ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~   作:アイスが食べたいマン

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~覚悟と感情~

俺が前世の過去を打ち明けてから一週間後、学校でもプライベートでも、みんなはいつも通りに俺に接してくれていた。

 

「おはよう、優兄…」

「…美柑、大丈夫か?」

 

朝、起きて下に行くと合鍵を使って家に来た、美柑が朝ごはんを作っていた。

 

「…何が?」

「顔が赤いよ」

「優兄の気のせいだよ…」

 

美柑はそういうが顔が赤く、辛そうにしている。

 

「ちょっとごめん」

「え!?」

 

俺は美柑の顔を触り、お互いの額をくっつけて、確認する。

 

「…やっぱり熱い、美柑、多分熱があるから、今日は───」

「優兄がそんなに近かったら熱くなるよ!!」

「ちょっ!美柑!!」

 

美柑は玄関の方へ走っていてしまう。

 

「確かに近かったけど…本当に俺の気のせいか?」

 

確かに好きな人と額をくっつけられたら、熱くもなるか、別の方法でやれば良かったな、少し配慮が足りなかったかもしれない。

 

(一応、リトにも伝えておくか)

 

 

俺はリトにメールで連絡してから、美柑が用意してくれた、朝ごはんを食べて学校の準備をする。

 

「おっはよーユウト!!」

「…おはよう、優斗」

「おはよう、ララさん、リト」

 

結城家の前でリト達を待っていると、リト達が出てくる、ここ数日、リトはくらい顔をしたり、ずっとララさんの方をチラチラ見てる。

最初は俺の過去でなんか思う事があったのかと思ったが、それならララさんは見ないと思う。

 

「リト、大丈夫か?」

「え?な…なんだよ、急に!」

「なんか、変な顔してるから…」

「いや、めっちゃ失礼じゃねーか!」

 

いやリト、1回鏡を見てみろよ、目が薬やった奴みたいに開いてるぞ?

 

「あれ、美柑は?」

「委員会の仕事があるからって先に行ったよー!」

 

出来れば、学校に行く前にもう一度体調を確認しておきたかったんだがな。

 

「ユウトに1つ聞きたいことがあったんだ」

「何かな?」

 

学校に向かっているとララさんから、聞きたいことがあると言われる。

 

「ユウトは前に、過去に戻れるアイテムがあるかって私に聞いたよね」

「…そうだね」

「…ユウトはやっぱり過去を変えたかったの?」

 

リトの誕生日が近いときに俺がララさんに聞いたこと、覚えていたのか。

 

「そうだね、変えたかったよ」

「………」

「過去に行って、5歳の頃の俺を殺したかった」

「…ユウト」

「…お前」

 

あの時、俺が素直に死んでいれば、優華さんも輝も駿も生きていて、冬華教官は復讐に身を落とさなかったかもしれない。

 

「でも、もう変えるつもりはないよ」

「…え?」

「過去は変えられない、でも未来は変えられる」

 

過去を変えるのは無理だとわかった、なら今度はみんなが死なないように、幸せに生きれるように俺が守る。

 

「だから、もう大丈夫」

「…ユウト、助けて欲しいことがあったら言ってね?」

「ありがとう、ララさん」

 

黒幕が俺を殺す為に、みんなを利用しようとするなら、俺はなんとしてでもそれを阻止する。

 

(でも、その前に解決しないといけない問題があるけどな)

 

俺は先にもう1つの問題を解決しないといけない、そうしないと俺は、生きていても、みんなと居ることすら、出来なくなる。

 

「優斗、昼休み少し話したいことがあるんだ」

「いいよ、俺もちょうど、リトに話したい事があった」

 

まずはリトと美柑に話さないとな、あの事を。

 

 

 

 

 

時間が進んで昼休みになった、俺はリトと屋上に来ている。

 

「えっと、優斗どっちから話す?」

「俺の話は長くなるから、リトから話してくれ」

 

俺がリトに言うと、リトは少し考えた後に話し始めた。

 

「オレ、ゲーム世界でララに今の気持ちを言ってから、意識しちまってるんだ」

「………」

「ララの気持ちに応えてやれないかもしれないのに、あんな事言ってバカだなって思って…」

 

ここ数日、ずっとララさんをチラチラ見ていたのは、そういうことか。

 

「オレは春菜ちゃんへの思いは変わってないんだ」

「…リト」

「それに、冷静になってみたら、オレ…春菜ちゃんの前ですげーこと言っちまってた、もしかしたら、嫌われたかも知れねー」

 

リトは俯いてしまう。

 

「リト、俺がゲーム世界でマジカルキョーコに言った言葉、覚えてるか?」

「え?」

「恋や愛って感情は、ゆっくり慎重に育てるもの、急いで失敗したり、失ったりすれば、その感情は歪んだ呪いになる」

 

マジカルキョーコに言った言葉をもう一度、リトに言う。

 

「前世で冬華教官は優華さんを失って壊れた、そしてもう一人、好きという感情が歪んで、壊れてしまった人を知っている」

「でも…」

「ララさんのことは好きなのか、ゆっくり考えていけばいい」

 

俺はリトを見て言う、正直俺には恋という気持ちはまだ分からないから、こんな言葉くらいしかかけることしかできない。

 

「もし、春菜ちゃんとララの両方を好きになったら、どーすんだよ」

「そうなったら、また一緒に考えよう、力になれるか分からないけど、いつでも相談に乗るよ」

「…優斗」

 

リトが二人を好きになったら、また一緒に考えればいい。

 

「でも春菜ちゃんに…」

「リト、西連寺さんと話してみろ」

「は!?」

「嫌われたかどうかなんて、話してみないと分からないだろ?」

 

実際、西連寺さんはリトが好きだ、リトの言葉を聞いて、ショックは受けてるかもしれないけど、絶対に嫌われてない。

 

「嫌われてねーかな?」

「話してダメなら、俺が間に入ってなんとかしてやる」

 

何故、俺はここまで熱くなってるんだろうな、でもリトが浮かない顔をしているとララさんも西連寺さんも不安になるからな。

 

「いつもありがとな、優斗」

「お礼を言われるほどの事はしてないよ」

 

感謝の言葉を言ったリトの顔は、少し晴れていた。

 

「それで、優斗の話って?」

「俺の過去を聞いて、どう思った?」

「…え?そりゃあ、最初は混乱したぜ、でも美柑も言ってたけど、優斗は優斗だろ?過去に何があってもオレはお前とずっと親友だよ!!」

 

リトの話を聞いて、俺の過去への整理はだいぶ着いたみたいだった。

 

「そうか、なら話すとするかな」

「なにをだ?」

「美柑にも話すつもりだけど、春馬さんの事だ」

「っ!?」

 

俺は覚悟を決めて、リトと美柑にだけ話すことにした。

 

「春馬さんが俺を養子で引き取った理由は、政略結婚の為だ」

「…は?」

「相手は黒い噂が絶えない、政治家のお嬢様だ」

 

俺の話にリトは唖然としている、まあ急にこんな話すればこうなるか。

 

「俺をそのお嬢様と結婚させることで、政界への切符が春馬さんの手に渡る」

「…それって!?」

「春馬さんの目的は政治家になって、今より強力な権力を手に入れる事だ」

「…なんだよ、それ」

 

俺の話を聞いたリトは拳を握りめて俯いてしまう。

 

「…黒い噂が絶えないって、どんな噂だ」

「代表的なやつは、そのお嬢様は禁止薬物の使用と前の婚約者は不自然死したらしい」

「!!?」

「あとは、我儘で下の人間には暴力を振るったり、未成年でホスト狂って話もあるな」

 

噂は噂って俺も最初は思っていたが、調べてみたら、実はほとんど本当の話だった。

 

「もし本当ならなんで問題にならねーんだよ!」

「お嬢様が父親の権力で握りつぶしてる」

「っ!!」

 

リトは俺の胸ぐらを掴んで俺を見てくる、リトの顔が怒りに染まっていく。

 

「優斗、お前!なんで…なんで今まで言わなかった!!」

「春馬さんに脅された、もし結城家の養子になったり、恋人を作ればそいつらを家族ごと潰すって」

 

少し前なら、正直話すつもりはなかった。

 

「この前、言ったろ?前世で後輩が俺の過去を調査したせいで家族は殺されて、駿は死を選んで爆死したって」

「………」

「リト、友情とかで権力を覆すことはできないんだよ」

 

リトは胸ぐらから、手を離して、俺に背を向ける。

 

「なんで…なんで…優斗ばっかりこんな目に合うんだよッ!優斗が何したんだよ!!何も悪いことしてねーだろうがッ!!!」

 

リトの叫びは、学校の外まで聞こえたかもしれない。

 

「近所迷惑になるから、落ち着け」

「これが落ち着いてられるかよ!」

 

リトは俺に振り向く、完璧に怒ってるな。

 

「これから、どうするつもりだよ」

「俺一人で何とかする」

「なっ!?オレ達も手伝──」

「ダメだ!駿は俺の過去に関わった死んだってさっき言っただろ!」

 

前世の俺は駿が過去を話せば、一人で突っ込んでいくと思って伝えなかった、でもあのクズに全てを聞いて勝手に一人で行ってしまった。

 

「後輩には──駿には、過去を話さなかったんだ」

「…え?」

「政治家の父親と血の繋がりがあることを、とある奴から聞かされて、俺の為に一人で突っ込んで行った」

 

俺はリトの両肩を掴む、リトは俺と春馬さんに何かあるのを知ている、俺が居なくなれば一人で春馬さんの元へ突っ込むだろう。

あの時のようになって欲しくない、だから、″ここまで″は話すことにした。

 

「リトには、勝手に詮索をして死ぬなんてなって欲しくない、だから話した」

 

これでリトも死んでしまったら、俺は壊れてしまう。

 

「なら、ララ達に協力して貰えば…」

「…なんで、地球にいる宇宙人は地球人に擬態したり、旧校舎に隠れてると思う?」

「え?」

 

ずっとララさん達と一緒にいた、リトは今まで疑問に思わなかったのだろう。

 

「地球では、まだ宇宙人が公になってないんだよ、だから、俺達はも知らなかった」

 

ここからは完全に俺の憶測だ。

 

「おそらく、国のお偉いさん方も知らないかもしれないぞ?」

「…なんでそう思うんだよ」

「知ってたら、国や地球を守る為に、もっと核兵器の強化や軍事レベルの強化をするはずだ」

 

生き物は環境の変化や身の危険を感じれば、生き残る為に進化し続ける、それは人間も例外ではない。

 

「それに宇宙人と交渉したりして、宇宙の技術を取り入れたりして、科学ももっと進歩しているはずだ」

 

この世界ではそのどれもしていない。

 

「もし、ララさん達がタイムレインズカンパニーに押し入ってみろ、テレビでニュースになって、地球全体に広がって大混乱が起きるぞ?」

「!!?」

 

大企業に宇宙人が攻め込んできたってなったら、世界で大ニュースになるだろうな。

 

「それに宇宙人が住むのを反対するデモ活動や宇宙人の生態を解明する為に、地球にいる宇宙人を狩り尽くして、解剖するかもな」

 

もしそうなってしまえば。

 

「復讐や怒りで攻めてくる宇宙人が来れば、最悪、地球で戦争が起きる」

「なっ!?」

「そうなってもいいのか?」

この可能性は正直なくもない、むしろ今までこの彩南町で、色んなことが起きているのに平和な事が奇跡だ。

 

「どこかのタイミングで、俺はしばらくいなくなると思う」

「………」

 

学校にはもう通えないかもしれない、けど俺にはまだ、黒幕のクズ野郎を潰すという、冬華教官との約束もある。

 

「優斗!オレは───」

「だから約束する、何があっても必ず帰ってくる、もう一度、お前らと過ごす為に必ずだ!」

 

リトの言葉を遮る、俺一人でやれば、問題は起きない、黒幕以外にこれ以上みんなを巻き込まむ事は出来ない。

 

「リト、俺はお前らに笑ってて欲しいんだ」

「…優斗」

「この世界でできた、″親友″に死んで欲しくないんだよ」

「っ!!」

 

輝は親友だ、でもリトも同じぐらい大切な親友なんだ、もう親友を解釈の為に撃ち殺すようなことも、目の前で死なれるのもごめんなんだ。

 

「だから任せてくれ、必ず帰るから」

「優斗!オレは───」

 

リトが何かを伝えようとしたタイミングで予鈴がなる、随分と話し込んだな。

 

「美柑にも同じことを話す、でも他の誰にもこの話するな」

 

俺の言葉にリトは黙ってしまう、何を考えているか分からないが、ここまで話せば1人で突っ込む様な真似は絶対にしないはずだ。

 

「リト、教室に戻ろう」

「…そうだな」

 

 

 

 

授業も終わり放課後になった、リトは授業中ずっと浮かない顔をしていた、話しすぎたか?

 

「西連寺さん」

「どうしたの?時雨くん」

 

俺は教室にいた、西連寺さんに声をかける。

 

「頼みがあるんだ、ここ数日、リトが暗いだろ?」

「やっぱり、そうだよね」

 

西連寺さんもリトが暗いことに気づいていたようだ、まあ、今暗いのは俺のせいなんだけど…

 

「相談に乗ってあげて欲しいんだ」

「え?それなら時雨くんの方が…」

「俺の過去で悩んでたら、悪化するからさ」

「…そうだね、私が話してくるね」

「ありがとう」

西連寺さんがリトの所へ向かっていくのを見届けて俺は教室を出て、走って結城家に向かう。

 

(美柑の体調が心配だ、無理してないと良いけど)

 

結城家に着いた俺は、チャイムを鳴らすが反応しない、扉を開けると鍵は空いていた。

 

「美柑!!」

 

俺が走ってリビングに行くと顔を赤くしてソファーに寄っかかる美柑がいた。

 

「大丈夫か───って熱い!やっぱり無理してたな」

「ハァ…ハァ…優兄…」

「抱えるよ、美柑」

 

美柑を抱えて美柑の部屋のベットまで連れていく。

 

「38.2°やっぱり熱があったな」

「…まいったなぁ、洗濯物とかたまってんのに…」

「美柑、全部俺がやっておくから、ゆっくり寝てな」

 

元々、子供の頃は俺が全部やっていたし、高校に入る前は美柑と一緒にやってた、今だって泊まりの時は手伝っているから、どこに何があるかも全部わかる。

 

「…でも」

「もし動いたら、もう二度と一緒に寝ないし、風呂にも一緒に入らない」

「…それは嫌だ!」

「………」

 

美柑さん、出来れば風呂は、一人で入って欲しいです。

 

「…なに?」

「いやなんでも?」

「…お風呂は絶対一緒に入るから…」

 

美柑が俺を見て、俺が考えていたことが分かっていたように言う、美柑さん、エスパーですか?

「優兄…」

「何?」

「…眠れるまで頭撫でて?」

「了解」

 

俺は美柑が安心して眠るまで頭を撫で続けた。

 

「よし、とりあえず風呂掃除は終わりだな」

 

美柑が眠ってから俺は、洗濯機を回して、風呂場の掃除を終わらせていると、玄関から声が聞こえた。

 

「ただいま」

「あれ?美柑が出てこないねー」

[まだ帰ってないのでしょうか?]

「でもカギは空いてたし…」

 

リト達が帰ってきたらしい、俺はリト達を迎えに玄関まで行った。

 

「おかえり、みんな」

「…優斗」

「ユウトだ!もしかして、今日泊まってくの?」

「いや違う、美柑が熱を出したからね、家事を今俺がやってる」

 

リトとララさんに事情を説明すると、美柑の部屋に行こうとする、リトの腕を掴む。

 

「なんだよ、優斗!」

「いまさっき寝たばっかだから、休ませてあげな」

「そうだな、それに優斗の方が美柑も喜ぶか」

 

リトはそういうとリビングに荷物を下ろす。

 

「オレも手伝うよ、優斗」

「じゃあ、私もなんか手伝うー!」

 

気持ちはありがたいが、正直やらかしそうな予感しかしないな。

 

「じゃあ、二人で買い物してきて?」

「買い物ってなにを…」

「スポーツドリンクとか、あとは今日の夜ご飯は、俺が作るから、作って欲しいやつ買ってきな」

 

俺は二人にエコバックと財布を渡す。

 

「なんでもいいのか?」

「なんでもいいけど、ララさんがやばいの買いそうになったら止めろよ?」

 

意味のわからない食材を買ってこられても、困るからな?

 

「わかってるよ」

「ユウト!行ってくるねー!」

「いってらっしゃい」

 

二人を見送った俺は、冷蔵庫にある食材を見る。

 

「これならお粥は作れそうだな」

 

俺はエプロンをつけて料理をする、完成した、卵粥とほっとレモンをお盆に乗せて、美柑の部屋へ向かった、寝ていたらあとでも…

 

「…優兄?」

「起こしたか?」

「ついさっき起きた所だよ」

 

部屋に入ると美柑はこちらを見て目を開けた。

 

「それ!もしかして作ってくれたの!」

「食べれそう?」

「絶対、食べる!」

 

美柑はそういうと手を伸ばして、お椀を受け取ろうとするが、すぐに手を引っこめる。

 

「どうした?」

「…食べさせて」

「え?」

「体調悪いから食べさせて欲しいなー」

「…わかったよ、じゃあ口開けて?」

 

俺は美柑に卵粥をレンゲによそって、食べさせていく。

 

「美味しい!」

「それは良かったよ」

 

美柑は卵粥を食べると美味しいと言いながら笑顔になる。

 

「…でもちょっと熱いなー」

「………」

「誰か冷ましてくれないかな?」

「…わかりました、どうすればいいですか?お嬢様」

「フーフーして冷ましてください」

「かしこまりました、お嬢様」

 

俺はレンゲによそった卵粥を冷まして美柑に食べさせると満足したように俺を見る。

 

「優兄、美味しいかったよ、ありがとう」

「食欲があって良かったよ」

「…これも優華さんから教わったの?」

「…そうだね、でも優華さんの料理の方が、どれも美味しかったよ」

 

優華さんの料理はどれも美味しかった、俺のと比べ物にならない程に、特に美味しかったのは…

 

「優兄がシチューが好きな理由って優華さんが作ってくれたから?」

「…よくわかったね」

「ずっと優兄のこと見てきたからわかるよ」

 

優華さんのシチューがとても美味しいかった、俺には再現することは出来なかったけど。

 

「…優兄は優華さんの事が好きだったの?」

「姉として好きだったよ」

「じゃあ、前世で好きだった人は?」

「…俺は自衛隊で特殊部隊だったからさ、いつ任務で死ぬか分からなかった、だから、作るつもりもなかったし、そんな余裕もなかったよ」

 

俺はいつ死ぬかわからないし、そういうのに全く興味がなかった、誰かを救う以外に生きる理由もなかったから。

 

「…そっか、今は好きな人はいる?」

「美柑、俺は好きな人は作れないんだ」

「…え?それってどうゆう事?」

「熱が治ってから話すよ、今は───」

「優兄、今教えて?」

 

美柑が真剣な表情をして俺を見る、治ってからにするつもりだったんだがな。

 

「俺には婚約者がいる」

「…え?」

 

俺はリトに話したように美柑に春馬さんのことを話した、政略結婚の事、春馬さんが政界に行くという目的。

美柑が政略結婚の話をした時、泣きそうな顔をしていた。

 

「政略結婚の相手はどんな人なの?」

「………」

「…酷い人なんだ?」

「そうだね」

 

噂の事は言わなかった、あの噂話をすれば、美柑はきっと…

 

「…優兄はその人と結婚しちゃうの?」

「いや、しない」

「…え?」

「やらないといけないことがまだある、それに俺はみんなと一緒に居たいんだ」

 

俺は美柑を見て言う。

 

「必ず帰ってくる、だから───」

「じゃあ、帰ってくる証としてキスして?」

 

美柑は俺を見る、その目は泣きそうな目をしていた。

 

「優兄から…キスしてよ…」

「…わかった」

「…え?」

 

泣いてしまった美柑に俺はゆっくり近づく、ゆっくりと美柑と俺の唇が触れた。

 

「──────んっ!」

 

美柑の小さな声が上がる、自分から誰かにキスなんて、前世でもしたことがない。

 

「───っ!?」

 

キスを終えて離れようとした俺の頭を美柑は抱きしめる、そして俺の口に強引に舌を入れてくる。

 

「ん────ぅ───っ!?」

「──んっ」

 

御門先生にされた、あのキスを俺は今、美柑にされている、変な感覚で頭が真っ白になっていく、御門先生よりも長く、美柑が満足するまで離してくれなかった。

 

「ご馳走様、優兄」

「───っ、美柑、長すぎ…ってか、どこでこんな…」

 

俺と美柑の間に一本の銀の糸が伝うが、美柑は小悪魔のような笑みを浮かべながら、唇を舐めて糸を切る。

 

「体育祭の時に御門先生が言ってたから、勉強した」

 

絶対に小学生が勉強することじゃない。

 

「御門先生より長かった?」

「…長かったよ」

 

俺の言葉を聞いた美柑は満足そうな顔をして笑う。

 

「優兄!こっちに来て?」

「もう元気そうだね?美柑」

「そんなのこと、いいから!」

 

俺は美柑に手を引っ張られてペットで寝っ転がると、美柑はそのまま俺を抱きしめる。

 

「…絶対に優兄は渡さない」

「………」

「だから、必ず帰ってきてね?」

「わかったよ」

 

美柑が俺を抱きしめる力が強くなる。

 

「来なかったら奪いに行くから!」

「美柑、それは危険───」

「酷い人に好きな人を渡すくらいなら、人生を捨ててでも助けに行く」

 

なにこの威圧は怖いんですけど?

 

「優兄の事、絶対に離さないからね?」

 

林檎さんの予想が的中しそうで怖くなってきた。

結局この日は、結城家に泊まった、美柑が身体を拭くてほしいとか言ってきたが、それを無視してリト達の夜ご飯を作り、美柑の部屋で寝かされた(強制でした)。

 

「………」

「38.6、熱だね、優兄」

 

次の日、俺が熱を出し美柑に看病されたのは別の話、絶対キスのせいだ。

 

「優兄、身体拭くから服脱いで」

「自分でやるから、大丈夫だから、服を引っ張らないでくれ、美柑!」

 

色んな意味で大変な1日だったよ。

 

 

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