ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~ 作:アイスが食べたいマン
美柑が熱を出してから数日後の土曜日。
「優斗、待ってましたよ」
「………」
俺はヤミさんと二人で待ち合わせをしていた。
理由は昨日、ヤミさんから
──優斗、明日は一日空いていますか?
──空いてるけど、どうしたの?
──体育祭の時の約束を果たしてもらいます
スポーツフェスタの時にした、家に泊まるのと一日付き合うという約束をした為だ。
「どうしましたか?」
「…約束の20分前に来たはずなんだけど、ヤミさん、何時から居たの?」
約束した20分前に、既にベンチで座って待っていたヤミさんに俺は驚いていた。
「…そんな事は気にしなくて大丈夫です、それよりも早く行きますよ」
ヤミさんはベンチから立ち上がり、俺の手を引いて歩き出す。
「え?行くって…何処に?」
「映画館に行きます」
ヤミさんが映画館か、読んでいた本でも映画館されたのかな?
「映画館で何を見るの?」
「恋愛映画です」
「え、恋愛映画なの?」
「デートにおすすめなのは、恋愛映画を見ることだと、本に書いてありました」
ヤミさんは、俺の手を引きながら話す、デートね、分かってはいたけど、ヤミさんも俺の事が好きなのか…
「心配しなくても大丈夫ですよ、事前に視聴して、面白いのかも確認済みです」
「………」
用意周到だけど、それは、ヤミさん見る意味あるのか?
そんな事を考えているとヤミさんが掴んでいた、俺の腕を離して、振り返る。
「…優斗、手を繋ぎましょう」
「え?」
唐突に言われた言葉に俺は固まってしまった、なんか、すごい積極的だな。
「…やっぱり、大丈夫───」
「いいよ、手繋ごうか」
ヤミさんの言葉を遮って、俺はヤミさんの手を繋ぐ。
「…あ」
「じゃあ、行こうか?」
「…はい、行きましょう」
俺とヤミさんは手を繋いで映画館へ向かった。
映画館に着くと土曜日なこともあって中には、結構人が居た、よく見るとカップル客がかなり多い。
「えっと、どの恋愛映画?」
「あれです」
チケット売り場に一緒に並び、複数ある恋愛物があった為、ヤミさんにどの恋愛映画か聞くと、指を指した。
「俺が払うよ」
「いや、私が───」
俺が財布を取り出して、2人分の料金を支払う。
「…ありがとうございます」
俺とヤミさんがシアターに入ろうとすると俺はとある作品が目に入る。
(…改造人間…どこかで似たようなタイトルを見た気がする)
ポスターには、両手足に武器がくっついていて、ドリルの様なマスクをしている人間なのか、分からないものが書かれている。
───貴様は何も分かっていないな、映画の様な死体では意味が無い、本物を作り上げるには、生きた人間で完成させるべきだ。
前世で奴に言われた言葉を思い出す。
「優斗、どうしたのですか?」
「いや、なんでもないよ」
ヤミさんと今はデートをしているんだ、前世の事は今は忘れよう。
「12番シアターだよね?行こうか」
「はい、行きましょう」
二人でシアターに入り席に座る、予告等がしばらく流れたあとに、映画が始まった。
映画の内容は主人公の女の子が、好きな男の子を攻略しようとする話だった。
映画を見ていると手すりに置いていた、俺の手を上から握り、頭をこちらに預けてくる。
(今日はなんというか、随分と…積極的な気がする)
積極的で距離も近い、ヤミさんが頭を預けてくることでヤミさんの匂いや感触に伝わってくる。
(…心臓の音がうるさい)
この前の結城家のお泊まり会で、お風呂に入ってきたり、一緒に寝たり、身体を触られたり、色んなことを思い出して、心臓の鼓動がうるさくなる。
映画は中盤ぐらいに入り、好きな男の子が、ずっと他の女の子と仲良くしているのを見た主人公が、我慢できなくなり、男の子を部屋に呼び、ベッドに押し倒してそのまま襲ってしまう。
(…え、ベッドシーンあるの?この映画)
主人公は抵抗する男の子の手を縛り、服をたくし上げて、そのまま…
(…なんだろ、すっごく他人事じゃない気がする)
隣で頭を預けてくる、ヤミさんを見ると真剣に見ていて、俺の手を握る力も強くなる、なぜこの映画にしたかは、考えないでおこう。
「………」
「面白かったですね、優斗」
「…そうだね」
映画はハッピーエンドで終わったが、色々と凄かった。
「次はどこへ行く、ヤミさん」
「ちょうどお昼時なので、私のおすすめのたい焼き屋に行きましょう、今度は私が奢ります、優斗」
ヤミさんが手を差し伸べてくる。
「…その、先程みたいに、手を繋いで行きませんか?」
「わかったよ」
二人で手を繋いでお昼ご飯を食べにたい焼き屋へ向かった。
「たい焼き…いつものを30個ほど」
「はいよっ」
手を繋いだまま、ヤミさんはたい焼きを30個購入する、今思ったけど、昼ごはんたい焼きってどうなんだ?
「ちょいとサービスしといたぜ、ヤミちゃん!彼氏と仲良く食べなよ!」
「彼氏…?」
店主の言葉を聞いたヤミさんは、たい焼きの入った袋を受け取り俯く。
「…ありがとうございます、行きますよ、優斗」
顔を赤く染め上げたヤミさんは、店主にそういうと俺の手を引いて、近くのベンチに向かう。
「…食べましょう」
「奢ってくれてありがとう、ヤミさん」
いただきますと言って俺はたい焼きに手を伸ばそうとすると、それよりも先にヤミさんの髪がトランスで手に変わり、たい焼きを幾つか掴んでいた。
「私が…食べさせてあげます」
「…え?」
「口を開けてください」
ヤミさんはトランスで掴んでいた、たい焼きを俺に食べさせてくる。
「美味しいですか?」
「…美味しい、ヤミさん、俺は自分で食べ──」
「次です、口を開けてください」
ヤミさんは俺の話を遮り、俺の口に次々とたい焼きを食べさせてくる、俺は喉にたい焼きを詰まらせかけたが、何とか飲み込み、ヤミさんとそのまま、二人でたい焼きを完食した。
「優斗、次は洋服を見に───」
「時雨くん?」
「古手川さん」
「時雨くんの隣の子…」
たい焼きを食べ終わった俺達が歩いていると、背後から古手川さんに声をかけられる。
「こんにちは…えっと…ヤミちゃんでいいかな?」
「…コケ川唯」
「古手川よ、古手川!!」
ヤミさんが古手川さんの苗字を間違えると古手川さんは怒ったように訂正する。
「あなた達、二人で手を繋いで何してるのよ」
「今、優斗とデートをしています」
「デ…デート!?」
「ちょっヤミさん!?」
ヤミさんは古手川さんに見せつけるように俺の腕を抱きしめる。
「デートって、時雨くん!あなたまさかハレンチなことを!!」
「いや、ハレンチな事はしてないから!」
「どうかしら!あなたはいつも、籾岡さんや新井さんとハレンチな事をしてるじゃない!」
「何の話だ!」
古手川さんは顔を赤くしながら、怒っている、別に里紗や新井さんとはハレンチな事はしてない、後ろから抱きしめられたりはするけど。
「…私達のデートの邪魔をしないでください、古手川唯」
怒った表情のヤミさんはトランスで翼を生やして、俺を抱きしめて空へと飛び立つ。
「ちょっと!まだ話は終わってないわよ!!」
古手川さんの叫びが商店街の中に響き渡る、月曜日が怖いな。
そのまま近くの洋服屋まで飛んでいき、店に着くとヤミさんは抱きしめていた俺を解放した。
「…優斗、あなたもです」
ヤミさんは俺の顔を両手で挟む。
「他の女性の事を考えたり、話したりしないで、今は私だけを見てください」
いつになく真剣な表情で俺を見つめるヤミさん。
「わかったよ、ヤミさん」
「わかったならいいです、お店の中に入りましょう、優斗」
俺の言葉にヤミさんは満足そうにして、俺を連れて店の中へに入る。
(…このお店、服だけじゃなくて下着も売ってるのか)
ヤミさんと一緒に入ったのは洋服屋には服以外にも下着が売られていた。
「優斗、好きな服はどれですか?」
「え?」
「美柑に聞きまたし、優斗が好きな服を選んだでくれたと」
去年、美柑と出かけた時に服を選んで買った事を美柑はヤミさんに話したのか、てか、好きな服というより美柑に似合う服を選んだだけなんだが。
「…私にも選んでください」
「似合う服で良ければ選ぶけど、期待しないでね?」
女性の服は色々あって難しい、どんな服が好きかと言われても、その人に似合っていれば、俺はそれでいい。
「…これは」
俺の目に止まったのは白いキャミソールワンピース、ヤミさんが着ている姿を想像して似合う気がした。
「ヤミさん、これとかどうかな?」
「これですか?美柑の時とは違うようですが…」
「え?」
「美柑の時はセーラー服に似た服を選んだと聞きました、そういうのが好きなのではないのですか?」
「違うよ、俺はただ美柑にはあれが似合うと思っただけで、制服とかの趣味はない」
変な誤解をされていたな、多分俺は制服とかそういう趣味はないと思う。
「…試着室で着てきます、少し待っていてください」
ヤミさんは俺から服を受け取り、試着室へ入っていく。
(出会った頃に比べてるとヤミさんはだいぶ変わったな)
───こんな平和な星に住んでいるあなたには分からないでしょうね、たった一人でこの宇宙を生きる孤独など…
あの時に見たヤミさんの目は全てに絶望していた、でも今は違う、今のヤミさんの目は誰よりも綺麗だった。
そして何より、今のヤミさんはこの星の美しいさを見てくれている、日常を感じてくれている、友情という最高な青春を、人の温かさを感じて楽しんでくれている。
(輝、お前が俺を変えてくれたように、俺もヤミさんを帰ることができたのか?)
もしこの場にお前がいたら、俺になって言っただろうな?
─── 私を作った奴の最終目標は、恐らくあの金髪娘だ
もし冬華教官の言った通りなら、黒幕はヤミさんを狙ってくる。
なんとしてでも守り抜く、普通の女の子になったヤミさんにもう人は殺させない。
「優斗、着替え終わりました」
「…………」
ヤミが試着室から出てくる、出てきたヤミさんを見て俺は固まってしまった。
「………どうですか?」
「…すごく似合ってる、すごく綺麗だ」
「っ!?」
とても似合っていた、黒いのバトルドレスも似合っていたが、この白いキャミソールワンピースはいつものヤミさんと違って、本当にただの女の子で。
「綺麗だよ、ヤミさん」
「二回も言わなくていいですっ!!」
「だって本当に綺麗で…」
「そ…それ以上言わないでください!」
俺の言葉を聞いて、顔を赤く染めてカーテンを閉めるヤミさん。
「なんであなたはいつも、そんな恥ずかしいことを簡単に言えるのですか!」
試着室の中からヤミさんが俺にそう言ってくる、中から物音が聞こえる為、着替えているのだろう。
「もう着替えるの?似合ってたのに…」
「………」
せっかく似合っていたのに残念だな。
しばらくするとヤミさんが、いつもの服に着替え終わり、試着室から出てくる。
「…買ってきます」
「え?」
「この服を買ってきます、待っていてください」
ヤミさんは服を持ってレジに並ぶ、俺もそれについて行く。
「ヤミさん、俺が払う」
「え?」
店員さんが服を袋に入れてくれている時にヤミさんの前に出てお金を払う。
「せっかくのデートだから、プレゼントだよ、大切にしてね、ヤミさん」
「ッ!!?」
俺がヤミさんに笑顔で言うと、ヤミさんは顔を赤く染めて顔を逸らしてしまった、俺は店員から荷物を受け取ってヤミさんの手を繋ぐ。
「次に行こうか、ヤミさん」
「…バカ」
店を出て、商店街を歩いているとゲームセンターが見えてきた。
「次はここに行きましょう」
「ヤミさん、ゲームできるの?」
「私は強いですよ、優斗」
俺の問いかけに自信満々に答える、ゲームなんてやる機会があったのか?
「あれをやりましょう」
「まさかの格闘ゲームですか」
俺は格ゲーと言われる物は、リトの家でしかやったことがない、勝てるか?
ヤミさんと俺はお互いにキャラを選ぶ。
「優斗、手加減なしで本気で行きますよ?」
ヤミさんの言葉と共にゲーム内でゴングが鳴り響く。
「ちょっ!?何その動き」
「こんなものですか?」
ヤミさんは未知の動きで、俺のキャラをボコボコにする、リト達より強くないか?
数分後、KOという文字が画面に表情されて俺は完膚なきまでにボコボコにされた。
「強くない?」
「優斗が弱すぎるだけです、美柑とプリンセスももっと上手かったですよ?」
「もしかして、やったことあるの?」
「美柑と遊んだ時に美柑とプリンセスと三人でゲームをやりました」
美柑とララさんと遊んだ時に格ゲーをした事があったのか、通りで強いわけだ。
「意外ですね、なんでもできるあなたが、こんなに弱いとは思いませんでした」
「…ほぼやったことがないことをはできない」
「なるほど、だからスケートも出来なかった訳ですか」
俺は最初からなんでも出来るような天才じゃない、頭は昔から良かったが、スポーツは輝と何度もやったからできるようになっただけで、回数を積めばできるようになるが、ほぼやった事がない物に関しては、全然出来ない。
「次はあれをやりましょう」
「エアホッケーか」
去年一度だけ美柑とやって、中々難しかった記憶がある。
「いや、それズルくない?ヤミさん」
「何がですか?」
ヤミさんは両手でスマッシャーを持ち、髪をトランスしてスマッシャーを作っていた、流石に4つもスマッシャーあるのはズルいでしょ。
「トランスでスマッシャー作るのはズルいよ」
「気にしたら負けですよ」
「いや、気にするとかのレベ───」
「始めますよ」
俺の言葉を遮り、ヤミさんはパックを思いっきり打ってくる。
「っ!!」
「さすがの反応速度ですね?」
「お返しだよ!」
俺はヤミさんのコートのゴールに向かってパックを打つと、ゴールに入る直前でトランスしたスマッシャーで止められる。
「やりますね?」
「…やっぱずるいでしょ、それ」
結局、俺は勝てるはずもなく、何点かは取れたが普通に負けた。
「最後あれをやりましょう」
「シューティングゲームね」
去年唯一、美柑に勝つことができた、銃の形をしたコントローラーを使うシューティングゲーム、これなら絶対に勝てる。
「自信がありそうですね、優斗」
「まあ、得意分野なので」
「それでも私は負けませんよ?」
ヤミさんは画面に向かって銃を構える、大人気ないが、これに関しては負ける訳には行かない。
「ヤミさん、お互いに全力で行こうか」
画面にスタートと表情されると画面が切り替わり敵が現れる、俺は敵が現れた瞬間に眉間に照準を合わせてトリガーを引く、次々と敵が現れるがそれら全てが一瞬で消えた。
「…早いですね」
「まだまだヤミさんには、負けないよ?」
「舐めないでください」
ヤミさんも負けずと敵を撃ち抜くが、スコアは一向に縮まらないまま、ゲームは終了する。
俺の画面にはパーフェクトという文字とニューレコードと表示され、ランキング1位に俺のスコアが表示された。
「完敗です、さすがですね」
「これに関しては経験の差もあるよ」
リアルと違って反動を気にせず、照準を合わせてトリガーを引くだけなら、こっちの方が何倍も楽だ。
「いい時間だね、そろそろ帰ろうか」
「そうですね、優斗の家に行きましょう」
「やっぱり泊まるのね」
「そういう約束ですから」
俺とヤミさんはゲームセンターを後にして、俺の家に向かう。
「そういえば、夜ご飯何食べたい?食べる物によっては1回スーパーに寄らないと行けないんだけど…」
「何でもいいのですか?」
「何でもいいよ?」
「なら、あなたが1番好きな料理がいいです」
好きな料理か、俺の1番好きな料理は優華さんが作ったシチューだけど…
「いいよ?ただシチューだけど、大丈夫?」
「構いませんよ」
シチューなら食材は家にあるな。
「食材は足りそうだから、このまま家に帰ろうか?」
「はい、行きましょう」
俺とヤミさんは俺の家に向かう、ところでヤミさん買った服とお金以外、何も無さそうだけど、服とかあるのか?
「服はあなたのを、借りますから大丈夫ですよ」
「初耳なんですけど?」
「今言いました」
え?ヤミさん俺の服を着るの?サイズ合わなくない?
◇
「これがシチューですか」
「そうだよ、パンと一緒に食べると美味しいんだ」
「…なるほど」
ヤミさんは″いただきます″といって、シチューにパンをつけて食べ始める。
「美味しいですね」
「それは良かったよ」
俺も席について、シチューを食べ始めるとヤミさんが、話しかけてくる。
「育てている花が多いですね、なにか理由でもあるのですか?」
「優華さんが好きだったんだ」
ヤミさんはリビングの花瓶に飾られている花を見て言う、花や動物は優華さんが好きで育てていたら、いつの間にか俺も好きになっていた。
「…優華、あなたにとっては姉のような存在の人でしたね」
「そう、特に花言葉が好きだった」
「…花言葉ですか、前に学校の花壇に埋めていた花にも花言葉があるのですか?」
ヤミさんは俺が前に学校の花壇に埋めた花を思い出したらしい。
「あるよ、アルストロメリアには″未来へのあこがれ″、ムスカリには″明るい未来″や″夢にかける思い″なんて言葉がある」
「…なぜその花を学校に?」
「みんなに明るい未来が訪れて欲しいから」
そして、俺にもそんな未来があったらいいなって思って植えた。
「俺は神様じゃないから、全員は救えない」
「優斗…」
俺は神様じゃない、大勢の人を救うのには限界がある。
「けど、できるだけたくさんの人に笑っていて欲しい、特に身近な人には…」
「………」
「身近にいるヤミさんには特に幸せに笑っていて欲しい」
「ッ!?」
これは本音だ、俺の身近にいる人には特に幸せになって欲しい、輝や優華さん達のように死んで欲しくない。
「だから、ヤミさんはずっと笑っててくれ」
「あなたはいつもいつも、そんな恥ずかしい言葉を面と向かって…」
「…ごめんね」
ヤミさんは顔を赤くして呟くが、伝えられる事は伝えられるうちに伝えたい。
その後も夜ご飯を食べ終えて、風呂を沸かしている間に、皿お洗っていると、ヤミさんが近づいてくる。
「優斗、手伝います」
「ありがとう、ヤミさん」
ヤミさんが手伝ってくれる様で、皿とスポンジを渡すと一緒に洗ってくれる。
「…辛いことを聞くかもしれません、嫌なら答えなくてもいいです」
「なに?」
「私にあの突きを教えてください」
「…え?」
なぜ、あの突きを?
「私もあの突きを使えるようになれば、私もあなたの助けになれるかもしれません」
「なんで、突きなの?」
「あなたと戦国冬華の突きやCQCは、私やプリンセスには止められません、ただ今の私の戦い方にCQCは向いていない」
確かに髪や腕を武器に帰ることができるヤミさんにはCQCは向いていないかもしれない。
「最も向いているのはあの突きだと思ったからです」
冬華教官の突きをカウンターをしたり、避けることはまず不可能だろう、だってあの人の突きは…
「何より、優斗と戦国冬華のあの突きは今も尚、使う度に、成長し続けています」
「………」
そう、使う度に早くなり精度が上がる、だからこそ初見じゃなくても止めることができない。
「…あの突きは狙う場所と踏み込むタイミングが重要なんだ」
「…え?」
「どこまで突き刺すか、踏み込む時に調整する、じゃないと外したり、一撃で仕留められなかった時に反撃される」
冬華教官はそれらを全て完璧に調整して完成させたのが、俺と冬華教官の″突き″だ、だからこそ、誰も止めることができない、最強の突きになった。
「あの技はフェンシングの突きと、剣道の突きを織り交ぜて作られた技だ」
「教えてくれるのですか」
「型は教える、あとは見て盗むしかない」
冬華教官にもそうやって教えられた、だから俺は型しか教えられない。
「それでもいいなら教えるよ?」
「それでいいです、教えてください」
皿を洗い終えた、俺とヤミさんは突きの型を教える為に、庭へ向かった。
◇
庭に出て型を教えて1時間ほど経った。
「そんな感じだよ、あとは自分なりに改良してもいい、見て盗んでもいい」
「はぁ…はぁ…はぁ」
「俺達の技を正しく使ってくれ」
「…わかりました」
俺と冬華教官にとってこの技は切り札だ、誰かを守る為に受け継がれていくなら、きっと冬華教官も本望だろう。
「じゃあ、風呂に入ろうか」
「先に入っていてください、私はもう少しだけ練習します」
「わかった、花とか周りに気をつけて、無理はしないようにね?」
俺は家に入り脱衣所に向かう。
──── 私もあの突きを使えるようになれば、私もあなたの助けになれるかもしれません
やっぱり、ヤミさんは変わった、誰かを殺すためじゃない、誰かを救うために力を使おうとしている。
服を脱ぎシャワーを浴びる、頭を洗い終えて、身体を洗おうとすると、風呂の扉が開く。
「…入りますよ、優斗」
「………」
タオルを前で持ったヤミさんが風呂に入ってきた、きっと何を言っても出ないだろうな。
「身体は自分で洗ってね?」
「…あなたの身体は洗いますよ?」
「前以外なら好きにしてくれ」
「そうします、にしても前に入った時より慣れていませんか?」
「気のせいだよ」
最近、美柑とよく入っていることもあって、もう完全に慣れてきた。
「……ムゥ」
ヤミさんは背中を洗うが、俺が何も反応しなかったのがお気に召さなかったようだ。
「優斗、身体を見なければ、前も洗ってもいいですか?」
「…何を言ってるの?」
「いいですか?」
「まぁ…見ないなら」
この発言が良くなかった。
「わかりました」
「っ!?ちょっと!!」
ヤミさんはそういうと、俺を後ろから抱きしめて胸を洗い出す、ヤミさんの胸が直にあたって、色々やばいっ。
「これならいいですよね?」
「何も良くない…それに耳元で…囁かないでヤミさん!!」
ヤミさんは顔を俺の肩に乗せて耳元で囁いてくる、てかこれ、鏡とかで前見えてるよな。
「見えてないですよ」
「考え読むのやめて!」
ヤミさんは胸板を円を描くように洗い、徐々にボディタオルを持つ手が、下の方へと下がっていく。
「ちょっ!?ヤミさん!そこからは自分で洗うから!!」
「いやです」
ヤミさんの手はそのまま腹部を洗いさらに下に下がって行って。
「っ!?ダメだ、ヤミ!!」
「今…なんと言いましたか?」
「なんでそんなこと」
「ヤミって言いましたよね?」
たしかに焦って呼び捨てしたかもだけど。
「先程のように、これからはヤミって呼ぶのなら、今はもうやめます」
「これからもやめて欲しいんだけど!」
「優斗、どうしますか、呼びますか?呼びませんか?」
そう言いながらヤミさんは身体をさらに密着させて、耳を甘噛みして、手を腹部より下へと伸ばしていく。
「ヤミって呼ぶから、やめてくれ!」
「わかりました」
ヤミが俺から離れる、俺はすぐに身体をシャワーで洗い流して湯船に浸かる、あともう少しで今日見た映画みたいになってた。
「呼んでください」
「はい?」
「早く、ヤミと呼んでください」
「ヤミ」
ヤミと呼んだ事で満足したのかヤミは頭と身体を洗って湯船に入ってくる。
「入ってくるのね!?」
「今は身体はさわりませんよ」
そうは言ってますけど、あなた俺の上に寄りかかってますけどね!!
「優斗から教わったこの突きは、あなたと私の友達を守る為に使います」
「………」
「だから、ずっと私のそばで見ていてください」
そういってヤミは俺に身体を預けてくる。
「っ!わかったよ…」
胸の鼓動がうるさい、ヤミに聞かれてないといいけど…
「…フフ」
数分後、風呂から上がり、ヤミに俺の服を貸すが、やっぱりサイズは合わずぶかぶかだった。
「やっぱり、サイズ合わないな」
「私はこれでいいですよ?」
「いや、動きづらいでしょ?」
「これがいいんです、あなたの匂いがして安心しますから…」
本当に今日はどうしたんだ?ヤミさん。
「歯磨きして、一緒に寝ましょうか、優斗」
「…わかったよ」
もうここまで来たら、襲われなければなんでもいいか。
「この女性物の歯ブラシ誰のですか?」
「美柑がよく泊まるから、服と一緒に置いていった」
「………」
今よく考えたら美柑の服があったな、着替え直すか聞こうとしたが、今聞いたら、色々怒られそう。
「私も歯ブラシとか置いていきますね?」
「…え?」
「また泊まりに来ますので、次は替えのバトルドレスも持ってきます」
ヤミは歯を磨き出す、俺もヤミの隣で歯を磨く、美柑が見たらなんて言うかな…
歯磨きも終えて、俺の部屋へと向かう。
「これがあなたの部屋ですか」
「別に…面白いものはないよ」
帰ってきてから、リビングで過ごしていた為、ヤミが部屋に入るのはこれが初めてだ。
「優斗、寝ましょうか」
「わかったよ」
俺は睡眠薬を飲んで、ベッドに寝っ転がると、ヤミも隣に入ってくる。
「おやすみ、ヤミ」
「おやすみなさい、優斗」
俺はそのまま眠りに落ちた。
~ヤミside~
優斗が睡眠薬を飲んで眠りに落ちたことを確認する。
「寝ましたね?優斗」
寝たことを確認した私は、優斗の服をたくしあげる。
「お風呂場では触らないと言いましたが、ここでは触りますよ?優斗」
私は眠りについた優斗の身体を舐める、胸を舐めて、甘噛みすると、優斗の身体がピクっと反応した。
気分が良くなった私は優斗の耳に舌を入れると、さらにビクッと身体が反応する。
「…相変わらず、弱いですね?」
良くないことはわかっている、だけど、目を離せば、優斗が今にも消えそうでどこかに居なくなりそうで、私は怖かった。
「美柑との共闘のこともありますから、耳と胸だけでこれ以上の事はしません、だから、今だけは…」
あなたを感じていたい、そばにいたい、だから、私の我儘を許して欲しい。
「うっ…すぅ─────うっ」
「優斗、いい反応をしますね?」
えっちぃのは嫌いなはずだった、優斗のこの反応を見ると私は…
そっと指でなぞり、舌で舐める度に反応する、優斗の身体を私は少しの間だけ堪能した。
◇
その頃、会社の一室で時雨春馬ともう1人の男が仕事の資料を見ていた。
「春馬ちゃん、じゃあこの件はあたしの方で処理しちゃうわね?」
「あぁ、任せたぞ?瑠偉」
春馬に瑠偉と呼ばれたこの男───南雲瑠偉(なぐもるい)は部屋を出ようとすると声が聞こえてくる。
「やあ〜久しぶりだねー春馬くん」
「っ!!あなた一体どこから!?」
「その喋り方、まさか、クラウンか?」
クラウンと呼ばれた男はニヤニヤと笑いながら、春馬を見る。
「おや?キミは誰かな~」
「…あなたの方こそ、何者かしら?」
「そいつは南雲瑠偉、私の護衛だ」
「そうなのか~それは失礼、私はクラウンって言うんだーよろしくね~瑠偉くん?」
クラウンはそういうが瑠偉は一切警戒を解かない。
「春馬ちゃんになんの用かしら?」
「キミには関係ないことさ~出て行ってくれないかなぁ?」
クラウンは瑠偉を見ながら、ヘラヘラしている。
「瑠偉、退出しろ」
「春馬ちゃん!あなた正気なの!?こいつは…」
「聞こえなかったか?下がれ!瑠偉」
「…わかったわ、何かあったら呼んでちょうだい」
瑠偉が出ていくのを見たクラウンは話を再開し始める。
「春馬くんに頼みがあってきたんだ〜聞いてくれないかな~?」
「…なんだ?」
「優斗くんの婚約の話、早く出来ない?出来れば夏までに…」
その言葉を聞いた春馬は、静かにクラウンを見る。
「なぜだ?計画は優斗が18歳になってからと言ってなかったか?」
「予定が変わったんだ~優斗くんには、今すぐに婚約してもらいたいんだよ~」
クラウンはヘラヘラ言うがその目は笑っていなかった。
「キミがここまで来れたのは~誰のおかげかな~?」
「…いいだろう、こちらの準備と相手の準備もある、夏にはできるようにする」
「さっすが春馬くん!!話が早くて助かるよ~」
クラウンはそれを聞いて満足そうに笑う。
「それで、クラウン、貴様のその姿はなんだ?」
「あーこれ~?」
「…それ以外何がある」
クラウンの姿は誰が見ても美少年で、ヘラヘラしている態度すら絵になるほどだ。
「この姿の時はさ~″僕″のことは、この名前で呼んで欲しいんだ!」
「なに?」
クラウンは春馬を見つめて言った。
「虹崎輝ってね?」