうでもいいです、沙姫さんやるなら早くやりましょう」

 

魔法を使う度に思い出して、気分が悪いからやるなら早くしてくれ。

 

「…そう、わかりましたわ、綾、魔法で先制攻撃ですわ!!」

「ハ…ハイ、沙姫様!!え…と…え…とギガププリン!!」

「!!?」

 

藤崎先輩が魔法を使った瞬間、三人の胸元がプリン弾け飛ぶ。

 

「な…何ですのこの呪文は──────ッ!!」

「無視していきましょう」

「…そうだね、行こうか」

 

俺達はそのまま魔王の部屋まで全力で駆け上がっていく。

 

「へェ~もう来たんですねぇ~けっこう早かったじゃないですかぁ」

 

魔王の部屋に入るとマジカルキョーコは玉座の肘掛けに座っていた。

 

「答えは決まりましたぁ?」

「そ…そんなの考えるまでもね───!!」

 

リトは1歩前に踏み出してマジカルキョーコに叫ぶ。

 

「ララを返してもらう!!」

「キョーコと戦うっていうの?無敵設定だから、絶対勝てないって言ったのに…」

 

マジカルキョーコはリトを足を組みニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「それってつまり、リトくんはララちゃんの事が好き…って事かな?」

「な…何の話だよ!」

「だってそんなに必死になってんだもん」

 

マジカルキョーコが話しているタイミングで後ろからララさんとフードを被った二人の人物が出てくる。

「今ここでハッキリさせてよ、このコの事…どう思ってるの?」

 

リトは顔を赤くして固まる、何だこの状況、ただの公開処刑か?

 

「どーなの?リトくん、このコの事…好きなの?」

「な…なんでそんな事、言わなきゃなんねーんだよ!」

「それが一番大切な事なんですよぉ───」

 

それが一番大切?こいつの目的は俺じゃないのか?じゃあ村やカレンちゃんはたまたま───

 

「ちゃ─んと答えたらぁ、ラスボス特権であなたたちを皆、元の世界に戻してあげちゃうかも~」

「な…なんですって!?」

「「………」」

 

リトは固まって立ち尽くす、いつもなら俺はフォローしたかもしれない、でもこれはリトが答えないといけない気がする。

 

「結城リト…相手にする必要はありません」

「ヤミ!?」

「倒せばいいだけの話です」

 

ヤミさんはマジカルキョーコに斬りかかるが、きられたぶぶんはすぐに再生する、無敵ってやつか、戦闘になったら面倒だぞ?

 

「いきなり斬るなんてヒドーイ!」

「てゆーか、あなた遊び人でしょお?ちゃんとゲームの技で戦ってくださいよ、ぱふぱふとかぁ」

「ぱ…ぱふぱふ?」

 

マジカルキョーコはヤミさんの後ろから胸を触る。

 

「あ───ちょっとあなたのムネじゃ難しいかな?このムネじゃ~そこにいるユウトくんも満足しないかもねぇ?」

「!」

 

ヤミさんはマジカルキョーコを引き離し、距離をとる、そして、さりげなく俺を巻き込むな魔王。

 

「失敬ですね…私だってトランス能力を使えば…それに優斗を…」

「ヤミさん、落ち着きなよ、気持ちはわかるけど…」

「ヤミ…!待ってくれ!今ここで…言っておかなきゃダメな気がするんだ…」

 

リトはヤミさんを通り過ぎてララさんの前に行く、お前は俺と違って覚悟を決めたんだな、凄いよ。

 

「ララ…」

「なぁに?リト…」

「オレさ…オレ…お前の事…好き…かもしれない」

 

リトは顔を赤くしながら話す。

 

「このゲームでやっと気づいたんだ、ララがいないと落ち着かない自分に…」

 

リトは右手に胸を抑えて俯く。

 

「でも…でも今のオレにはまだこれが好きって気持ちかどうかはわかんねー…」

 

恥ずかしくなったリトはララさんから目をそらす。

 

「だから…」

「…いいよリト、私の気持ちは変わらないから、今はリトのその気持ちが聞けただけで十分だよ」

 

リトの気持ちを聞いたララさんは嬉しいそうに笑う。

 

「え~なになに~?かもしれないとか、わからないとか!キョーコ、煮え切らない男、嫌いなんですよね───」

「マジカルキョーコ、一ついいこと教えてやる、恋や愛って感情は、ゆっくり慎重に育てるものなんだよ」

 

前世と今世、そしてリトの恋を応援して気づいた、この感情は人として最も大切な感情で…

 

「急いで失敗したり、失ったりすればその感情は歪んだ呪いになる」

 

人を簡単に壊して狂わせてしまう。

 

「イミ、わかんない!」

「…プログラムには難しいかもなぁ?」

「…なんかムカつく、もーいいや!みんなゲームオーバーになっちゃってくださ───い!」

「「「キャ──────ッ」」」

 

マジカルキョーコは俺達の周りを火の海に変える、怒らせたか?

 

「…全然、暑くないんですが…」

「ヤミさんよく見て!!HPがどんどん減ってる!!0になったらゲームオーバーだよ!!」

 

ヤミさんのHPは残り18とテキストに表示されるがその数字はどんどん減っていく。

 

「みんな!!」

「あははっ!!ゲームオーバーになったら開始地点に逆戻りでーす!次はワープアイテムも無いから、魔王城に来るのに3年はかかるねー!」

「な…なにィ3年!!?」

[リト殿がハッキリしないのがいけないんですよ!!]

「ペケ、そんなにリトを攻めるな」

 

3年も付き合ってられない、またあの村とカレンちゃんのNPCに会うのは辛い。

 

「我らに神の祝福があらんことを!」

 

───神様へのお祈りはこうやるの!

 

───こうやって毎日私と一緒にお祈りしようね!!

 

俺は手を合わせ祈る、優華さんとの記憶をあの日々が頭によぎる、失ったあの日の事も。

 

【ユウトは神の祝福を使った!】

 

「魔法を使ったらダメ!優兄!!」

 

美柑の声が聞こえた気がするがそれでも祈る、きっと今の俺は酷い顔をしているんだろうな。

 

「優斗っ!?」

「くそ~消えねーっ」

「そんなの役に経つわけないでしょっ!!」

「な…何だ!?オレのジョウロが…光りだした」

 

古手川さんとリトの話し声が聞こえたと思ったらジョウロが光りだし、テキストが表示される。

 

「うぉおおお!?」

 

【花屋の究極技 ライトニングシャワー!!】

 

「火が消えていく!!」

 

辺り一帯に広がっていた火が消え、マジカルキョーコは消えていく。

 

「それじゃーね~」

 

【マジカルキョーコを倒した!!】

 

テキストが表示され、俺は祈りを辞める、頭が痛い、気分は最悪だ。

 

「…クッソ」

「優兄!?」

「優斗!大丈夫ですか?」

「あなたはなんでそんな無茶するのよ」

 

美柑、ヤミ、古手川さんの三人が心配して近づいてくる。

 

「…美柑、何も伝えられなくてごめん、ずっと秘密にしててごめん…」

「…優兄、私もごめんね、酷いこと言っちゃった」

 

きっともう隠し通すことは難しいだろう、だから話したくないが…

 

「美柑、帰ったら───」

「優兄、無理して話さなくていいよ」

「え?」

「優兄のお父さんのことは聞かせてもらうけど、それ以外の話したくないことは、優兄が話したくなったら話してよ」

 

リトの奴、春馬さんの事を話したな。

 

「いいのか?一生話さないかもしれないんだぞ?」

「いいよ、だって話さくても優兄は優兄だから!!」

 

美柑は笑顔でそういうと抱きついてくる、俺は俺か…

 

「美柑、いつか必ず話す」

「うん!待ってるよ!優兄!!」

 

俺と美柑が仲直りをしているとフードの二人が姿を明かす。

 

「久しぶりだね!姉上」

「やっぱり!!」

「お…お姉ちゃん…ってララ…もしかしてそのコたち…」

「うん、私の妹だよ、双子なの!」

「「「ふ…双子ー!?」」」

 

ララさん、双子の妹が居たのね。

 

「デビルーク第2王女、ナナ・アスタ・デビルーク」

「第3王女、モモ・ベリア・デビルークです、よろしくお願いします」

 

ピンク髪のツインテールがナナさん、ピンク髪のショートカットがモモさんか。

 

「……ララに妹がいるなんて、初見なんだけど…」

「あれー?言ってなかったっけ?」

「相変わらず、マイペースだな姉上は」

「フフ」

 

ララさんはやっぱりデビルーク星でも、マイペースなんだな。

 

「ナナ!モモ!そんな事より、どうしてこんな事したの!?」

「姉上の身近にいる地球人の事をよく知りたかったんだよ」

「特殊な状況に置かれる程、人柄がわかりますからね、おかげでお姉様には、すばらしいお友達がたくさんいる事がわかりました!これからもよろしくお願いしますね、皆さん!」

「「「はぁ…」」」

 

要はララさんが危ない人間と付き合っていないか不安になったのか、優しい妹だな。

 

「でも、そのためにわざわざこんな世界を作ったの?」

「別に一から用意したワケじゃないよ、姉上のラボにあった作りかけのゲームソフトを改造したんだ」

 

ララさんが作りかけていたゲームソフトをモモさんが一週間かけてプログラムミングしたらしい、なら、村もカレンちゃんも偶々だったのか。

 

説明の途中で喧嘩した二人をララさんが止めて現実世界に帰ることになる。

 

「何にしてもこれで帰れるのね、現実世界に…」

「そうね…」

「ゴメンね~!妹たちがメーワクかけちゃって…」

「別にララさんが謝ることじゃないよ」

「まぁ別に命の危険があったワケじゃないし…優兄はつらそうだったけど」

 

やっと戻れるな、この服ともおさらばだ。

 

「ナナ!ゲームはもうおしまいよ!制御リモコンを出して」

「わかってるよ!ったく、外ヅラだけはいいんだよな、モモは…」

 

ナナさんが制御リモコンを取り出している間に一つ疑問にも思ったことを聞く。

 

「モモさん、一つ聞いてもいい?」

「なんですか?」

「俺の最後の魔法あれはなんだったの?」

「それが、私にもわからなくて、おそらくバクだと思うんですけど…」

 

バク?そんなことあるのか?

俺が考えているとナナさんが慌て始める。

 

「あれ?」

「どうしたの?」

「いや…転送システムが起動しないんだけど…うわっ!?」

 

銃声のような音が聞こえて、ナナさんの持っていた端末が何かによって破壊される。

 

「起動しないさ、だってお前達はまだゲームをクリアしていない」

 

聞き覚えのある声が聞こえてくる、なんであの人の声が聞こえる?

 

「地震!?」

「なっ!モモ!?空間が変わっていくぞ!!」

「何が起きてるの!?」

 

世界が揺れ空間が変わる、俺達は辺りを見渡すとそこは。

 

「…教会?なんで教会になったんだ?」

「なんで…なんでこの場所がここに出てくる!!」

「優斗、どうしたのですか?」

 

この場所は俺が知っている場所、優華さんと一緒に過ごした場所。

 

「…懐かしいだろ、優斗?」

 

階段から白髪の長い髪を後ろで縛り、眼帯をしている女性が降りてくる、俺は幻覚でも見てるのか?

 

「あの人、誰?」

「外国人か?」

「今、時雨くんの名前を呼んでなかった?」

 

みんなにも女性の姿は見えていた。

 

「なんで…なんで!…なんで!!お前がここにいる!?戦国冬華ッ!!!」

 

俺の目の前には死んだはずの亡霊、戦国冬華がそこに立っていた。

 

 

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